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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第4章 魔人討伐! 〜初心者編〜
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第47話 結界対策



「石は上着の右ポケットの中だ。

勝手に見てくれ。」


「それでは失礼しますね」


そういうと、サナは何事か呪文のような言葉を唱え始める。

それからサナは、意識を失い停止している俺の体をじっと見つめ始めた。


「?なにやってんの?」


「霊体状態だと物に触れられませんからね。

透視魔法でポケットの中を見ているんです」


「と、透視だと…?!」


さらりとそんなことを言うサナに、

俺は腰が抜けるほどに脱帽する!!!


透視魔法とか、お、おまえ、おまえ……!!


(お、男の夢とロマンの魔法じゃねーか!!!!)


な、なんと可能性に満ちた幼女なのだこの娘は!!

透視魔法といい、擬似的に時間を止める魔法といい、

サナの使う魔法はエッチな魔法ばっかりだなぁオイ!!

ませたエロガキかぁ!?!?


俺は一人大興奮して

"俺にもその魔法使えないのか!?"

と言おうとした!!


……い、言おうとしたのだが…その言葉は途中でふん詰まる。


「ん?」

「……」


気づいてしまう。

サナの視線がある一点に釘付けになってることに、

不幸にも俺は気づいてしまった。


「……サナ?」

「はい」


「どこ見てるんだ…?」

「上着のポケットです」



ポケットの中を見れるという事は

服の下も何もかも丸見えということ。


サナは上着のポケットを見てるといった。

しかしサナの視線はやや角度下気味。

その視線の延長線上はポケットの上というよりは、ズボンのあたり…。


(つーかこれ完全に股かn……)


ビタッ!!

無意識の自己防衛本能が働く!

それ以上の言語化は強制的にストップされた!


震える声で、俺は再び同じことを問いかける。


「…………どこ、見てるの?」


「ポ、ポケットです」


「……」


「……」


押し黙る成年男子(16歳)と幼女(推定6歳)。


無限とも思えるその時間の中、

結局俺はそれ以上の追求ができない。


「み、見えてないですから。大丈夫ですから」


ナニが見えてないの?

とは怖くて聞く事はできない。


「……」


目をつぶる。

歯を食いしばるようにぎゅっと目を瞑る。


10代前半の思春期少年にはあまりにキツイ仕打ち。


さながら生娘のように顔を赤く染め、

その羞恥の時間をジッと我慢したのであった…。



・・・・

・・・

・・


子供の頃、ズボンをずり下げる遊びが流行っていた。


ズボンを下げてぱんつを晒す。

それは男のプライドをかけた戦いだ。


だが俺は、他の奴らとは一味違う。


「脱がされる前に脱げばいい!」


そう言って、俺は自らズボンを脱いでいく。

そんな俺は村の中でも一二を争う脱着キング。


俺の戦略に敵はなすすべもなく敗退する。

脱がそうと思った相手が勝手に脱ぎ出すのだ。

敵としてはどうしようもない。


当時の俺は最強無敵。ある日はそもそもズボンすら

履かずにパンツ一丁で街に出た日もあった。


脱がせるか、脱がせないかの戦いではない。

脱がせるか、勝手に脱ぎ出すか。そんな別次元の戦いだ。


その新たな次元の戦いに魅了された挑戦者は後を絶たない。

脱着キングの俺の周りには常に敵だらけだった。


俺の都合など御構い無しに刺客はやってくる。

街中で普通に歩いてる時に脱がされることもあった。


そんある日のこと、俺はフラフラと夏の陽気に誘われて散歩をしていた。


この日の俺は完全に油断していた。

自分の立場も忘れ、まるでどこにでもいる一般市民のような顔をして、

街を歩いてしまっていた。


今更一般人に戻るには、俺はあまりに汚れすぎた。

俺の手はパンツで汚れてしまった。


この時の俺はすっかり忘れていたのだ。

相手のズボンを下げると、その分の恨みが回り回って自分に返ってくることを…。


のほほんと街を散歩する俺を、刺客の魔の手が襲いかかる。

油断した俺を見て、刺客はチャンスと

言わんばかりにズボンを下げに来たのだ!



【ズボッ】



あっという間もない。気づけば俺の下半身はexplosure。

全く抵抗感を感じさせることなく、俺のズボンは引き下ろされる。

背後からの敵襲で姿は見えないがすぐにわかる。

この技量、相当な手練れである。


「てめぇ、やったな…?!」


俺はニヤつきとともに後ろを振り返る。

振り返るとそこにいたのは、不敵に笑う友人デビッド。

そして……。


「あっ」


そして、視界に飛び込んでくるのは友人デビットのしたり顔。

しかしそれよりも、俺の視線を一点に奪うのはその真横。

よくよくみれば、デビッドのすぐ横に、

当時、気になっていたあの娘も後ろににいるではないか!?


(ま、まずい!!)


ズボンを下げられたのはちょうど、その子の家の前!

なんと俺は好きだった女の子の家の前で

ズボンを下げられてしまったのだ!


「あっ……あ、あ、」


ズボンだけならいい!

しかしこの日の俺はノーパンウィーク真っ最中!

夏の湿気を帯びた一陣の風が、俺の股間を直に凪ぐ!


「きゃああああ!」


ミンミンと騒がしく鳴くセミよりも、

ひときわ大きい泣き声が夏の公園に響き渡った。


「み、見ないでええぇっ!」


もちろん悲鳴をあげたのは俺である!

もちろんもろちん!モロにチンコまっしぐら!


恥ずかしそうに俺が身をよじらせるたびに、

俺の股間のヤシの実はブランブランと揺れ動く!


あの子はとても優しい子だった。

悲鳴をあげて、咄嗟に両足に挟むようにマグナムをしまって、

「はいちんちん消えましたー!女の子に早変わり!」と、

言わんばかりの有様の無様な俺に対して、優しくフォローしてくれた。


「気にしないで?

弟とよくお風呂に入ってこういうの見慣れてるの!

だから、気にしないでね!」


「あ、はい…」


「どんまい!」


「あ、はい…」


シュンと、球が引っ込んでいくのを感じた。

その後、俺はカチャカチャとベルトの音を鳴らしながらズボンを上げ、

すごすごと退散したのであった……。


・・・

・・


あの夏。13歳の頃の自分を振り返る。


ため息を知らない私が、 そこにはいた。

楽しかった想い出が 今では頬を伝う。


当時を振り返り、俺は感想を一言で総括する。


(俺のマグナムは五歳児なみかぁ……)

彼女の弟はまだ5歳。……5歳かぁ。5歳児並みかぁ…。



胸が苦しい。

あの日の記憶が今も俺の心を苦しめる。

そんな時、ふと昔本で読んだとある言葉が俺の胸へと去来した。


"Growth is often a painful process."

成長は往々にして、苦痛を伴うもの。


そんな意味の異世界語だ。


チンコを遠回しに馬鹿にされたことで、

俺も少しは成長できたかな?


人生ってきっと、こういうこと。

誰よりも痛みを知って、誰よりも人に優しくなれる人間であろう。


そんなことを胸に誓いながら、

俺はサナが観察し終わるのをジッと待った。



「……おわった?」


「あ、はい。終わりました」


「そう…。

じゃあもう、見ないでもらえるとありがたいかな…」


「は、はい」


そしてようやくサナがこちらを振り返る。

心なしか、サナの表情がツヤツヤしてるように見えた。


なんか俺をみる視線がやけに優しいというか、

「口は達者でも下はまだまだ子供なんですね」と言外に物語っているようで

恥ずか死ぬ。自意識過剰なだけかもわからんが。


「拝見させていただきました。」


「そうか…」

ナニを拝見したの?とはもう言わない。


「文字を解読しましたところ、

結界の術式が埋め込まれているようでした。

タケツ様の予想大当たりですね」


「そうか…」


ハッ…いかん。

気持ちがチンコ見られたことに引っ張られてる。切り替えなければ。

気持ちを改めて、俺はサナの報告に耳を傾ける。


「あの石で結界を作っていたのは間違い無いと思います。


ですが、石は徹底的に術式が破壊されていました。

今のあの石では結界は作れません」


そういえばオリビアが触れた途端に

割れてたんだったな、あの石。


「……話は逸れますが」

「ん?」


何か気になることがあるのか、

妙に神妙な面持ちでサナは俺に問いかける。


「どうやって魔法文字を

あそこまでぐちゃぐちゃにできたんですか……?」


あぁ、そのことか。


「知り合いが触っただけでぶっ壊したんだよ。

そいつ魔力がめっちゃ高いらしくてさ。


「さ、触っただけで!?」


信じられないものを見るような目でサナは驚いた。


「し、信じられません…人間なんですか?その方…?」


「たぶん」


神界なんていうトンデモ世界の住人ですら驚く所業。

オリビアやっぱすげえな。


「そ、それはそれとして…。

タケツ様が持ってる石はすでに機能は停止しています。


この石ではもう結界は作れないので、

今張られていると思しき結界の本体は別にある、と思われます。」


「そうなるな」


もうひとつ、これと同じような石があるはずだ。

どこにあるだろう?


「まぁ、普通に考えればあの悪魔が持ってるはずか…。

サナ、透視魔法であいつの体調べてみてくれ。」


「はい!わかりました!」


なぜか妙にウキウキで透視魔法を使い出すサナ。


「……楽しそうですね」

「え?そんなことないですよ?」


そう言いつつも、楽しそうなサナに

元被害者の俺としてはこれ以上触れようがない。

たぶんそういう性癖なのだろう。


少し待つと、サナの透視結果の報告がやってくる。


「あぁ、やっぱり持ってますね。

同じものがポケットに入ってます。」


「やっぱりか」


あとはそいつを壊してしまえば、結界問題は解決ということだな。

「じゃあ牛丼並盛りで」くらいの手軽さで俺はサナにお願いする。


「じゃあ壊してくれ」

「えっ!無理です無理です!できないです!」


えっ


「できないのか?」

「で、できませんよ」


「でも石真っ二つに割ればいいだけなんだろ?」


サナの割った石を思い出しながらそう語る。


「割るだけなら簡単ですけど、

割っただけじゃ魔法文字は消えません。


見えない砂つぶになっても、魔法文字は動作し続けます。

その不変性が好まれたからこそ、

魔法文字は昔、1つの時代を築き上げたのですから。


「でもオリビアは簡単にやってたぞ?」


「その人が異常なんです!

あり得ないことやってますからね!そのひと!」


ふむ。


「じゃあ、壊さなくてもいい。

それなら書き換えるとかはできないのか?

消しゴムみたいな感じで。」


「……あー。」

サナは考え込むように語尾を伸ばす。


「普通なら無理です。無理なんですが……」


言葉を区切って俺を見る。


「ん?」


「その黒い指輪があれば、書き換えられるかもしれません」


「ほう」


視線の先は黒い指輪。

神界から意図せず持ってきてしまった代物だ。


「その指輪には「読み込み」と「書き込み」の機能があります。


神力を書き換える道具なので、魔法文字を書き換えられるかは

ちょっとわかりませんが…やってみる価値はあるかもしれませんね」


「ふむ。そんじゃやってみるか。」


「はい」


✳︎


そうしてサナは、幽体のままフワフワと悪魔の親玉に近寄っていく。


「だ、だいじょぶ?突然暴れたりしない?」


俺も怯えながらサナの後を幽体で追う。

目の前には悪魔の親玉。フードから覗く無数の目がめっちゃこわい…


「大丈夫です。暴れません」


そう言ってサナは安心させるように俺の手を優しく握る。

……なんか神界から戻ってきてから立場逆転してね?


(だが、やぶさかじゃない…!)


やぶさかじゃない!やぶさかじゃないよ!

俺はされるがままに子供扱いを受け入れる。ばぶぅ。


「それじゃあ、さっそくやってみますね」


そういうと、サナは俺の手を握っていない方の手を悪魔にかざす。

すると、指輪がピカリと淡く光り始めた。



「あ、いけそうですね。」

「マジか」


「どう変更します?複雑なのは無理ですけど」


「…そうだな。結界の範囲を変えることってできるか?」


「それなら簡単ですね。範囲の長さを変えるだけなので」


「じゃあ頼む。範囲の長さは……」





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