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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
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第94話 王都の危機よりも、俺は今日の昼飯の方が気になる

「あら、タケシおかえり。どこいってたの?」


「うんこ」


「あらオリビアも。

オリビアはどこにいってたの?」


「うん……い、いや!

えーっと、ランニングに」



さて、それからケロッとした顔で

俺たちは病室に戻った。

何食わぬ顔でアリアに状況を確認する。


「さっきなんかすげー警報鳴ってなかった?」


「すごいなんでものじゃなかったわよ?

大騒ぎも大騒ぎ!みんなパニックに

なって避難してたんだから!」


「ほーん。そりゃたいへんだ。」


それからアリアはジーーッと俺を見て尋ねた。

「タケシは避難しなかったの?」


「うんこしてたからさ」

「ふーん」


「うんこがでかくてさ。いやー参ったぜ。」

「ふーん」


内心ビクビクで俺は返事を返す。

……こいつはどうにも妙に勘が鋭い時がある。

話題を少し変えた方が良さそうだ。


「にしてもこの大都会王都で

警報なんて相当な事態だよな。

まさかまた魔人でも忍び込んできたりしたのかね」


「まさか。

病院の人が慌てて警報機を見に行ったんだけど、

機械が検知した魔力が魔力災害クラス以上

だったみたいでね?


そんな大災害級の魔力が発生した割には、

目立った破壊の痕跡が見当たらないから、

きっと機械の誤検知だろうって話になったわね」


「ほーん」


誤検知か。それなら都合がいいな。


「でも不思議よね。

警報機が鳴ってから調べてみたら、

ここの病院の近くの警報機の

殆どが壊れちゃったみたいなのよ」


「……ほ、ほーん。そりゃ不思議だなぁ」


ま、また壊しやがったのかこいつは。

「教会の古代装置」

「アリアの魔法具」

「魔人の結界石」と続いて、

今度は王都の警報機を壊したようだ。


(やっぱやべえなこいつ。

これからは破壊神オリビアと呼ぼう。)


チラリとオリビアの方を見る。

案の定、汗ダラダラで見るからに動揺しまくっていた。


「……」じーー


そんなオリビアをアリアがジーッと見つめている。

ば、ばれてない……よな?


ま、まぁとにかくだ。

この様子なら意外と大ごとには

なっていないみたいだな。良かった。


「結局、機械の故障って話に

落ち着いたってことなんだよな。

大ごとにならなくてよかったじゃん」


「ううん?」


「ん?」


「もしかしたら何者かが

侵入した可能性もある、って言って

騎士団の人たちが念のため総出で

調査してるみたいよ?」


「…………ふーん?」


お、大ごとになっとるやんけ……。


「実際に病院の大事な魔法具が

いくつも壊れてるみたいだしね。


やっぱり何かの異常が存在した可能性も

あるんじゃないか、

って話もでてる……っていう状況ね」


「……病院の魔法具ってどんなやつ?」


「さぁ?でもきっと貴重なものなんじゃない?

王国最高峰のセントラル病院に

置いてあるような機械だし」


「そ、そうね………」


うわーーー……。

また損害出しとるやんけこいつぅ……

俺は再びオリビアに視線を向けた。


「…………………」


【だらだらだらだ…】


だらだらだらだらと汗が流れすぎて

そのうち液体になりそうな勢いである。


教会の古代文字に続いて、

またも墓までもっていかなきゃいけない隠し事が

増えたようだ……。


・・・

・・


それから朝食も終えて落ち着いた頃、

サナ、アリア、オリビアを一堂に集めて、

俺は今後についての話をした。


「調査を始めるのは1週間後。

だから、1週間の空きができるわけだ。」


一同を見渡しながら、俺は地図を指し示した。

その場所はアリアが最初に見つけたポイント。

王国の国境付近の場所だ。


「調査はかなり遠出になる。

みんな色々準備もあるだろうから、

各々この1週間は自由行動だ」


「旅の準備をするでもいいし、

修行に一日中のめり込むでもいい。

まぁ好きにやってくれ。」


全員を見ながら俺は締めの言葉を言った。


「話は以上だ。それでは散!」


「……?」

(……?」

「……?」


みんなぽかんと俺の顔を見つめる。


(散ってなに?)


「散れ、ってことだ。それでは散!」


(わ、わかった)

「う、うん」

「えーっと…」


それから皆、思い思いの方向にグダグダと

動き出したのだった……。



✳︎



自由行動宣言。

オリビアは既にどこかへ出かけ、

サナは病院の休憩室から借りてきた本を

ずーっと読んでいた。


「タケシ。ちょっといいかしら」

そんな中、アリアが俺の元へとやってきた。


「ん。どうした」


真面目な様子で俺に語りかける。


「タケシの考えてることを聞きたいんだけど、

聞いてもいいかしら?」


「おう。いいぞ」


はて、なんだろう。

アリアはスッと俺の横に腰掛けると、

真剣な様子で俺に問いかけた。


「長期の遠征に行くにあたって、

一番の課題ってタケシはなんだとおもう?」


真面目な様子で問いかけるアリア。

それに俺はかるーい調子で答える。


「そりゃお前、言うまでもないよ」


「まともな戦力がお前しかいないことだよ」


✳︎


「あ、よかった。タケシもわかってたんだ」

「そりゃなぁ…」


農民2人のお荷物抱えて

アリア1人で戦うなんて、ぶっちゃ無理な話である。


「どうする?

私の知り合いに相談すれば、

来てもらったりするもできるけど」


「うーん……それでもいいけど、

今回は冒険者ギルドに依頼、って形で

同行をお願いしようと思ってた」


報奨金もたんまりあるしな。

それに、お前の知り合いってどうせ貴族の連中だろ?

農民の俺たちめっちゃ肩身狭そうで嫌だわ。

…と、心の中で補足する。


「うん。わかった。

じゃあもうギルドには依頼したの?」


「いや、まだだ。

メアリにお願いしようと思ってたとこだ」


「私が代わりに行こっか?

丁度冒険者ギルドに行こうと思ってたしね」


「お、助かる。

報奨金についてはいくらでも構わんぞ。

結構高めでもいい。中級以上の冒険者が

くるような金額設定でたのむ」


「了解」


そしてアリアは

思い出したように言葉を続けた。


「あ、そうそう。

オリビアのことだけど、魔法の練習するなら

西の山の方がいいと思うわよ?

あの辺りは警報機は設置されてないはずだから。」


「そうなのか?じゃあ後で言っておくわ。

まぁ、警報機全部壊れたならどこでやっても

問題ないとも言えるけどな。」


「あはは。そうだね」


と、流れでつい自然に返してしまったのだが…


『……タケシ君。それ話してよかったの?』

(おん?)


勇者から呆れたような声が聞こえる。

それからアリアはクスクスと笑いながら続けた。


「やっぱり。

あの警報の原因はオリビアだったのね」


あっ。

「あっ」


やべえ忘れてた…。


「わたしにもそう言うことは話してよね。

仲間なんでしょ?わたしたち」


アリアは少し寂しそうにそう言った。


「わたしだけ隠し事なんて寂しいよ」


まぁあの時はなんとなく隠してしまったが、

考えてみればこいつに隠す理由なんてなかったか…。


「……すまん。それもそうだな。

いらん気遣いだったわ」


「もう隠し事はなしだからね」と言って、

アリアは病室を出たのだった。


アリアが部屋から出るのを見届けて、

俺は改めて思索にふける。


(さて、残る問題は1つだな……。)


『え?他にも問題あるの?』


俺の心の独り言を勇者が耳ざとく先読みする。


うむ…問題はまだ残ってる。

次の問題は、

今日のお昼のランチを何にするか……だな。


『……』


メンチカツにするか、スパゲティにするか

そこが問題だ。

昨日は肉をがっつり食べたし、

今日は麺類を攻めるべきか。

どうおもう?勇者よ。


『……どっちでもいいんじゃないかな』


アリアやオリビアがせっせと動く中、

俺は「うーむ」と一つ唸ってから、

もう一度ベッドに寝転がったのだった。


・・・

・・



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