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VALENZ TAXI  作者: 孤独
墓参り編
75/100

過去作品を眺めると恥ずかしさと懐かしさと、楽しさまで蘇るので笑える。もう6年前だぞ(笑)

可愛い、綺麗、なんでも良い。それらに入れば美女なんだろ、水着を着てたら当然だ。


「ドキドキ、5対5、ビーチバレー!」


リーダー格らしい、山本灯。正直、俺の好みじゃねぇ。そんな彼女。細目の金髪、肉体もちょっと締まっていて、白いビキニがエロイ感じではあるが、




ドゴオオォォッ




ビーチボールにスパイクを決めたら、隕石でも落としたに匹敵するクレーターを生み出す怪力を誇っていたらどうだろうか?ビーチボールすげぇ頑丈じゃねぇか。同時に灯もとんでもねぇ化け物だと認識する。


「ちっ!灯には気をつけろ!あいつのパワーに対抗できるのは、私だけだ」


体躯的には灯よりも恵体なパピィであるが、やや控え目な自慢に留めている。



「ダアアァッ!」



打ち込んだスパイクは、彼女よりもかなり小柄な柳葉姫子の方へ。とんでもない速さで重みも感じ取れるわけだが、柳葉は避けずにキッチリとボレーする!


「ちっ!このゴリラめ!」


ボレーした衝撃で手首が曲がった、折れたか?外れたか?ボールを死守したと確認してから自力で戻す。高々と上がったボールは10mほど、打ちあがり、それに並ぶように飛んでいるのは


「柳葉先輩が死守したボール!」


女神!胸の揺れも素晴らしく、全ての男は見惚れてしまう。

黒ビキニでイヤらしさ、エロさも倍々している輪島彩の、



「それぇ!!」



横回転の掛かったスパイクが炸裂!回転と勢いが相まって、誰もいないところへと進んでいく、海辺の方へ。このビーチバレーは範囲は無制限である。そうでもしないと、こいつ等を収めることができない。物凄い方向に飛んでいくボールを必死に追いかけるのは、遠藤美樹。ジャブジャブと海に浸ると思えたが、パシャパシャという水を履く音。

脚捌きが静かで負担なく、彼女は水面すら平然と綺麗に走る。



ポーーーンッ



「あ!回転掛かったまま!」

「変な方向行ったーー!」



ボールに追いつき、ようやく。水面にぼちゃる遠藤。ボールはまだ生きており、



ガシィッ


「阿波野?なにこの手」

「斉藤、」


砂浜で阿波野小諸が、斉藤吾妻を捕まえて


「ボールを取り戻しなさい!」

「私を投げんな馬鹿ーーー!」


海に向かうビーチボールを拾うため、斉藤を投げ飛ばす阿波野。十数メートルもの距離、それに加えて高さも込みで正確に投げることとそのパワー。日本刀を使いこなしているだけじゃない、しっかりとした身体能力がある阿波野。



「まったく!」


投げ飛ばされた斉藤も、空中で体勢を整え。ビーチボールとしてはどうかと思うが、オーバーヘッドキックで砂浜にボールを押し戻す。

とんでも超人クラスの連中による、ビーチバレーは死闘かつ、熱闘かつ、異次元染みている。



「あの、彼女達はいつも、あーなんです?」


怯えた鹿のような声で、一緒に荷物番をしている福道に尋ねる日野っち。


「そーね。灯と鯉川、沙耶ちゃんはいつもあーだけど、他は一般人やってるわよ?」

「嘘でしょ?」

「たまには体を本気で動かさないといけないの。私も、ま、泳げたら泳ぎたいのよね」



そーいえば、この人も超人過ぎて忘れてしまうが、車椅子に乗っているんだった。さっきまで平然と砂浜という最悪の環境で灯のスパイクを平然とボレーしていたから、忘れるくらいだ。

あの中に混ざっていたんだよな、数分前。



「こーいう穴場スポットに行かないと、私達。暴れちゃったら出禁だし」


俺は思ったよ。いくら美女達でも、こんなに暴れてしまう人達だったら客として扱いたくない。理不尽な死に方しそうだし、パシリもエグイし。一般人が少ないところに行かなきゃ、死傷者が出るわ。


「大丈夫!怪我した人が現れたら!街の女医でもある、この吉祥愛希ちゃんが看病してあげるから!」


エアガン持ってたり、人の急所を遠慮なく攻撃する天使みたいなあなたが、医者だとは正直思えない。注射器の中身、怪しい成分な気がする。


「夏の醍醐味。砂浜に、パラソル刺すその下で、優雅に読書……」

「ひっめじ~。あなたも泳ぎましょうよー、読書なんてネガったことしてないで!ハンティングしよう」

「私、そーいう趣味はない。命を狩るなんて可哀想、ベジタリアンだし……」


そー言いながら、姫路は颯丸を椅子にして読書をしているのであった……。


「うぇーん。姫路の鬼ー」

「だってさっき。私、颯丸にカラオケで勝ったし。個別でなんでも言う事聞くって言ってたの、颯丸だし。私、安全な場所から痛めつけたり、屈辱的な事をする方が好みかな?」


全員、癖のある人だなぁ。というか、吉祥は読書について注意するのか。


唖然としながら飲み物なりタオルを運んだり、パラソルを刺したりしている、日野っち。その横のエリアでは沖ミムラや阿部のんなどが砂浜で焼きそば作りをしていた。

海水浴なのか、キャンプなのか、暴れたいだけなのか。


「色々事情がありますわ。みんなで旅行は3,4番目」

「めっちゃ楽しんでる気が」

「ともかく、時間になりましたらバスに戻ります。あまり長くはないですが、ゆっくりと自由に過ごしたらどうでしょう?」

「気にかけてもらってどーも」


んじゃ、遠慮なく。バスの中で休ませてもらおうか。あ、でも。駐車場からじゃここ拝めないんだよな。輪島彩さんを始め、とんでもな方々であるが、美人揃いで水着姿。ポロリもあったりか……って何考えてやがる。


「あ。自由時間なら、ナンパでもして来なさいよ」

「ぶっ!?な、何言ってるんですか!?」

「彩にクドきに行けよ。彩は彼氏いないから上手く行けば付き合えるかもよ」

「そ、それに対して、俺のメリットは!?」


良い情報でしたけれど!真意が定かではない!


「私達が楽しいから」

「振られる様なら読書止めて見たい」

「私だけ屈辱なのが許せません!!」

「俺はお前等の玩具じゃない!」

「そーよ!吉祥達、ダメじゃない」

「福道さん」

「成功するかもしれないわ!万分の1くらいで」

「いや!しない!!」


っていうか、あれだけの美人さんをナンパするのは勇気云々どころではない。


「ちなみに彩は男のこと、よく分かってないから!」

「傍にミムラもいるし、続くように沙耶ちゃんもいるし」

「モテないわけじゃないけど、男共が悉く撃沈される」

「見ての通り、身体能力はかなり高くて不用意に驚かせると、吹っ飛ばされる」


そんでもって生死に関わるレベルの一撃が飛ぶ……。


「まー、彩とあんたじゃ釣り合うわけないわね」

「それもそれでムカつく……」


キランっと吉祥の目が光った。ロクでもないと、同校であった姫路と颯丸は察する。彼女を止められる沙耶と鯉川は今、数人を連れて沖まで泳いで、バーベキューの材料として鮫でも狩ってくるって行っちゃったし、福道は中立っぽいように見えて、無関心。

武力行使による、


「ナンパして振られろ。じゃないと、ど恥ずかしいプレーをさせちゃうぞ」


脅しからの強制である。吉祥は水着の中から取り出したメスを、砂浜に投げつけた。丁度散歩の如く歩いていた蟹の胴体を正確に射抜いて、殺した。


「あ、こんなもんじゃないよ?」

「余計怖いわ!!つーか、その水着どうなってる?」

「ん?」


そういうツッコミ。そのつもりであったが、吉祥は胸元を見せながら解説し始めた。


「胸の谷間に入るようになっていて、傷つかないように……」

「わ、わ、わざわざ見せつけなくていい。そんなに……普通ぐらいの胸なら!」

「あ。なによー。普通ってー、そりゃあ。福道にも。姫路にも負けるけどさ」

「…………吉祥。揶揄うのはそこまでにしたら」

「姫路までー。なに言うのさー」

「男の人は基準を作るものよ。あなたの胸はあともう少しで賞なの」

「ムッカー!そうなの!?もっとデカいの好みなの!?」


見ただけで分かる。美癒ぴーより下!そう判断した!こいつに手を出したら絶対にロクでもない。つーか、なぜ彼女は俺に絡んでくる?面白そうとか、そんなの?


「よぅし。最近、精神学にも手を出してね」

「?」

「実験がてら。人の好みを思い通りに操れる方法を試そうとね」


ぶつぶつと言いながら、本音を語る吉祥。怒気よりも悪辣なオーラを纏って、日野っちへと近づく。何も武器を持っていないのに、恐ろしさが滲み出ている。


「沙耶ちゃーーーん!海から帰って助けてーーー!」


颯丸。姫路が上から座っているところから、援軍要請を出すものの、それはどっちの?って聞きたいものだった。吉祥から後ずさる日野っちであったが、ギランと目が光る吉祥は完全に


「よしなさい」

「ふ、福道さん」

「そこらへんの女性に声を掛けて、手打ちにしなさいよ」


結局、ナンパしろってか?


「私達じゃ何かと困るし、冗談と悟られちゃうこともあるし」

「でも、ここは穴場スポット。面白そうな女の子。できれば、私達ぐらいの子がいいんじゃ?」


それはそうだが、あんた達はお断りだ。まったく。

ナンパなんてした事ねぇぞ。いっそ逃げるか。いや、無理だな。暴力って超恐いな。今知ったが、タクシーに乗ってないと何にもできない俺は、相当普通だな。感覚麻痺しちまうな。


「!」


そうか。


「そうだった、雑用やっていて忘れていた。バスに戻らないと」

「大丈夫よ。車上荒らしとかに巻き込まれてたら、私達が逆にお仕置きするし」

「鯉川は特殊警官だし、沙耶ちゃんは鵜飼組っていうヤクザ組合の幹部兼戦争要員だし、灯とミムラもいれば戦力的にも総合的にも、私達は日本最強・無敵クラスよ」

「やった奴が死ねるくらいで終わるわ……」


そんだけ強い連中が一般人を恐喝がてら、ナンパさせるのかよ!?もっと強いとこ行けよ!ってこいつ等、暴れ過ぎるから人の少ない穴場スポットを選んだのか。


「ホラホラ、早くしないとこっちから女の子を射れちゃうよ」

「!?……!?」


振り返れば、確かに女の子。吉祥がメスを3本、手に握ってマジで自分に投げつけようとしていた。身体能力の凄さは格闘戦だけと思えたが、投擲などを用いて離れての戦闘もできる腕前もなければいけない。

グダグダした感じになったが、もうヤケクソ感。ビーチの方へと歩いていった。


っていうか、人。そんないねぇのに……。福道さん達の連れには声をかけたくねぇな。なにされるか分からないし、負の結果は死にも繫がるかも。

優柔不断なフリして時間過ぎるのを待つか。いや、無理か。投げつけてくる。いっそ逃げる?駐車場とは反対方向だ。脚力的な意味でも無理。

やるしかないか、助かる道って。健康な体の方が重要だ。



そんな弱気な感情であったが、ある人物に目がいった。


「!」


やっぱりだが、当然だが。いかに輪島彩が強烈に美人だとしても、アイドルという位置付けにして、奥様にしたい。傍にいて欲しい。そんな人を思ったら美癒ぴーなのだ。


「なんだか凄い人達が来てるのねー、なにかしらあれー」


そんな美癒ぴーと同じぐらいの背、顔もかなり綺麗で水着姿もグッと来た。美癒ぴーより少しばかり貧相な胸であるが、かなり重なった美癒ぴーと似ている顔。可愛い系がダウン、大人っぽさアップの顔。髪はちょっと長めかな。

美癒ぴーの幻覚を見ているような、そんな人が1人で砂浜にいた。ジュースをいくつか抱えていて、これからお仲間さん達のところに持っていくのだろうか?


「すげぇ似てる」


この人にナンパをしよう。声をかけよう。そうすれば俺の命も助かるし、安らぎも得られる。平和な瞬間に戻ってきたと一時的な幸福。


「あの、持ちましょうか」

「ん?どなた?」

「いや、そんなにジュースを抱えてちゃ落としちゃうでしょう。俺、持ちますよ」


善意である。善意で頑張った。これから暇?は様子見てから。

隣立ってさらに分かったことだが、この人可愛いわー。って、なにを浮かれてるんだ。俺は……


「お、なんかよさげな子に話しかけたね」

「上手く行くのかしら……」

「失敗したらいいけど、成功した時どうするの?」

「え?殺すよ」


おいおいおい。無駄に俺は地獄耳になったな。今、殺すとか言ってなかった?嫉妬から来た言葉?修羅場にしたいだけかよ、あのクソ女。超趣味悪ぃ!


「そうなんです?ありがとうございます。じゃあ、お願いしてもいいです?これ重たくて」


女の子はジュースを3本、俺に手渡した。ちょっと重いが、まぁいける。そのまま2人で砂浜を歩いて


「もしかして、なんですが」

「はい?」

「あなたに一目惚れしました!このあと2人きりになれるお時間はありますか!?」



潔く言ったぞ!ストレートに約束したぞ!吉祥、福道。飛び道具を降ろせ!



「今、彼は言ったのかしら?」

「さぁ?耳、そんなに良くないから分からない」


身体能力が化け物のくせして、聴こえてねぇのかよ!結構、デカイ声で真剣に言ったんだけど!なんでこいつ等この場面で聞いてねぇんだ!?おまっ!彼氏いるから、友達いるから、そう来るよな。やべぇよ、成功したらそれはそれで俺としてもやべぇ。

ビーチの上でエロティックな事して、サヨナラでいいかな。良いよな!?

そして、殺されよ。


「そうね。あると思うし、私もそうしたいな」


マジかよ!?


「嘘でしょ!?成功!!」

「一発!」


どんな子なんだ。ナンパという気分じゃなかった、『ねぇ彼女、この後暇?俺とお茶しない』みたいな、ナンパの古臭い台詞を何一つ、掠りもせず、ただ頼み込んでいけたのか。


「俺は、俺の名前は」


日野っちはマズイな。ナンパ気分じゃねぇ、偽名なんてもんも持ち合わせちゃいねぇ。自然と封印していたが、数年ぶりに自らの名をこんな形で言おうとは……


「ちょっと待ってください」

「え?」


その時、彼女の方からストップされた。なんだというのだ?水着姿のあなたを凝視してしまったのが悪かったのか。気を悪くしてしまったか。


「成功したらあいつどう殺す?福道」

「私、試したい関節技あるんだけど。実験台として計ってみる?」


俺も向こうも気を悪くしている。っていうか、福道さんもスゲーノリノリじゃねぇか。ちょっとあの豊満なおっぱいの感触が分かるような関節技をかけてくれるなら、それはすごい嬉しい死に方だぜ(もうヤケクソ)。

自分の身が心配であった故、少々気付かなかったが。


「私も、君に惚れちゃった」


ウソダロ!?カラカイガウマスギルンジャナイノカ!?


思考の文字がカタカナになるほど、ぶっ飛んだ台詞。そう返されての反応が見たいのか。マジですか。嘘じゃないですか!?惚れた以上に到達する行為をご希望します!


「ナンパのために海に来たから、そうやって男をゲットしたくて。いいです?今からでも」


海にナンパしに来たのかよ。随分と好戦的な女性だな。名前を教えるタイミングを逃した気がする。むしろ逆に


「お名前とアドレスの交換を」

「はい。あ!でも、スマホ、今は持ってないですけど、私」


彼女の名前を訊いてしまった。それをアッサリと答える彼女に不可思議なところは何も感じなかった。でも、何かが……こう。既視感。嫌な予感。吉祥達の殺意とはかなり違う、最近感じた気がするようで注意しなくてはならない。なにか……。



新島美法にいじまみのりです。お見知りおきを」



新島美法さん。

素敵な名前だ。どうであれ、素敵な人が持つ名前なのだから思う


「美法さん。美法さんか。俺は……」


あと数秒。あと一瞬。それを我慢すれば良かったが、とてもできなかった。私がという独占欲が過ぎった気もする。

先に荷物を持って行かせたから、駆け足で追いかけたら誰かが持ってて。あれ?覚えがあるなー。っと距離を置いてたら、こんなやり取りに。WHY?どうして?黙ってればいい……わけないでしょ!?



「なに、してんの………?」

「っっ……」


神様か、悪魔の悪戯かよ。

本当の俺の求める水着になっている天使が、隣よりちょっと離れたところで、目が見えないほどの怒気の入ったオーラを発していた。



「美癒。遅いじゃない。私、ナンパされちゃったのよ」


空気が。そんな言葉をやりとりする感じではないのに……


「私、今日から彼氏ができましたー。V!」


止めろ手を繋ぐな。ジュースが零れるし、全然物理的にも胸の感触がそんなにしない!!

水着姿だから顔と胸で判断する。ヘアピンが外れているが、あの目とあの顔、あの胸、あの身長。まさか、まさか



「へーーっ、節操無く人の姉。口説くんですか。おっぱいフェチ」

「あの、その」

「美癒?」


さっきから美法さんが言っている彼女の名前まで、合致してしまう。嘘だ。そんなつもりなんてない。君が、君が、君が、世界で一番好きなんだ!!



「先日から思ってましたけど、さいっってー!!」




ドガラシャンと大クラッシュして、俺は砂浜に崩れ落ちた。なんでだよ、どうしてこうなるんだよ。弁明も何もねぇ……。


「日野っちの馬鹿!!」


やはり美癒ぴーだった。つまり、彼女は以前言っていた美癒ぴーの姉か……。っていうか、それ以降の出来事があまりにも記憶に残らなかった。彼女に超嫌われたなというのだけが、焼きついてしまった。

俺はかなり呆然として、頭の中が何も浮かばない。なにをしていたかは思いだせないが、一つ分かった事がある。



「どう励ます?」

「沙耶達が漁から帰ってくる頃だから、食べながら考えましょ」

「喉に通るのかしら……」

「ひ、ひ、1人でソッとさせてあげましょ!負け犬には近寄らない方が良いです!」


俺の周りはみんな酷かった。



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