第27話 結界 #2
見えない壁は壊された。
私は町に現状を伝えに、アリア様はタケシを助けに向かう。
「……あ、そうだ。ごめん、ちょっとまってオリビア。
行く前に、前にあげたブローチ貸してもらえる?」
(ブローチ?)
あ。私が壊した…も、もとい、白く光り輝く懐中電灯にしてしまったブローチのことだ。
「多分だけど、あのブローチまともに動かなかったんじゃない?」
(は、はい。白く光ってるだけでした)
「想定外に大きな魔力で魔術が発動しちゃうと
爆発したり、おかしな動作して魔法具が壊れるのよね。
だから、そういう時は処理をスキップするような仕組みを魔術回路に埋め込んでるの。
まぁ安全装置みたいなものね。」
取り出したブローチをアリア様はしげしげと観察する。
「うんやっぱり。
オリビアの魔力を吸い取りすぎて、キャパを超えたせいで安全装置にロックがかかっちゃってるみたいね」
アリア様は白く激しく輝くブローチを受け取ると
代わりに別のブローチを渡してくれる。
「こっちの方は改良版よ!
効果は変わらないけど、込められてる魔力を一部切り取りながら
発動するようになってるから、おかしな動作はもうしないはず!使ってみてね」
(あ、ありがとうございます!)
前にもらったものよりも色々と装飾がされているブローチだった。
た、たかそう…。
「それは前の安い水晶と違って、本当に高価なやつだから大事にしてね」
(えっ!)
き、貴族様が高価というからには本当に相当高いのでは……!?
わ、わたしなんかがもらっていいんだろうか。
(わ、わたしなんかが貰っていいんですか…?)
「?当たり前じゃない。
大切な友達を守るためだもの。あと、もしも壊しても別にきにしなくていいからね」
……。
「あぁ、あと、話は変わるけど
前にもいった通り、私に敬語なんて使わなくていいわ!
タメ口でいいわよ。同い年なんだから」
(は、はい)
「……?オリビアの村では「はい」って敬語じゃないの?」
(あ、いえ)
ニコニコと笑うアリア様に、私はすこし照れながら答える。
(わ、わかりました。アリアちゃん)
えっ、それも敬語よね?と言われたが、
恐れ多すぎてちゃん付けが精一杯だった。
「……まぁ、今はそれでいいわ。
それじゃ、私はこれから礼拝堂に……んっ!?」
そんな時だった。
アリア様は急に上を見上げたかと思うと、
突如突き飛ばすように私の胸を押し出したのだ。
タケシに押された時のことが頭にリフレインされながら、私は後ろに倒れてしまう。
(えっ!?……いたっ!ど、どうしたんですか?いきなり)
私はアリア様に念話を飛ばした。
しかし、返事は帰ってこない。
「……!……!ー!!」
アリア様が口をパクパクさせながら何かを喋っている。
アリア様はパントマイムのように、目の前の空気を手で叩いていた。
……?私も壁に手を伸ばしてみる。
【バリンッ!】
(え!?)
う、うそ?!壁がまた復活してる!?
壊したはずの壁が再び復活してしまったのだ!
「!……!……!」
アリア様は礼拝堂の方角を指差す。
すぐに意図を察して、私は町を指差す。
壁を壊せる魔力をもっていても、私一人じゃコントロールできない。
なら今はそれぞれの役割を果たすしかない。
以心伝心。
言葉も交わさずに私たちは同じ結論に達する。
顔を見合わせ頷くと、私たちはそれぞれに走り出した。




