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第22話 絶望の淵 #2

礼拝堂にいる悪魔は全員で7体。


頭が破裂した奴を差し引けば、あのとき礼拝堂に

残っていたイマチュアデビル全員がそのまま成長したようだ。


『Gya…』

『Gya…』


……それにしてもなんかやけに小さいんだよなこいつら。


最初俺たちを襲ったティタノデビルに比べてかなり小柄である。

まぁ、問題ないか。むしろ小さくなった分、楽になったんじゃね?


……と、いうことでさっそく。


「そろそろやるか」


(なにを?)


「さっき言っただろゥ?」

俺は自称ニヒルな笑顔を貼り付け宣った。


「俺がかっこよく魔法で敵を倒してやるんだぜ!!」


タケシ伝説、今ここに爆誕せり…!

オリビア、お前は歴史の目撃者となるんだ。

もっとテンション上げてかないと見逃すぞ?

この伝説の幕開けをな……!!!


(さっきいってたの本気だったんだ……)

うんざりしてるような目でこちらをみるオリビア。


な、何とノリの悪い奴だッ……。

ふん。まぁいい。未だに何かを言おうとしているオリビアを遮るように、

俺は有無も言わさぬうちに行動に移してしまう。


(……え?ちょっ、タケシ?ほ、ほんきなの!?)


オリビアが止めるのも聞かずに、

思いっきり息を吸い込み、そして全力で叫んだ!



「我が名はタケシー!東の村よりこの地へやってきたー!

そなたたちは人に害なす悪魔達であるかーー!!」



『Gya…?』

『Gyagya?』


よしよし。悪魔どもめ。一斉にこっちに気づいたみたいだな。

俺は一歩前に出て、堂々と声を張る!



「サメに話が通じるとは思わないが、俺は寛大だ!

同じ哺乳類として最後の情けをかけてやろう!

今ここで素直に引くのなら見逃してやる!


さぁ、退け!下等悪魔ども!さもなくばフカヒレ饅頭にでもしてくれようぞ!」


言葉通じるか知らんけど適当に挑発してみる。



(サメは魚類だよ)

『Gyaaaa!!!!』

(ヒェッ…)


『Gyaaaa!!!!』

(…イ、イルカとは違うってしってた?)

『Gyaaaa!!!!』


『Gyaaaa!!!!』

(ヒェェッ……)

『Gyaaaa!!!!』



お?こいつら言葉通じんのか?なんかギャーギャー怒り始めた。

今にも攻撃しそうなほどに気が荒立っている様子だ。


ビビりながら律儀につっこむオリビアを華麗にスルーして、

俺は再び威厳ありげに偉そうな口上を述べる!



「ほう。俺に仇なすつもりか?

なんと癪に障る鮫どもだ!」


(しゃく…シャーク?!サ、サメだけに!?)


「よし、いいだろう!

ならばよく狙いを定めて攻撃するんだな!

悔いの残らぬようによーく狙え!貴様らの攻撃など朝飯前だ!」


(あサメしまえ……!!!)


オリビアうるせえよ!?

俺を激さむオヤジギャグ野郎に陥れるんじゃねえよ?!

というかビビるかつっこむかどっちかにしろ!



俺は誰に向けるでもなく小さく咳払いをし、

気分を改めサメ頭どもに向き直る!


「さぁ、やってみろ!俺が怖くないのなら打ってみろ!!」


最後の駄目押し!俺はサメどもを煽りに煽る!

そしていよいよ、悪魔達は口に紫色の光をじわじわと貯めだし、そして……!!


『Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』


咆哮。

ツッコミばかりしてふざけていたオリビアも、

さすがのこの咆哮には腰を抜かす。


礼拝堂全体を揺るがさんばかりの咆哮のあと、

悪魔達はいざ攻撃せんと口を閉じた!

そして口を開き、今まさに攻撃を始めようとしたその瞬間……!


俺はすかさず適当に意味ありげな呪文を叫んだのだ!



「ちゅるぽん!ぽぽんぽーん!おうまさんハイヨー!」



俺の謎の雄叫びが礼拝堂に響き渡る!

そしてその直後!


【ぽんっ】


間の抜けた破裂音……!!

弾けた音ともに、一斉に悪魔達が弾け飛んだのだ!


『……!?……?』


何が起きたのかわからない様子の悪魔達。

訳もわからず、ばたりばたりとドミノのように倒れていく!



(ひゅううううう!オリビアよくやったあああああ!!!)



側から見た俺は、まるで魔法で敵を打ち倒したようにみえることだろう!!


(神官ジジイどもちゃんと見てるかぁ!?

上にはしっかり報告しとけよぉ!!!!)


俺のテンションうなぎ登りである!

案の定、連中は横並びで景気良くポンポン弾けていく!

楽勝やんけえええええええええ


実にあっけない!強そうな悪魔もこの程度か!


俺は勝利を確信した!

なんなら、頭の中で王国に今回の件を表彰されて、

王国のお姫様に見初められて王になるところまで

妄想は進んでいた!


このまま景気良く花火打ち上げて、王国からのイメージアップ!

そして出征街道駆け上るぜえええええええええ!!



『確定的な勝利』

『体験したことのない万能感』

『上から弱者を見下ろす愉悦』


……この時、俺はこの状況に完全に酔っていた。

勝利は揺るがないと確信していた。


『勝利を確信した時、そいつはもう負けている』

よく爺ちゃんがそんな言葉を口にしていた。


『うちの血筋はすぐに調子に乗って失敗する。

お前も心に刻んでおけよ』

そんな爺ちゃんの言葉は右から左へ流れていく。


慢心。

まさしく慢心。


オリビアの力をまるで自分のもののように思い込んで調子に乗って、

俺は完全に周りが見えなくなってしまっていた。



———そのしっぺ返しは、すぐに返ってくることとなる。


『……その分体格は小さくなってしまったが』


「あん?」


『攻撃力を減らして回復にエネルギーを回したのは正解だったようだな』


礼拝堂に上から響いてくる男の声。

どこかで聞いたことのある声に、俺は上を見上げた。


慢心は己を殺す。慢心は警戒心すら鈍らせる。

どこからともなく空から"降ってきた"男の存在に、俺は直前になるまで

気づくこともできなかった。


『魔神の名において命ず。

復元せよ。さらば蘇らん。

魂の記録を借り受ける

【リバイバ・ログ】』



少しでも続きが気になったり、

良いなと思ったら作者ほんと大喜びです。

喜び勇んで自分で絵も描き始めちゃうくらいに喜びます。


作者を救ってやろうと思った方は

是非ポイントかブクマ登録を何卒よろしくお願いします。


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