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第13話 アリアの実力

初戦闘です。アリアさんパねえです




アリアは3本の投擲用のダガーを取り出した。

よく手入れが行き届いてるのか、剣は鋭く光を反射する。


(それじゃ、始めるわね)

そしていよいよ戦闘が始まった。


1本目。アリアはダガーを投擲する。


地上から真上に真っ直ぐ放たれるダガー。

しかし、魔法でもかかっているのか、

ダガーは不規則に軌道を変えながら飛んでいった。


その様は、さながら上から見るビリヤード。

見えない壁にぶつかって反射するように、

カクカクカク…とダガーは軌道を変えて進んでいく。


(…1本目のダガーはフェイント用かな?)

ダガーの軌道をみて、俺はすぐにアリアの意図を察した。


ただ真っ直ぐ飛ばしたのでは、

下に自分たちがいることがすぐにバレてしまう。

だから、軌道を変えることで俺たちの場所を隠そうとしているのだ。


それからダガーは俺たちのいる位置とは反対側へと移動し、

そして、地面スレスレでピタリと一時停止した。



そして————静寂。

ダガーは空中に固定されてしまったように、

音も動きもなく、静かに止まっている。


その光景はまるで、ダガーが放たれた瞬間に

あそこだけ時が止まってしまったような、

そんな錯覚すら覚える不思議な光景だった。


日の光に反射する埃だけが、ダガーの周りを静かに舞っていた。




✳︎


ピタリと止まるダガーを前にし、

アリアはゆっくりと手を前に出す。

その両手はまるで神に祈るかのように握られていた。


そして、アリアは短く唱えた。


(強化 《ミラータ》)

(強制 《ステンリル》)


……?しかしダガーに特に変化はない。

剣先をまっすぐ男に向けたまま、ピタリと止まったままだった。


だがそれも一瞬のこと。

アリアが次の単語を口にした途端に、ダガーの時間は動きだす。


(初期化 《イニット》)


動から静、静から動へ。

"事"が始まったその瞬間、俺は俄かに目の前の光景が理解できなかった。


消えたのだ。跡形もなく。

ダガーはアリアの言葉を聞いた途端に、

忽然と姿が消えてしまった…!


——しかし、事実はそうではない。


アリアが何事かを唱えたその瞬間、

ダガーは既に放たれていたのである。

消えたのではない。

文字通りの意味で、目にも留まらぬ速度で放たれたのだ。



普通、どんなに早い生き物も、初速はゼロから

始まり

徐々にマックススピードへと加速していくもの。


しかしこのダガーは初速から既に最高速度。

最初から最高潮のスピードで放たれていた。


物理法則をあざ笑うかのように、

ダガーは敵の胸元へとすいこまれるように伸びていく…!



これだけの速さのダガーを防げるはずがない。

少なくとも、俺の今までの人生での常識ならそうだ。


しかし、敵もさるもの引っ掻く者。

男は信じられないことに、高速で飛んでくる

ダガーの接近にいち早く気がついたのだ…!


『△◽︎○×……む!?』


詠唱は中断。右手に魔法の盾を発現させ、

そのままハエたたきよろしく弾き落とさんと男の腕が振り下ろされた!


(や、やべえ!落とされる!)

(……大丈夫。)


アリアは常に冷静だった。

祈るように手を前に組み、一区切りの短い単語を唱える…!


「加速 《アクシル》…!」


直後、ダガーは加速する!

魔法の盾がぶつかるその寸前、

超加速して男の手元を縫うようにすり抜けたのだ!


『ぬむっ!?』

ダガーはあっという間に男の懐へと飛び込んでいく!

こ、このままいけるか!?



『ふんっ!!』

は、早い?!なんという反射神経か!

男は気合の一声をあげると、

超接近するダガーの速度にあわせて、

即座に後ろへと大きく飛び下がったのだ!


体を無理やりひねり、直線的に飛ぶダガーを、

ギリギリでかわそうとする!


「にがさない…!」

祈るように組んだ手を、より一層強く握りしめ

アリアの口から新たな単語がつむがれる!


「強化 《ミラータ》!」

「回避 《パラベル》!」


ダガーに再びの変化が訪れる。

加速したダガーは速度そのままに

まるで変化球のようにグニャリと軌道を変えたのだ!


『こ、この……っ』


畳み掛けるような追従。

赤い光の残滓を残し、まるでヘビの如く

曲がりくねった軌跡を描いた!


まさしく変幻自在。

男の攻撃をするりするりと避けていく。

このハイスピードで変化されたのでは流石に見極めることは叶わない!


そしてダガーはついに、男の胸へと突き刺さったのだ!


『ムガぁぁぁぁぁ!!』

見事心臓にドンピシャである!


(き、きまったああああ!!)

やったか!?俺は歓喜に拳をグッと握る!

勝った!決まった!これでおわりだ!




「……隠遁ヒデルク

しかしアリアは追撃の手を緩めない。

単語を唱えた後、すかさず2本目のダガーを放った!


『え?心臓に刺さってるんだから2本目要らなくね?』

と言おうとした俺だが、

その後すぐに、アリアの即断即決に拍手を送ることになる。




『ほう…!不意打ちとは卑怯であるな神官どもよ!』


えっ。生きてるの?!


『この程度で私が死ぬと思ったか!愚か者め!』


心臓にダガーを刺したまま

男は平気な顔でピンピンしていたのだ!

お、お、お前は一体どんな心臓してんねん!


『そこにいるのだろう?

クックック!わかっておるわそれくらい!』



!?や、やべえ!

敵に俺たちの位置バレてるのか!?


男はそう言うと、

右手を突き出し俺たちに魔法の照準を向ける!


(や、やばい!死ぬぅ!)


俺はアリアの後ろに隠れてしゃがみこむ!

……しかし、敵の攻撃は一向に始まらない…?


男の照準をよく見れば……その方角は、

1本目のダガーが飛んでてきた方角…!

もちろんその先には誰もいない!


アリアの術中にどハマりした男は、

誰もいない地面に向けて魔法を発射していたのだ!


『死ねええええ!!

……ホグワーーーッ!?!?』


2本目のダガーが音もなく接近する!

男の魔法が何もない地面を焼き尽くしたその直後、

先ほど投げた2本目のダガーが

見事に男の口元めがけて突き刺した!



『アガ、アガガガガ……』


完全に死角からの攻撃だ!

おまけにダガーが口にぶっ刺さってる

これは流石に耐えられまい!


男は天井を仰ぎ見たかと思うと、

そのまま後ろに大きく倒れ、ステンドガラスごと外の地面へと墜落していったのだ!



「た、たおした?」

「たおした!」

「よっしゃあ!よくやったアリアアアアア!!」


アリアは俺と目を合わせてニカッと笑う。

そして、3本目のダガーを放つと同時にジャンプして飛び上がる!


残る敵はただ1人。

上司がやられてるあたふたしているところを

3本目のダガーが強襲する!


敵がダガーをとっさにかわし、意識が逸らされたその直後、

飛んできたアリアがすかさずその場で斬り伏せた!



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