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僕は多重人格でした  作者: 石川リョク
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SFに入るのか、その他になるのか、とても迷いました。他に、よりフィットするジャンルを知っている方は、教えてください。


1章


朝7時、スマホの目覚ましが鳴った。

もう朝かよ...

目をこすりながら起き上がると、部屋の異変に気づいた。

ん?

僕はまだ寝ているのだろうか、僕の前に“僕”が3人いる気がする。いや、間違いなくそこに存在している。

1人は床に寝っ転がり、もう1人は腕組みをして僕を見つめていて、もう1人は椅子に座ってカッターナイフでペン回しをしている。


「「「おはよ」」」


やけにはっきりと声が聞こえた。

これは...夢、だよな?

僕は両手で頰をパチンッと叩いた。

「痛っ...」

両頬がひりひりする。

「当たり前だろ、夢じゃないんだから」

腕組みをしている“僕”が僕に話しかけてくる。


「夢じゃない...?」

「そうだ。」


その時ドアが開く音がした。それと同時に部屋にエプロン姿の父さんが入ってきた。

「父さん!」

僕は慌てて布団から抜け出すと、四つん這いのまま父さんの足元に駆け寄った。

「ねぇ、父さんには見える?」

「何が?」

「ほらあそこに僕が!あれ...?」

指差した先にもう“僕”はいなかった。

「何が見えたんだ...?」

「いや、何にもです。」

あれは夢だったのだろう、きっとそうだ。

そう思うことにして、僕は立ち上がって部屋から出ようとした。

その時父さんに手首を掴まれた。

(すぐる)、何を見たか言いなさい」

「え?いや何も、僕の勘違いだった」

「優!」

突然の大きな声にビクッとする。

父さんは眉間に深いシワを作って僕の目をじっと見てくる。

「あ、えっと、起きたら、何故か僕が3人いた..。そこと、そこと、そこに。」

「それで?」

「それでって...別にそれだけ。父さんに話しかけた時には、もういなくなってたから、きっと夢だったんだと思う」

「3人は何をしていた?」

父さんはやけに食い気味に聞いてきた。

「1人は床に寝っ転がってて、もう1人は腕組みして僕の方を見てて、もう1人はカッターナイフでペン回ししてた。」

「そいつかもしれない...」

「へ......?」

父さんは僕の手首を離して、顎に手を当てて何か考え事を始めた。

「どうかしたの?」

「お前、昨日リビングの机の上に置いてあった小瓶の薬...飲んだか?」

「うん、夜中にひどい頭痛で起きちゃって、リビングへ来たら頭痛薬っぽいものが置いてあったからそれを飲んだんだけど、違ったの...?」

「あぁ、大間違いだ...」

「えっ!!!」

父さんは顎を人差し指でスリスリし始めた。これは相当困っている時の印だ。

「じゃあ僕は何を飲んだの?」

「開発途中の薬だ。」

「なんでそんなものがあるの!?」

「俺がうっかり机の上に置きっぱなしにしてたんだよ。すまん。」

えっ

父さんは天才科学者と呼ばれていて、たまにやばそうなものを持ち帰ってくる時があるけれども、それって「すまん」で済む問題なの??

僕がアワアワしていると父さんがなだめるような口調で「大丈夫だ。今のところ大した副作用は確認されてないから、安心しろ。」と言った。

「今のところ」っていうのがちょっと気になったけれども...

「それで、なんの薬だったの?」

僕が尋ねると父さんは急に険しい顔になった。

「それは極秘だ。お前に話すことはできない。」

「極秘!?そんなやばい薬なの、飲んじゃって大丈夫?吐いた方がいい?」

「あぁ、大丈夫だ。吐くなよ?今更吐いてももう遅いからな。偶然飲んでくれて助かった。これでお前にも有効なことがわかった。」

「どういうこと?」

「極秘だ。」

「教えてよ!父さんのせいでこんなことになってるんだよ?」

「はぁ...」

父さんは深いため息をついてから話し出した。

「いいか?これは極秘だ。絶対に周りに知られるな。いいな?俺は今『人格を肉体から分離する薬』を作っている。これは多重人格の人にしか効かない薬だ。お前は間違えてこの薬を飲んだんだ。この薬が有効な人には、自分の人格が幻覚として見えてしまうことがある。」


「えっ......?じゃあもしかして僕は...」


「多重人格だ。」


「えっ??!」


あまりの衝撃に目眩がした。

僕が多重人格?

そんなの信じられない

今まで生きてきて全く気づかなかった。

父さんの言うことは本当だろうか...?

僕の気持ちを察したかのように父さんは大きく頷いた。


「受け入れ難いと思うが、いつかは知らないといけない。お前は多重人格なんだ。だが安心しろ、もうすぐこの薬は完成する。そしたらお前の余分な3つの人格たちを消すことができるだろう、もう少しの辛抱だ。」


僕の肩をポンポンと2回叩くと父さんは部屋から出ていった。出る直前に「誰にも言うなよ」と念押しされた。あまりにも衝撃的な話だったため、僕はまだこれが現実だとは思えなかった。夢の可能性を信じて、もう一度頰を叩いた。

やっぱり痛かった。

「おーい、学校遅刻するぞー」

「あっ、しまった」

時計を見ると電車の時間が迫っていた。

僕は慌てて支度するといつも通り学校へ行った。



読んでいただきありがとうございました。


毎日1話ずつ投稿していきたいと思いますので、最後まで読んでいただけると幸いです。

ご意見・ご感想を送っていただけると、作品を作る上でとてもありがたいです。よろしくお願いします。

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