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プロローグ
『愛しているよ。ロザーナ』
自分の名前とは違うと思いながら、他人の意識が進入してくる感覚に抗えない。
目覚めると夢か現実か定まらず、意識が揺らぎ、現実を認識するまでに時間がかかる。
目眩がする。頭痛も襲ってくる。だから、この夢を見ることが苦手だった。
15歳を越えたあたりから見るようになった。
夢の中で、ロズリーヌは別な名前で呼ばれる。そして、手を取り、愛を囁く青年が寄り添うのだ。
愛しているよ。ずっと一緒だ。きみは僕のものだよ。離さない。
容赦ない愛の言葉。口づけと抱擁。
全身で受け止めて、幸せだった。
恋を知らないロズリーヌは、自分の中にいる『わたし』の気持ちを受け止められない。
わたしは、誰なの。そして、あなたは誰なの。
『ティエリ』
優しい響きの名前。口にすると、幸福感と共に切なさが去来する。
薔薇の香りとぬくもりに包まれて、あなたはどうして泣いているのか。
ああ、どうして。泣かないで。