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第1話 はじめてのスキル授与。 #1

初投稿です。

第1話 はじめてのスキル授与。 #1


「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな」


ここは王都の教会。

外まで続く長い列に並びながら、

俺は今か今かと自分の番を待っていた。


「次の者、前へ」

「はい!」


ここアルダニア王国では16歳の成人を迎えると、

"スキル"という特別な力を神から授かることができる。


"スキル授与式"

それは王国民であれば全ての人々が等しく受ける儀式であり、

そして、平民にとっては今後の人生を左右する大きな意味を持つ儀式でもあった。



「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな」

「は、はい…」

「次の者、前へ」

「はい!」


"農地開拓"を宣告された少年少女たちの表情は暗い。


先程から何度も聞こえてくる"農地開拓"とは、

農民の代名詞とも言える定番中の定番スキルだ。


このスキルを宣告されるということは、

「お前は死ぬまで農民やで」と宣告されるに等しい。


有用なスキルを引けば、国からスカウトされることもある。

しかしもしも凡百なスキルを引けば、

その瞬間にそいつの出世への道は閉ざされる。


(ここで良スキルを手に入れれば即立身出世…!

農民地獄からようやく抜けられる!

やってやる…やってやる!!)


立身出世。農民なら誰しも一度は夢みるものだ。

スキル授与式で良スキルを手にして官吏の職につき

出世する理想の出世街道。農民の共通した夢だった。


当然ながら俺も例外ではない…!

この日のために、今日まで辛い農民生活を我慢してきたのだ!

なんとしても立身出世、なんとしても良スキルを手に入れなければ!!


・・・・

・・・

・・


しかし現実は非情である。


「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな」

「はい…」


(あ、あぁぁ……!また農地開拓が出た!

みんな農地開拓ばっかりじゃねえかぁぁぁぁぁ!!)


一人また一人と王国に無駄に開拓民が増えるたび、

俺は心の中で絶叫した!


(確率どうなってんだ?!

マジでさっきから農地開拓しか出てないんだが!?)


「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな。

次の者、前へ」

「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな。

次の者、前へ」

「お主の授かったスキルは"農地開拓"じゃな。

次の者、前へ」


神官は機械のように同じ言葉を繰り返す。

ここから後ろは全員農地開拓でーす、

とそのうち言い出しそうなくらいに農地開拓しか出てこない。


(なに?もしかして王国滅ぶの?!

滅んでめちゃくちゃになった土地を耕させるために、

神様こんだけ開拓民増やしてるの?!)


そんな邪推が妙な現実味を帯びてくるほどに、

大量の開拓民達が5秒に1人のスピードで量産されていく。


「お主の授かったスキルは……ほう。"商売繁盛"じゃな。」


たまに「おっ…?違うのが出た!」と思っても、

そいつの背格好を見るなり俺の顔はすぐさま歪む!


(見るからに貴族じゃねええかぁぁぁぁぁ!!

お、おかしい!絶対インチキだ!

貴族にだけ違うスキルがいくように

細工されてるんだこれ!!くそ、許せねえ!)


そして俺は、スキルを与えていると

思しき水晶を見てひとつの確信を得た!



(あの水晶……絶対変なことしてるだろ!?

見るからに怪しい色してやがる!

そうだ!絶対そうだ!そうにちがいない!

くそ!卑怯な真似しやがる!

どうすりゃいいんだチクショウ!)



心の中でどれだけ矮小に文句を言っても、状況は何も好転しない。


あれだけ長かった列も、刻一刻と減っていく。

焦る。焦る。焦る……。

もう少ししたら俺の番だ。残された時間は少ない。

どうすれば…どうすればいい?!


(あぁ女神アリルよ!

たのむから俺の願いを聞いてくれ!)


どうするもこうするも、

どうしようもない事なら、もうやることは一つしかない!

俺は姿形もわからない神に必死に祈った!


(俺は出世がしたい!

出世したくてしたくて仕方ないんだよアリル様!


このまま農民で終わるのだけは嫌なんだ!

もう土いじりは嫌!

毎朝早寝早起きして畑の世話をするのももう嫌!

土日も休みなく働くのも、

風呂に入ると水が真っ茶色になるくらいに体が汚れるのも嫌なんだ!

台風一つで家計が破綻する生活はもう嫌なんだああああ!!)


土でボロボロになった爪を隠すように

俺は手をぎゅっと握り神に祈った!


(たのむ!アリル様!

いや!いっそアリル様じゃなくてもいい!

もう誰でもいい!誰でもいいからたのむよ!

万年代々農家の俺にもチャンスをくれぇぇ……!!)




……この世に神がいるかなんてわからない。

ただこの時だけは、俺は生まれて初めて神の存在を体感した。


【ピキイッ!】


それは奇跡というにはあまりにも些細なこと。

しかし偶然というにはあまりにも劇的。


全身全霊で神に祈ったその瞬間、

それは偶然なのか必然なのかはわからないが、とある事件がおきたのだ。


「む?」


おっ!?


「水晶が……割れてしまった」



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