第34話 謎スキルの真相 #3
2019/07/04 誤字修正しました
【さて!それでは本題に移りましょう♬】
怨念のこもった声色から打って変わって
女神は急に明るい調子で喋り出す。
(謝ったり急に元気になったり、死んだ目で恨みつらみいってきたり……
情緒不安定すぎんか?この女…
ふ、ふつうに怖いんですけどぉぉ……)
地雷女臭やべええええ……は、はやくかえりたいよぉぉぉ……
【先程お話しした通り、スキルをお渡しします♬】
ですが、と前置きして女神は話を続ける。
【その前に、スキル授与式でタケツ様に注いだ神力を取り除く必要があるんです。
よろしいですか?】
「あん?それは別に構わんが」
【ありがとうございます♬
それじゃあサナ、お願い】
そういうと、幼女…もといサナは俺に何やら黒い魔法具を取り付け始める。
「……なにこれ?」
【これはタケツ様に埋め込まれている神力を判定し分析する機械です。
これを使って、タケツ様の神力を分析したいと思います。】
「ほーん…」
【ついでにこれで、"わからん"のスキルの調査も行いますよん♬】
そうですかよん…。
女神のよくわからないテンションにげんなりにしながら、
俺の手首足首に黒い腕輪をつけられる。
手足を軽く動かすが、特に痛みなどはない。
【数分ほどお時間がかかるので、少しお待ちくださいね〜】
「了解だ」
そして沈黙。
地雷臭女と会話する気力は俺にはない。
目を閉じて何事かを考え込んでますアピールをした。
が、女神はそんなことお構いなしに話しかけてくる。
【タケツ様?タケツ様??
何かわたしに質問とかありませんか??
タケツ様の質問ならお答えしますよ??】
「あー……?そうだなぁ」
本音で聞きたい質問があるとすれば、
『俺タケツじゃないんだけど、お前らなんか勘違いしてない?』
『人違いは間違い無いとおもうが、
スキル授与式の時から俺のことを認識してたとなると
お前らの勘違いかなり根が深そうだな……。
お前らどこでどう俺をタケツだと勘違いするに至ったんだ?』
といったところだが、
前に言った通り、ここで " I am Notタケツ !!"
と、自白するのはあまりに旨味がない。
当然これは質問するつもりはない。
しかし、せっかくの申し出を断るのもなんだか気まずい。
全く興味はないが、「スキル」についてもう少し尋ねてみる。
「あー………スキルを与えるには
『神力』と『スキル』2つ必要とかなんとかいってたよな。」
【言ってましたね♬】
女神様。
音符マークがついてそうなその喋り方まじ鬱陶しいでございます。
大変鬱陶しくていらっしゃるのでお辞めいただけないでしょうか?
…と、思ったが口には出さない。
「神力とスキル、それぞれどういう役割で、
なにがどうちがうんだ?」
女神はうーんと考え込んでから答える。
【そうですねー。
ちなみに神力ってどんな物だと思いますー?】
あァ?!質問を質問で返すんじゃねえよ!!!
「いくつなの?」「えー?いくつに見えますー?」みたいな鬱陶しいオウム返しな会話マジでやめろ(怒)!!!
…と言いたい気持ちをグッとこらえて素直に答える。
「あー………そうだな。
タンクに溜まった水みたいな?
神のスキルを使うために必要なエネルギーのようなイメージだな。
よくわからんけど、魔力と同じようなもんなんだろ?」
【ブブー。はずれー】
……あ?なにそのノリ?
さっき謝ってた時のしおらしさどこに置いてきたの?
思わずグーになりかける拳を、努めてパーに開いていく。
【正解は………】
【exeファイルに添えられたiniファイルのようなもの!でしたー!
わかりましたか??】
全然わかんねーよ!!!
わかりやすい言葉で説明してくれ!!!
【えー?わからないですか??
そうですねー……例えるなら……。】
女神は1つ間をおいてから答える。
【ここに、呪文の書かれたメモ帳があるとしましょう。
このメモ帳は、読めば呪文が発動しますが、
読まなければ、ただ文字が書かれたメモにすぎません。】
【神力は、この例えで言う所のメモ帳なんです。
スキルの詳しい実装内容が書かれているのですが、
それ単体ではなにも意味をなさないのです】
女神は説明する。
「へぇ」
へぇ、以上の感想は特にない。
早くこのキチ女とのトークタイムおわんねーかなーと黒い腕輪を見ながら祈っていた。
【他に質問あります??あります??
答えちゃいますよ♬】
相変わらずの音符テンションである。
こいつのテンションがクレッシェンドに上がれば上がるほど、
俺の気持ちはデクレッシェンド、そして最後はフェルマータ。
(めんどくサァ…質問なんてもうねーよ興味ねえ…)
魔法ならまだしも、神の領分の話だろ?それ。
俺が知っても絶対にメリットねーじゃん。
……と思いながらも、
恵んでもらう立場なのでそんなことは思っても言えない。
仕方なしに再び質問を投げる。
「……その例えでいうと、
呪文を使うにはメモ帳を読みあげないと使えないわけだ。
となると、メモ帳を読み上げる機能こそが、
「スキル」に該当するわけか?」
【ご名答です!さすがタケツ様ですね!!】
やったー。じゃあもう解説タイムはもういいですわ。
ありがとうございました。
【具体例をだすとですね。
炎の壁を生み出すスキルを持った人は、
炎を作り出す機能としての「スキル」と、
それを物理世界に顕現させる機能としての「スキル」を持っています。
そして同時に、
どんな形でどれくらいの温度の炎の壁を、
どこにどんなふうに顕現させるか定義づける「神力」というメモ帳も、
術者は持ってるわけですね。】
【神力、って名前のイメージからはわかりづらいですけど、
要は、「スキル」という機能を実際にどう扱うかが記されているものが、
神力というわけですね!】
わかったわかった。
それじゃあ質問タイムはこのくらいでいいわ。
【なんでも答えちゃいますよ〜?♬♬】
どこまでも欲しがりやがるこの女神……。
(……)
俺は動物園のゴリラの飼育員…。
俺は動物園のゴリラの飼育員…。
餌のリンゴをバケツから無造作に投げるくらいの気持ちで
再び適当に質問を投げてやる。
「あー……この腕輪は、神力を判断する装置だとか言ってたよな。
たぶんこの腕輪は、俺の中にあるメモ帳とやらを見て、
どんな内容が書かれているか調べてるんだと思うんだ。」
【そうですね!あってます♬】
「そもそもこれはなんのためにやってるんだ?
新しくスキルを渡すだけなら、
そのメモ帳とやらの一番下に
新しいスキルの内容を追加すりゃいいだけなんじゃないのか?」
そして一番下にさっさと追加して、
さっさとこの時間終わらせてくれ。
【いえいえ!そうはいきませんよ!
今タケツ様のメモ帳には、不要なスキルの内容がたくさん書き込まれている状態です!
ちなみにその不要な神力こそが、
タケツ様の後ろにいた男に奪われたスキルの神力ですね!
ですが、肝心のスキルはあの男に奪われているので、
この神力に書かれている内容は実行できません!
要らない神力の記載があったままでは、予期せぬ不具合や
スキルの動作の遅延につながります!
どこに何が書かれているかしっかり調べて削除しないと!】
なげえなげえ!話がなげえよ!
「もうめんどくさいからメモ帳全部削除でいいっすわぁ…」
そして早く俺を解放してくれぇ…
【それをやると消しちゃいけないものも
消えちゃいますよ?いいんですか?】
「…?今の俺のメモ帳って、
使えない記載しか載ってないんだろ?」
【いいえ?人というのは生まれた時から
実は神のスキルを持ってるんですよ。
知性、理性、発話、学習能力などなど…。
人間として当たり前に持ってる能力は、
神から与えられたスキルなんです】
【タケツ様のメモ帳真っ白にしたら、
タケツ様が廃人になりますけど大丈夫でしたか?】
「大丈夫なわけねーだろ。」
しょうもない会話で時間を浪費していたそんな時である。
PiPiPiPi……
黒い腕輪が赤い光を発しながらピピと音がなった。




