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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第4章 魔人討伐! 〜初心者編〜
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第54話 恥将ディアルガス #3

「覗き趣味にコプロフィリア(汚損愛好症)。加えてペドのロリコン野郎。

……いや、対象年齢が幼児まで

引き下がってるからネピオフィリアだな。」


俺は無意識に顔を背ける。

大惨事な光景から目をそらすように、目線が魔人から外れていく。


「いくらなんでも業深すぎだろおまえ……」

「ぐぅぅっ……!!」


ちなみに先ほど告げたこいつの性癖実績は

まだまだ氷山の一角に過ぎない。


その全体像は、それはもう異常性壁のオンパレード。

異常性壁一覧を辞書でググるよりも、

こいつの趣味一覧を載せる方がよっぽどわかりやすい。


「……このクズが」

「最低」

「きもちわるい…」


悪魔女×3が思い思いに魔人をなじりだす。

気づいたら、三人の悪魔全員がサメ頭の悪魔の武装を解除し、

ディア何某を睨みつけていた。


「死ねばいいのに」


ゴキブリを殺す時のオカンの顔である。

その目には侮蔑の感情しか残されていなかった。


「指揮官どの」

一人の女悪魔が手をあげる。


「急に腹痛が襲ってきたので今日は早退します」

「すみませんわたしも」

「わたしもです」


それに連なるように続々と手が上がる。

そして三人は示し合わせたように声を揃えた。


「「「それでは失礼します」」」

そう言うと、その場でくるりとターン。

悪魔女は三人揃って踵を返した。



「ま、待て待て!絶対嘘であろうその言い訳!!」

魔人は慌てて女の肩に手を伸ばす。


「っ」


羊のようなツノが特徴的なサキュバスが、ピクンと肩を震わせた。


「肩を離してください。」

「離さん!」


悪魔女は強引に肩を掴む魔人の手をじっと見ていた。

悪魔女は感情を殺した声で淡々と告げる。


「……もう一度言います。肩を離してください。」

しかし、僅かに声が震えているのを俺は聞き逃さない。


「離さん!!私に従わない限り絶対に離さなんぞ!!」


一方魔人は、そんな些細な変化など気づく様子もなく、

逆上しながら怒りを露わに話を続ける。


「腹が痛いだとぉ……?見え透いた嘘をつくんじゃない!

許さんぞ!この状況で逃げ出すなんて真似、絶対に許さん!!」


ハァ…、と一つため息をついてから、

後ろの方にいたリーダー格の女悪魔が一歩前へと踊り出る。


「指揮官どの。私たちは指揮官どのの指示に従う部下ですが

感情のない人形ではありません。


嫌だと思う感情もあるし、嫌なことはもちろんやりたくありません。」


「はっきり言いましょう。

あなたの指示のもとで戦うことに強い抵抗を感じます。


女性の権利を蔑ろにする人のために、

自分の命を賭して戦うなんて真似、我々にはできません。

なんとしても、撤退させていただきます。」


「で、撤退だとぉ……?!」


魔人は怒り心頭で怒鳴り散らす!


「そんな無責任がまかり通るわけがないだろう?!」


しかし、悪魔女は揺るがない。

「知りません。

今回の仕事は放棄させていただきます。」


「ふ、ふ、ふざけるな!!!」


魔人は激昂して悪魔女をなじり出す。


「それは明確な契約違反だぞ!?

お前らを雇ってる仲介企業にクレームを出しても良いのだぞ!?」


悪魔女は黙って魔人の主張を聞きづける。


「そうなればもはや損害賠償ものだ!

ここで逃げるようなら、貴様ら個人に訴訟を起こしてやる!

それが嫌なら黙って私に従え!!」


黙り込む女悪魔。

しかし黙り込んでいたのも僅かな時間。

じっと魔人を見つめ返しながら、女悪魔は答える。


「……私たちサキュバスには、過去に性差別を受けた差別の歴史があります。

魔王国の意識改革によって、多少周囲の認識が変わりました。


それでもなお、サキュバスというだけで

男性から性的な嫌がらせを受けることは少なくありません。」


「ですので、契約書にはこう書きました。

『性的な嫌がらせを受けた場合は、

途中で契約を破棄させていただく場合もある』

と。」


「はん!いつわたしがセクハラをしたと言うのだ?」


「存在そのものがセクハラだと言ってるんですよ……」

そして間髪入れずに言葉で刺す。


「この変態クズが」

ペッ、と魔人の顔めがけて唾を吐いた。


「っ……?!」


「女を性玩具かなにかと思い込んでる男は、

私たちサキュバスにとっては害悪そのもの。


性欲でしか、物事を考えられない男がいるから、

サキュバス族は未だに男を誘う痴女ビッチ だと誤解される……。


あぁ…本当に憎い…

男ってみんなそう…女を都合のいいものとしか思ってない…

憎い…憎い……全員死んでしまえばいいのに……」


ヒェッ……。

聞いてるこっちもすくみそうになる声色。

唐突に本気の殺意が悪魔女から漏れ出した。


ブツブツと怨嗟の言葉を吐く悪魔女。

すると後ろから、小柄な悪魔女がスッとそいつの手を取り、優しく握り込んでやる。


「……」


……特に言葉のやりとりもなく数秒が経過する。

それから悪魔女は少し落ち着きを取り戻したようで、

再び淡々と語り出した。


「訴えたいないならどうぞ訴えてください。


ただその場合、あなたも覚悟してくださいね、

デディガルス様。

いえ、ディアルガス様、でしたか。」


後ろの小柄な悪魔が引き継ぐように言葉を繋いだ。


「訴えるのであれば、わたしたちも正面から戦います。

わたしたちは、あなたがデディガルスという偽名を

使っていたことをしっかりと主張させていただきますので」


「なっ……!?そ、それは……」


「我々サキュバスは、先に言ったように性差別を受けがちな存在です。

なので、事前にしっかり相手のことを調べてからお仕事をうけます。


あなたの経歴には、あなたの犯罪歴はありませんでした。

だから我々は仕事を受けました。」


小柄な悪魔が言葉を紡ぐ。


「なのにまさか、経歴詐称をしていたとは……しかも性犯罪者?

サキュバスにとっては親の仇ほど憎い存在ですよ。

ありえないアサインです。逆に私たちが賠償金をいただきたいくらいです。」


リーダー格の女悪魔がたたみこむ。


「あまつさえ、サキュバスへの性差別問題に

積極的に取り組んでいた魔王国の、

しかも、その自治体の一つに所属する上級職員の一人が、

サキュバスの性差別意識を助長させるような経歴を持っていて、

なんの配慮もなくそんな男を我々にあてがった。


……もしも訴訟を起こすおつもりなら、

私たちは迷わずこの情報ををマスコミに流します。

サキュバス差別が問題視されるこのご時世、

この事実が公になれば何がどうなるか、

説明しなくてもわかりますよね?


そのことをよく考えてから、行動ください」


「お、おま、おまえっ」


口をパクパクさせながら何か言い返そうとするが、

言葉はついぞでなかった。


「三度目です。もう一度言います。」


魔人に肩を掴まれたままだった悪魔女がボソリと言う。

途端、体を小さく屈ませたかと思うと、悪魔女は右足を大きく振り上げた!


「肩を……離してくださいッ!」

「ンガァッ!?」


魔人の股間めがけて、右脚が振り抜かれる。

悶絶。悶絶。悶絶。

魔人は地面に転がりのたうちまわる!


「それでは私はこれで。失礼します。」


一人、また一人と悪魔女が消えていく。


「女の敵が」

「地獄に落ちろ、変態」


悪魔女は口々に罵倒を吐き捨てながら、

魔人に唾を吐いていった。


「あっ……ぁぁぁっ……!ぁあっ!」

股間を蹴られ唾を吐かれ、ビクンビクンと地面に転がりながら震える魔人。



……そんなやり取りを、俺は外野席から見つめる。

そ、想定していた以上の怒涛の展開である。

巻き起こった光景に、俺は呆然としながら言葉を漏らす。


「う、うわぁ」


俺氏、ドン引きである。

最初は、女悪魔たちの士気を少し下げる程度の効果しか期待してなかった。

それがまさかここまでのことになるなんて……。


悪魔女の行動に「そこまでするぅ?」とドン引きする以上に、

悪魔女に唾を吐きかけられたり、股間を蹴り上げられるたび、

一瞬わずかに口角がニチャァ…と上がる魔人に、

心の底からドン引きしていた。


魔人の変態としての素質を垣間見てしまい、

「変態は何歳になっても死ぬまで変態なんだなぁ」と痛感する。


そして、俺の思惑は思っていた以上の傷跡を残して成功したのであった…。



トントン



「あ、そうそう」

「えっ!?あ、はい」


突如何もない空間からおっぱいが現れた!?

……とおもったら、悪魔女が空間からひょこりと体を乗り出して現れた!


肩をトントンされて、俺は慌てて横を振り向いた。



「これ、名刺です」

「えっ…あ、これはどうもご丁寧に…」



手渡されたのは一枚の名刺。

そこには、NPO法人サキュバス差別意識撤廃しようの会、と書かれている。


「あなたには感謝しています。おかげで変態クズの手助けをせずに済みました。」


「は、はぁ」


「何か人手が必要な時はご連絡ください。

わたし兼業で傭兵もやっているので、特別に格安でお受けしますよ。」


一通り言いたいことを言うと、悪魔女は再び姿を消した。


「それでは」

「あ、はい」


そうして無事、俺は敵の戦力の大部分を取り除くことに

成功したのであった。




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