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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第4章 魔人討伐! 〜初心者編〜
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第44話 バブみビッグバン

新章作成しました!


「うおおぉぉぉぉぉ!!!!」


勇者に操られて、

イグジットコマンドが実行されてしまう!


その途端に、俺の体を謎の加速感が襲った!


「あががががが」


右から左。

真横に一気に加速していく感覚。


体を動かしてるつもりはないのだが、徐々に視界はスライドしていく。

そして、俺の体はそのまま、部屋の壁へと衝突する位置にまでスライドしていく……!?


「ぎゃあ!?ぶつかルゥ!?」


しかし…!衝撃は…ない…?!

衝撃に備えて目を閉じていたが、一向に壁に

ぶち当たる感覚はやってこない……?!


恐る恐る俺は目を開く!すると


「!?」


白い部屋から一転!

真っ暗闇の黒が、俺の視界を覆い尽くしていたのだ!


部屋の外、目に飛び込んでくるのは無限の黒!

その黒の中には白い点がいくつも散りばめられる!


そう、それはまるで宇宙のような場所!

部屋の外には宇宙のような果てのない暗闇が広がっていたのだ!


「お、お助けええええ!!!」


そしてその宇宙の中を疾走するように、横へ横へと吹っ飛ばされる!

生身による星間飛行!自らが流れ星となって、俺は星々の間を駆け巡る!


「ひええええええええ!!」


反応反射音速光速!

加速度はさらなる限界の扉の向こうへ!

左から右へ、横へ横へと超加速は止まらない!


俺のひええええは加速とともに低くなる!

これぞまさしく1人ドップラー効果!音は時間を置き去りにしていった!



「いやぁぁぁぁ!!!」

「タケツ様!タケツ様おちついて!」


「いやぁぁぁ!いやぁぁぁぁぁー!」

「お、おちついてタケツ様!」



サナの声はもはや聞こえない。

それほどにパニック状態である!


しかし、俺の大混乱など御構い無しに、

スピードはどんどん上がる。


物理限界に到達するほどの超速度。

物理の先にある超加速の世界は、目の前のあらゆるものが加速して見えた!


見えていたはずの白く輝く星々は、

今や、真横に引き伸ばされて一本の線となる…!


そして気づけば、宇宙の黒い背景をバックに、何重にも重なったその白い線が、

流動的に左から右へと流れていくのだ!


そのあまりの光景に俺は口をポカーンとあけるばかり!



「こわ!こわ!こわぁぁぁぁ!!」


「お、落ち着いてください!タケツ様!

大丈夫です!大丈夫ですから!」


「これのどこが大丈夫なの!?

ここ宇宙でしょ!?しぬ!しぬぅ!」


俺は無様に幼女にすがりつく!

こわい!なにこれこわい!たすけて!


「だ、大丈夫です!タケツ様!

似てますけどここは宇宙じゃないですから!


あの白い点は私たちがいた白い部屋と同じ部屋ですから!

これはそういう場所なんです!死にません!」


「いやぁぁぁぁ!!!こわい!しぬぅ!しぬぅ!!」


「大丈夫です!大丈夫ですから!」


そう言うと、サナは俺の頭をなでなでしながら励ましてくれる…!?


「……。」

【なでなで】


「……。」

【なでなで】


「……?!!?!?」

ナァ!?こ、これは!?



その刹那、あまりの衝撃に俺の時間はフリーズする!


【なでなで】

(な、なでなでだと!?)


【なでなで】


なでなで。なでなで。

そして俺の心の平穏は、なでなでと共にようやく平静を保ち始めるのだった!


(な、なんだ?なんだこの感情は……?!)


安らぎ?癒し?…いや、違う。


俺の中に芽生えた"はじめて"の感覚に、

このとんでもない状況も忘れて、俺は1人驚嘆していた…!


(幼女に頭をなでなでされるこの感覚……?!

い、いったい!?この感覚は!?)


はじめての感覚だ。

俺はこの感覚を、この感情を知らない。

知らないのだが、俺の頭の中にふっと湧いてきたように

とある言葉が自然と舞い込んでくる!



(これが、"バブみ"……?)



年齢の桁数すら違う幼女に、なでなでされる…?!

なんだ……なんなのだこれは?!

はじめての概念に、俺は戸惑いを隠せない!


相反する概念の衝突!

幼女×母性!これぞまさしくビックバン!

幼女×母性によって生み出されるはバブみ・ビックバンという新たな概念だ!


(ビックバンだ!ビックバンだ!)


アホの一つ覚えに連呼する!

ビックバンだこれ!!

もはや理屈じゃない!自然と概念が言葉となって現れる!

これぞビックバン!バブみビックバン!!!


星の誕生に匹敵するすさまじいエネルギー!

とめどなく溢れるこの感情の誕生に、

俺の心は母に抱かれ眠ったあの日の自分に回帰した!


そして、俺の口からは自然とその言葉が紡がれる…!!



「お、おかあさん…?」



お母さん?僕のお母さんなの…?


サナの優しい笑みが、母のそれにしか見えなくなってくる!

しかしそれも仕方のないこと!


なぜならビックバン!これはビックバン!

幼女×母性には、ビックバンさながらのエネルギーがそこにはあるのである!!



「お、お母さんではないです」



そうは言うものの、お母さんのナデナデは止まらない!


(お母さんだ!やっぱりお母さんだ!)


俺は超加速している間、

ずっと幼女になでなでしてもらったおかげで、

事なきを得たのであった……!!!


・・・

・・


そしてそれから数分後


「……」

体を襲う加速度感が唐突に消え去る。


「終わりましたよタケツ様。もう大丈夫です」


サナはなでなでしながら答えてくれる。


「……」


一方俺はというと、加速が落ち着き始めてからは終始無言である。


それから俺は、サナにしがみついていた手を離し、

未だになでなでされている手を、優しく払いのける。


「サナ。何か体調に異変とかはないか?

何かあったら言ってくれ。」


キリッ。

俺はいつだってクールビューティ。

年上としての威厳をサナに見せつける。


「はい。大丈夫ですタケツ様」


今更、威厳保とうとしても無理じゃね?

なんてことをツッコむサナちゃんではない。


まるで聖母のような慈愛の笑みを浮かべるサナ。

サナは俺の無様な失態を掘り下げずに、普段通りに接してくれた。


ここであの時のことを掘り下げられていたら、

俺はプライドが崩壊して、幼女に赤ちゃんプレイを求めるド変態に成り下がり、

自我が崩壊して幼児退行していたことだろう。


(なんて、なんてええ子なんやぁぁぁ……!!)


サナの空気の読める対応に1人感動しながら、

俺はコホンとわざとらしく咳をつく。


「コ、コホン……。

そ、それでサナよ。えーっと、ここはどこなんだ?」


女におんぶしてもらうことも躊躇わない流石の俺でも、

さっきの俺自身の失態を正当化しきれない。


あえてそこには触れずに、俺は現状についてサナに聞いてみる。


超加速体験を終えた俺たちは、

現実世界に戻ってきた。戻ってきたのだが、

どうにも視界がおかしい。


ふわりふわりと、まるで幽霊のように礼拝堂を空から眺める視点なのだ。



「はい。本当はこのままタケツ様の精神を体に戻して、

止まっていた時間を再び開始するつもりだったのですが……」


サナは言い澱むように視線をそらす。


「その、あ、あまりの様子だったので

そのまま精神体を戻すのは危険かなと思い、


一旦、精神体を霊体に昇華させる魔法を使って、

少し落ち着く時間をご用意いたしました。


「………………あ、そう。」


やだなんか恥ずかしい…。

めちゃ気使われてるやん俺……。


しかし、ここで気恥ずかしさに負けて、

誤魔化すように振る舞う方が、俺は大人として恥ずかしいと思う。


俺は堂々と、サナに礼を告げる。



「ありがとうサナ。助かったよ」


「いえ!どういたしまして!」



✳︎

✳︎



「さてと」


そうして俺は、改めて下を見下ろす。

俺の体、悪魔の集団、そして悪魔の親分ぽいやつが遠目からはっきり見えた。


俺と悪魔との距離は大体5メートルくらいか。

……近いな。


悪魔数体が、爪をむき出しにして、

俺に襲いかからんとするシーンで止まっている。


このまま俺が自分の体に戻ったら、

あっという間に悪魔の爪の餌食になるだろう。



「……ダメ元で確認するが、

俺の体を今の場所から移動させることはできるのか?」


「前も言いましたが、無理なんです…

……うーん」


うーんと唸るサナ。

サナも俺と同じところを考えてるようだった。


「このまま体を戻すと、タケツ様すぐに攻撃されますね……」


「そうなんだよなぁ」


うーん、と唸っていたサナだったが、

何かを思いついたのかポンと手を叩いた。


「あ、そうだ。

神剣を使いましょう」


「神剣?でも俺、剣なんてまともに使えんぞ」


「大丈夫です。

少なくとも、最初の一撃だけは神剣がなんとかしてくれるはずです。」


……???どういうこと?


「意識が戻ったら、

前に女神様にも言われた通り、神剣の名前を呼んでください。

そうすればわかりますから」


「……エター……フォー剣?」


「ちがいます。

エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバーです。」


よく覚えてるなぁ…


「わかった。サナを信じよう」


「はい」


(……さて、それじゃあどうするかな。)


そうして俺は考え込む。


図らずも、考えを整理する時間が手に入ったのだ。

ゆっくり落ち着いて作戦を練ろう。


まず俺は、敵の状況と自分の手持ちの状況を

一旦整理することにした。



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