表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第3章 神界へようこそ!
42/120

第37話 その幼女わたしにください #2

なんかすごそうな剣も手に入った。

これさえあれば無敵なのではないだろうか?


剣とかふるったことないけど、

クワなら扱えるしまぁなんとかなるやろ。


(さてと。)


よっしゃ。貰うもんもらったしそろそろ帰るか。


「それじゃあ女神様。俺帰るわ」

【え?!】


学校の帰り道。

屋台のおっちゃんから焼き芋を買い、

夕暮れの中を小さくスキップして帰宅するような、

そんなワクワクした心地で、女神と幼女に手を振った。


「じゃ、帰るわ。またなー」


そして"とある言葉"を呟こうとしたその時である。


【!?ま、ままま待ってくださいタケツ様!

もう少しお話させてください!】


えらい焦った勢いで女神が俺にすがってくる。


「ん?どうかしたか?」


【脈絡もなく突然帰ろうとするタケツ様の方がどうかしてますよ?!】


欲しいもんは手に入ったしもう用はないかなーって。


【もう少しだけ!もう少しだけお話しさせてください!】


……仕方ねえなぁ。

神への感謝を微塵も感じさせない不遜な態度で

俺は女神に返事をする。


「よし。聞いてやろう!」


【ありがとうございます!】


✳︎


【正直に今のわたしの気持ちを言っていいですか?】


どうぞ


【『お手軽勇者量産パック』の件…

何卒ご一考いただけないですかねー…?なんて】


「ま、まだ諦めてなかったのかあんた…」


思わず気持ちがそのまま声に出る。

その話はさっきので決着ついただろうが。


【お、お願いしますよーー……。

本当にすごい製品なんですよこのパッケージはーー……】


そう言われてもなぁ…


【ちなみにタケツ様って剣は扱えるんですか?】


ウッ。鋭いところを突いてくるじゃねーか…。


【このパッケージのすごいところはですね、

ただスキルを覚えられるだけじゃないんです!


このスキルは、勇者様が歴戦の戦いで培ってきた知識や経験が、

そのままスキルに残っているんです!】


「それがなんだっていうんだよ」


【知識や経験が残ってるので、

初心者でもベテランのようにスキルを扱える、ということです!


このお手軽パックにはもちろん剣技を高めるスキルも入ってます!】


ほう。


【なりたくないですか?英雄に】


……。


【剣で魔法に打ち勝ちたくはありませんか?

気持ちいいですよー?物理で小狡い魔法使いを圧倒するのは!】


……いいキャッチコピーだ。

少し興味が湧いてきたので、ちょっとだけ話を聞いてみる。


「そんで?」


【……え?】


「そのパッケージとやらの素晴らしさはわかったよ。


だが、だからといって、

廃人になるリスクをかけてまで、そのパックを入れようとは思えんわ。


何かオマケしてくれたりはしないのか?」


【オ、オマケ?】


「命かけるにはちょっと軽すぎるんだよなー。」


【えー??えーっと……そうですねぇ……】


【"鑑定士"ってスキルもオマケします?

これは相手のスキルや趣味や家族構成何から何まで見通すことができるスキルでして】


「ストーカーみたいでキモい」


【"創造"ってスキルはどうでしょう?

これは文字通りどんなものも作れるんです!

ね?すごいでしょう?】


「俺クリエイターの才能ないから無理」


【えーっと、あとはー……】


・・・

・・


その後もびっくりするようなスキルを

次々と提案してくれたが、俺は悉く断っていく。


ぶっちゃけ、オマケを要求した時点で、

こいつの提案を受ける気は実は俺にはさらさら無かった。


断る理由は至極単純。

それだと"あまりにも俺が得をしすぎている"からだ。


(所詮、俺がここまで良くしてもらえてるのは、

俺を「タケツ」と勘違いしてくれているおかげだ。)


人違いとバレて、俺の下心が明るみになったら俺はどうなるだろう?


ここまでのやり取りの中で、

ずっと頭の中に焼き付いて離れない光景。

それは、俺からスキルを掻っ攫った謎の男に対して、

女神が殺す殺すと呟いていたあの時の光景だ。


(欲をかいて色々便利なものを貰って、


もしもその後に人違いとバレたら

このサイコパス女が何をしでかすか全くわからん……。)


この女神から恩恵を受けるための最低条件。

それは、バレた後に女神がギリギリ許してくれる状況を作り出すことに他ならない。


その大前提が達成されない限り、こいつから何も貰うつもりはない。


条件を達成するためのポイントは大まかに分けて3つだ。



1つ目のポイント。


貰うとすれば無難なもの。

あるいは、後から簡単に返せるものがいい。


例えば「物」。

剣のような物体なら簡単に返せる。

悪魔を倒した後、バレる前にさっさと返してしまえばいい。

だからこの剣のチョイスはマジでGoodJob。

ベストアンサーオブベストアンサー。



2つ目のポイント。

逆に、スキルのような目に見えないものは絶対ダメだ。

返すのが大変そうだし、そもそも返せるのかもわからない。


女神の言動を振り返れば、

簡単に返せないからこそ、女神はスキルを奪った男に対して

殺意を抱くほどに怒っているのだろう。


加えて、奪われたスキルは俺に与えられないと女神が言っていたことから、

スキルというのはいくらでも作れるものではなく、

数がかなり限られている可能性が極めて高い。


以上のことから、

こいつら(神)にとってのスキルの存在は

どう考えても希少価値がかなり高いと思われる。

断固として受け取るわけにはいかない。


……今だから言えるが、

スキルを授けられる展開にならなくてマジでよかった。

スキルを授けられそうになった時はマジで内心ヒヤヒヤが止まらなかった。

俺の膨大な神力マジでGoodJob。



そして最後……3つ目のポイント。


今の俺にとってよりベストなシチュエーションがあるとすれば、

それは「相手が得をして、俺が損をすること」だ。


この構図なら、

仮に俺に騙されたとわかったあとでも、

自分の方が得しているのだから、多少の溜飲は下がるはず。



(それでいくと、今の状況ほど都合のいいものはないんだよなぁ…)



女神は売り出したいパッケージのテストができるし、

俺は廃人になるリスクを背負いながらも、多少の恩恵を得られる。


はっきり言って、今の状況は俺にとって最適解に等しい理想的状況だ。



……ただまぁ、パッケージのテスターを受けてしまうと、

スキルを手に入れてしまうので、後々面倒くさいことになりかねない。

スキルは絶対に受け取らないように交渉する必要がある。


(……ただなぁ)


ひとつだけ不満があるとすれば、

これだとやや俺に辛いのだ。


命をかけてるのに厨二臭い剣一本では辛すぎる。

やはり多少の「オマケ」が欲しい。



・・・

・・


未だにすごすぎるスキルを提案し続ける女神を前にして、

今度は俺から女神に提案する。


「うーん。スキルはやっぱりピンとこないな。」


【そうですか……】


「……ならこれならどうだろう?」


俺は女神に告げる。


「そこの幼女を、俺に貸してくれないか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ