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VALENZ TAXI  作者: 孤独
墓参り編
81/100

過去作品のラスボスをお墓参り


日野っちが灯達と行動していた頃。


「お待たせしました」


ガンモ助さんは私情で、"テレポート"を使用してアメリカのとある場所に来ていた。

出迎えたのは同じ日本人の山寺光一と、以前、出会ったジェルニー・ギーニ。


「おーっ、これがお前等のところか」

「口を慎みなさい。光一」


興味津々の光一を咎めるギーニ。この男の強さは買っているが、敬服するラブ・スプリングがこんな人物を高く買っているから許せない。単なる嫉妬だ。

依頼内容の再確認であり、その裁量を託されたのがギーニであった。


「あなたの言っていた事ですが、どうにも理解できないところが」

「ほぅ?」

「あなたのその手は、果たして汚せられるのですか?随分、綺麗な手をしております」


いないが、アッシ社長と同じ意見にあるギーニだった。

光一を連れて来たのは、


「ここにいる男は、確かにあなたが消えて欲しい人間を消せる腕前がある。絶対にそうします」

「俺はその役目かい。呼ばれた理由が分かった……」


ただの責任転嫁。とはいえ、光一はこの手の仕事はプロだ。

しかし、何を言っているだと、呆れた表情で


「これ以上は巻き込みたくないのだ。私の問題であり、私だけが、この問題に取り組めるべきだった。不本意にアッシ社長にも、あなた方にも迷惑をおかけした」


1人は無力だった。ホントに無力だと、また思い知った。


ガンモ助さんのその言葉を確かに冗談ではないと、瞬時に理解して笑い飛ばして去ろうとする光一。


「じゃあ、帰るぞー。もういいじゃねぇか、ギーニ」

「なんですと!?」

「所詮、人生は自分のもんだ。あーだこーだ、男が決めたら止まんねぇ。俺達は第三者」


本気で帰りやがった……。

溜め息をついて、ギーニはガンモ助さんを見たが、


「男と女さ。娘が知る前でいい。妻は、黙ってくれた。私はもうそれだけで良い」

「その差でしょうか?本当に、そうですか?」

「ああ!何もない!私は、父として失格なんだ!今更、止まればなにがあるという」


止めることはギーニにはできた。そして、まだ……できるのである。

それと噂程度であるが、


「あの小さな。ラブ・スプリングと言ったかな、彼は?」

「ラブ・スプリング様は忙しいのです。ロシアで人探しをしているとか、なんとか……まったく、なぜ、お1人で敵国に行くのでしょうか?」


ここが彼にとって、大きな別れ道であっただろう。もし、ここでラブ・スプリングについて追求すれば変わっていただろう。人とロボットの差を感じるような、出来事。どんな用事かもギーニが知らなかったのは、痛いことだった。



◇        ◇



「いやー、捜した捜した。ロシアにいるって情報だから、焦っちゃった。ダーリヤに怒られる」

「私の本来の所属は鵜飼組である。そう長居しない」


一日経って、ラブ・スプリングは捜していた人物を発見した。

上空から落ちてきた勇薙の治療に当たり、回復させた。世界屈しの名医、リガー・ロペスという人物だ。日野っち達が訪れた時はロシアにいたが、今はスウェーデンに来ていた。



「しかし、アメリカに行く用事もないぞ」

「アメリカじゃなきゃいいんだね」

「そーいうわけでもないが……」

「ロペスのような、フリーダムな名医はそういないからね」

「君のようなフリーダムな支配者もいないがね」


ロボットであるが、"電離計算体"を持つラブ・スプリングの治療能力はリガー・ロペスの腕よりも優れているかもしれない。しかし、分野というのは必ずあり、ラブ・スプリングの治療範囲が外傷などに特化している。

そーいうところを感じて、リガー・ロペスは単刀直入に


「診て欲しい人がいるんだろ」

「うん!……まぁ、口述作りだけど」

「?」

「君の意見があれば、僕も大きな一手をしようとね。最近、情勢も怪しいから。ここらで動いておかないと」


ラブ・スプリングの考えていることは人間らしさを取り除いた、悪魔的な行いである。まぁ、悪魔とは人のことを示すのではないかと、弱者は抱くことがある。


「漆木知与という女性を診て欲しい。彼女は僕にとって、重要な研究材料になるね」


溜め息を漏らして、かつての仲間の状況を尋ねた。


「光一さんは無事でしょうね?」

「ふふ。光一は元気だよ。良くある事じゃないか、ヘッドハンティングってさ。何もしてないよ」



◇        ◇




ドバアアアァァァッ



"旱魃レ・ジーガ"は、自然という天然成分と、海の中で死んでいった者達による死者の怨念のような力が組み合わさり、生み出された魔。

道連れにするという、人生においては正しいようで不条理なことを体現したところ。

人は誰であれ、死ぬから。



「ぶはあぁっ」

「あーーーっ」



灯の一撃によって、異空間は崩壊した。この女の一撃あっての脱出劇。

海域は消滅。海の一部が抉られるように消え、日野っち達の潜水艦は海上へと一時浮上した。


「出られたみたいだね、今。朝の8時だ」

「随分彷徨っていたわ」


沙耶と福道は比較的に冷静であった。そして、潜水艦の役目を果たして、船へと”変型交代”した。


「お腹空いたまま~」

「う~」

「我慢しろ」


"旱魃"の能力の影響は受けたままであり、餓死しそうな勢いに思えた。しかし、人は早々に餓死にならず、痛い思いばかりするのである。


「灯はシカトしましょう」

「コラコラ、清金」


海底をぶん殴るため、潜水艦から飛び出した灯は船内にはいなかった。発進しろと、意地悪な清金は思っていたところ。



「ぷはぁっ!あーーっ!やばかった!なんとかみんな無事ね。タオルない?」


灯も海上に浮上し、船上に上がった。なんとか死者は回避した一同。しかし、日野っちは慌てて全員に知らせる。


「大変だーー!船底に穴が空いてるからこの潜水艦!沈むぞ!!」


せっかく謎の海域から脱出したのに、頼みの船がもうすぐ沈むところなのだ。やべっ、みたいな表情をするのがかなりいたが、


「全員、運べると思うか、福道」

「鯉川が無理そうなのがキツイわ。頭数が足りない」

「あなた達はデフォで海面を突っ走る気か!?」


"超人"と常人では思考が大きく違うようだ。この状況、船での移動が限定される日野っち、美癒ぴー、福道の3人にとっては厳しいものだ。そんなとき、灯が


「こーいう時のために、ミムラとのんを残してきたのよ。(裏切京子もだけど)」

「手があるの?」

「もちろん」


電波がまったく届きそうにない海上だ。特別な連絡システムは存在しないが、ことミムラに限ってはあり得ない事はあり得ない。



プルルルルル


「やっぱり、ミムラの携帯なら繫がるわね」

「連絡とれそう?」

「"天運"を侮るなって事よ。こーいうSOSは、あいつに届くわ」


ここで海難事故や水難事故について。本編ではあまり関係のないことですし、社会人になったら海に行く機会はそんなにないと思いますので軽ーく。



プルルルルル


「……出ないわね」

「なにしてんだ、ミムラ」


子供でも、大人でもそうですが、海で人は死にます。

ひとまず、船による事故ですが。これは車と似ているように、操縦者のミスや天候の悪化、整備不良などが事故原因となっております。

日野っちは焦って忘れていますが、船には当然ながら脱出用の船が存在しております。また、その中に携行食も入っています。船の事故に巻き込まれた時は、船員の指示に従って動きましょう。



プルルルルル


「ちょっと……」

「電話は繫がるのに、本人出ないってどーいうこと!?」



海を遊泳中、足が攣ったり、溺れたりすることもあります。

何事もですが、自信を持つことは重要ですが、その自信を正しく判断する力もまた重要で、海という場所でかなり学べる気がします。なぜなら泳げるという人ほど、海で死にやすい傾向があるそうです。

ひとまず、泳がなければという状況と、泳ぎきれないという状況。この2つを速やかに判断するのが溺れた人は求められます。

安全な場所まで『泳げないと』判断したら、『長く浮いていられる』ように判断しましょう。救助を待つため、無駄に体力を消費したり、海中に沈んだらその時点で詰みだそうです。できないと判断したら、できないと伝え切ること、これは仕事でも大切なことです。



プルルルルル



「ミムラーーーー!!あんた、何してんの!?」

「こっちは腹減ってるの!イライラしてんの!!」


また、溺れた人間を助けるという行為。これもまた危険です。溺れた人間というのは、当然ながらパニック状態です。判断力の欠如、状況を把握する力もないです。生死の境はいつも無我夢中です。

助ける場合のポイントですが、その道のプロ曰く、『助ける側の安全が確保された上で、確実に助ける手段がある』という場合以外は、自ら助けてはいけないということ。だそうです。

人命を助けるというのは、大切で、栄誉に値するものではありますが、子供を助けようとして大人まで死んでしまう、心が痛いニュースもあります。


自ら助けようとする、自分でなんとかする。という行為は仕事においては求められますが、こーいった場面では報告や相談が有効です。

一般人の方がとるべき判断として、浮き具などを渡したりして、溺れている人を落ち着かせたり、いち早く救助隊を呼んでくる。周囲の人に協力を仰ぐ。といった、1人での行動を避けて、協力を要請するのが最善とされます。



ピッ


『あ』

「ミムラーーーー!!早く電話出ろって言っただろうがぁぁぁっ!!」


灯、ぶち切れる。しかし、


『あぅ、あぅ、のんちゃんですー』

「!はぁっ!?」

『ミムラさん、いないんで出ただけなんですけど、怒鳴らないでください』

「ミムラめぇぇっ」


なんて運の良い奴。のんちゃん、可哀想なことに、灯に意味も分からずに怒られる。半泣き、めちゃくちゃビビッた。

まぁいいと、助けを求めるべき相手と連絡がとれたのだ。


「のん、悪いんだけど。あんたの"独占"で私達を戻してくれない?ほら、私達が乗ってきたバスを"独占"して。それに乗ってるところなの」

『うううぅっ』

「泣くな!悪かったから!あとでパフェでも買ってあげるから!」

『あいっ、ちょっと待っててください』

「ええ。できれば海岸のところまでで」


個人的な戦闘能力では、山本灯や山寺沙耶の2人がメンバーの中で突出している。

それは2人の力が、極めて単純な戦闘に特化しているからである。

ただの強さとは喧嘩が強いというわけでもない。灯達は喧嘩の強さであり、のんちゃんやミムラ、アッシ社長などの強さはまた別。だが、純粋に恐ろしいと、能力のみで捉えるのなら。



「"独占"します」



阿部のんの魔術、"独占"こそが最凶ではないかと挙げられる。

魔法という枠での戦争や戦闘においては、対象の相性に関わらず。この"独占"が1対1では最強候補の一角であり、桁外れの収集力と有無を言わさぬ破壊力、絶対的な射程範囲を備えている。可愛い女子小学生のくせに、灯を凌駕するパワーを持つ。



ゴゴゴゴゴゴゴ


揺れる船。


「きゃあっ」

「なんだなんだ!?浮き始めた!?」


のんちゃんは灯の仲間であるため、他のメンバーはのんちゃんの実力を知らない。


「大丈夫なの?」

「大丈夫よ。藤砂も信じてる子だし。それにしても、ミムラの奴……何してるのよ」



ザパアァッ


船は浮き上がる。轟音と、悲鳴と驚きの声を交えて、空を飛んでいく。物凄い力で引っ張られており、その速度は船のエンジンよりも速く、空へ投げ出されそうなパワーを誇っていた。

そのデタラメなパワーはとってもシンプルな事を極致にした所業だ。


「お、見えてきた」

「!ミムラとのんちゃんがいるね」


昨日遊んだ砂浜に向かっているようだ。美癒ぴーと日野っちは、弱った体で船にしがみ付くが精一杯。この勢いで墜落したら大変だ。この人達はまったく手加減してくれない。



「来た来た!」

「ぐすっ、灯さん怒ってます。凄く怒ってます……」

「彩ーーー!沙耶ちゃーーん!アカリン先輩ーーー!」


泣いているのんちゃんを他所に、帰ってくる灯達を喜んで手を振るミムラ。”独占”で引っ張られる力は強い。


「”独占”を止めた方が良いよ、このままだとのんちゃんが押し潰されちゃう」

「分かってますよ!ミムラさんの意地悪!」


ここでのんちゃん。船に掛けた”独占”を解除する。船は純粋に引っ張られる力がなくなって、残った力のみで砂浜に向かう。落下速度も含めればヤバイ衝撃。


「まぁー、なんとかなるでしょ!」


ミムラ自身も使い方がよく分かっていない。正体不明の能力、"天運"。何が起きるか、その時にならないと分からない能力。とんでもない幸運や不運ではなく、とんでもない”天運”であるため、予測不能。予知不能。

その時、船に向かって強い風が吹いて、勢いを抑え始めた。砂浜の手前、海上に不時着する。



ザパアァァッ



「やれやれ、ご帰還ね」

「ええ」


ようやく、帰ってきて気付ける。終わったという気持ち。

車などを扱い、外周りに出る仕事を持つ場合。その帰り道で交通事故が起きることは多いです。遠足みたいな事ですが、家に帰るまでが遠足です。気持ちが緩むと運転意識が劣るのは誰にでもあるため、頭の片隅に入れておきましょう。


「し、死ぬかと思った」

「なんで私達、こんなに……」


死に掛けて、2人は帰還、そして……


「また俺のタクシー、壊れてんだけどーーー!?」


日野っち、またタクシーを壊してしまう。今回は壊された形であるが……


「さー、私達は美味しい朝食を済ませてから、出かけるわよー」

「そうですね」

「お腹空いたまま~」


堂々と暴れ、壊した連中はお腹が空いたという生命の理由で、逃げようとする。日野っちは追いかけようとするが、自分自身も腹が減っているし、


「待てーー!金払えーー!壊した分までーー!!」

「今ないから後で払うし!いいでしょ!命があって良かったでしょ!」


”超人”である彼女達を捕まえる事など、できるわけがない。走るも砂浜でずっこけ、倒れる日野っちであった。



◇       ◇



この場所をみんなで選んだのは景色が良く、纏まって、みんなで行くべきと決めてのこと。

青春時代の1人のとも仲間とも強敵とも


山を登ってそこにある。田舎にある墓地の中心にある一際大きな墓。



「今日はみんなで来ました」


参列者の多くがちゃんとした正装。正装といっても、黒中心でやっぱり暗い部分がある。先頭に立って、清金はそのお墓の前に立った。


束沙つかさ様」


その墓に眠る人はただ1人。神庄束沙しんじょうつかさと、呼ばれる女性だ。山本灯、福道春香、清金純などと同世代の1人。

今でも1人が崇拝するほどの人物であり、今でも1人が約束を誓い、今でもその傷の影響下にある者。1人の一生、人生が。人に影響を与える。それほどの自分で幸福なのか、不幸だったか。その人次第だろう。



祈り、みんなの無事を報告する清金。



お墓参り。誰だって死ぬし、誰だって親という存在がいるものだ。元を、バックして辿っていけば意外な繫がりがあるものだ。

子供時代は『墓参りー?、面倒だなぁ~』なんて思いますが、今もそうです。それは自分自身にそーいう人間関係が構築されていない事に起因すると思ってます。

お墓参りの時期は、春秋のお彼岸、お盆、故人の命日、正月などが一般的です。服装などはあまり派手なものではなければ、大丈夫のようです。喪服姿でなくても、大丈夫です。


「お掃除しないとな、神庄の墓」

「ですね」

「お供え物もありますし」


お墓の掃除もあるため、動きやすい格好の方が好まれたりします。

お墓参りを行なうタイミングは、就職や結婚などの人生の節目などにお墓参りするのも良いとされています。


「ちょっとパピィ、手順が違うのよ。お掃除はみんなが合掌をしてから」

「そうなのか、福道」

「あたしも知らなかった」


お墓参りの手順は手桶とひしゃくで、お墓に水を満たし、手を合わせて礼拝。

合掌してから墓石や花立て、香炉等の掃除を行ないましょう。雑草も生えてたら抜きましょう。


またついでにお通夜もパパッと。

お通夜とは故人と共に最後の夜を過ごす儀式とのことです(すでに亡骸なんですが……)。

最近ではお通夜のみ参加する方が多いそうで、知人が亡くなった場合はお通夜だけの参加が多いかと。告別式に出ても、両方でても特に問題はないです。

服装は一般的に喪服です。学生さんは学生服かと思います。肌の露出は控えることや毛皮のコートなど、殺生を連想させる服は失礼になるそうです。


お通夜の流れとして、

会場の受付さんにお悔やみの言葉を述べ、香典を渡し(知人ならば5000円ほど)、芳名帳ほうめいちょうに記帳し、きゅうが安置されている祭壇で、お焼香。その後は地域や宗教によって異なります。軽く食事をすることもあるかと。


お焼香の仕方ですが、基本的な順序があり(宗派によっては異なるものの)


1.遺族・親族に一礼。

2.祭壇に向かって一礼した後に合掌

3.右手の親指と人差し指、中指の3本で香炉にある抹香まっこうを抓みながら手を返し、目の高さまで持ち上げる。

4.手を香炉の左側の少し上まで下げ、指をこすりながら抹香を落とす。

5.3,4を3回行い、合掌(ただし、時間の都合などで1回だけでも大丈夫の場合もあります)

6.遺族・親族に一礼をして退場。


という流れだそうです。誰だって完璧にできないこと、完璧である必要もないので、前の人を真似るのが、その場凌ぎといいましょうか。



「神庄さんってどんな人だったんです?」


正式には灯達のメンバーではない、裏切京子は福道に尋ねた。


「私を車椅子生活に追いやった奴」

「…………」

「ふふっ、別に恨みとかはないけど」

「そうですか。しかし、あの灯が大親友と言っていて、ライバルの1人に挙げてる奴ですから。強かったのは確かな気がします」


強い奴の傍には必ず、強い奴がいる。灯の強さはこの彼女達を合わせた、切磋琢磨よりもえげつない群雄割拠の末に会得した強さだと、裏切は知りえた。

福道も、沙耶も、パピィも、


「蹴り技が基本だけど、私や灯、沙耶ちゃんと違って、満遍なく強かった。沙耶ちゃんなんて殺されかけて負けてたし」

「うるせぇ」

「戦闘スタイルはともかく。敵を殺す執念はハンパじゃないし、何より仲間を守るための力と自分のプライドのための精神力と来たら、誰よりも強かった」


神庄は死んで止まった。だから、彼女の評価はそこで止まる。成長した福道、沙耶がその時の神庄と戦えばまず勝つ。だからこそ、


「生きていたらもっと、楽しかったかな」


ライバルは多い方が良い。そして、そのライバルの性質がより高みを求めるタイプなら……


「どうして死んだの?」


裏切はそんなことに興味なく、本題を尋ねた。


「灯が殺した」


今、神庄の墓の前で合掌する灯だ。灯が戦い、神庄を殺して勝った。


「私達が強くなるって事はそーいう戦いを積み重ねてのこと。敗北は死や、私のように代償を背負うことになる」

「不憫ね、”超人”って馬鹿な人は……」

「一途は素敵な事よ?大抵の人は一途な気持ちすら、潰れて消えていく」

「……そ、もういいわ」


勉強するとか、そんなんじゃなく。命を削って磨いた力を裏切は残念で酷く、凡人の癖に狂気を纏っていると表現し、諦めろと言いたくなる。

とはいえ、


「そうして手にした力は、ホントに稀に。絶大なのよね」


山本灯の実力を知っているだけに。そして、才能や血筋、運命という面においては、怪物の中では凡人に近い彼女を高く評価する。

戦闘となったら、格闘も魔法も、科学も、なんでも構わない。

灯は戦うことのみだが、確かにその強さには恐れている自分がいる。



メンバーの中で最後の合掌を終えて、灯は……


「まだあたしは強くなれる」


神庄を殺害した、”終わった拳”で墓の横を突いた。見ている?と、伝えたい今の自分をこの場所でやった。


「ツカサンの分まで、あたしは強くなって、……誰よりも強くなる」



求道者にはただただ強くなりたいという理由だけではない。誰かを守ったり、失ったり、人と人がいてより強くなれるものだ。



「だから、ゆっくり見てなさいよ!ツカサン!」


無礼であるけど、墓石に右手の甲でノックする灯。

彼女が追い求める強さ。進化していく強さはまだまだ終わらず、その少し先で経験する冒険が、もうすぐやってくる。新しい出会いと共に……。





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