第11話 魔族強襲 #2
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さて、雑談は置いておいて、これからどうするか。
俺は館内の地図を思い浮かべながら、あたりを見回した。
逃げ場だけは確保したいもんだが……うーん
「普通なら……みんなこの煙を避けて
出口に向かってまず駆け出すだろうな」
礼拝堂の唯一の出入り口は南の一箇所だけだ。
非戦闘員の神官たちは出口に殺到してるに違いない。
「わかったわ。なら出口に行きましょうか!」
「へ?いや、逆だろ。
だからこそ、出口だけは絶対避けた方がよくないか?」
「?なんで?」
「だって俺が敵なら絶対そこには戦力配置して逃げ道塞ぐもん」
直後、再びの爆音が起きる。
音の聞こえる方角は丁度、件の南入口だ。
それを見たアリアはたらりと汗を一つ流した。
「……そ、そうね。やめておきましょう。
それならどうする?いっそ戦おっか」
うーん、どうすっぺ…。
「君たちー!大丈夫かー?!」
「ん?」
そんな時、聞き慣れた声が煙の向こうから聞こえてきた。
あの若い神官だ。煙をかき分け神官が現れる。
「よかった!怪我はないかい?!」
「無事です。」
「!そうか!よかった!」
神官の右手にはショートソードが握られていた。
戦闘できるのかこいつ。神官にしては珍しいな。
で、それはそれとして……。
「神官様。要点だけ聞きますね。
神官様は今の状況についてどれくらい把握してますか?」
神官は首を振る。
「……全くわかっていない。敵の正体も目的も不明だ。
入口の方で爆発が起きたことしかわからない。
索敵魔法をかけたが、煙が妨害してるようで
敵の位置も数もわかってないんだ。」
煙が妨害して索敵魔法が使えない…?
そうなると、煙が張られる前にアリアが
敵の位置を割り出せていたのは不幸中の幸いだったな。
「あとは…そうだな。
僕以外の神官たちは全員女神像に集合して、
像を守ろうとしていると思う。」
ほーん、それまた意外だ。
生にしがみついた爺さんたちのことだ。
絶対に逃げ出そうとしていると思っていた。
「そ、それよりも、礼拝堂に残っていた一般市民の方が心配だ……。
入口のさきほどの爆発はもしかしたら……!!」
あー、はいはい。わかったわかった。
俺はパッ、と手のひらを神官に向け、
神官の言葉を遮る。
「もう十分です。敵の対処は我々に任せてください。
入口の方はお任せしました。」
「!わかった!
察しがよくてたすかるよ!それじゃあ!」
神官は再び煙の中へと消えていった。
「……戦うのね!?」
アリアは目を爛々とさせ嬉しそうにしている。バーサーカーかな?
「戦う。……というか戦ってもらう。
俺もオリビアも非戦闘員だしな。頼りにしてるぞ」
「!まかせなさい!」
方針は決まった。
俺たちは敵のいるステンドガラスの下へと向かっていった。




