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二号三号もセットです

明日とは一体何だったのか。爆睡してて載せ損ねました。次話はちょっとまだかかるかもしれません。あと、もしかしたらちょっとキャラの外形に訂正が入る、かも?

 




 私の名は、マルグリット=ロザーリア=トリア=コリン=カークランド。


 カークランド侯爵家の第二子にして長女である。



 王家に忠誠と貢献を認められた象徴として、直系のみ名乗ることを許される数位(フィギュア)、その3(トリア)

 数代前に起きた大きな内紛に現在の王家を勝利させた、と時の王に認められ下賜され、同じく直系のみ名乗ることを許された、コリン(勝利者)



 つまり名に直々に刻印を頂くほどのバリバリの王家派、かつ超有力貴族の直系。名ばかりだったりもしない、本当に力のある高位貴族の令嬢、なわけである。



 後継にする為に結婚後迅速に作られた兄とは違い、当時王太子だった現国王や他の有力者と示し合わせて作られた子。ゆくゆくは王子の側近として仕える為にと誕生した命。

 いや、だからと言って愛がないとかそういう話ではないから安心してほしい。きちんと愛されて育ちましたとも。それは間違いない。というかあんなに悲壮な顔で何日も付き添ってくれた両親の愛を疑えるわけがない。



 とにかく、私は王子の側近となるべく生まれた存在だ。何か大きな失態を犯さない限り、大体私の歩く未来というのは決まっている。王子の為にある一生なわけだ。蘇った記憶はともかく、マルグリットとしては納得している。それはいいのだそれは。問題は私が彼らや私という存在を知り得ていた、記憶を思い出したわけで。



 思い出してすぐ散々考えていたにも関わらず、此の期に及んで飽きずに頭を悩ませていると、子供の小さな歩幅でもいつの間にか目的地に着いていたらしい。


 何処となく忌避を隠しきれない視線を向けてくる護衛の騎士が開けたドアの向こう、一気にこちらへ瞳が向く。なんだなんだと思わず立ち止まると、くすくす笑った殿下に手招かれた。何だか野良猫にでもなった気分だが、招かれるままに大人しく足を進める。



「今ね、君の話をしていたんだ」



 にこり。天使の笑みを浮かべる金髪に菫色の瞳のいかにも王子様!という風貌の少年が、この国の第一王子殿下であるレイナルド=アレクサンダー=アウレリウス様。つまり私のご主人様となる方であり……情勢によっては、私の結婚相手ともなりうる方。当家がコリンの名を頂いた内紛以降情勢が安定していることもあり、この場にいる私達全員の婚約者は決まっていない。適切な時に切れる手札として保持されているわけだ。

 私と同じく、というかそれよりも厳しい教育を受けてきたレイナルド様は非常に優秀だという。代々武器として婚姻で磨かれてきた美貌も素晴らしく、成長すればさぞ美男子になるだろう。少しお話しした限りではこれからの付き合いが心配になるような言動もなかったし、地位に奢らずこちらを尊重する振る舞いだった。前世の記憶では少々傲慢だったり軽率だったりする面もあったが、今のところの印象としては気持ちよくお仕えできそうな方だ。



「殿下、普通それ本人にバラしますか?」



 顔の幼さに似合わない苦笑を零した、やはり金髪の少年は公爵の嫡男、フィランダー=ウヌス=マライア=ローランド様。お母上譲りのペリドットのような明るい緑の瞳がするっと滑って私を映した。面白いなあと言わんばかりのいたずらっ子の目に思わずきょとんとしてしまう。

 ……流石名門直系子息、それも王子の側近になるべく力を入れて育てられた存在だと言うべきだろうか。多少傲慢さがないわけではないけど、私の好ましい点を意識的に見つけて押し出してきたんだろう好意に満ちた目は好ましい。純粋な好意を向けられるのは勿論、こんな幼い内から、感情を偽るのではなく制御することを知っているとは何とも味方として頼もしい。王子の側近として背を預け合うことになる相手として心から歓迎できる。そういう感情を込めて笑顔を返すと、彼は少し目を瞬いて屈託無く笑った。同じようなことを彼の方も感じ取ったらしい。



「……勘違いはされないだろうが、悪口を言っていたわけではないから」



 控えめに硬い顔と声で言ったのはチェスター=セプテム=ハーバート=ランドルフ。黒髪に空よりも少し濃い青い瞳は吊り気味で、華やかさの強い前二人とは少し印象が異なる。まあお父上が王弟であらせられるフィランダー様と殿下は従兄弟同士だから印象が似通うのは当たり前だが。

 第一騎士団長であるお父上、そしてかつて近衛隊長や元帥、騎士団長など色々な軍部の高位役職に就く者を輩出してきた武門として名高いランドルフ侯爵家の親戚達に色んな面でびしばし扱かれまくっているらしい彼は、どうやらあまり女の子が得意でないらしい。怯えているわけではなくともどこかぎこちなくかけられた声に分かっています、と笑顔を返すとほっとしたように肩から力が抜けた。そこをフィランダー様にからかわれて嫌そうな顔をしている。



「何だ、マルグリット嬢に嫌われたくなかったのか?ランドルフ」

「……頰をつつくのはおやめください、ローランド様。これから共に切磋琢磨し殿下のお役に立つ朋友となる相手の第一印象を損ねたくないと思うのは当然ではありませんか」

「何だ固いな。そう言うなら俺のことはフィランダーでもフィルでも好きに呼んでくれ。殿下はともかく、俺やマルグリット嬢にはそう畏まる必要ないだろ?」

「……王弟たるローランド公爵のご子息にそのような無礼は」

「ちょっと、私だけのけ者かい?まあランドルフ、叔父上は臣下に降られたのだし、それを言い出したらランドルフもカークランドも同じように王家の血を引いている。二人にそのように畏まる必要はないと思うし、私ももう少し楽に接して欲しいな。ね、マルグリット嬢もいいだろう?」



 無茶を言わないでくださいと言いたげに顔を引きつらせるランドルフ家のご子息を笑顔で無視して、殿下がこちらを向く。私は大人しくこくりと頷いておいた。殿下のお言葉だからというだけでなく、そちらの方がやりやすい。これから長い付き合いになるのだ。



「わたくしは家ではメイと呼ばれております。もし宜しければ、皆様も是非そう呼んでくださいませ。ランドルフ様の仰るようにこれから長くお付き合いさせて頂くことになるでしょうし、馴れ合おうとまでは申しませんが、互いに負担のない関係でというのはわたくしも賛成です」

「カークランド殿……」

「ランドルフ様、他の場合でしたらあなたが正しいと私も思います。ですが、……思い上がりのように聞こえるのは百も承知ですが、今回の場が特別なことは、ランドルフ様も理解されているでしょう?私達がこれから先、忌憚なく意見を交わすため、そして何より最大限殿下のお役に立つために。私も、これは必要なことだと思います」

「……と、いうわけだ。何、俺だって他の貴族の子供にまで気安くしろとは言わないさ。勿論そういう社交も全くできないようじゃ困るけど、警戒心を解かせるのは俺の方が得意そうだし。お前は堅物そうな印象担当を任せる……けど、ここは別だ、腹割って話せないようじゃ困るだろ」



 私達三人の意見は二つの意味で一致しているようだった。今後様々な方面でとることになるコミュニケーションを円滑にするため。そして、数少ない、自分と近い立場の人間と仲良くなりたい。国に捧げられるために産み出された故に、公私という概念がほぼ存在しない私達にとってここにいる面子は数少ない私の面を出せる、予定なわけだ。そりゃあ仲良くしたいに決まってる。


 だが、ランドルフのご子息はこうして明確に理由を述べても、なかなか首を縦には振らなかった。かなり葛藤している顔を見るに、彼もまた私達と仲良くしたいけれど、家で受けてる教育的に躊躇う、というところだろうか。口を開閉して俯いてしまった男の子を前に、どうする?どうする?と三人で目配せして、私が行っていい?と小首を傾げると二人に頷かれた。よしきた。



「……ランドルフ様、もしもわたくしがお嫌なのでしたら、わたくしは家名のままで構いません。ですからどうか、お二人には」

「えっ……」

「わたくしは女ですし、その、……この見目ですから。お厭いになるのは当然ですもの。ですから、」

「ま、待って欲しいカークランド殿、違うんだ、お、っ私は、」



 少し俯いた私を前に、可哀想に、ひどく狼狽えて手を伸ばそうとして慌てて半ば下ろし、やり場のないそれをふわふわとうろつかせて泣きそうな顔をしているランドルフ様。殿下とローランド様はあーあ可哀想とでも言わんばかりの顔をしている。いやだってこれが一番手っ取り早いでしょう。私は眉を軽く下げて意図してぎこちない笑みを浮かべた。



「……お気になさらないで。ランドルフ様が悪いわけではありませんわ。……殿下、少しわたくし、席を外しても」

「ま、待ってくれ!」

「きゃっ」



 目を滑らせた途端腕を取られて、思わず小さく声が出た。それにまた慌てて手を離しかけ、だが逃げられることを恐れるように弱い力で私の手を取った彼は、一瞬伏せた目を上げて私を間近から覗き込んだ。



「違うんだ、聞いてくれ」

「ランドルフ様……」

「君は私と同じ立場だし、そんな相手を性別で判断する気はなくて……その、さっき言った、共に切磋琢磨して殿下を支えていきたいというのは本心なんだ。君の容姿が嫌だなんて、本当に全然思ってない。誤解なんだ」

「……でも、わたくしの髪真っ白でしょう?父にも母にも似ていなくて……老婆のように見えるでしょう。気持ち悪がられたって、そんなの普通だわ」

「そ、そんなことあるものか!確かに君の髪は白いが、真珠のように、う、美しいと思う。その、気を悪くしないで欲しいが、君には似合うと思う。だから、その、」

「……なら、わたくしと仲良くしてくださる?」



 必死に連ねた言葉がいっそ口説き文句じみてきたあたりで、こちらを見守っていた二人の目がにやにやしてきた。自分がやらせたことながらこれは流石にかわいそうだとさっと話をまとめにかかると、彼はこくこくと勢いよく頷いてくれた。



「も、勿論だ!是非チェスターと呼んでくれマルグリット嬢」

「……メイとは呼んでくださらないの?」

「め、……メイ」

「嬉しい、ありがとうチェスター」


「あ、じゃあ俺はフィルな」

「私はレンかな。もちろん他の者がいる時は殿下と呼んで欲しいけど」

「え……はっ!」



 現状を把握して引こうとした手をしっかりと握り締め直して、今度は私が彼の目を覗き込む。顔を引きつらせた少年ーーチェスターの蒼い瞳には、悪魔のような笑みを浮かべた白髪の少女がいる。




「これから末長く、仲良くしてね、チェスター」




 ーー友達一号、ゲット!





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