表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/120

第10話 魔族強襲 #1


「大司祭さま!俺を教会所属の冒険者として

働かせてください!!」


土下座して頭を下げた、まさにその時である。


【ドゴォォォォォォ!】


突然の爆音。

教会が振動するほどの爆音とともに、

あたりは灰色の煙に飲み込まれる。


厳かな礼拝堂は一転、灰色一色に満ちた景色に塗り替わった。


「へ?」


あまりに突然のことで、気の抜けた声が漏れてしまう。


(な、何が起きた?爆発?煙?

これがまさか、さっき神官が言っていた"制裁"なのか?!)



……順を追って、

俺は先ほどの神官との会話を振り返る。


神官は要約するとこう言った。

「教会所属の冒険者にならないならすぐに殺す」

「神すら理解できないスキルを放置するくらいなら即殺す」

「だから教会の冒険者になりなさい」


従わないなら、冷酷にも制裁を下すと、

教会を通して王国はそう告げたのだ。


そんなことを言われれば、

素直で謙虚な俺は、すぐさま頭を下げて

教会の冒険者にさせてくれと懇願する。

土下座してまでお願いしたのだ!


なのに

【ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ】

なのにこの有様である……!!


(ま、また爆音が聞こえたか!?)


再びの爆音。

教会は戦地さながら爆煙に包まれる。

二度目の爆発で煙はより一層濃さを増していく。


もはや数メートル先すら見えない。灰色の煙は更なる黒色へ。

逃げられない暗闇が空間を支配した。


(あわ、あわわわわ……)

自分の位置もままならない。

俺はあわあわ言いながら手をあっちゃこっちゃ振り回した。


「タケシ?!大丈夫?!」


……!アリアの声だ!

煙で姿は見えないが、そばにいるようだ!


「だ、だいじょばない、たすけてください!!」

「よかった!大丈夫そうね!」


はぁ?大丈夫じゃねーつってんだろ!

見ろよこの脚の傷を!怪我しちゃったよ!


アリアは俺の足をチラリと見てほっと息をつく。

「切り傷程度ですんでよかった。

それくらいなら魔法ですぐに治るわね」



はぁ?爆発の破片が足にぶっ刺さったんだぞ!?


……いやまぁ、刺さるはいいすぎだけど

でも、破片が端をかすめて血がでてるんだぞこれ!?もっと心配しろ!


足のちいちゃな擦り傷に大騒ぎする俺だが、

アリアは俺を無視してすぐに周囲を見回した。


「オリビアー!きこえてるー?

きこえてるならこっちに来てー!」


オリビア?…あぁ、あの無口農民娘か


「……」ヒョコ


そばにいたのかすぐに現れる。

「よかった!怪我はない??」

「……」コクコク


とりあえず身内(?)は全員無事そうだな…。

さて、問題はこれからだ。


(……どうしてくれようか?教会の連中)


爆煙が立ち上る中、

俺は神官たちがいた方向を

阿修羅のごとき怒り顔で睨みつける。


(教会のやろう、さぞやいい顔して

無様な俺を見下して笑ってるに……おや?)



憎っくき教会め……!

あのでかい女神像に落書きして眉毛繋げてやる!

……と、思っていた矢先、

神官たちのいる方角から聞こえてくる会話は、

思っていたものと全く違うものだった。



「なんじゃ!?何が起きた!?」

「こ、攻撃を受けたようです!!」

「なんと!?」

「とにかく女神像だけは、女神像だけは守るのじゃ!」

「は、はい!」



……神官たち、めちゃくちゃ慌ててないか?

あれ?この攻撃もしかしてお前らじゃないのか?

それじゃあこの爆発は一体……?!


「アリア、じゃなかったアリア様!

今起こってること、わかってる範囲で全部教えてもらえます??」


「例のステンドガラスの連中が攻撃してきたみたいだわ!」


ステンドグラスの連中……?!

っ!アリアがさっき念話で話していた連中か!


すぐさま俺はステンドガラスを見上げる。

敵の姿は……だめだ。煙が濃くてよく見えない。

しかし、朧げではあるが、人影のような物がチラッと見えた。


(あれがアリアが念話で言ってた

ステンドガラスに隠れてる刺客か!)


初めは王国から送られた制裁者の伏兵かと思ったが、

神官たちの反応からして、奴が王国の身内ということはなさそうだ。


十中八九、教会に紛れ込んだ侵入者。

この爆発の首謀者なのだろう。


「タケシ、タケシ」

「あん?…じゃなかった。はい?」

「タケシにもこれ渡しておくわね」


アリアがブローチを俺に手渡す。


「なんでしょう?これ」

「魔法具よ!ある程度の攻撃なら一度だけ守ってくれるの」


見ると、アリアとオリビアの首にも同じものがかかっていた。


「……よいのですか?こんな高価なものを」

「高価じゃないから大丈夫よ!5万アリルで買えるから」


その額を農民は「高価」って呼ぶんだよぉぉおおおおおおお!!(絶叫)

…と思ったが、言わないでおく。

素直にありがたい。


「それでタケシ。これからどうする?」


貴族が農民に指示を仰ぐんじゃないよ!

……と言いかけるのを寸前で止める。

こいつに指示されるのは癪なので考える。


「とりあえず、おま…アリア様と

オリ……イチカラ村の娘さん、

この煙、なんか吸ったらまずい気がするから

あまり吸わないようにしましょう。」


「わかったわ」

「……」コクン

二人は素直に頷く。


「タケシ。あと話し方だけど

無理して敬語使わなくていいわよ?

緊急事態に余計なことに気を使わなくていいわ!」

「……」コクコク!


お?まじで?そりゃ助かるわ。

じゃあ遠慮なく。


「オーケーわかったクソ女。

農民なんぞの指示に頼っちゃうダメ貴族の代わりに

俺が方針を決めてやるぜ。

あと、五万アリルは普通に高額だからな?

次もしも貴族様基準で金について語ったら、

俺の正義の鉄拳が飛ぶから気をつけろやファック!!」


「……敬語は使わなくていいって言ったけど、

敬意を捨てろとはいってないからね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ