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テスト用  作者: 愛餓え男
16/35

エコ魔導士 令和版 5話~

第五話 夏のある日


 夏のある日、タークはずっと気になっていたことをエコに聞いた。


「エコはマンドラゴラなんだろ?」

うん。そうだよ。突然どうしたの?」

 そういいつつ、タークがエコの頭に手を置いた。しっとりと湿ったような、みずみずしい感触。『“エコ”研究日誌』によればこれは髪の毛ではなく、植物でいうところの葉だという。

 エコが不思議そうにタークの顔を見る。


「俺には普通の人間と、どこも変わらないように見えるな」

「ターク、マンドラゴラ見たことある?」

「ないよ。あるのか?」

 タークが驚いて尋ねた。マンドラゴラ――ものの本によれば、魔法薬の材料として重宝されるが生態に謎が多く、魔導士にとっても貴重な代物らしい――など、一般人のタークが見たことがあるはずもない。


「ハーブ園にあるよ」


 エコはすんなりと、そう答えた。

 

『エコはマンドラゴラの巨大種である』


 例のファイルにあった、師匠の言葉が胸に引っかかる。マンドラゴラは植物だ。しかし、エコはどう考えても人間だ。

 マンドラゴラの根は、人間に似た形をしているという。だが、あくまでもそれは『似ている』のであって、根が人間のように動いたりするわけではないはずだ。


 タークは興奮と戸惑いがない交ぜになった複雑な気持ちで、エコの後について家の裏手にあるハーブ園に移動した。


 ハーブ園、とは言っても、畑と果樹園とハーブ園の間に明瞭な境目はない。


 畑の真ん中に果樹が植わっていたり、果樹園の真ん中にハーブが咲いていたり、ここの庭は、一見すると秩序が全くなかった。


「師匠はちゃんと考えて植えてるんだって言ってた。植物同士の相互作用があるんだってさ。アレロパシー? だったかな」


 しかしエコが言う通りなら、師匠には論理的な裏付けがあってこの混沌たる植物園を設計したらしい。ますますタークの中の師匠像に謎が増える。


 果樹園の奥は、自然にできた林と繋がっている。これまた明確な境目はなく、林はそのまま【リング・クレーター】のリム(クレーター外縁部の円形の丘)まで続く。夏の日差しが、木々に深い陰影を落としていた。


 エコは自然木と作っているハーブが混ざり始めるエリアまで来ると、そこに生えている一本の巨樹を指さした。

「これ、【森の木】って言うんだよ。大きくて、森みたいでしょ? で、その根元に生えてるのがマンドラゴラ」

 エコが指を木の根元に向ける。巨木が作る深い影にひっそりと葉を広げる、モスグリーンのロゼット植物(茎が極端に短く、葉が放射状に広がる植物)。――それが、マンドラゴラだった。


「これがそうなのか……。たしか、根の部分が人の形をしてるっていう話だよな」

 一見するとただ地味なこの草に、魔導士も欲しがるほどの力があるとはにわかに信じがたい。


「……わたしも気になってたんだよね。ね、抜いてみようか!」

 エコが笑いながら言った。タークは逡巡した。エコがさらに続ける。


「師匠は、これは大事なものだから絶対抜いちゃダメって、根を見せてくれなかったの。でも、気になるじゃない。……タークも見たいでしょ?」

 エコがいつもの笑顔で楽しそうにタークに尋ねた。


 タークが、ゆっくりと頷く。

「……見たい。気になる」


「ようし! 気にしないで、他にも生えてるから。いくよ~」

 エコがマンドラゴラに手をかけた。タークがエコの横に目をやると、たしかに、マンドラゴラの株が十数個群生していた。


「思ったより固い~。ターク手伝って」

 エコが助けを求め、タークと二人で脇から根を掘る。マンドラゴラの白っぽい根がのぞく。

 半分ほど掘り起こしたところで、再びエコがマンドラゴラの葉を持ち、引き抜く。

 ぶちぶちと大きな音を立てつつ、ついにマンドラゴラが土から抜けた。


 土にまみれたマンドラゴラの根は、二股に分かれた細長い芋のような形をしていた。

 ざらざらした根からは更に細かいひげ根が無数に伸びているが、エコが無理やり引き抜いたせいで、ちぎれていた。うわさに聞く霊薬の材料といっても、何の変哲もない植物に見える。


 根の部分に小さなエコがついているのではないかと疑っていたタークは、すこし安心した。

(これが成長して、エコみたいになるのか……?)


 タークが疑念を抱く。根の大きさは手のひら程度しかない。根の先端が二股に分かれているので人型に見えなくもなかったが、エコとは似ても似つかない。ただ、葉の色とみずみずしさは、エコの髪の毛によく似ているように思えた。


「……やっぱり違う気がするな。……」


 エコがポツリとつぶやく。



――



「エコが生まれたのは、6年前なんだよな? 生まれた時はどういう感じだった?」


 マンドラゴラを抜いてからというもの、エコは何となく沈んだ顔をしていた。自分とあの植物が出自を同じくする姉妹だと言うのだから、戸惑うのも仕方がないことだろう。


「そのあたりの記憶は、すこしぼやけてる気がするの。最初の記憶は……師匠が目の前にいて、わたしは座ってて、師匠の話を聞いてて……そう、師匠が一番最初に教えてくれた言葉は、『エコ』っていうわたしの名前だった」

「そうか……」


 タークも、自分の最初の記憶を思い出してみる。当然乳飲み子だった時の記憶はなく、幼児の時、母親について虫捕りに行った記憶が最も古い。確か、林の落ち葉の下にいる虫を捕る手伝いをしようと思ったのだ。捕った虫の脚をもいで遊んだこと、石をひっくり返したらムカデが出てきて泣いたことなど、ありありと思い出せる。


 だが、なぜそこへ行ったのか、そこが何処だったのかがすごく曖昧だ。感情が大きく動いた出来事しか思い出せない。


「でももっと前のことも、なんとなくイメージがある。なんだか、湿ってて、あったかくて、ゆらゆら揺れているような。深く考えたこと、なかったけど」


 エコが虚空に目をやる。手探りで先ほど淹れたお茶のカップを手にとると、ゆっくりと口に運び、傾けた。


「タークが来てからわたし、いろんなこと考えるようになった……」


 エコは目線をどこかへやったまま、独り言のように言う。


「自分ってなんなのかなって。どうやって生まれてきたのか、なんで生きてるのか。師匠に聞いておけばよかったな……」

「師匠か。俺が来てからだいぶ経つが……一向に帰ってこないな」

「タークは、師匠が帰ってきたら、どうする? ……また旅に出るの?」

「さて。どうするかな……」

 タークが腕を組んで考え込む様子を見せると、エコがタークに懇願するように言った。


「わたし、タークにここにずうっといてほしい。師匠と三人で暮らせたら、素敵だと思わない? タークが良ければだけど……」

「エコがそう思うなら、俺もそうしよう」

 タークはすぐに応じる。

「ありがとう、ターク」


 エコがタークの方に目を向け、手を差し出す。タークがその手を握った。

「師匠はすぐに帰ってくるさ」

「うん……」

 根拠のない、なんの慰めにもならない言葉だったが、エコは素直にうなずいた。



――



 とても暑い日。


 この日のお昼ご飯は、トマトの冷製スープと水瓜みずうりのジュース、それに、エコが最近はまっている小麦粉の生地で作った麺。生野菜と和えて、玉ねぎのソースをかけて食べる。それに、冷やしたヤギ乳を付けるのが最近の定番メニューだ。

 エコは魔法で氷が作れるので、夏でも冷たい食事が出る。


「ねえターク、師匠は本当に帰ってくるかな……」

 食べながら、エコが唐突にそう言った。


「どうしたんだ」

タークがフォークを置いて、エコの顔を見つめた。その表情に際立った感情は見られない。エコは冷静そのものに見えた。

 だがタークは、まるではじける寸前の風船のように危うげな雰囲気を、エコの表情に読み取る。


「師匠は、どこに行くとか、いつまで出かけるとか、なんにも言わないで出て行ったの」

「うん。そうらしいな」

 タークが相槌を打つ。

「わたし、タークが来てから、タークが来るまで……、本当に何も考えないで暮らしていたの。自分のことも、師匠のことも、なにもかも、疑問に思うことなんてなかった。でもタークがここで住むようになってから、師匠のことを考えられるようになった……」


 エコが額に浮かんだ汗を腕でぬぐう。時間が止まったような数分間が、そのまま過ぎていった。虫の声で、草原は騒がしい。夏空は、圧倒的に青い。そこに白い太陽が照っている。エコが口を開いた。


「師匠は、わたしを捨てたんじゃないかな。……」


 

 タークは師匠の部屋の本や資料を読むうち、師匠という人物の人となりを何となく理解し始めていた。

 それで浮かび上がってきたのは、師匠は強力な魔導士であり、研究熱心な勉強家で発明家でもあるが、興味のなくなったものにはとことん興味がなくなる自分勝手な人物像だ。

 師匠がエコという存在についての興味を失ったとすれば、エコの懸念が合っている可能性は高い。


「エコ……」


 タークは言葉を探したが、魔法のようにエコを慰める呪文は、見つからない。エコの心中を推し量ると、タークは胸が握りつぶされるように苦しくなった。


 エコにとって師匠は産みの親であり、教師であり、唯一の理解者だった。

 マンドラゴラの魔法生物――唯一無二の存在であるエコは、自分以外に仲間といえるものがいない。おそらく、子どもを作ることもできないだろう。

 一種かつ一個体の生命。四年後に迫ったエコの寿命は、そのまま『エコ』という種が絶滅するまでのカウントダウンでもある。


 エコは、師匠が居なくなってから一年あまりの時間を一人で過ごしてきた。意見が交わせる他者が誰もいない家に、一人きりでずっと放置されていたのだ。

 師匠にもエコが孤独になることは分かっていたはずだが、それにも関わらず長期間戻ってこないということは、やはりエコに興味を失ってしまったのだと考えるのが自然だ。


「気休めかもしれないが、エコが望むのなら俺はずっとここにいるよ」

「ターク……」


 タークに言ってやれることはこれしかない。しかし、エコは静かに泣き始めた。二人だけの時間が流れる。タークとエコは、お互いがお互いにとってかけがえのないものになったと感じる。そんな、夏のある日。






 ――そしてタークとエコにとって、ついに来るべき時が来た。

 この緑の切妻屋根の家と別れ、【リング・クレーター】の外へと旅立つ時。


 それも、そんな夏のある日の出来事だった。





――――――


第六話 襲撃


 朝から嫌な予感がした。……本当に嫌な予感が。

 タークの嫌な予感は、よく当たる。


「来たか……?」


 朝食を食べた後すぐ、タークは表の草原に出ていた。ウサギや野鳥を獲るため……、エコにはそう言っておいたが、本当は、襲撃に備えるためだ。


 久しぶりに、旅路で携帯していた大刀だいとうを持ち出し、腰に下げる。懐かしい重みを感じると同時に、すっかり鈍っていたカンが戻ってきた。

 胸に暗雲が立ち込める。


 タークの追手は、男の魔導士だった。数回襲われ、そのたびにタークは逃げた。しかし、もう放浪の旅は終わった。タークには定住の地がある。もうこれ以上逃げるわけにはいかない。


 魔導士と戦いになれば、先に相手を見つけられるかどうかが勝敗を分ける。


 タークは身を隠しつつ、辺りを伺った。本当に追手が来ているのかは分からないが、タークには、胸の嫌な予感だけで充分警戒の必要があると思う。――このカンひとつでこれまで生き抜いてきたのだから。


 タークは茂みの影に身を潜めて、耳を澄ませる。風が北から南に吹いている。天気は曇り。空気には湿気が多い。このまま【リング・クレーター】外縁の山に向かい、警戒を強めるつもりだった。

 家の方を見ると、裏でエコが洗濯物を干している姿が見えた。



 そして、家の反対側に目をやると――――。



 そこに誰かが居た。




「エコ……ッ!!」

 明らかに、杖を持った人影! タークの全身が熱くなる。


(このままではエコに危害が及ぶ……!)

 タークがもっとも恐れていた事態が目前に迫った時、タークがとった行動は……エコのもとへ全力で駆けることだった。



そして次の瞬間……家が、爆発した。



――



「あの家だな! あの野郎が居やがるのは! ……!」


 魔導士フィズンはほくそ笑んだ。同時に指でモンを刻み、口で呪文を唱える。


 五週間ほど前、フィズンは抹殺すべき対象……罪人タークを見失った。


【ヒカズラ平原】に逃げ込んだタークは、必ずどこかでしびれを切らして人里へ降りてくる……。

 そう読んだフィズンは、魔物の多い【ヒカズラ平原】に深追いしていくことはせず、すぐに近隣の街で人を雇い、網を張って、タークを待ち構えた。

 しかし、待てど暮らせどタークは人里に姿を現さない。そこでフィズンが行ったのは、魔法生物による捜索だった。


 フィズンが使った魔法生物は、白い羽をした蝶々だ。フィズンと『感覚共有』ができるよう設計してあるので、フィズンは街から安全にタークを探すことが出来た。

 これを【魔法陣】で数十羽創り、【ヒカズラ平原】へ向けて放つ。


 魔法生物の蝶は、捕食を避けるため毒のある蝶に似せて創ってある。だが、それでも野生動物に襲われて目減りする。

 目減りする分をつぎ足しつつ捜索を続け、タークを視界に収めたのが二週間前のこと。


 フィズンのいた街からここまでは急いで二日ほどの距離だが、準備とタークの動向観察で時間を食ってしまった。フィズンの所属する魔導士協会の上層部から、何度も何度も催促があった。

 これ以上逃がすようなことがあれば罰が下る。フィズンにも、後がない。



 ――狙うは、タークが住んでいる家。一緒に住んでいる女の子がいたはずだが、フィズンにその程度の巻き添えを気にする理由はない。


「すべてお前のせいだぞ……!! 死ねッ!! 『バンゴリゾ』!!」



 フィズンの爆撃魔法、『バンゴリゾ』が発動する。わずかな静寂のあと……、家の中で、激しい爆発が起こった。


 これで、タークは戦闘不能になるはずだ。あとは土人形【ゴーレム】を送り込み、タークを殺せばやっと仕事が終わる!


『バンゴリゾ』と【ゴーレム】の創造……。


 フィズンはマナの大量消費によって激しく息を切らしながら、顔に笑みを浮かべた。早いところ仕事を終わらせ――街に帰って何をしようか。そんなことを考えていた。




――



 家の爆発と同時に、エコは激しい衝撃で吹き飛ばされた。


 そして、そのまま背後の茂みに突っ込む。


「エコ!!」 

 タークが悲痛な声で叫ぶ。エコのもとへ全速力で駆け寄ると、エコの体を抱き起した。

「エコ! エコ! 大丈夫か!?」

 タークが大声で呼びかけると、エコが顔を歪める。意識はある。体を調べてみたが、幸い大きな怪我はしていないようだった。

「ターク……」


 エコが薄目を開けた。

「ターク……大丈夫? 何があったの?」

 エコは混乱している。タークは早口で状況を説明した。

「追手だ! 俺の追手が来た。すまない、エコには害が及ばないようにしようと思ったんだが――。さあ、急いでここから離れろ、俺は、あいつと決着をつける!」

「追手? タークの? やだよ、なにがなんだか――」





 エコは体を起こすと、それを……《《その光景》》を見た。



 家が、燃えている……。



 緑の屋根が吹き飛び、壁が崩れ落ち、煙突が火を噴いている。

 居間にあった家財道具が周囲に飛び散らかり、棚が燃え、割れた蛍玉が炎に照らされ、光っている。


 玄関扉は蝶番ごともげ、玄関から離れたところに落ちている。火の手が次第に広がり、廊下を呑み込もうとしていた。


 何かが動く気配がして、エコが視線を少し横にずらした……、爆風に巻き込まれたのか、ヤギが一頭黒焦げになって呻いている。エコがアラミミと呼んで可愛がっていた、角の長い白ヤギ。春先に生まれたばかりの黒い子ヤギが、その脇で悲しそうに鳴いていた。



「あ……………………」



 耳元でタークが何か叫んでいる。よく聞こえないが、しきりに『ニゲロ』と言っているようだ。


(ニゲロ? ……ニゲロってなんだっけ……)

 エコの心に潜んでいた何かが、次第に胸にこみあげてくる。家の向こうに、どす黒い気配が見えた気がした。


(あ、ニゲロって『逃げろ』か……。なぜ? なんでタークはそんなこと言うの?)

 エコが歯を食いしばる。オレンジ色の瞳で、煌々と燃える炎を見つめていた。拳を固く握る。

 エコの血流が速くなる。心臓の鼓動が、エコに何かを訴えかけるように弾んだ。冷えていく頭の中に一つだけの感情が満ちていく。



 ――怒り。


 生まれて初めて感じる激しい怒りの衝動が、エコの全身を支配した。



「逃げろ、エコ! あとは俺が……!」

「違う!!」


 否定。エコの突然の叫びに、タークが肝を抜かれる。


「タークはここにいて。あいつは、わたしが倒してやる……!!」

「エ……ッ」


 タークが止める間もなく、エコが鋭く駆けだした。

「まっ……、とまれ!」

 タークも後を追う。だが、エコの脚の方が速い。


 

 燃え続ける家の影に、なにかが動く気配がする。エコは走りながら魔法を詠唱した。

「『ウォーターシュート』!!」

 突き出した手の平から、人の頭ほどの水の球を矢継ぎ早に放つ。


 家の影で、激しい音がした。


 エコはいったん脚を止めて、乱れた呼吸を回復させる。そこへ、家の中からさらに二体、黒い影が近づいてくる。

 瓦礫の中を燃える火をものともせず、接近してくるそれは、土くれでできた不細工な土人形だった。


【ゴーレム】。無機物でできた疑似生命体だ。様々な形と用途があるが、こちらを認めてのそのそと接近してくるのを見ると、捕縛が目的らしい。

 エコは【ゴーレム】の向こう側に人影を認めた。魔導士フィズンだった。


「あいつ! あいつがやったんだ……!」

 すぐに詠唱を始める。距離は、20レーンほど離れている。


「『ウォーターシュート』!!」


 エコの手のひらから再び三発の水の球が放たれ、【ゴーレム】の体を貫いてまっすぐ魔導士に向かった。

 だが水弾は、魔導士の目前で突然弾け飛ぶ。


「なにっ!? ――ぎゃあっっ!!」

 エコの体に電撃が走った。エコは悲鳴を上げ、家の影に転げ込んだ。


 エコは瓦礫に隠れながら、相手の状態を覗いた。

 杖を持った魔導士の前に、太い氷柱が打ち立てられている。先ほどエコの水弾を防いだのは、あの氷柱らしい。そして、魔導士がエコに放った電撃の魔法と【ゴーレム】……。この三つの魔法の消費マナはそこそこ重いらしく、魔導士はその場で息を整えているようだった。


「大丈夫か!? エコ!」

 やっと追いついてきたタークが、エコを助け起こす。

「大丈夫、びっくりしただけ! ターク、来るよ!」


 エコが視線を向けた先に、タークも視線を合わせる。

 二体の【ゴーレム】がのそのそと接近してくる。

「ターク、わたしは魔導士を倒す! タークはこいつらを抑えて!」

「なにっ!?」


 タークがエコに反論しようとした瞬間、タークに向かって【ゴーレム】が突っ込んでくる。

「ちっ!」

 タークが大刀だいとう を抜き放ち、【ゴーレム】を力任せにたたき切った。しかし【ゴーレム】は止まらず、タークはやむを得ず後ろに下がった。




 エコは、再びフィズンと対峙した。




――



 エコが水弾を続けて放つ。フィズンが氷柱を立ててそれを防ぐ。


 フィズンの電撃は、エコの『ウォーターシュート』よりも射程範囲が狭いようだ。それはいいが、このままではどちらにも決定打がない。


「は、は、は、はっ」


 エコは小刻みに呼吸をする。呼吸を切らし、動きが止まったら終わりだ。適切な距離を取りながら、牽制で魔法を使い続けなくてはならない。

 エコに隠し玉があるように、きっと相手にももっと強力な奥の手があるはずだ。


 相手に守りでもマナを使わせて、大技を撃つ余裕を与えないように気を付けながら、慎重に戦う。



 エコは、疲れていた。本気の魔導戦をやるのはこれが初めてだ。敵の攻撃が来るという緊張感、走りながら魔法を使う疲労、しかしそれは、相手の魔導士も同じに違いない。



「おい!! お前っ!! おとなしくタークを引き渡せ!」

 魔導士がエコに向かって大声で叫んだ。


「罪人はしかるべき罰を受けなきゃならない! タークは死罪だ! そいつは、魔導士を襲撃した凶悪犯だぞ! お前も魔導士ならその意味は分かるだろうが! 庇うと、お前も処罰するぞ!」

 一歩的な物言いだった。エコの頭に血が上る。

「うるさいっ! いきなり来て家を壊して――勝手なことばかり言って!」


 エコは口早に詠唱する。

「これでも、くらええぇっ!! 『フレイム・ロゼット』!!」


 エコが両手を重ねて勢いよく突き出す。何もない空間から炎が上がり、紅蓮の火球となって、一直線にフィズンに向かう。

「!! 守りの氷柱っ!」

 フィズンはとっさに詠唱し、地面に人の胴回りほどもある太い氷柱を打ち立てた。

 火球が氷柱に激突する。すさまじい勢いで辺りに蒸気が広がった。火球の膨大な熱量が、氷柱の大半を一瞬のうちに昇華させてしまった。フィズンの背筋がぞっとする。


「ぜっ、はっ、はっ、はっ……。あ、あのガキ……素手でこれか!? なに!?」


 フィズンはとっさに魔法で風を起こし、立ち込める蒸気を払う。エコの姿がない!

「どこへ行きやがった……!」





「ぜーっ、はーっ、はーっ、はーっ、はっ……やっぱり、杖がないと威力が……!」

 エコは魔法で使った呼吸を取り戻すため、家の近くの茂みに身を隠していた。杖がないと、やはりあの強力な火の魔法は使いこなせない。エコが家の方を見る。


 杖のある場所は、廊下の奥のエコの自室。


「杖がないと……!」

 ぐっ、と息を止め、エコが走る。茂みから出て、目指すは部屋にある卵水晶の杖。

 フィズンはエコを見つけ、その狙いに気づいた。


「させてたまるか!」

 フィズンも駆けだす。走りながら魔法で鋭利なつららを作り、エコに向かって射出した。

「うぎっぃ!」

 エコの肩につららが刺さる。エコは思わず体勢を崩した。

「そこだ!」

 フィズンは立ち止まり、さらに何本ものつららを作ってエコに放っていく。


「ウゥッ! ……『グロウ』!」

 片手で傷を抑え、もう片方の手を土に置いて、エコが唱えた。するとエコの足元にあった土から双葉が芽吹き、瞬く間に成長してひと固まりの茂みを作った。


「はあ!!??」

 フィズンが驚く。つららは茂みに阻まれて、威力を殺された。

「なんだあの魔法は……!」


 茂みの影から、また数発の水弾が飛んでくる。フィズンはとっさに氷柱の盾を作り、水弾を弾いた。

 茂みの奥から、ドアの開く音がする。エコが自室への扉をくぐったのだ。


「あいつよくも……!! ……オレの奥義を、味わわせてやるぜ……!」

 フィズンが詠唱を始めた。


――



 タークは、【ゴーレム】二体を必死に退けていた。【ゴーレム】は動きこそ遅いものの頑丈で、多少キズつけても他の部位をすげ変えていつの間にか治っている。ただ、削れた分の体積は戻ることなく減っていくようだ。


「ちぃっ!」

 タークの体に向かって、【ゴーレム】が体当たりを仕掛けてくる。すんでのところでそれを躱したタークだったが、背後にいたもう一体に捕まってしまった。そのまま、重みに任せて地面に抑え込もうとする。


「……ぐおおっ!」

 すさまじい力で抑えつけられ、タークが溜まらずしゃがみ込む。土のかたまりがのしかかってくる重みに潰されないよう、必死で抵抗した。視線の先に、部屋に入るエコの姿が見えた。


「……ふんっっ!! ――ぬああっ!!」

 気合と共に、タークが【ゴーレム】をはねのけた。それとほぼ同時に、手に持った大刀で力任せに切りつける。両断、とはいかないものの、【ゴーレム】の左肩が切断され、首筋を皮一枚まで切り詰めた。

「ぬおおおお、らあぁぁぁ!!

 更に、掴みかかってきたもう一方の【ゴーレム】に飛び蹴りを浴びせて押し戻すと、先ほどの【ゴーレム】の頭部をもぎ取って叩きつけた。

 同時に、【ゴーレム】の体が崩れて魂が抜けたように動かなくなる。


「ん!?」

 タークが怪訝に思い振り返ると、魔導士が詠唱している姿が見えた。とっさにカンが働く。

 【ゴーレム】を使役するのに使っていた力を、魔導士が自分に戻したのだ。とすれば、魔導士が詠唱しているのは……!!


「エコ!! 危ない!」


 タークが叫んだのとほぼ同時に再び起きた爆撃が、エコの部屋を爆炎で包み込んだ。


「エコ!!」

 エコの部屋が粉みじんに吹き飛び、柱を残して壁と屋根が砕け飛ぶ。爆片が飛び散る中、タークが爆心地に向けて走り出した。

「エコ! エコ!! ――ぐああっ!」

 タークのふとももにつららが突き刺さった。魔導士フィズンが、こちらに杖を向けている。


「げへっ、ひっ、ひっ、ひっ!! 魔導士は片付いた!! あとはお前だけだ、罪人野郎!!」

 息を乱しながら、フィズンが下品に笑う。

「う、う、うぁがあああ!!」

 タークが絶叫する。太ももの痛みに構わず、フィズンに向かって一直線に走り出した。

「お前も……くたばれぃっ!」

 フィズンが杖をかざすと、更に何本もの大きなつららがタークに向けて射出された。タークは刀剣で必死にそれを切り落としつつ、フィズンに肉薄する。だが、あと一息で間合いに入るというとき、フィズンが放った電撃の魔法がタークに直撃した。


「かっ……ぁ」

 タークはかろうじて意識を保っていたが、電流の走った筋肉は思うように動かない。


「はっ、はっ、はっ、とどめ、だ……」

 息切れを起こしながら、フィズンが再びつららを作る。

「死にな……」

 そして、撃ち出した。


「う……」

 タークの胸めがけて、鋭い氷の刃がまっすぐ飛んでくる。タークは飛来する氷柱を認識することはできたが、体を反応させることは出来なかった。死を覚悟した瞬間――タークの体が横に引き倒される。間一髪のところで、氷の刃が空を切った。

「!?」

 タークが腕を見ると、いつの間にか植物の根が絡みついている。これに引っ張られて倒れたらしい。だが、なぜ?



「やめろ、お前っ!!」


 タークがその答えに行きつく前に、フィズンの絶叫が聞こえた。その視線の先に……杖を構えたエコがいた。


「はあっ、はあっ、はあっ……」

 ところどころ服を焦がしたエコは、両手で持った杖を頭上に振りかぶり、目をうす開きにしている。そして杖の先端、エコの直上には……燃え盛る大火球があった。


「あなたは……わたしたちに酷いことをした……」

 エコは泣いていた。失ったものの大きさと、これからしようとしている行為の重さ。


「わかった! 謝る、謝るから杖を置け!」


「師匠の家を壊して、タークを傷つけて、殺そうとした!」

 杖を持つ手が震えている。しかしエコの怒りを具現した大火球は、ますます激しく燃え盛るばかりだった。


「ひっ、やめろっ、やめ、やめてっ……」

 煌々と輝く火球に照らされ、フィズンが腕で顔を覆いながら後ずさる。度重なる魔法の使用で呼吸が切れかかっているので、逃げ出すこともできない。

 その顔面に浮かぶ大量の汗は、熱波によるものだけではなかった。

 


「……今すぐに、全部つぐなえぇっ!」


 エコが、杖を地面に叩きつける。その動きに呼応して、大火球がフィズンに向けてゆっくりと動き出した。



「うわ……うわああぁあああああああああああああ!! し、……死にたくねえっ……!」


 フィズンの断末魔が、やけにクリアに聞こえた。




――――


第七話 ヒカズラ平原の人食い魔獣(途中)


「うぅっ、うう、うううううううぅぅ~~」


 タークの胸の中で、エコは泣いていた。


「うううううぅ、ぐっ、ひっ、うううぁぁああああ~……」

 エコは息を切らしながら、タークにすがりついている。

 無理もない。失ったものと、失ってしまうかもしれなかったもの。エコが恐怖したのは、怒りに任せて、人の命を奪おうとしていた自分自身だ。



 あの瞬間――、フィズンが恐怖の叫びをあげた瞬間。

 エコはとっさに魔法の軌道を変え、灼熱の大火球をフィズンからそらした。おかげで、フィズンは髪が焦げ服が燃えて軽いやけどを負う程度で、失神はしたが、生きている。


 タークはそんなエコの心を思いやり、エコの頭をなでた。そして、焼けてしまった家に目線をやった。

 もう、とても人が住める状況ではない。畑にはすでに数匹の【魔物】が来て、警戒心のないガチョウを襲い、食っている。生き残った二頭のヤギだけは逃がしたが、生きていくことは難しいだろう。

「あの家が、ここの守りだったんだな……」


 魔導士の使う【魔物】除けの秘法には、触媒となる物体が必要だ。その触媒であった緑の切妻屋根の家が破壊されてしまった以上、もう以前のような生活はできない。





「起きろ」

「………………!」


 倒れていた魔導士――フィズンが目を覚ました。喉元にタークの大刀だいとうが突きつけられている。

「すぐに消えろ。二度と俺たちに近づくな。――でなけりゃ、今すぐに殺す」

 フィズンは口を引き結んで細かく首を上下に振った。

「杖は……?」

「燃やした。行け。まっすぐ、振り返らずに」

 フィズンは身を起こすと、タークに見送られながらふらふらと歩き、一定距離離れたところで走り出した。

 背後にエコが立ちあがる気配がした。


「ターク……」

 泣きはらした顔は紅潮している。エコを慰めたかったが、こうなるともう余裕がない。


「エコ、大丈夫か?」

「うん……。家、燃えちゃったね」

「そうだな……。こうなってしまった以上、もうここには住めない」

「そっかあ。困ったねぇ……」

「ああ。ほかに住むところを探さないとな」


「……え?」

 エコが、本当に意外そうな顔でタークを見る。それから表情を曇らせてうつむき、腕をだらっ、と垂らした。


「ほかに住むところなんて、ないよ……」

「エコ?」

「だって、師匠が帰ってくるもん。それまでわたし、ここにいないといけないの」

 エコが無表情に言った。まるで、それ以外選択肢がないかのような、どこか人ごとのような、ある意味無責任な言い方。

 タークは悲しくなる。エコの師匠に対する執着心と想いは、エコ自身にもどうにもならないほど、エコの精神に深く根付いてしまっている。たとえ師匠が自分を捨てたのだとしても、エコは自らの意志でここに縛られているのだ。


 畑に集まった【魔物】たちが、いつの間にかいなくなっている。タークは少し違和感を覚えたが、エコに顔を戻す。



「……エコ、難しいかもしれないが、仕方がない。エコには、ここに住むための魔物除けは張れないだろ? 家を建てるのも、無理だ。どちらも師匠が作ったものだから」

 タークはエコに近づくと、下に垂れた手を掴んで、ぐっと握りしめる。

「でもさ、だって、ターク……!」

 エコが泣きそうになった顔を上げ、反論しかける。だが、すぐにまた下を向いてしまった。


「だって……」

「俺の使ってた荷物は焼け残っていたんだ。ここに、ひとまず旅に必要なものはある。これからどうするかは――」

「助けてくれ!!」

 タークが話している途中、遠くから聞き覚えのある人の叫び声が聞こえた。エコとタークが振り向く。


「たすっ、たすけっ……!!」

「フィズンの奴!」

 タークが毒づく。消えろと言ったのに、性懲りもなく戻ってきた。タークは警戒を強めた。しかし、その背後を見て唖然とする。


 ――その背後にいたのは……。



「あいつ!! ふ……ふざけんなよっ!! エコ、走るぞ!! 逃げるんだ!」

 荷を担ぎ、まだ何が何だかわかっていないエコの手を引いて、タークが全力で走り出す。


「たすけっ! ああっ!! ひいぃっ!」


 恐怖に顔を歪めたフィズンの背後……山影で、巨大ななにかが動く。小鳥や小動物が、我先にと山から逃げ出す。林の木々よりも巨大なものが、ゆっくりと姿を現した。


 巨大な耳と長い鼻を持ち、大木をやすやすと超える巨躯を、六本の巨大な脚で支えるその生物――【ヒカズラ平原の人食い魔獣】と呼ばれる怪物は、ものが掴めるようになっている二本の脚に食べかけのヤギを掴み、最後の一口を大きな口に放り込んだ。


 骨を噛み砕くすさまじい音が、遠くを走るタークたちのもとにまで届いてくる。



 【ヒカズラ平原の人食い魔獣】は、その血走った目線の先に、フィズンとタークとエコを捉えた。

 そして、その方向に向けてゆっくりと踏み出す。


 巨獣の一歩は、タークたちの十歩に等しい。巨躯ゆえに緩慢に見える動作は、大地に対する速度で見れば、タークたちより圧倒的に速かった。


 背後に迫る【ヒカズラ平原の人食い魔獣】の存在を地響きとして感じながら、タークとエコは必死に走った。

「死にたくねえっ、ひっ、死にたくねえっ!」

 フィズンがこちらに近づいてくる。タークは舌打ちした。


 フィズンは、あわよくば魔獣の注意をエコとタークにそらそうというのだ。今すぐ斬り殺したかったが、そんな暇はない。ただ必死に走るしかなかった。


 ここ【ヒカズラ平原】で最も恐れられている魔物、【ヒカズラ平原の人食い魔獣】は体長15レーンをゆうに越す超大型の魔獣だ。視覚は鈍く、動かないものを察知できないが、聴覚と嗅覚にすぐれ、動物ならなんでも食べる。巨躯を維持するために必要なエネルギーを求めて、常に餓えている。なおかつ“食いだめ”もするので、発見されたら最後だ。


「ぎゅごぉぉぉおおおおおっ!!」

 空気を揺さぶる轟音を発し、魔獣が走り出した。100レーンほどの距離は、魔獣にとってはあってないようなものだ。三人と巨獣の距離は、どんどん詰まっていた。



「ごがぁあぁあああっっ!!!!」


「エコ! 林に入れ!!」

 タークがエコに向けて叫ぶ。林に生えている一本の巨木の影に二人が入ると、フィズンまで同じ方向に逃げてくる。

「くそ、急げ!」


 魔獣が方向を変え、突撃してきた。完全にこちらを狙っている。

「もっと奥だ! 林の奥に行くんだ!!」

 タークが叫ぶ。魔獣の巨体が、巨木に激突した。巨木はかしぎ、魔獣に掴まれて引き倒された。


「ターク、このままじゃ捕まる! あいつ、こんな木は簡単に倒しちゃうよ!」

 エコが立ち止まり、背後に振り返った。


 魔獣が吠え、太い前脚で次々と林の木を叩き折りながら接近してくる。

「もうこれ以上逃げられない! なんとか追い払わなきゃ! フィズン! フィズンも手伝って!」

「そんなことが出来るのか!?」


「わたしとフィズンの魔法なら!」

 エコがフィズンに顔を向けた。二人が目を合わせる。エコの曇りのないまっすぐな視線。フィズンが唾をのむ。


「バカなっ! あんな魔獣に、二人だけでかなうものか!」

「違う! 魔獣だって、わたしたちが歯向かってくるなんて思ってない。嫌がらせれば、追い払えるはず!」


 魔獣が木々をなぎ倒しながら接近してくる。決断に使える時間は、ほとんどなかった。


「フィズンは氷で目を狙って!! 顔面に攻撃を集中する!」

「……くそッ!!」

 フィズンが詠唱し、氷の刃を巨獣の顔面に向けて放った。

 杖がないせいでつららの速度も大きさも十分ではなかったが、巨獣は反射的に目をつぶり、動きが止まる。


「……『フレイム・ロゼット』!!」

 その隙にエコが大火球を作り、魔獣に向かって投げた。大火球は高熱を放ちつつ魔獣に向かい、魔獣の鼻先を爆炎で包んだ。

「ごぎぃぃぃ!! ぶうるあああっ!!」


「イヤがってる! やっぱり、火は苦手なんだ!」


 エコは一息吸うと、今度は火球を少し小さく作って放った。続けて二回、魔獣の手前に落とす。倒れた木々に火炎が燃え移り、魔獣とエコたちの間に山火事が巻き起こった。

 フィズンもその意図をくみ取り、足元の落ち葉に小さな火をいくつも放った。


 枯葉の積もった林床が、一気に燃え上がった。


「逃げよう! 炎を隔てれば、こっちには来ないはず!」

「わかった!」

 エコがタークの腕を引いた。タークもすぐさま走り出す。フィズンも後からついてきた。



 三人は【リング・クレーター】外縁の山を駆け上がると、体が動く限り走り続ける。1000レーン以上離れたところで、ついに力尽き草原に倒れた。

「あーっ、はーっ、はー、はー、はー」

「ぜえっ、ぜえ、ぜー、ぜー、ぜえ」

「ぐふっ、はっ、はっ、あっ、はっ」


 魔獣の声も足音も、気配も消えた。呼吸が整うまでしばらくかかったが、どうやら逃げ切れたらしかった。逃げてきた方から、ものすごい量の黒煙が上がっている。

「山、燃やしちゃったね……」

「生き残るためだ、仕方がないさ……」



――


 

(この後の流れ)


フィズンと別れる

師匠を探そう! という決意をする

御樹が見える。あそこのふもとがタークの故郷。それまでにトレログとイルピアがあるからそこでも師匠を探そうって話になる


レッツゴー!









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