↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロズリーヌの赤い薔薇  作者: 蒼山 螢
3章 スパイシー
PR
29/51

 馬車の行く先に、噴水広場が見えてきた。煉瓦が敷かれた広場を囲むように建物が並び、店が多い。そのなかのひとつがヤンの店コーントだ。

 馬車が停車すると、ニコロがドアを開けてくれる。待ちきれなくてロズリーヌは飛び降りた。


「ロズリーヌ! 危ないよ」


 テオドールの不安をよそに、馬車を飛び降りたロズリーヌは振り向いて笑顔で言う。


「そんなに心配しないでください。大丈夫!」


「きみはもう、仕方がないなぁ」


 眉を下げテオドールがあとからゆったりと馬車を降りたときだった。


「ロズリーヌ!」


 モネルが店から顔を出した。


「お母様!」


「元気だった? 困ったことはない?」


 走り寄って抱きついたロズリーヌに「もっと顔をよく見せてちょうだい」と体を離して頬を撫でるモネル。


「大丈夫。安心して、皆さん本当にとてもよくしてくださるんです」


「……その笑顔を見たら、どれだけ幸せかわかりますよ」


 ふっと笑ったモネルの顔色が少し悪かった。離れていてもロズリーヌには分かった。


(お母様、少し痩せたよう。大丈夫かしら)


 そこへ、店からヤンが顔を出した。


「お帰り! ロズ」


「ヤンさん! お久しぶりです。お元気そう」


「おかげさまで。テオドール様、ご無沙汰しております」


 ヤンの挨拶を受け、テオドールも笑顔で答える。


「きみも元気そう。モネル、奥に案内しよう」


 ヤンはモネルの肩を支えるように抱いた。


「朝からそわそわして、無理はいけないと言ったのに」


「大丈夫なのよ。ロズの顔を見たら元気になったわ」


 そのような会話をしている。やはり、あまり具合がよくないのだ。

 奥へ案内されながら、改築の様子を見て回る。店も少し広々とし、収納が増えていた。生花と野菜が混在して陳列されていたところも分けられ、見やすくなっていた。

 住居のスペースも、壊れた壁などが修理されている。


 応接が設けられていて、そこへロズリーヌたちは案内された。ニコロとジニーは紹介のあとに馬車で待機となった。


「このように家と店を改築し整えていただいて、本当になんとお礼を言ってよいやら。ありがとうございました」


 ヤンが、改めてテオドールに感謝の言葉を告げる。


「こんなことしかできません。おふたりがロズリーヌを大切に育ててきてくださったから、ふたりの幸せがあるのです。ありがとうございます」


 テオドールの言葉を聞いて、ほっとした様子のモネルだったが、胸を少し押さえている。


「お母様、なんだかちょっと顔色がよくないわ」


「改築後、嬉しくてついがんばってしまって。でも、大丈夫なのよ」


「店の手伝いをしたいと言ってくれてね。商品陳列をあのように整理してくれているのは彼女なんだ。さすがだなと思って。止めなかったわたしが悪かった」


「いいえ。つい調子に乗ってしまったわたしが悪いのです。数日前に風邪をひいてしまって」


 やはり、体調が悪いのだ。ロズリーヌは一気に不安になる。2年ほど前にも高熱で何日も寝込んだことがあったのだ。


「お医者様にはかかったの? お母様は風邪をひくと高熱が出るから、注意しないと」


「そう、ね……」


 モネルがロズリーヌに微笑んだときだった。モネルは椅子から崩れ落ちそうになった。ヤンが寸でのところで受け止める。


「お母様!」


「いけない。今朝から微熱があると言っていたのだけれど、熱が上がったんだ。せっかくテオドール様とロズが来るからと無理をしていて」


「お母様、熱があるの?」


「大丈夫よ。ごめんなさいね。少し目眩がして」


 モネルの額に触れてみると、確かに熱い。具合が悪そうだった。どうしよう。ロズリーヌは焦る。


「ニコロ!」


 後ろでテオドールがニコロを呼んだ。

 巨体からは想像も付かないような、まるで獣のように静かに姿を現したニコロに、テオドールがなにかを告げる。ニコロはまた素早く外に出ていった。


「お母様をベッドへ運びましょう」


「テオドール」


「ロズ、大丈夫。心配しなくていい。医者を呼んだから、すぐに視て貰おう」


 ヤンが頷き、モネルを抱き上げて部屋を移動した。寝室へと運んでいく。

 ロズリーヌとテオドールも一緒に行くことにする。寝室も改築されたのだろう。真新しい壁と、綺麗に整頓された清潔な部屋だった。ベッドがふたつ並んでおり、編み物が途中でサイドテーブルに置いてあるほうのベッドにモネルは寝かされた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。