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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第3章 神界へようこそ!
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第36話 その幼女わたしにください #1

【弊社開発中の、

『お手軽勇者量産パック』を入れ直してみましょう!】


「なにそのネーミングセンス…」


胡散臭さがものすごいんですけど…。


【このパッケージにはですね、

とある大昔の勇者様のスキルと神力が全て入ってるんです!


もちろん、人がみんな持ってる知性や学習能力などの

基本的なスキルも含めてすべてです!】



【タケツ様の神力を消した後に、

これでまるっと入れ直せば、万事解決!ですね♬】



ほんまかいな……。

「開発中」とか言ってたし、何か問題がありそうな気がしてならないんだが…。


それから、この女は俺の神力一度全て消すと言っていた。

それの意味するところはつまり…


「……そのなんとかパックを入れようと思ったら、

神力を空っぽにしないといけないんだよな。」


【そうですね!真っ白にします!】


「真っ白になってる間の俺はどうなってるんだ?」


【……え?】


「知性やら学習能力やら、そのあたりのスキルも当然使えなくなるわけだろ?

その間俺はどうなってるのか、って聞いてんだよ」


【……】


長い沈黙の後、女神は無駄に明るい調子で答える。



【ちょーっとだけ!

ちょーーーーっとの間だけ、廃人になってます!

ほんのちょっとだけですよ??】


「よしわかった!返事は今ここでしよう!

絶対やらねーからなそれ!!!」



こんなドジばっか踏む連中に、そんなことやらせられるわけねーだろ!?


しかしそれでも女神は粘り強く俺を説得しようとする!



【い、いいんですか?

このパッケージを初めて使用した人として、神界に名前が残るんですよ??

とても名誉なことですよ??】



!?!?

そ、それはつまり、このパッケージを

誰も使ったことないってことか!?!?

完全に実験動物じゃねーか!?



【お願いします!実はこの実験誰もやりたがらないんです!

後生だからお願いします!実験台になってくださいいいいい!!】



こ、このキチ女ぁぁぁぁぁ……人の命をなんだと思ってやがるぅぅ……!?!?

内心マジギレしながら、ギリギリで我慢して、俺は女神に頼み込む。



「か、勘弁してください……たのみますよ…。

もうちょいマトモな手段はないんすかね……」


疲れ切ったように俺は女神に尋ねる。


【う、うーーーん。

スキルが欲しいなら、これ以外には不可能だと思います。】


「ならスキルはもういいですわ。

スキル以外に何か良いものないのか?」


【………ないです】

「ほんとに?」


【な、ないです】

「今、目を逸らしたな?」


【!?ど、どうして声しか

聞こえてないのにわかったんですか!?】


勘です。


(このクソ女…どうあがいても俺を実験動物にしたいようだなぁ…)


だがキレるな、落ち着け。


悪辣なサービスを受けると、ついこちらも感情的に怒ってしまうものだ。

しかしそんな時ほど怒ってはいけない。


『わたしは善良な市民ですよー』と周りに伝わるように、

紳士な対応で言うことが肝心なのだ。


俺は真摯な態度で説得を試みる。


「……女神さん。ふざけるのは勘弁してくれ。

俺はこの後、あの悪魔たちと対決しないといけないんだよ。

俺の行動には、人の命がかかってるんだ。」


【うっ】


「ここでもし、俺が大した力も得られなかったらどうなるか…

何もできずに死んでしまったら、一体何人死ぬことになるか……。

それだけは絶対に避けなくちゃいけないんだよ。」


【うっ……】


「頼むよ女神さん。

……いや、どうかお願いいたします、女神様。

どうか私に、スキル以外のお力をお貸しください、

わたしに人を救う力を授けてください。」


わざと敬語に切り替える。

プロクレーマータケツの、タケツ式クレーム術の1つである。


今まで神様にすら乱暴だった俺の口調を突然敬語に変えることで、

より真摯さが際立つのである。


「お願いします…。」


姿の見えない相手に対して、俺は深々と頭を下げた。


【……】


『め、女神様…タケツ様の言う通りだと思います…』


さすがの幼女も俺に味方してくれているようである。


【……】

刹那の葛藤。そして

【……そうですね。

ごめんなさい。タケツ様の言う通りですね。

わかりました】


改まって女神は告げる。


【先ほどの質問にお答えします。

スキル以外にも、授けられるものは実はあります】



✳︎



(やっぱあるじゃねーか。はや教えろやクソキチ女神)

手のひらを変えて、心の中で女神に愚痴をペッペッと飛ばす。


「それは一体…?」


女神は粛々とその名を告げる。


【神剣です。

はるか昔、神魔入り乱れる乱世に勇者がふるったと言われる伝説の剣です】


【……その名を

"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"

と言います】



……!!!

エタ…ブレ?え?

エターナ…なんて?



【"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"】


(だ、だ、だだだだ……)


だ、だせえええええええええええええ!!!

よく真顔でそのダサいの名前言えますねえ?!

なんか聞いてて赤面しちゃうくらいにダサいよ!?


笑いをこらえる俺とは対照的に、

幼女はその名を聞くと、血相を変えて声を荒げる。


『!?め、女神様本気ですか!?

あの、

"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"

をついに解き放つんですか!?!?』


【……仕方のないことです。これしか術がないんだもの。

"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"

を授けるしかありません】


『で、ですが"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"を人の世界に降ろすのは……』


【必要なことなのです…

それに"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"もそれが本望でしょう。


飾られた伝説が、今この瞬間に生きる伝説に変わるのです。

"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"をタケツ様に授けましょう】



お前らよく噛まずにペラペラと言えるなぁ?!

なげえなげえ、会話が無駄に長く聞こえるわその名前!



「そんで?その剣っていうのは…」


【"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"】


「……その剣っていうのは」


『"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"、ですよ』



お、推すなぁ……。



「エタ〜……フォー剣はどこにあるんだ?」


【"エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー"


その名を高々と叫べばどこからでも飛んでくる正義の剣です。】



「飛んでくる…?

飛んでくるってどういうこと?」


【文字通りの意味です。

まぁ、実際にやってみればわかるでしょう。】


【"コール : mvコマンド!"

エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバー】



謎の言葉とともに、俺の目の前にやまらビカビカした剣が現れる。


「こ、これがエタ〜……剣。」


『違います。

エターナルブレイブブレードオブネクストセンチュリー・フォーエバーです。』


お、推すなぁ…。



【この剣を呼ぶには、

剣に主人と認めさせる必要があります。】


「どうやって認めさせればいいんだ?」


【その剣を持って、この部屋から出るだけで良いです】


「……えらい簡単だな」


伝説の剣とか言ってたから、

もっとめんどくさい手続きがあると思ってた。


【この部屋はそういう場所なのです。

ここから持ち帰ったものは、すべて自分のものにすることができるんですよ】


【ここは"マヨヒガ"。

彷徨い入った人に、神の祝福を授ける場所なんです】



「あ、そういうのは別にどうでもいいや」


【……】



とにかく持って帰ればいいんだな。

ようやくまともなものを手に入れられたわー。よかったー



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