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伯爵の後見人

 



 正面玄関のほうが騒がしい。浮島にいれば街の喧騒で気にならない程度だがこのひたすら静かな伯爵邸ではシャラが落ちてきて以来の物音だ。馬の蹄の音が響く。カランシアと一緒に玄関まで迎えでる。



「おかえり鶴見!」


「カランシアさま、ただいま戻って参りました」


 黒髪に黒い瞳の背の高い男性が黒く大きな馬を連れている。馬は彼が連れている従者二人が自分たちの馬と一緒に馬屋の方へ率いて行った。


 色白ではあるが銅色がかった、あまり見かけない肌の色がシャラの興味をひいた。肌だけでなくカランシアやこの邸の使用人とは違う薄い骨格の身体や頬骨の位置の高い顔立ちは知識として知ってはいる。


 学校で習った!画像を見たこともある、たしか……



「シャラ、紹介しよう。こちらは家令の鶴見。ジャン=ルーン、てわかるかな?」


「鶴見さん初めまして!晴見浮島のシャラです。お世話になってます。ジャン=ルーン皇国はエーヴェ大陸の東側の国ですよね?古代にリングイン大陸からエーヴェに渡って来た人々の国だと習いました」


 ここに落ちてきてすでに一週間ほど、優しい伯爵邸の人々のおかげでシャラの人間への偏見はすっかり取り払われていた。


 カランシアから色んな人がいるからちゃんと気をつけて、とは言われたが鶴見はこの邸の使用人だ。


 当主を補佐して伯爵家を取り仕切る家令であるからにはカランシアが最も信頼しているはず。ならばまともな人間に違いない。


 シャラよりもカランシアのほうがおでこ分くらい背が高いが鶴見と並ぶと二人ともこどもに見える。


 高身長でも大男といった感じではなく、すらりとして適度に筋肉がついてそうな見目良いスタイルの鶴見は顔立ちも整っている。眉目秀麗の騎士、といった出で立ちだ。


 ジャン=ルーンではサムライとか言っただろうか?かっこいい!めっちゃモテそう!とシャラはまじまじと魅入った。


 カランシアが面白くなさそうに横目でシャラを見やる。



「カランシアさま、モードレッド卿が近々おいでになるようです」


「叔父さんが?決裁はこの前出したばかりなのに?普段なら半年に一度くらいしか来ないのになぁ」


「カランシアの叔父さん?」


「うん、僕はまだ未成年だろう?成人するまでは叔父さんが後見人なんだ。僕の母の弟にあたる唯一の血の繋がる人。遠い親戚なら他にも少しいるんだけどね」


「ふーん」


 なんか貴族だと、色々とありそうだなぁ。関わりたくない、ていうか魔女なんてお呼びではないだろう。


「君に会わせたいなぁ……」


「え?なんで」


「あ、いや、僕の、唯一の家族だから、ほら」


「え?」


 カランシアの顔が赤い。どうしたんだろう?


 いつも冷静で落ち着いてるのに。













「そういえば、シャラ」


「なぁに?カランシア」


 中庭で休憩している。


 カランシアは先程まで鶴見と剣術の稽古をしていた。鶴見はすでに執務室に戻っている。仕事が溜まっていると呟いていた。


 美味しそうにハンナの持ってきてくれたレモン入りの水を飲みながら木陰で寛ぐ。そよ風が気持ち良い。


「シャラは箒で空を飛べるんだろう?」


「そうよ。その練習を友達としていたら、何故か落っこっちゃったんだよね」


「箒は何処に行ったんだろう?一緒に落ちて来たはずじゃないの?」


 シャラは無傷で落ちて来たのだ。おそらく怪我しない高さまでは箒の魔力が効いていたはず。カランシアはそう考えていた。

 でもカランシアがシャラを見つけた時にはすでに箒はなかった。


「箒って大きさ変えて仕舞えたり、しないよね」


「うん、さすがにそれはおとぎ話感半端ないよね」


 シャラも不思議に思った。箒があれば晴見浮島まで帰れる?中に直接は入れないけど近付けば管制塔のほうではぐれ魔女族の少女を見つけてくれるはずだ。


 隠されている浮島を地上から探すのは現実的ではないけれど、空を飛んでいれば魔女族の誰かが探知してくれるかもしれない。


 箒は何処に行ったんだろう?






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