第19話 唯一の対抗手段 #1
気まずい空気だろうと何だろうと作業は続く。
そんな時である。
「おっ?」
な、なんだこれ……??
俺は不可思議なものを発見した。
「オリビア、オリビア。ちょっとおいで」
(うん)
トットットッ
「なんか変なのみつけたわ」
(どれ?)
俺は拳大程度の石を見せる。
(?ただの黒い石じゃない?)
「いや、黒じゃないよ。よく見て見な」
(…あっ)
オリビアもすぐに気づく。
そう。この石はよく見ると黒ではない。
とてもとても小さな文字のようなものが
ビッシリと塗りつぶすように書き込まれているのだ。
「なんか気持ち悪いよな、これ」
(そうだね…見てて不安になる感じ……。
なんか嫌なオーラを感じる)
オーラを感じるゥ?
え?オリビアさんってそういうの信じちゃう方なんですかぁ?
…と、いつもの俺なら煽りかねないセリフだが、
実際俺も言いようのない不穏な何かを感じていた。
一体なんなんだこの石は。
「あと、この文字って古代文字に似てるよな」
(そう?)
「ここと、ここと、こことかさ。
あの古代文字の書いてたところと記載が同じなんだよ。
たぶんこの部分は古代文字が起動するための処理とか、
古代文字には必ず共通する処理の部分なんじゃねーかな」
(……教会の壁にかかれてた古代文字の内容全部覚えてるの?)
「え?うん」
(あの複雑な絵みたいなやつを?)
「まぁ」
(……)
なんだよその沈黙
(さっき神官さんたちに指示出してる時も思ったけど…)
オリビアはつづける
(タケシってもしかしてただのアホじゃないの……?)
え?喧嘩売ってる?
「え?喧嘩売ってる??」
思ってることがそのまま口から突き抜ける。
(?売ってないよ?
……あっ、も、もしかしてまた気分悪くさせることいった…?ご、ごめん)
「ええい、めんどくせえ!
突然メンヘラるんじゃないよ!」
(うぅ…わたしメンヘラじゃないもん…)
こいつ微妙に毒舌なところあるけど素で言ってるんだろうか…。
メンヘラ女は置いておいて、俺は観察をつづける。
「古代文字が書かれてるってことは、
なにかしらの魔法なんだろうな。でもそれ以上のことはさっぱりわからんわ」
(これのせいで悪魔は爆発したのかな?)
「……わからん。
わからんし、こんな直感的なことは言いたくないけど、
この気味の悪さは、あの悪魔にすごく似てる気がするんだよな。」
この石からは、あの悪魔に味方する光景しかイメージができない
(うん。そうだね。私もそう思う。)
オリビアは同意して頷く。
(この石が悪魔を生み出してたとか、
強化してたって言ってもわたし驚かないと思う)
同意するように俺は頷く。
それくらいに、露骨なくらい邪悪な気配がする石だった。
早く壊した方がいい気がしてならない
オリビアは何かにピンと気がつくと、俺に質問を投げかけた。
(この石どの辺りにあったの?)
「ん?ステンドガラスの下あたりだな」
(……もしかして消えちゃった魔族の人が落ちたあたり?)
「あっ…そ、そうだわ、そのあたりだ!」
(もしかして魔族の人が落としたやつなのかなー…)
しげしげとオリビアは石を見つめる。
そう、"見つめる"。今、オリビアは特に何も
目立ったことはしていない。ただ見つめていた。
しかし異変は突然に起きた。
【ビキイッッ!】
「えっ」
(えっ)
オリビアがジッと見つめたその時、
石が何の予兆もなく、真っ二つに割れたのだ。
(あ、あれ?なんで??)
2つに割れてパタンと転がる石。
オリビアは割れた石を見ながら疑問符を浮かべている。
一方俺はというと、割れた石よりもオリビアの方を
しげしげと観察していた。
(ふむ。なんだろうな、この感じ)
頭の中でなにかが繋がりそうな、そんな予感がした。
頭の中に点在する点と点を結ぶように、
一つの結論が導き出さそうなそんな予感。
悪魔が爆発したその理由が
あと少しでわかるような、そんな気がするのだ。
「……もうちょっとだけ、探索してみようか」
(う、うん。そうだね)
・
・
・
・
(……アイタタ)
「ん?」
そんな折、地面に手をついて捜索していると、
オリビアがしきりに腰を押さえて痛がっているのが目に付いた。
「どうした?若年性ぎっくり腰持ちか?」
(ステンドガラスから地面に落ちた時に
腰打っちゃったみたいで……アイタタ)
「腰、さすろうか?」
(……タケシ。次セクハラ発言したら
もう2度とタケシと口聞かないからね……アイタタ……)
い、今のは割と真剣に純粋した結果なんだがっ!?
……一度セクハラすると信頼ってあっという間に壊れるんだなぁ…。
(タケシはなんで平気そうなの…?一緒に地面に落ちたよね?)
「ん?あぁ、タケシ家に伝わるタケシ式前回り受け身というものがあってな。
落ちる時、体を超高速回転することで浮力を生み出し、
地面との衝突を回避したのさ」
(……隣で見てたけど、
落ちた時、ビダーン!ってすごい音だして
地面に叩きつけられてたよ?)
はい、いま私すごいって思われたくて嘘つきましたーごめんなさいー
(落ちたあと、わたしタケシの方見るの怖かったもん。
絶対死んでるって思った、あの音)
……まぁぶっちゃけ俺自身も自覚がある。
怪我ひとつないのが不思議で仕方ない。
「あ」
俺はとある事をはたと思い出し、
服の内側にぶら下げていたブローチを取り出した。
「そういえば、アリアからブローチもらってたよな。
『一度だけある程度の衝撃から守ってくれる』とかいうブローチ」
目の前にブローチをぶら下げて見てみる。
はじめもらった時には赤く輝いていたブローチは、
今では透明のただの水晶に変わっていたのだ。
「ほら。なんか見るからに
魔力使い果たしましたー、って見た目に変わってるだろ?
魔法具って言ってたから、きっとこいつが守ってくれたんだわ」
……あれ?でもオリビアも同じものもらってたよな?
なんで守ってくれなかったんだ?
オリビアが首からぶら下げている同じブローチを取り出す。
(あ、あれ?!)
「え!?」
取り出されたブローチ。
形は全く同じだが、ある一点が明らかに俺のと異なっていたのだ。
「な、なんかものすごい白く光ってねーか?それ……?」
ブローチは白く白く強烈な光を発していたのだ。
もはや直視もできないくらいの光量である
うおっ、まぶしっ
(え?え???)
オリビアも流石に困惑している様子だった。
しかし俺はこの時、
先ほど感じていた直感がピタリと繋がったのを感じた。
この時まさしく点と点が繋がったのだ。
(さっきの天才っぷりといい…こいつまさか…?)
1つの確信めいたものが胸の内に芽生える。
しかしまだ憶測にすぎない。
この推測を事実にするには、
オリビアに一つ、確認しなければならないことがあった。
「……なぁオリビア、いきなり変な質問していいか?」
(?なに?)
「お前、スキル授与式に参加してたよな」
(そりゃね)
「んで、お前もスカウトされるくらいに
すごいスキルをゲットしたわけだ。」
(それは……)
「……いや、正確な言い方じゃないか。
すごいスキルなんだろうが、俺と同じ待遇ってことは
何かしらの問題がある、ってことだ」
(……)
「……なぁ、オリビア。
お前一体どんなスキルを神様から授かったんだ?」
少しでも続きが気になったり、良いなと思ったら作者ほんと大喜びです。喜び勇んで自分で絵も描き始めちゃうくらいに喜びます。
作者を救ってやろうと思った方は是非ポイントかブクマ登録を何卒よろしくお願いします。




