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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第4章 魔人討伐! 〜初心者編〜
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第58話 決戦 #4

【神の使徒・サナの視点】


・・・

・・


(だいじょぶかな?うまくいくよね……?)


不安一杯の気持ちで私はタケツ様の攻防を見守っていた。


ハラハラが止まらない。

今にも崩れそうな崖の上で、激しいタップダンスを

踊っているのを一方的に見させられているような、

そんな気分だった。


(う、うぅ……)


タケツ様が魔人を挑発するたびに、心配で心配で胸がギュッと締め付けられた。


これほど見ていてヒヤヒヤする戦いは見たことがない。


タケツ様はまるで自分が実力者のように堂々と振舞っているけれど、

実際のところはタケツ様に戦闘力なんてひとつもないのだ。



常に細い糸を辿るような言葉の攻防。

魔人が気が変わって少しでも攻撃しようものなら、

あっという間に状況はひっくり返る。

小さな魔法光でさえ、タケツ様には致命傷につながってしまう。



(タ、タケツ様怪我だけは気をつけてーー……)



こんなもの、ドキドキするなというのが無理な話だと思う。


タケツ様の行動は、武器も持たずに戦地に赴くようなもの……

というか比喩でもなんでもなく、

その通りなのだから、落ち着いて見れるはずがない。


私は祈るような思いでタケツ様と魔人のやりとりを見つめていた。



【PiPiPi】


(!!)



傍観する私だが、

魔人は私をただの傍観者でいさせてはくれない。

警告アラームの音が私の意識を切り替えさせる。

ピン、と肌がざわつく。

その刹那、私は攻撃魔法の接近を察知した。



(えーっと……つ、次は精神汚染魔法!?

え、えーっとこのタイプの魔法はえーっと…)



慌てて魔法の分析を開始。

そしてすぐさま精神汚染魔法用のレジストを展開する!


【パリン!】


魔法はすんでのところで防がれた。

……ギ、ギリギリだ。これで何度目になるだろう……?


タケツ様は全く気づくそぶりがないが、

魔人の人は出会ってからずーっと、ひっきりなしに

タケツ様に向けて攻撃性の精神魔法をかけてきていた。


しかも精神を狂わせたり、別人格に入れ替えたりと、

危険極まりない魔法ばっかりだ。


一つとてタケツ様に当てさせるわけにはいかない。



(う、うぅ……この人の魔法のバリエーション半端ないよ〜……)



さ、流石に魔力も厳しくなってきたかも……。

私はちらりとタケツ様の顔を伺う。


事前に聞いていた作戦だと、

そろそろ"あの方"の準備が整うはず。

準備が整いさえすれば、少しは休める時間が手に入るんだけれど……。


(……大丈夫、かな)


私は不安な面持ちで礼拝堂を眺めた。



・・・・

・・・

・・


そしてようやく"あの方"が動き出す。


視界の上の方。丁度それは神剣が穴を開けた天井の穴。

まるで予兆のように、穴から差し込む光がキラリと煌めいた。



そして戦況はついに動き出す。



その存在に気づくか気づかないかのその刹那、

天井の穴より、一人の剣士が天井から飛び出してきたのだ!



「───……!!!」



神剣が穿った天井の穴。

そこから抜け出すように"アリア様"が飛び抜ける!


まっすぐと急降下するアリア様。

その右手に携えられたのは巨大な剣。


神剣"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"だ。



(よ、よかった!神剣がちゃんと届いてる!)



しっかりと神剣が握られてるのを見て、

タケツ様の作戦通りに事が進んでいることに心の底から安堵した。


タケツ様は敵を目の前にして神剣を放り投げたが、

あれはただ相手を信用させるためじゃない。


神剣をわざと外に捨てることで、

外で待機していたアリア様に神剣を手渡したのだ!



猛スピードで落下するアリア様。

魔人はその接近に気づかない。

タケツ様がうまく魔人の意識を逸らしてくれてる…!


(い、いまならいける!)


握った拳も自然と握る力が強くなる!

今の魔人は完全に無防備だ!

隙だらけの背中めがけてアリア様は猛進していく!



(魔人の人はタケツ様に意識が集中してるし、

こ、これならきっと……!)



私は固唾を飲んで礼拝堂の天井を見上げた。


スピードをどんどんあげて、アリア様の体が空を切る!

神剣とともに落下するアリア様の体には、

気配遮断、防音処理、存在希薄、さまざまな付与魔法が見て取れた。


あらゆる可能性を考慮した隠遁魔法。

目を凝らしてよーく見れば認識できるだろうが、

死角からの攻撃ならまず気づかない。

相当な練度の魔法である!



(い、いける!

こ、これならきっと……!!)



・・・・・

・・・・

・・・

・・


「ははは」

されど魔人は笑った。


「気づいていないと、思ったか?」


そう呟いたかと思えば、魔人はすぐに天井を仰ぎ見た…?!

視線のその先、一人の少女を見据えて不敵に笑う!


「!?」


アリア様は落下しながら驚愕に目を見開く!


はたから見てる私も俄かには信じられない!

あれほど緻密な隠遁魔法を看破するなんて一体どうやって……!?!?



「くくく…惜しかったなぁ、娘よ。

あと少しだったのになぁ」



猛烈な速度で縮まる二人の距離。しかし魔人の余裕は崩されない。


ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、魔人は言葉を続けた。


「貴様、今生理中だな?」


「!?」


「ははは!わかる、わかるぞその"臭い"!

はははは!!残念だったなぁ!!


この私が処女の匂いに気づかないわけがなかろうがあぁぁ!!!」


とんでもないことを宣いながら

辺りに浮かび上がらせていた魔法の光球を、

ギュインと高速回転させる!



「さぁ、お前の生理は何色だぁ?」



舌舐めずりをしたがら魔人は目を細める。

肌がざわつく。本能的な嫌悪感が全身を襲う。

き、きもい、気持ち悪い。身の毛がよだつ……っ!


だ、だがそれどころじゃない!

アリア様は超高速で落下している真っ最中。


空中で細かい制御が効かない今、

攻撃されるとそのまま攻撃を受けてしまう……!!


「……」


不意打ちが敵に気づかれた。

あまりにも絶望的な状況。


しかしアリア様の表情に恐れはない。

むしろ、より速度を高めて落下した!


(ア、アリア様……)


アリア様は"予定通り"に、

初弾を無視するつもりのようだ。


(……私のこと、信頼してくれてるんだ。)


先程、念話でアリア様と交わした会話を思い出す。

そうわかった瞬間に、"責任"の二文字が私にのしかかる。


タケツ様に言われて、アリア様に伝言を伝えた際、

私はタケツ様の伝言とは別に、

とあることをアリア様に伝えていた。


私はタケツ様からの伝言を伝えたあと、

アリア様にこう告げたのだ。


"敵の最初の攻撃は必ず私が防ぎます。"

"だから初弾の防御は気にせずに攻撃してください"


私の中にはとある秘策があった。


指輪で結界石を改造できる時間をもらった時、

結界石に施したとある仕掛け。


それはごくごくシンプルなもの。やってることは至極単純。

しかし、場合によっては最強のカウンターとなりうる一手。



「シネええええええ!!!」

魔人の光球はアリア様めがけてついに放たれる。


……失敗するわけにはいかない。

見ず知らずの私の作戦に疑いもせずに

信用してくれたアリア様の信頼を、絶対に裏切りたくない。


そして私はタイミングを見計らい、

結界石に施した仕掛けを発動させた!



範囲レンジ変更!周囲2メートル!」



宙に向かって声を上げる!

魔力を込めた声はそのまま魔人に向かっていく!

そして魔人のポケットが瞬く間に光り輝いた!



「なっ……!?」



くぐもった声。

直後、魔人から聞こえる驚きの声は、どこかぼやけた声に変わった。


まるで壁の中から声が反響してくるようなそんな声。

その声を聞くや否や、私はすぐに自分の作戦の成功を確信する!



「け、結界だとォ!?」



そう、結界だ!

魔人の周囲に青い球状の結界が展開される!

さながら魔人は青い玉の中に閉じ込められたような有様だ!


タケツ様から頂いた10分間。

私が結界石に施した仕掛けは極めてシンプル。


なんてことはない。

結界の範囲を遠くからでも自由に変更できるように改造したのだ。


結界は、私の声に従って

半径数メートルの結界を展開されたのだった!



「ぐっ!?ま、まずい!」



魔人は慌てて左手を振るおうとした。

だがもう遅い。


数秒前、アリア様めがけて放たれた数十個の光の弾は、

目の前に結界の壁があることなど露知らずそのまぶつかり爆裂した!


【ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ】


夏の花火のラストスパート。

連続花火のように、立て続けに鳴り響く爆裂音。


数十個の爆裂魔法は続々と壁にぶつかり連鎖して爆発していく。

球状の結界の内部は魔法の爆炎で覆い隠された!



範囲レンジ変更!デフォルト!」



光球が霧散したのを見届けると、

私はすかさず結界の範囲を元のサイズに復元する!


そしてすぐその後に、アリア様が続く!


紫色の爆炎が吹き込む中を、

アリア様は魔人の懐へと飛び込んだ!


「ふっ!」


小さく一気に息を吐く!

神剣が、魔人めがけて大きく振るわれた!


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