湧き上がる黒いもの
(「僕は“僕”の秘密を知らない」の中編です。)
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次の日、学校へ行くと悠介が僕のところにやってきた。
「おはようっ!」
「おはよう」
「なぁ、聞いてくれよ」
「ん?」
「昨日さぁ、俺告白されちゃった」
「おー、よかったじゃん」
「まさかの、宮崎さんからだぞ!」
「そっか...」
「それでさ...付き合うことになりました!」
「あ、おめでとう...」
「ありがとう!いやぁ、まさかこんな短期間に3人から告白されるなんて...あっ」
悠介がとっさに両手で口を塞いだ。
「えっ?」
「いや、今のはなんでもない」
「なんでもなかったことにはできないな」
「そうかぁ......。実はさ、先週にも違う2人から告白されたんだ。それで俺どっちにもok出したんだよね」
「はっ!?」
「しっ、声でかいな。つまり...今3股中」
悠介はニヤニヤしている。
「3股...何考えてんだよ!」
「えっ?バレなきゃ問題ないって、どうせなら沢山いい思いしたいじゃん?ちょうど良くね」
僕は爆発寸前だった。心の底から黒いものが湧き出してくる感じがする。この感覚、以前にも...
その時チャイムが鳴った。
「おっと、もう授業か。じゃあな!」
悠介のその言葉を最後に僕の意識はなくなった。
気づいた時、僕は自分の部屋のベッドで寝ていた。
えっ...どういうことだ...何があった?
僕は制服のまま寝ていた。部屋のドアの前にはいつも通りカバンが置いてあった。
机の上を見ると、僕のスマホと筆記用具が出ていた。
部屋を出てリビングへ行くと父さんが夕飯の準備をしていた。
「おう、優、起きたのか。よく寝れたか?」
「うん...。ねぇ、学校から帰ってきた時、僕いつも通りだった?」
「ん?いつも通りだったと思うが、どうかしたか?」
「記憶が無いんだ。朝、悠介と話して以来今起きるまでの記憶がない。」
「えっ...、なんだって...?」
玉ねぎを切る父さんの手が止まった。
「全く覚えてないんだ」
「それは、別の人格が出てたってことか?」
「わからない」
「友達に聞いてみろ、なんかおかしくなかったかって」
「わかった」
急いで部屋に戻ると悠介にメールを送った。直ぐに返事が返ってきた。「朝はすげぇ俺のこと睨んでたけど、昼には普通に戻ってたよ」と返事がきた。つまり、僕はやっぱり違う“僕”になっていたのかもしれない。直ぐにこのことを父さんに報告した。
「何か、別の人格についてわかってることはないのか?」
「あ!そういえば、こないだ1人の人格が僕宛にメッセージを残してた。」
そして、容量泥棒からのメモを父さんに見せた。
「こんなことがあったのか、なぜ早く言わない!」
「忘れてたんだよっ」
「他は?後2人いるはずだ」
「僕の推測では、今日の記憶が無かった時の人格が1人、あと1人はテスト中に現れる“僕”じゃないかな?」
「テスト中に現れる?」
「いつもテストの時の記憶が無いんだ。頭が真っ白になるからだと思ってたけど、もしかしたらもう1人のせいかもしれない」
「なるほど...。だが、それらがバラバラの人格だと断定はできない。証拠がない」
「うん...」
どうしたらいいのだろうか...
僕はパニックになって両手で頭をぐしゃぐしゃっとした。
「優、落ち着け、大丈夫だ。もうすぐ装置は完成する。」
「装置...?」
「あぁ、人格を別の肉体に分離して破壊する方法を見つけた」
「えっ、なんか怖い...」
「大丈夫だ。よしっ、飯にするぞ。準備しろ」
僕は食べ終えると自分の部屋へ戻った。明後日から期末テストだし、復習するか。勉強机に座って、本棚から参考書を取り出した。
そういえば、去年やった問題も出るんだったっけ?
そう思って去年使ってた教科書を取り出した。すると、本と本の間に挟まっている見覚えのないノートを見つけた。
「ん?なんだこれ?」
表紙には何も書かれていない。なんとなく表紙をめくってみた。するとそこには目を疑うような言葉が書かれていた。
題目『悠介暗殺計画』
なんだよ...これ...
あまりの恐怖に僕の両手は震えていた。
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