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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第3章 神界へようこそ!
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第39話 帰還 #1

……が、喜んでばかりもいられない。


このままだと、俺は幼女を手に入れる代わりに、

勇者パックをまるっと入れられて、スキルを手に入れてしまう。


再三いうが、俺はこいつらの思い込んでるタケツじゃない。


このまま人違いであることを利用して、

勇者の使ってたスキルなんてチートな物を

盗み取ってしまってはあまりにも後が怖い。


スキルを盗んだ別の男を

「ころすころす」と言ってるこの女神が相手なら尚更だ。



「コホン」


コホンとひとつ咳をする。

ロリポップまみれになった場の空気を、

大人でビターな空気に入れ替える。

俺は改めて、スキルを手に入れない方向で交渉を試みた。


「ただ、な。

一つだけお願いしたいことがあるんだ。


【……?なんでしょう?】


「俺が命をかける代わりに、

幼女一人と剣一本というのは、少し俺が損をしていると思う。


剣もらってもオレ剣握ったことねーし、

ぶっちゃけ扱える気がしないしな。」


【……つまり?】


「もう一つだけ、俺の要望に答えてくれ」


【なるほど。そうですか。】


声のトーンがやや下がる女神。

強欲だと怒ってるのかもしれない。


「安心してくれ。俺の要望は

女神様が思ってるようなものじゃないよ。」


「俺が欲しいのは、「命の保証」だ。」



【……?どういうことですか?】


「まず前提のところから、改めて意識合わせをしたい。


なんども繰り返しの話になってすまんが、

無駄な神力がたくさんある状態で、

スキルを入れるのは危険なんだよな?」


【そうです。

具体例で説明するなら、

「炎の壁を作る神力」と

「炎を鎮火させる神力」があれば、

炎の「スキル」はこのどちらも読み込んでしまいます。


この状態で炎のスキルを発動した場合、

炎のスキルは炎の壁を生み出した瞬間に、

鎮火されてしまい、スキルは予期せぬ結果で動作してしまうんです。】



「……そういう予期せぬ動作をして危険だから、

神力が無計画にたくさん入ってる奴には、スキルは与えられないんだよな?」


【その通りです。

膨大な神力をお持ちのタケツ様にスキルを与えたら、

一体何が起こるかちょっと予想ができないくらいに危険です。】


女神はついでとばかりに補足する。


【……ついでに言えば、

タケツ様の神力はその容量的に、

神界全てのスキルの神力が入っている可能性があります……。


炎のスキルが、全ての炎の神力を読み込んだら一体なにが起きるのか、

私達でも全く予想がつきません…。


もしもその現象が、全てのスキルに対して一斉に起きたら何が一体どうなるのか…。

正直ちょっとほんとに、マジのマジで危険な状態です。】


改めてそう言われるとマジで異常なんだよなぁ…俺の体……。

こいつらが入れたわけではないようだし、

それじゃあ一体誰が俺にこんなことしたんだろう…?


【タケツ様の神力に一体何が書き込まれているのか、

いつか改めて調査が必要でしょうね。】


「……でも1500年もかかるんだろ?」


【……そこが本当にどうしたものか、という感じです……。


さて、話を戻しましょうか。】


女神はひとつ間を置いて、再び語り出す。


【どんな神力が入ってるかわからないタケツ様の中に、

スキルを入れるのはとても危険です。


だから、タケツ様の神力を消してから入れなおすことは、

絶対にマスト事項です。】


オーケーオーケー。

これで認識合わせは完了だ。


一旦一呼吸置いて、会話を区切る。

そして俺は交渉を開始する。


「だが神力を消した場合は

廃人になるリスクがどうしても付き纏う。そうだろ?」



【その通りです。

……まぁ、ハイリスクハイリターンというやつでしょうか】



「俺としてはそのリスクをなんとか回避したい。

できれば神力を全削除は避けたい。」



【……まぁ、そうしたいお気持ちはよくわかります】



「そこで提案なんだが、勇者パックの神力だけを

全て植え付ける、っていうのはどうだろうか?」



それなら、スキルを持たない俺には危険はない。

俺としては確実に安全で非常にありがたい。



【スキルは受け取らない、と言うことですか?】


「そうだ。だが神力の実験台にはなってやる。

どうだ?」


【……う、うーーーーーーん……】


女神は悩むように唸った。


【私達が実験したいのは、

この勇者パックの安全性なんです。


神力だけだと、スキルは実行できないので

安全性の検証はできません…。

それはちょっとー……無理ですねー……】


(あ……やべえ。断られた。)


え?どうする?

なんて言い返す?


(何か言い返す材料もってたっけか?)


……。

あ、やべーわ。何も出てこねーわ。


(さりげなくピンチなんじゃないか?これ)


……な、なんて反論すればいいんだ!?

こ、こうなると俺に残った交渉材料がマジでないんだが!?


(だ、だめだこれ!

神力だけ受け入れる方針じゃ交渉できねえぞこれ!)


スキルを受け取らないと何も話が進まない。

その前提がある限り、神力全削除をどうしても避けられない。

そんな構図になっていることに、俺は今更になって気がついた。


(く、くそがぁぁぁぁ……

要らんリスクを背負うことになるぞこれぇぇぇぇぇぇ)


スキルを手にすることは、再三言ってきたように

後のリスクになる可能性が極めて高い。


だからスキルは入れたくない。

……い、嫌だ!マジで嫌だ!

マジで嫌だが、腹をかっ切らないと交渉が進まない!


厨二剣一本に妥協するか、

それとも幼女を一人おまけしてもらうために、

リスクを覚悟するか。


(くぅぅぅ……し、しかたない!方針変更だ!)


俺は後者を選択する。

スキルをすこしだけ受け取る方針に泣く泣く変更して、

俺は交渉を再開する。


「……い、一部だけっていうのはどうだ???」


【勇者パックの一部だけ受け取る、ということですか?】


「う、うん」


【……それも難しいですね】

【我々としては、一部のスキルだけでも実験できるのは

大変に意味のあることです。


もしも可能ならそれでも良いのですが……

それにはやはり、どうしてもタケツ様の神力を消さないと……。】


だよなぁぁぁーーー。

そうだよなーーーーー。


スキルを入れようと思ったら、絶対に神力を消さないといけない。

その前提があると、もう何も交渉ができないんだが!?



(やばい。あ、地味にやばいこれ。

ど、どうする?どうする!?)



え?じゃあ神力全部消しちゃうか??

いやそれは無いってありえないって!?


ぁぁぁぁぁぁあ!諦めるしかないのか!?

目の前にこんなロリカワ幼女を味方にできるチャンスがあるのに

諦めるしかないのか!?!?



(か、かんがえろーーーーーー……

なにか、なにかないかーーー………)


現状を何度も何度も整理する。

しかし出ない。妙案は出てこない。


(考えろ考えろ考えろ…このままじゃ幼女が、幼女がががが……)


整理する。何度も何度も情報を整理する。



たくさんの神力がある状態でスキルを入れるととても危険…。

そして今の俺にスキルを入れればそれだけで暴走する…。

だから今のままじゃスキル入れられない……。


スキルを一つでも入れようと思ったら、

俺の神力を全部消さないといけない…


だが、それをやると知性やら学習能力とか、人間が生まれながらにして持ってる

スキルの神力が消えてしまい、

それらの人としての基本スキルは発動しなくなり、俺は廃人になる……。


(だ、だめだどこにも解決の糸口がない!)


しかし諦めかけたそんな時である。

一つのひらめきが俺に舞い降りた。


(……ん?)


あれ?でもなんかこれ…


(なんか矛盾してねーか…?)


何度も現状を整理していく中で、

俺はとある矛盾に気がついた。


矛盾している。明らかに矛盾している点が一つある。


(こ、これか?これが正解ルートか??)


これか?これなのか?!

これが俺のビクトリーロードか!?


すがりつくように、俺はその矛盾をそのまま女神に尋ねてみる。


「ひ、ひとつ気になったことがあるんだが!」


【は、はい!なんでしょう?】


女神は俺の勢いに押されて、

すこし焦り気味に答える。


「お、俺の体はスキルを一つでも持ってれば、

神力に反応して暴走するんだよな?


一つでもあれば、むしろ暴走してないとおかしいんだよな??」



【は、はい。そうですね。絶対に暴走します。


タケツ様の神力の容量は、神界全てのスキルの神力に匹敵しています。

全てのスキルに対応する神力がタケツ様の中に入っていると思われます。


その状態で、もしも一つでもスキルが入っていれば

かならず、スキルが何かしらの神力に反応して、暴走すると思います。】



「だ、だよな!!」


そして俺は思ったことをありのままに伝える!

「じゃあやっぱおかしいわ!今の俺の体!」



【……??何が言いたいんでしょうか?】



「俺は今喋ってる!

知性も持ってるし、学習能力も、理解する能力も持ってる!」



【……そうですが??】



「こうして考えながら喋られるのは、お前らの理屈で言う所の、

人間が普遍的に共通に与えられてる「スキル」のおかげだ!


なら俺は既にスキルを持ってるんだよ!」



【……】



「なのになぜ暴走してない?

なんで俺は今平然としていられるんだ??


無駄な神力ってやつは、本当に

お前らの言う通りスキルに干渉するのか??」



【……】



かつてない沈黙。

そして女神はようやく口を開く。



【……なるほど。完全に盲点でした。】

【いえ、思い込んでいた、というのが正解でしょうか。】


女神は粛々と語る。


【一つの推測があります】


【まず、純然たる事実として、

タケツ様は1000ベタという超大量の神力を持っていて、


また同時に、知性等と言った人間としての基本スキルも持っています。】



【私はタケツ様の神力の大きさから、

てっきり全ての神力が入っている、と思い込んでいましたが……。

事実はそうではない、と言うことですね。】



【少なくとも、人間の基本スキルに

干渉する神力はタケツ様の中に一つも入っていない、

と言うことは確実に言えます。】



「ということは、だ。」



【ええ。】



「その勇者パックには、

人間の基本的なスキルも入ってるんだったよな?

そいつらであれば…」



【今のタケツ様の中にそのまま入れても

暴走することはない、ということですね。


実際にタケツ様はその状態で

基本的なスキルを持っていながら、暴走していないわけですから。】



「だよな!!!!」

俺は早速話を切り替えしていく!

「ということで、女神様!」


【はい】


女神は頷くように同意する。


【私は、

私の使徒であるサナ・アルカナと、

そして太古の勇者が持っていた伝説の神剣を

タケツ様に貸し与えます。】



「俺は、その代償として、勇者パックの実験台になってやる!

ただし、人間の基本スキル限定でな!!」



・・・・

・・・

・・



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