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僕は多重人格でした  作者: 石川リョク
3/6

バレンタイン

「僕は“僕”の秘密を知らない」の中編版です。

毎日投稿したいと思うので、最後まで読んでいただけたら幸いです。

中編ver3


次の日も僕は普通に学校へ行った。しかし授業はさっぱり頭に入らない。自分の人格のことで頭がいっぱいだった。


父さんはなぜ、僕が多重人格と知っていながら教えてくれなかったのだろう。教えても無駄だと思っていたのだろうか。


ふと昨日の容量泥棒のことを思い出した。


人格って、自分がいくつかある人格のうちの1つだと認識することができるのか...?

いや、無理だろう。現に、僕は自分が多重人格なんて知らなかった。となると、頭に入っている知識はすべての人格と共有していることになるのか...?


「佐々木くん!何をぼーっとしてるんですか!」


「あ、はい!」


先生に怒られて急いで立ち上がった。その勢いで椅子が後ろの人の机にぶつかりよろけた。クラスのみんながこちらを向いてクスクスと笑っている。


「ちゃんと話しを聞いていましたか?」


「いえ、聞いてませんでした...すみません。」


「なんか昨日からぼーっとしてますね、目がさめるまで立ってなさい。」


「はい...」




昼放課になると悠介が僕の席へやってきた。

「お前大丈夫か?すっごいぼけーっとしてたけど」

「大丈夫、ちょっと考え事してただけ、気にするな」

「本当か?なんかあったらいつでも相談してくれよ」

「あぁ、ありがとう」


「あ、あの...」

女の子の声がしてふと横を見るとクラスで1番可愛いと言われている宮崎さんが悠介の方を向いて立っていた。僕に話しかけてるわけじゃないとわかっていたけれどなんだかドキドキした。

「おぅ、宮ノ内さん」

「あの、これ良かったら食べてくださいっ」

「えっ、俺に?ありがと...ちょっ」

宮崎さんは悠介の言葉を最後まで聞かずに小走りで自分の席へ戻っていった。

「何それ?」

「チョコレートみたいだ」

「あっ、今日バレンタインか」

「そういえばそうだったな」

「悠介はモテて良いよな、女の子たちからチョコ貰えてさ」

「なんだよ、ヤキモチか?」

「そんなんじゃねぇよ」

僕は弁当の唐揚げを口に頬張った。

「母さんとか、家族からチョコレートもらえないのか?」

「もらえるわけないよ、母さんは僕が4歳の時に交通事故で死んだんだ。」

「えっ...そうだったのか...、なんか悪いこと聞いちまったな」

「気にしなくていいよ、僕はそんなに気にしてないから。」

「そういえば、来週の期末テスト、だいぶやばいから勉強教えてくれ」

「いやいや、他人に教えれるほどじゃないよ」

「何言ってんだ?お前ずっと学年一位だろ。」

「それはそうなんだけど...」

「けど?」

「テスト解いてる時、記憶ないんだよね。気づいたら全部解き終わってるんだよ。」

「はっ!?何それ、じゃあ勉強しなくてもいいってこと?マジ羨ましいんだけど」

「いやいや、勉強してないわけじゃないから、基本的なことはきちんと覚えてるからね?」

「じゃあ教えれるんじゃないの?」

「まぁ、基本問題なら教えられるかな。テストの時みたいに、先生が出すような意地悪激ムズ問題は解けないぞ?」

「赤点さえ切り抜けられれば問題ない」

「あー、そういえば赤点の常連だったね」

「うるさい」



終業のチャイムがなった。

荷物を廊下へ取りに行くと急に誰かに腕を引っ張られ、人通りの少ない階段へ連れていかれた。

誰かと思って顔を見ると宮崎さんだった。

「み、宮崎さん...」

「優くん、急に引っ張って来ちゃってごめんなさい。」

彼女はペコっと頭を下げた。

「いや、大丈夫です。気にしないでください。僕は大丈夫なので。」

なぜか心臓が飛び出そうなほどドキドキしている。

「ど、どうしたの?」

「えっと...優くんって、悠介くんと仲良いよね。いつもお昼ご飯一緒に食べてるし...」

「う、うん」

「あのね、秘密にしてほしいんだけど...、私、悠介くんのことが好きなの」


「へ...?」


声が裏返ったのと同時に時が止まった気がした。

「それで、告白したいんだけど...、学校だとみんなにバレちゃうから、外でしたいのね。そこで、優くんの助けが必要なの。告白を手伝ってほしいです、お願いします。」

宮崎さんは深く頭を下げた。

引きつった顔のまま頭をあげるように促した。

「わ、わかったから顔上げて。僕はどうしたらいいかな...?」

「えっ、手伝ってくれるってことですか...?」

「そりゃ、助けたいよ...」

「ありがとうございます!じゃあ、悠介くんがよく行く場所とか教えてほしいです」

「あぁ、うん。あいつは毎週金曜日、学校帰りにすぐそこのコンビニへお菓子買いに行くよ。」

「金曜日!?えっ、どうしよう、今日だ!ありがとうございます、感謝します!」

彼女は再び頭を深く下げると走って教室へ戻っていった。僕は作り笑顔のまま、彼女が教室に入っていくのを見守った。

読んでいただきありがとうございました。


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