女も結婚できない。男も結婚できない。互いに見下すもんだから
ピリリリリリ
「あ、沙耶達からね」
そろそろだと思い、ビーチボールを止めた福道ではあった。日野っちのナンパ&玉砕&呆然を見てから、その連絡は来た。
海の沖合いまで行き、ハンティングを楽しんでいた者達からの連絡。
「灯ー、パピィー、みんなー!沙耶達が帰ってくるそうだから、縄を引く準備してー」
砂浜に不自然と刺さった長くて太い棒。それに括られた特注の縄がずーーーーっと、海の方まで。沙耶達が乗っている筏まで続いていた。モーターで動かすよりも、"超人"である彼女達が力一杯に漕いだ方が圧倒的に速いのだ。
当然帰ってくるのも、砂浜にいる仲間達が思い切って引っ張ってくれれば、ノンストップである。
「丁度良い運動した後に、良い感じのバーベキューと行きたいわね!」
「鯉川や村木達がまともな食材をとっているとは思えないが」
「バーベキューになります?野菜はないかと」
「マ、マ、マグロとか」
「解体できるか、阿波野?」
「マグロはないわねぇ。マグロって来るかしらー」
ハンティングに参加したのは6名。
沙耶、鯉川、村木、佐々木、楠愛海、楠美生。
「せーーーのっ!」
灯とパピィを中心に、縄を引っ張り。ずーっと沖合いに進んで行った筏を手繰り寄せる。その速さは新幹線のように、快速と震動を水面に伝えた。
とんでもない怪力軍団である。そして、
「おーーっ、速い速い」
「みなさーーーん!大量ですよーーー!」
筏に乗っていた6人と、その後ろで乱雑に乗っている海洋生物達。近づくほど、そいつ等がなんなのか分かってしまい、戦慄と感じるところもある。
「見て見てーー!海釣りでマグロ釣ったよ!!」
「私はカジキマグロ!」
どこまで行っていたんだ、この双子は?釣り道具でよく獲って来たものだ。
「海でイカちゃんが泳いでいたの」
一方で、佐々木という女。なんの動揺もなく、10本の触手がある大きなイカを素手で握り、皆に見せ付けていた。
だが、この3人の収穫など。まだ許容範囲と言えよう。
「お帰り、村木。何を狩って来たの?」
「苦労したわよ」
とても大型の生物であるため、筏にくくり付けたままの1頭。
「鮫ってかなり逃げるの速いから、泳ぎ疲れた」
村木は鮫1頭を素手でぶち殺して筏に乗せていた。海の暴君とも言える鮫(たぶん、イタチザメ)、それを可憐な水着を着た小柄な女性が、鮫の本場である海中でぶちのめした。
吉祥曰く、村木は。
「村木があの中で一番恐い……」
「トラウマ、あるもんね」
あの中で。強さで言えば、村木を超える2人は一体どんな生物を狩って来たか。
「イカや鮫、マグロなんかより私は好きな物を獲って来たから」
ハンティングは何も強い相手を狩ることだけではない。また、自然という中において、1対1の熱闘な漢の戦いは通じず、全ての場で起こりうる事が敵にも味方にもなる。
なにも装備なしに鯉川が狩って来たのは、
「蟹よ、蟹!!やっぱり海の美味って言ったら、蟹が王者でしょ!」
深海に生息する蟹。どーいう蟹だが分からないが、蟹の生息区域は水深200m以下からである。つまり、鯉川はそこまで自力で潜って、狩って来た者。自然に抗った強者であった。
「蟹蟹蟹、うるさいな。鯉川は……」
「なによ沙耶ちゃん!収穫0の沙耶ちゃんに言われたくないよー」
「しょうがないだろ。村木がデカイ鮫を筏に乗せてるんだから」
「あんたがトロイからでしょ?早い者勝ちよ」
「なんだと、村木!?」
一触即発。筏に乗せられず、沖合いに放置するしかなかった沙耶が狩って来た生物。
「鯨獲って褒めてもらおうと思ったのに……」
お前等、なにしとんねん。
海のハンター共を、その土俵で葬り去る"超人"達。
「さぁさぁ!蟹を早く調理してよ、誰か!」
「料理できる人ー。解体やってー」
にも関わらず、料理できる人というのはそんなにいなかったり。焼けばいいんじゃない?みたいな、原始的な方法しか浮かばない連中が多い。
「よーし!私が、名誉挽回で……」
「ミムラさんはしないでください!絶対、見た目が最悪になります!のんちゃんがやります!!」
「さすが、のん。山暮らししていただけあるわね」
「海の幸は自信ないですけど……他に誰か!のんちゃん以外にできる方!ミムラさんを除いて」
「解体なら私がやりますわ」
「日本刀でやるな。絶対やるな、阿波野」
「料理なら私も多少やる。手伝おう」
「パピィ、意外な一面だ」
「女は家事ぐらい覚えろ。だ、清金。お前も手伝え。できる口だろう」
そんなこんなで狩って来た食材の調理に取り掛かる女子達。いちおであるが、のんちゃんとパピィ、清金にはそれなりの調理能力があるため、失敗はしない。
とはいえ、鮫やマグロの解体なんてやったことはない。内心、なんでこんなものを狩って来たんだと、好きに狩って来てもいいが調理する身にもなれと。
「蟹って中の味噌だよな。割ればいいんだろ?」
「沙耶ちゃんの握力だと、全部粉砕するんじゃ?」
お前等は絶対に調理するな。生きた蟹を調理するのも、そんなに数を踏んでいるわけじゃないんだぞ。
これなら山で猪狩りとか、熊狩りの方が良かったな。
「それならのんちゃん、調理経験があります。お母さんと一緒にやりました」
「あんのかよ!すげぇな、山育ちの娘は!」
この中で最年少であるのんちゃんが、一番料理が上手という状況。他が下手過ぎるというか、美味しく食えれば良いというザックバランな連中ばかり。
遊ぶことばかり考えているダメな大人っぽいのが多い。まぁ、学生もいるわけだしな。
ドンチャン騒ぎをしながら、沙耶達が獲って来た食材を調理する一同。しかし、不安が多い。福道はそれを感じて、
「仕方ないですね。板前さんを捜しましょう」
その発想はどうなんだろうか?
◇ ◇
新島美法。
職業、化粧品会社の勤務。
趣味はツーリング、美術鑑賞、模様替え
付き合っていた男の数、26年間で8人。現在は募集中。
容姿は良く、性格はかなりの綺麗好き、子供も好き、家事は間違いなく超一流。自分の家族からも出来の良い娘、姉だと思われている。それは本当の事である。
妹の方が人気であるが、決して姉も劣るものではない。最近、彼氏ができそうとか妹が言うと、おめでとうの反面に、私より生きてない癖に先に結婚とか許さないんだから!という気持ちもある。まぁ、心の内にしておくので良しとする。NTRはやられた経験があるのでやらない。妹相手にそんな思いをさせたくない。
今日は大学時代の仲間と後輩+妹の、旅行サークルに参加中。楽しみながら男もGETしようという魂胆でもあった。
「鮫を調理できるなんて、光栄ねぇ。初めての経験」
「お姉ちゃん。あんまり動揺しないのね。どこまで行っていたのかとか、思わないの?」
「そーいうのは考えないの」
美癒ぴーの姉であり、度胸も申し分なく想像力も豊か。村木が狩って来た鮫の解体、下準備、調理をしてしまう。現地でバーベキューもするから自前の調理器具も持ってきた事が幸いしていた。切れ味抜群の、本場の包丁もご用意している(砥石も常備)。
現地で堂々と調理をする光景は、本当の職人さんが来たかのようだった。
「お誘いありがとうございます」
「いえー、こちらこそ。ご迷惑をおかけしてすみません」
25人ほどの人数から17人の女子が増えて、ハーレムにしてはやり過ぎなくらい増えてしまった。
しかし唯一の男、日野っちは放心状態で砂浜に埋められていた。その光景を面白画像として、吉祥や村木などが撮影している有様……。
話を戻そう。
新島美法は悪い意味で言うと、劣化の美癒ぴーである。しかし、素晴らしいほどの嫁候補に名が入るだろうスペックを誇るのだが、極めて残念な面がある。付き合っていた男達が無念ながら彼女を諦めた理由。本人にとっては、調子に乗っている気など毛頭なく、むしろ自分のステータスとして捉えているので性質が悪い。
まぁ、男も女もそんなもの。
彼女のダメなところは。本当にダメなところは……男に妥協せず、変に自分勝手であるところだった。
『年収は1億円くらいの男の人と付き合いたいなぁ。引越しは2年に1回して、都道府県全部制覇が夢。世界各地もバイクで走り回りたいわね。そんなわけで、お金頂戴』
そんな壮大な行動の浪費癖を持つ(ブランド品はあまり興味なし)。色々な男と付き合って来たが、男が彼女と別れた理由に、彼女の金遣いの多さと彼女への時間が長いからである。
誰だって1人の時間だって欲しいし、自分の思い通りに進んで欲しい時があるからだ。
ちなみに彼女と妹の美癒ぴーが入っていた大学サークルは、旅行サークルであり、自分達で計画して日本各地を回るサークルである。温泉行ったり、海に行ったり、山を歩いたり、海外旅行もしていたりする。
大学にしろ、高校にしろ、会社にしろ。どこでも何をするかは個人次第であるし、共通の仲間を持てることはとても幸福であると思う。羨ましくも思う。時にライバルとしてなれるのなら、それもまた良きこと。劣等感もあることだけれど、上見てもキリが無いと思えるのなら良いのかな。
少し話がまた外れますが、会社によっては"組合"という組織があります(入れるタイミングがここしかねぇんよ)。労働組合とかは聞いた事があるかと思います。
労働組合とは『労働者が団結して、経営者と実質的に対等な立場で交渉するため』の組合だそうです。
簡単に言えば、労働者の味方という組織です。(完全に味方ではないので、注意)
労働環境の劣悪改善、パワハラ、職場虐め、うつ病などなど。様々な労働問題を考える(直るとは言ってない)組織です。あまりアテにするな、という書き方になりますが。業績が上がらないのに労働者の我侭に付き合えるか、という点においては経営者側に一理あるので、自分はそう思ってます。
「労働組合?いらんでしょ、そんな組織。役に立たん塵屑の意見を反映させたら会社は衰退ですよ。社蓄は人間じゃないですし」
どっかの七三分けのスーツ男が言っていますねぇ。
まぁ、大体その通りです。個人的な事ですが、自分自身も未熟である事を含め、決められた仕事をちゃんとこなす事がやはり訴える条件と考えて欲しいです。その限度を超えている場合は確かに、訴えるべきことですが。
仕事したくないです、仕事はできません。でも、賃金や待遇が悪いのはなぜですか?
って、真顔で訴えて来ても。当たり前だろって、言い返すもんです。完璧にやれとは言いませんが、せめて労働者自身も訴えるに見合う働きをしてくれないと、労働組合もたかが知れます。
改善されるかどうかですか、やはり労働者側の行動にもよります。だからといって、経営者の無理難題なノルマの達成を絶対しろとは言いませんが、まったくやらないのはどうかと思います。
身も蓋もない個人の価値観と思っていただければですが、個人の努力など叶わない時代です。みんなの力とほざいても、それは各々が集まって集団となっただけです。結局は個人の努力を足し算したもんです。NOが増えるだけです。
「上の人間は文句を言うだけ?それが調教です。従順な社蓄共に鞭打って教えなきゃ。まぁ、フォローにはなりませんが、優秀な社蓄を率いる無能な経営者を見ると、私は失望しちゃいますね」
上司もまた人間ですので、神様でもないのです。(互いにフォローになってねぇよ)
言わせておけ精神でもあります。できる限りは尽くすのが、礼儀です。できないのはできない。経営にならない?いつまでも同じ事してても変わらないんです。怒鳴ってもしょうがないし、時代に言えってもんです。
良い労働組合もありますが、決してそうでもないところもあります。組合による交流会やオリエンテーションもあったりしますが、まぁそこで趣味が合う者同士、出会いがあればとっても宜しいですね。
労働組合が存在している会社は、大企業や公務員などに良くあり、中小企業では労働組合と呼ばれるものがあまりないそうです。飲食店やITベンチャーなどもあまりないのだとか。世の中はブラック企業の方が多いので、細かい事を気にしたら無駄かなって思うこともあります。
会社によりますが、会社にも大学のサークルのような集まりや、お祭があったりします。
「やっぱり新島姉妹が居て良かったねー」
「こんな手料理、ウチの嫁となって欲しいもんだよ」
女子陣営から嫉妬が出るほど、人気な新島姉妹の料理テクニック。
イカを裁いて、ソテーにし、一口サイズのまま、みんなに提供。イカだけの料理だが味付け完璧。素材が良いんですって、謙遜しちゃいそうな出来だがそれで良いのだ。上手い料理人ほど変に手を加えない。
「おいしー!」
「これ私達にも作れるか?」
「作り方を教えて欲しいね」
ミムラ+灯陣営にもご好評な美癒ぴーの手料理。待たせると悪いからの前菜的な意味合いがあるし、砂浜に埋まっている日野っちにも……
「ホラホラー食べるー?」
「た、食べさせてより、つーか、出せ」
「んん~?口の利き方なってないなぁ」
「吉祥。虐めは良くないわ……」
「いや、姫路さん。自然に俺の上に座らないでくれ……」
「?あ、ベンチだと思ってたわ。丁度良い高さよ」
なんか知らないけど。私とあまり年変わらない人達と、随分と仲が良くなっているんですねっ。
怒りの表情が分からないけれど、イカちゃんが一番可哀想なくらい、よく噛んで食する美癒ぴーであった。イチャついているとイラつくって事は……
「もう結構行ってるの?」
「うわぁっ!?急に声掛けないでよ!」
「あの人なんでしょ、美癒」
「う、うん……」
水着姿だけど、そんな感じになってくれない状況。つーか、周り水着だらけだし。日野っち、なんで大学生達の集まりの運転手引き受けたの?気分転換ですか?
さっき食べたばかりのイカ。ない事に気付いて、頬を膨らませて席につく。調理は姉に任せて、どうやってまた日野っちと近づく考え中。そーいう気分にしようと思っていた旅行中に、こんな形で出くわすとは思っても見なかった。
そんな時である。
「とっても美味しかったです」
「え。どういたしまして」
最初は何気ない返しからであったが、一瞬で察する住んでいる世界の差。
「がはっ!」
「?」
血でも吐きそうになった。こー見えて、自分が一番可愛いという自尊心を持って生きてきた美癒ぴーに走った衝撃は計り知れない。同じ水着姿である。みーんな、ここにいる女性全員、水着である。
なのに1人だけずば抜けた美しさ。こんな綺麗な人っているの!?っと驚愕、そして、胸のデカさにまた驚愕。
「よろしかったら」
「はひぃ!?」
輪島彩。あとで名前と連絡先を聞いた。
速攻で負けた、という気持ちは新たな飛躍の目を完全に潰した。顔も体も、声も、髪も、色も、……人間に愛されるべくして生まれたような綺麗さ。せめて、何かで勝てるとしたら、家事ぐらいだけどどうなの?
「先ほどの料理、どう作るんです?」
「え。イカのソテーですか。あれはですねー」
女である私も、目が完全にこの人の体に行くんですけど。なんですか、この綺麗な人。もしかして、年下!?(美癒ぴーの下です)。え?
美人の水着見て、ドキマキするのは男のやり取りでしょうが!!私さっきから、この人の体を見ちゃうんですけど!
なんというか、その気はないが。輪島彩と出会ってしまった美癒ぴーの思考は、かなり選択を迫られる形となった。もし、今。困っている日野っちを彼女が助けたりしたら、本当に勢いでヤリそう。海と砂浜は、男女の関係を早めたりするとかなんとか、姉が言っていた。告白とかの前に、男の人にとっては天国みたいな女性達の集まりなわけ。
ちょっとした海の出来事も、勢いでやってしまいそうだから。
「美癒、サメのお刺身とマグロのお寿司」
みんなに配るのを手伝って欲しいと、姉という立場からの声。
「お姉ちゃん……」
「あ」
そして、家族だからちょっと頬を膨らませ、赤く染まって。ヤバイって見せる表情は、小さい頃から変わってない。両手に料理を乗せたお皿持って行ってきた。
ムカつくんだって、素直に思ったから。怒る。まぁ、社会人。そう爆発するってない。でも、こんなことあるってのが、したいってのが恋って言って良いかな。
恥ずかしい気持ちを詰める、だからこそ動いて、目の前に立って彼を助けたいという大義名分で、
「吉祥さん!姫路さん!日野っちから離れてください!」
彼が私の彼氏ですと、言っていないAND言っている。
「んーっ?むむぅ。私の玩具を取り上げようとしてるの」
「吉祥。言葉を間違えている……」
助けてくれと、日野っちは言っているだろう。まさか、喜んでいるようなどMじゃないよね?一つの訂正を要求する姫路は
「私の、丁度良い椅子です」
「どーっちでも良いです!その辺でもう結構です!それに日野っちはお尻より、胸好きのアホな男なんです!」
俺、一番貶されてね?美癒ぴーは毒舌だな。言っておくが、言えませんけどね。砂のせいで姫路のお尻の感触は伝わっていません。
って、そんなことより美癒ぴーがヤバくないか。
「ならば、力ずくで救ってみなよ」
「同じく」
やっぱり。姫路は冗談なんだろうけど、吉祥はマジそうだ。冗談にも心のブレーキをかけない。美癒ぴー並に可愛い吉祥は、思えないだろうが人間を超越した身体能力を持っている。それを知っている日野っち、知らない美癒ぴー。
「そんなことをしたら!」
でも、美癒ぴーは力とはまったく別の武器を両手に握っていた。
村木と鯉川が獲って来た、サメのお刺身に蟹の海苔巻き。
「2人はサメと蟹が抜きです!」
そう言ってから、別方向への投げ捨て、そんな犬のような手を使った。2人が真に一般人だったら動けず、だからこそ美癒ぴーが負けていただろう。"超人"が2人。
「サメは食べてみたかったーー!!」
「蟹を投げるなんて、……」
身体能力に自信と実績があるからこそ、反応と行動が起こった。座っていた姫路も立って走り、長い腕を伸ばす。吉祥は砂浜にダイブである。人間の犬だ、2人の後輩である沙耶は今のやり取りを見ながら、焼きイカを食っていた。
「ぎゃふーーっ」
「トッ」
さすがの"超人"。吉祥も姫路も、明後日の方向に投げられた皿を地面に落とさず、キャッチ。しかし、お互いにすぐには立てない姿勢。それは十分な時間だし、食いついている時間にもなった。
「まったく、日野っち!」
「美癒ぴー」
2人がどいてくれたら、自力で出てこれたと思ったけれど。美癒ぴーの手に捕まって、起こされた。ああ、これで……
「何度、私に助けられるの!?」
結構あるなぁ、でも
「俺達は助け合ってる仲だろ!」
照れ臭く。同じだよって言った、つもり……。良い雰囲気だなって、気分で。手を離したくないって分かっている。
ちょっと周りが随分と多くて恥ずかしい気持ちがあるけど、
「そーいう仲だから、助け合って仲直りでいいよな」
「……うん!」
もう引き返さないって道に入れた気がした。それをこの手の温もりくらい心地よく、長く握っていた。
「旨っ!しかし、」
吉祥。サメのお刺身を初めて頂き、喜ぶも。タダでは終わらない女。悪戯好きにしては悪質なのか、ある意味天使なのか。
「私をオチョクるのは許さない!」
ピィッと、本気の悪戯は美癒ぴーの背を襲った。速く鋭く、”超人”の手は切断する一撃にもなり得る。嫉妬を増やし、それを増長させやがれとやったように思えたと、姫路は蟹の海苔巻きをモソモソ食べて思った。
「へ」
ハラリと、落ちる。切れるは、水着。メクレて出るは、乳○……。
「うわーーーっ!」
「おーーーっ!」
不意にやられ、見せたくない防衛的な気持ちと。紳士的に汲み取って見ない様にとひっついって。ギュッて。ムニュって。
胸の露出を周りに見せないため、2人は抱き合うという本末転倒のような手段。火山でも爆発したような熱い体に2人はなっていた。その熱さに冷たい水をかけながら、怒る声で注意する。
「ちょ、吉祥!み、美癒ぴーに何してんだ!?」
「み、水着が……はわわわ」
「ひゅーひゅー!」
む、胸隠すためにずっと抱き合ってろって……。
感触すげぇ、伝わるんだけど。今も凄く。
「ザマァミロ!良い気分だよ!!」
「吉祥。ちょっと不快に感じる人もいるからね。今、こうしてカップルできたみたいな嫉妬がチラホラ……」
こんなに大勢の人前で、片側が胸を出した状態で抱き合ってれば、それはね。海とはいえね。
「う、うん」
「でも、おめでとー」
「そ、そんなことより!この状況、なんとかしてー!」
美癒ぴーの叫びにより、数分後に余っていたTシャツを着ることに。日野っちからしたら、美癒ぴーの水着姿。あんまり見れなかったのが、ちょっと残念だったかな。って悔しさがまだあったとさ。




