深まる謎
(「僕は“僕”の秘密を知らないの中編です)
毎日投稿目指して頑張ります!
『悠介暗殺計画』と書かれたページには、紙が破れるほど強く「殺」の文字がぎっしり書かれていた。
次のページをめくると、悠介が何時頃どこで何をしているかが事細かく書かれていた。ところどころに赤色で丸がつけてあった。どういう意味だろうか...
さらに次のページをめくると小さくこんなメモが残されていた。
『妹の時みたいに。』
何を言ってるのだろう。
僕には妹なんていない、これは誰のメモだ...
このことをすぐに父さんに報告した。
ノートを見せると父さんの眉間に深いシワが刻まれた。
「これは別の人格がやったのかな?そうだとしたら、この妹っていうのは何?」
父さんは俯いたままノートを強く握りしめている。
「おそらく別の人格の仕業だろう」
そう言うとノートを静かに閉じた。
「妹っていうのは?」
「その人格が何か勘違いしたんだろう、気にするな」
父さんは全く僕の方を見ようとしない。何か隠している。僕はリビングを出ようとする父さんの腕をガシッと掴んだ。
「ねぇ、教えてよ。」
「ダメだ、今は言えない。時が来たら教える。」
「やだよ!気になって仕方がないだろ!時が来たらっていつだよ?教えてくれ...」
次の瞬間、パチンっという音とともに頰に鋭い痛みが走った。ヒリヒリする。
「落ち着きなさい!教えれられないものは教えられないんだ!お前の多重人格を消すことができたら教えてやるからそれまで待ってろ」
僕はなんだか悔しくて下唇を噛んだ。
「これだけは教えてやろう、お前は危険な人格を持っている。俺はそいつを消したいだけだ...」
そうボソリと呟いて父さんはリビングから出て行った。
自分の部屋に戻るとひどい頭痛に襲われた。僕は頭痛薬を飲むと布団を頭までかぶり目を瞑った。
全て早く終われ...
いつのまにか深い眠りに落ちていた。起きた時、なぜか僕はパソコンの前に座っていた。
ん?寝てたはずなんだけど、おかしいな...
すっかり頭痛は取れていたが目に疲労感を感じた。何気なくパソコンを開いてみると、無料動画サイトのページが開いた。
あっ!これってもしかして...
急いでスマホを開けると、以前のようにメモのページが出てきた。
『俺へ
パソコンは本当にありがたかったです。ありがとう( ^ω^ )
どうせならポテチとか食べながら動画見たいから、机の上に常備しといてほしい。よろしく。あっ、あと炭酸飲料もあるともっと良い。頼んだ。 俺より』
なんだよこれ!?ふざけるな!
こんな贅沢言いやがって、絶対用意してやんない。
そうだ、パソコンを父さんに預かってもらおう。これであいつは見れないぞ。
『僕へ
断る。そんなに贅沢したけりゃ自分で用意しろ。 僕より』
返信を打つと、はぁっと短くため息をついて再び布団に戻った。
こんな現実...実は夢だったとかならないかな。そんなことを考えながら頭まで布団をかぶった。
目覚めると時計の針は18時を指していた。
寝返りを打つと頰に何か刺さった。
「痛っ」
起き上がって見ると枕元にポテチの破片が落ちていた。
視線を横へずらすと少し離れたところにも落ちているポテチの破片を見つけた。そのままポテチの跡をたどっていくと、机の引き出しにたどり着いた。
ネズミか...?
ドキドキしながら引き出しを開けるとポテチの袋がぎっしりと詰め込まれていた。その脇には炭酸ジュースが5本並べられている。
まさか、あいつ...!
スマホを開くとすぐにメモのページが出てきた。
やっぱり...!
『俺へ
俺のグダグダを阻む奴は許さない。たとえ自分だったとしても。パソコンを元の場所へ戻せ。 俺より』
財布をみると、中は空っぽになっていた全部あいつに使われたらしい。スマホはすでに低速になっている。
「もう!なんなんだよあいつ!」
結局僕は父さんからパソコンを返却してもらい元の場所に戻した。風呂に入るとどっと疲れが出てきた。ここ数日嫌なことばかりだ。自分の多重人格、好きな子が取られる、友達の3股...
ぐっ....
悠介のことを考えたら急に胸が苦しくなった。右手で胸をポンポンと叩いてみたが苦しさは治らなかった。その時心の底に黒い何かが現れた。
(悠介を殺せ...)
頭の中で誰かの声が聞こえた気がして、耳を塞いだ。
(あいつが憎くて仕方ないだろう...)
「やめろ!」
思わず叫ぶと、ひどい耳なりがした。
(復讐したいとは思わないか?)
だんだん声がはっきりと聞こえるようになっていた。僕はもう一度「黙れ!」と叫ぶと風呂を出てすぐに自分の部屋に戻った。その間にも黒い何かは僕に語りかけていた。
(無理しなくていいんだよ。目障りな奴は処分して仕舞えばいい。)
「うるさい...」
(あいつをこのままにしておいていいのか?これから何人の女の子を傷つけるだろうな。)
「っ...」
(悪を成敗するんだよ。君は悪くない、悪いのは向こうだ。さぁ、僕と手を組もう)
「やめろよ...」
このままでは頭がおかしくなりそうな気がして、父さんが医者から処方されている睡眠薬を飲んだ。
布団へ入るとすぐに睡魔が襲ってきた。5分もしないうちにストンと眠りに落ちた。
声は聞こえなくなっていた。しかし、何故だか黒い何かはすぐそばまで来ている気がした。
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