第14話 カウンター #1
オリビアがしれっと意思疎通できるようになりました!
「制圧完了よ!タケシ!」
「よし、よくやったアリア!」
(やっぱつえーわこいつ!)
こいつにだけは絶対逆らわないようにしよう!
俺は心の中で誓った!
上からアリアが大声を上げる。
「タケシー、それでこの後どうするー?」
「ん?あー、俺も上に行きたいんだがー!」
「どうぞー!早く来てー!」
「登れるかっ!俺はお前と違って
人間辞めてないんだよ!」
「?じゃあどうするの?」
「お ん ぶ し て く れ」
くそダサここに極まれり。
女の背にまたがる俺、最高にダサい。
しかし状況も状況だ…仕方ないのである。
「オリビア。お前から先に……あれ?」
あれ?さっきまでいたオリビアがいない!?
ま、まさか敵に襲われたんじゃ?!
「え?オリビアならもう上に登ってるわよ?ほら」
……オリビアは元気よくぴょんぴょん跳ねて、
数メートル上にある踊り場にジャンプしていた。
「……」
「さ、早く乗って」
「はい…」
俺1人だけおんぶされながら、
ステンドガラスの踊り場に向かった……。
・・・・
・・・
・・
・
「たかっ!」
ひとっ飛びで踊り場に到着する。
数メートルかと思っていたが、思いのほか高くてびびる。
「足元、エルダーデビルが転がってるから気をつけてね」
「ヒェェ…」
足元には羊の角に、真っ黒の体毛をした二足歩行の生物が転がっている……
こいつが例の椅子を引きずったような音で喋っていたやつか…。
それから俺はチラッと外に落下した男も見てみる。
う、うわぁ…口にナイフ刺さってるよヒェェェッ……
「ヒ、ヒェェ……」
「気をつけてね。たぶんその人まだ
死んでないと思うから」
「えっ!」
そう言って、アリアは懐から再びダガーを取り出すと、
外に倒れている男めがけて手足に4本ダガーを投擲した。
「えい」
大の字に倒れる男の手足にグサッと刺さる
……みててめちゃくちゃグロい。
「まだ生きてるから注意してね。
この人たぶん魔族が人に化けてると思うから。」
「これでもまだ死んでないのかよ……。
というか魔族?さっきもそんなこと言ってたな
このおっさん人間じゃないのか?」
「人間なわけないじゃない。
人間なら一本目のダガーが心臓に刺さった時点で即死よ。」
「た、たしかに…」
そういえば、この男は
心臓が刺されても平気にしているようなやつだった。
男は口、胸、手足の計6本にダガーが突き刺さってるが、
それでもまだピクピクしているし。
……人間の生命力ではない。
「2本目以降は全部聖水を染み込ませたダガーなの。
魔族は聖水が弱点なのよね。
逆に言えば、聖水が効いて、体が丈夫、
ついでに見た目が人間に見てるなら、大概は魔族だわ。
あとこのひと召喚魔法も使ってたしね」
「ふーん……トドメはささないのか?
なんかまだピクピクいってるみたいなんだが…」
「……私じゃトドメはさせないの。
"本職"の人じゃないと。」
本職??
「まぁ、当分は大丈夫なはずよ!
あれだけ聖水のダガーを刺せば
当分身動きはとれないはずだわ!ね、それよりも」
アリアが袖をぐいぐい引っ張る。
「タケシ。ちょっとこっち来てみて?」
「ん?……うおっ」
アリアに促されて踊り場から下を覗き込む。
そして俺は驚愕した。
「け、煙がさっぱり無くなってないか?」
「そう、そうなの!」
地上にいた時は煙が充満していてなにも見えなかった。
しかし、上から見た地上は煙ひとつないクリアな景色なのだ。
地上が晴れやかに見渡せる……煙はどこにいったんだ??
「さっきの魔族を倒したおかげで煙消えたのかな?」
うーん?
でも遠くの方にいる神官たちを見ると、
煙が見えているのか慌てふためいたままみたいだ。
見えないだけで煙は未だに存在しているらしい。
「神官たちの方みてみろ。
下の人たちには煙がまだ見えてるみたいだぞ」
「あ、ほんとだ」
「……事実だけ並べるなら、
下から見ると煙が見えて、
上から見ると煙は見えない。
そういう特別な煙なんだろうな。わからんけど」
魔法なのかそれとも別の何かなのか……
原理はともかくとして、
チラリとそばに転がっている悪魔の亡骸を見ながら
俺は敵方の思惑を把握する。
(こいつら上から指示を出して
攻撃するつもりでいやがったな?)
そこの足元で転がってる悪魔は司令塔なのだろう。
上から戦況を俯瞰して、煙の中に紛れ込んでいる悪魔達に
指示を送る役割に違いない。
そういうことなら、やることは一つである。
(……この煙を利用しない手は他にないな。)
敵の作戦を逆に利用してやる。
思い立ったが吉日、俺はアリアに相談を持ちかける。
「アリア。この前俺に使った念話って、
他の奴にも使えるか?」
「半径100mくらいなら繋げるわね。
だれにつなぐ?」
「よし。それじゃあ
あの若い神官に繋いでくれ。いけそうか?」
「おっけー!」
理由も聞かずに素直に従ってくれる。
説明の手間が省けて非常に助かる。
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「タケシ!繋がったわ!」
「お、仕事はえーな。ありがとう!」
「えへへ」
いいことをしたら褒める。
それがブリーダーの基本である。
(ペットのブルドッグを見つめる眼差し)
「頭の中で語りかければいいのか?」
「うん。さっきと同じ要領で話しかけてみてー!」
了解。俺は頭の中で言葉を思い浮かべる。
(もしもし?俺です。タケシです。
俺の声聞こえますか?)
(……)
(あ、もしも聞こえてるなら
えーっと…「バイディレク」?って心の中で唱えてください!)
【PiPiPi】
聞いたことのある音ともに、声が聞こえてきた。
(うん。聞こえるよ)
(よかった!それでですね、
今私たち上のステンドガラスにいるんですけど)
(知ってるよ?)
(……ん?)
(?なに?)
(あ、あれ?誰だお前!?)
よく聞いたら全然知らない声だ!だれおまえ!?
(?わたしはオリビア)
(あ、オリビアねー!はいはい!)
…って違う人に繋がってるやないかーい☆(カチ-ン)
ていうか君そんな声だったの?!かわいいね!!(キレ気味)
「って、おいアリア!なんか混線してるんだけど!」
「あ、あれー??なんでだろ?
んんん……よし。もっかいやってみて?」
気を取り直してもう一度。
俺は頭の中に言葉を浮かべる。
(もしもーし、聞こえますかータケシでーす)
(オリビアでーす)
(……。)
(……。)
「アリア様?」
「んんんーー?!?!
念波がみんなオリビアちゃんの方に向かっていっちゃうみたい??
出力あげてみるからちょっと待ってね」
むむむ、とアリアが唸っている間
暇なのでオリビアに話しかけてみる。
(お前そんな声だったんだな)
(お前じゃなくてオリビア)
(あぁ、すまんすまん。オリビアね。
オリビアちゃーん聞こえますかー)
(聞こえます。タケシちゃん聞こえますかー)
(ちゃ、ちゃんづけはやめてくれ…)
無口娘の声が新鮮で
ついポンポン話しかける。
(可愛い声してんじゃん。もっと喋りゃいいのに)
(……)
(ん?あれ?接続きれたのか?おーい)
(……)
(おい無視すんな!おい!)
(……そんなナンパ男みたいなこと気軽に言わない方がいいと思うよ?)
(あっ。はいすんません)
・・・
・・
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