表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第3章 神界へようこそ!
38/120

第33話 謎スキルの真相 #2

【まずは謝罪をしなければなりません。

申し訳ありませんでした、タケツ様】


開口早々、女神は俺に謝罪した。


【死神アリルの洗礼式……いえ、そちらでは

スキル授与式と呼ぶのでしたね。


タケツ様がスキル授与式を受けていた時、

実はとある"不手際"がありました……。】



さらりと女神は我らが王国の主神を「死神」と言ってのける。

王国民としてはそっちの方も気になって仕方ないが

話の腰を折りたくないのでスルーする。



【私たちはスキル授与式を利用して、

タケツ様に特別なスキルを授けようと考えていました。


ですがあのとき……じ、実は裏で想定外の出来事が起きておりましてですね】


言いにくそうに女神は言い淀む。


【覚えていらっしゃいますか?

タケツ様の儀式のときに水晶が割れてしまったことを】



あー?あー…そういえば割れてたな。

俺の時だけ水晶が古いせいにされてたけど。



【私たちは水晶を通して、タケツ様にふさわしい

特別なスキルを転送しようとしました。


ですが、転送の途中で水晶が割れてしまったようでして…】



「……その場合はどうなるんだ?

中途半端にスキルが入ってる感じ?」


【……結論から言えばですね、

タケツ様は神力はお持ちの状態なんですが、

スキルは一つもお持ちではありません。】



神力?スキル?

つ、つまりどういうことだってばよ。



【神のスキルを人に与えるには手順があります。


まずそのスキルを扱うための「神力」と呼ばれるものを植え付けて、


そしてその後に、能力の本体である「スキル」を与えるのです】


女神は説明を続ける。


【私たちは水晶を通してタケツ様の中に神力を注ぎ込んでおりました。

ですがその途中で……】



「……その途中で、割れてしまったと」



【はい……。神力のほうはしっかり注いだのですが、

肝心のスキルを転送する前に水晶が割れてしまいました。


なのでタケツ様は、

厳密に言えば今スキルを持っていない状態なんです……。ごめんなさい】


ふむ。


「俺がスキルを持ってないのはわかった。

だが、スキルが無い状態なのに、

"わからん"って言われたのはどういうわけなんだ?

俺はてっきりわからんってスキルがあるんだと思っていたが」



女神は少しの沈黙の後、これまた言いづらそーに答える。


【……今のタケツ様は、神力はあるのにスキルがない不可思議な状態です。

なので、水晶が正常な診断ができずに、「わからん」と言った…


……のかも?】


かも?って、おい


【しょ、正直よくわからないんです!

ご、ごめんなさい!!!】


は、はぁーー……?


【正直に言えば、

今タケツ様の身になにが起きているか把握しきれていないんです!


わからんなんてスキルあるはずがないし、

そもそもタケツ様の中には神のスキルは入っていないはずだし……


い、一体何が起きてるのかさっぱりわかりません!

ごめんなさいごめんなさい!】


……話が違うなぁ、おい。

俺のスキルの正体教えてくれるんじゃなかったのか?


チラリと幼女を睨むが、素知らぬ顔でフーフーとならない口笛を吹いているのが見えた。



【じゅ、十中八九、水晶の不具合が原因だとは思うのですが!

あ、あとで調べるお時間をいただいてもいいですか?】



「それは構わんが…」



女神は申し訳なさそうに話を続ける。


【本当に何から何まですみませんでしたタケツ様……申し訳ありません……】



謝りに謝りまくる女神さん。

女神にここまで謝られると逆に恐縮してしまう。

俺は気にしてない風で言葉を返した。



「いやいや、謝らなくてもいいよ。俺はもらう立場なわけだしな。


それに、結果的にこうして

その時のスキルを受け取ることができるわけだし、なにも問題は…」


【え?あっ、いやー?】


「あん?」


【あの、は、話せば長くなるんですけれどね?】


な、なんだ?口調がいいわけがましくなってきたぞ…?


【水晶が別のものに取り替えられた後、

私たちはすぐにその新しい水晶にスキルを転送したんです!


タケツ様がもう一度儀式を受けるものだと思っていたので!】


女神様は開き直った心境なのか知らないが、大声で言い訳しだす。


【で、ですが!……あ、あのー…

タケツ様はもう一度儀式を受けることなく、そのまま終えられましたよね??


タケツ様、水晶が割れた後にもう一度儀式を受けましたか??】


「……そういえば受けてねーな」



受けていない。

よくよく考えるとこれはおかしかった。


アリアの時は水晶が割れた後に

新しい水晶でもう一度儀式を受けていたが、

俺の時だけはさらっと流され、受けさせてもらえなかった。




【結論から言えばですね!】


一呼吸置いてから、女神は答える。


【タケツ様が2度目の儀式を受けなかったせいで、

渡すはずだったスキルはタケツ様の後ろの人に渡されてしまったんですよね!あはは】


後ろの人?

え?いやまてまて。


【タケツ様を後ろからグイグイ押していた人を覚えていますか?】


い、いたようないなかったような。


【本来なら、神官さんもマニュアルに従って2度目の儀式を行っていたはずなんです!


なのにあの後ろの人、タケツ様に2度目の儀式が行われないように

細工をしていたみたいなんですよ!


わざわざ精神魔法を使って、神官さんの言葉をコントロールして、

タケツ様の番を早く終わらせるように細工してたみたいで!許せませんよね!あはは!】



え、えぇ!?後ろからグイグイ押してたあのモブ野郎が!?


顔も声も何も覚えてないが、裏でそんな思惑があったの!?

し、しかも全部わかってたとか後ろのやつ何者なんだよ!?


【あ、あははは】


いや笑い事じゃねーだろ!


【ま、まぁまぁ!

あの時渡すはずだったスキルはもう渡せませんが、


タケツ様が先ほどおっしゃった通り、

今こうしてスキルを与えられるわけですからね!

万事解決ですね!】



い、いいのか…?

つまり、女神のとんでもないスキルを誰かもわからんやつに授けちゃったわけだろ?

それはとても危険なのでは??



「……俺の後ろにいたやつは今何やってるんだ?」


【……まぁ、まぁ。その辺りはね。追い追いですね、はい。】


言い訳をする政治家の秘書のような口調に変わる女神。


しかし、誤魔化すように笑っていた女神だったが、

急に声色を変えてボソリと呟く。


【まぁ、心配しなくとも大丈夫です。】


【あの者は全てを察した上で、私たちを謀りました。】


【必ず、抹殺します】


【絶対に殺します】


【神の面子にかけて、殺しますから】


【許すわけにはいきません。子孫共々殺します】


【絶対に…絶対に…コロ…コ…コロ…】


セリフに従って徐々に声のトーンを下げていく女神…

もはや後ろの方のセリフは聞こえない。


(こ、こわぁぁぁ!!!何その感情の落差なにその緩急!!!)


女神のテンションの上がり下がりの激しさに、俺は一人恐怖していたのであった……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ