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ロズリーヌの赤い薔薇  作者: 蒼山 螢
エピローグ
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 エピローグ



 テオドールは、山賊に襲われたときに殴られ頬と唇に怪我をした。しかし、怪我はそれだけ。ほかにはどこにも傷はなく、皆を安心させた。

 斬りつけられた者たちも、幸いに傷は浅く、療養のあとに仕事へ復帰するようになっている。


 サンタン村周辺を捜索したところ、短絡的犯行に及んだ山賊たちは、隣村の酒場で警備兵と騎士団に捕らえられた。テオドールに逃げられて探せなかったために、諦めて酒を食らっているところだった。

 奪った積荷のうち、金だけは飲み食いで使ってしまったらしく、そのほかのものは戻ることとなった。そもそもの犯行目的はテオドールの誘拐であり、積荷は二の次だったらしい。

 フォルチュ公爵誘拐未遂、傷害と窃盗で厳しく処罰することで一件落着となった。


 体力を回復させるために、サンタンで数日過ごし、それからフォルチュ領へ戻った。


 そして、屋敷に戻るとすぐに持ち帰った薔薇の苗を植物園の一角に植え替えた。


「大変な騒ぎで帰ったばかりなのに、なにも苗の植え替えをいちばんにしなくても」


 ロズリーヌは呆れていた。しかも自分の手でやりたいと言って聞かず、庭師に手ほどきを受けながら土をいじった。


「早くここに帰したかったんだよ」


 手に土を付けたまま鼻をこすったので、テオドールの鼻に土がついた。ロズリーヌは笑いながらついた土を取ってやる。


「きみの薔薇だからね」


 そうだ。ロザーナはあの薔薇園に眠っているのだ。ずっと昔から。


「そうですね。……お帰りなさい」


 苗が成長し、季節が進めば、美しい花を咲かせるだろう。

 咲いた花から種落ち、そしてまた芽が出る。ロザーナとティエリの思いも、たくさん咲いて、増えるだろう。

 怖くはなかった。記憶を受け取ることで、思い悩むことがあったとしても、心が揺れることはもうない。


 苗の生長を見守りながら、未来に思いを馳せながら、生きていきたい。


 作業用の服についた土や葉などを払いながらテオドールは立ち上がる。


「ロズ、ちょっと話があるんだけれど」


「これで手を拭いてください。話、ですか?」


 植物園から出て、屋敷に戻りながらテオドールは話し始めた。


「俺は、ずっと記憶を夢に見てきたけれど、未完成だったようだ。今回、ロズリーヌに触発されて思い出したことがあったんだ」


「なんですか?」


 このまま部屋へ戻って休憩するのかと思いきや、テオドールは床を指さした。


「一緒に、地下室に行かないか」


 テオドールの提案に、少し驚いたが、頷く。


「怖い?」


「いいえ。あなたとなら平気です」


 怒濤のように記憶が戻ったあの日のことを思うと少し怖かったが、テオドールが手をずっと握っていてくれるのできっと大丈夫だと思える。


「ここでの記憶は、俺も思い出すことが辛かった。ちょうど不眠のときだよ。父が倒れ爵位のことや様々な環境の変化も引き金になったのだろう」


 苦しい記憶にうなされる日々を送っていたのかと思うと、胸が詰まる。きゅっと繋いだ手を握った。



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