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魔女が降ってきた 2

 


 カランシアの柔らかい声にほんの少し、落ち着いたような気がする。途端恐怖よりも現実的な困惑が胸の奥で爆発した。





 地上に落っこちちゃった…


 どうしよう…どうしたらいいの…




 ぱたぱたと涙がこぼれ落ちる。


 シャラの生まれ育った浮島、晴見浮島ははるか上空にある。

 地上からは全く見えない。戻る術がない。わからない。


「ふ…うぅ…っ」


 今はいったい何時なんだろう。友達が、家族が心配して探しているに違いない。

 だいたい浮島から落っこちるなんて聞いたことない。


 浮島の周囲には簡単に出入りできないよう結界がある。

 きちんとした手続きを踏まなければ、勝手に浮島を出ることも侵入することもできないのだ。

 どうしてこんなことになったのか。

 地上は人間の国だ。他の種族もいるにはいるけど人間が圧倒的に多い。人間だらけだ。どうしたら浮島に帰れるんだろう?

 使い魔である蛙を抱き締めたままシャラは訳がわからなくなってきた。


「どうし…ママ…うっ…うぅぅ」


 迷子の子どものように泣きじゃくる。嗚咽で揺れる肩に白い手が伸び、落ち着かせるようにやさしくやさしくシャラの背中をさする。


「シャラ…さん?浮島に帰りたいんでしょう?僕が力になるよ…ね?元気だして…」







  ─────────────







 魔女が浮島から落っこちてくるなんてカランシアにとって、いや大抵の人間にとっても珍しい出来事だ。

 目の前の魔女族の少女が初めて見る人間に怯えるように、カランシアにもまた魔女族との邂逅は初のことでありどう対応すべきか困惑している。

 はるか上空から落ちてきて身体に怪我一つないのにはほっとしたがそんな魔女の能力を少し恐ろしくも思うし興味深くもある。しかしそれよりもこの状況にショックを受けている自分と同世代であろう華奢な少女への同情の気持ちのほうが勝る。




「君の安全は僕が保障するよ。だから安心して」



 落ち着いてきた少女にそういうときょとんとした瞳で顔を上げた。



「ここから、僕の家から出ると魔女である君に何が起こるのか正直不安だ。ここから勝手に出たりしないと約束してくれるなら僕が君を守る」



 そうか、ここはこの少年の家なのか。ずいぶん広い部屋だしここには生活感が全くないことを考えるとかなり大きな家なのだろう。


「ここはエーヴェ王国の南にあるリツェンツァ地方。僕はそのリツェンツァの領主カランシア・ディートワール」

「領主…?」

「そう。いちおうね」


 そう言ってカランシアはにこりと微笑むがなんだか少し硬い。








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