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VALENZ TAXI  作者: 孤独
進退編
60/100

仕事のミスは立て続けに降りかかる

これは後に分かることである。


「見つかったのか?」

「あぁ、あの憎い2人がいる会社がなぁ」

「す、すげぇな」

「ただの情報サイトじゃねぇからな。金を使って捜すさ」


絶大な情報収集力は、単純な力と同義に強力な代物。情報開示も有料チャンネルを通せば、さらに有益な情報を引き出せる。

鵜飼組の情報資金の一つであり、情報を特定の市民などに売ることで利益を得ている。

一般向けの良い商品、良いお店、流行り物の紹介。行方不明者の捜索、他社の企業戦略、一個人の明確な個人情報。


それらを段階ごとに調べ、提供しているのが、鵜飼組の幹部。大野鳥夜枝である。(実際には何千人の違う人間だが)


有料という縛りは躊躇を抱かせるが、その縛りから解かれた者は情報の病み付きに呑まれる。

大野鳥は世界各地にいるそうだが、やはり本拠地である日本の情報は数多く仕入れる。彼女にかかれば日本全体が家みたいなものであるのだ。

大野鳥は様々な情報を何かの依頼で提供することはない。ブログにある1日の様子のような代物で始まる。その中の断片にある情報を探すのが、お客というものだ。その検索の短縮、正しいの有無、所謂いわゆる、時間を買うか買わないか。


それでも一定以上の質の高い情報を得られるところ。


捜したい人を見つけるのは都合がいい。



病院の一室での情報収集だった。2人の男はとある男女を捜していた。大野鳥ネットワークを用いて得られた、『VALENZ TAXI』の社名を、包帯巻かれた指で弾いた。



「今日はありがとうね」

「いえいえ。こちらこそ」

「お仕事を頑張ってくれ。私も明日、お礼の品を持ってこよう」


一つ。女性の方は、なんという偶然か。2人の男が入院している病院に来ていたのだった。偶然が重なったら、出会っていたことだろう。


「では、また明日。ガンモ助さん」



偶然は良い事も、悪い事も現す。



◇      ◇



「まぁ、そのなんですか~」


トーコ様の口調を借りて話すのはアッシ社長であった。『LOST』の影響によって、トラブルが2件ほど同時に会社へ来たのだ。



「一つずつ話します」



仕事のトラブルというのは一つずつ来てくれた方が対処はしやすいが、同時にこられるとてんてこ舞いだ。この時、潰しやすい方からやっていくと良い。大きなトラブルはその場で解決しない。対応が遅くなるのも当然なわけで……


「ここ、病院や警護会社じゃないんですよ?メテオ・ホールさん」

「我とてお前を頼る気はなかった。しかし、アシズムに頼むのはおそらく無理だ」

「私も無理です」

「そう言うな。負傷したとて、お前を殺すくらいはできるわ」


頼みながら脅しですか。まぁ、分からんでもない。厄介なことだ。


「我がしばらく力になれぬ間。畦の警護をして欲しい。あやつの能力は、難解かつ理不尽極まりない。能力一つとれば我より危険やもしれん」

「……いや、ここタクシー会社なんですが?」

「なら死ぬか?」


メテオ・ホールが『VALENZ TAXI』に来ていた。鮫川との戦闘によって傷付き、少しばかり休暇が必要であった。戦う事に関してはさほど問題ないが、畦を守る任はやや適さない。こちらに頼み込んできた理由に、


「アシズムさんなら畦さんを消滅させかねない。頼るのがこちらというのも、分からなくはないです。あの人は自分の平穏のためなら、容易く他人の命を断つこともする。私もそーいう契約の元、この土地を借りてますし」

「理解してくれるか」

「ええ。ただ一点、メテオ・ホールさんが敗れるほどの人間がいるのは理解し難いですね」

「敗れてなどいない。怪我をしただけだ。負けてはいない!一時中断だ!」

「そうしましょうか」



アッシ社長も、メテオ・ホールにはいくつかの借りがある。”実用化”に協力してもらっている一人でもあるからだ。

その一方で


「ところで畦さんの、その危険な能力とはどーいうものです?知らないで巻き込まれるのは勘弁ですよ?」

「知ったところで対策などないぞ。畦の機嫌次第であり、奴には我を感知できぬと同じく、自覚ができない。巻き込まれたら、畦を殺す以外に対処法がない(それでも止まるか知らんけど)。我がいる限り、畦を殺させんがな」


組み合わせ次第では、強力無比。

畦総一郎とメテオ・ホールのコンビはアッシ社長達が想像するより、絶妙にマッチしていて、互いの弱点を打ち消し合い、長所をさらに引き伸ばす。強さを持つメテオ・ホール、奇怪さを持つ畦総一郎のコンビはまさに親と子、なのである。(立場的には畦が親で、子がメテオ・ホールなんだが)

単純にただ1人だけの戦闘における最強候補を挙げれば、広嶋健吾、ダーリヤ、ラブ・スプリング、などなど名前は挙がるが、2人以上のコンビやチームプレイという場面や状況もある。必ずしも力を合わせるとはいえ、最強と最強が組むことよりも、互いの相性でより高みに行く者もいる。



「まぁ、彼等の場合。1人で勝手にやりそうですがね。力を合わせる事が全てとは限りません」



仕事は当然ながら、1人だけのものではない。個人経営だとしてもお客様という厄介な奴がいるはず、タクシー会社だってそうあるし、利用者がいて仕事になる。

誰かと一緒に仕事をすることは効率が良い、数というのは単純に良いものだ。とはいえ、意思の疎通が肉体と違って完璧でないこと、所詮は他人であること。過信にすることは溝を作ることもある。社会の多くは人間関係の悩みを孕み、苦しませる。

切磋琢磨していくか、上下関係を遣り繰りするか。その人次第。よりより職場作りにはよりよい人間関係が当然あります。


「ともかく、私共が代表して、しばし見守りましょう。どうやら日野っちが確保したままのようですし。こちらに連れて来ることを連絡します」

「助かる。4日ぐらいで復帰するつもりだ」


この案件は嫌々ながらも引き受ける。畦総一郎の護衛、というより、介護。というより、飼育?

こちらの話はまた後日となる。

大事かつ重大な事件、


「あう~……」


その事故を起こしたトーコ様は、かなりショックな表情。申し訳ないという顔がこれでもかと、現れていた。アッシ社長は単刀直入に


「交通事故への対処が大変です、トーコ様」

「そうですね~……」


『LOST』の影響下によって、『VALENZ TAXI』の魔法の車に影響が出たのも当然。日野っちは大野鳥のおかげでタクシーをすぐ停車させ、美癒ぴーは偶然ながらガンモ助さんと共に病院内にいた。だが、仕事中のトーコ様は直撃。

タクシーは暴走し、前方車両に衝突。車間距離不足、前方不注意などなど……。


「寝てたのが悪いですね」

「う~、何も弁明しませんよ~」


居眠り運転や飲酒運転はホントに止めましょう。体調が優れない場合は車の運転は控えてください。


”セーフティモード”で運転するトーコ様のタクシーであるが、その安全装置が突如の誤作動だ。

そんなことがあるはずがないという開発者もいよう。しかし、人々の利便性のために生み出された車や列車、飛行機などの命を運ぶ物はあらゆることを大袈裟に想定しなければいけない。

つい最近、話題になったことですけど。


『自動運転中、ブレーキが間に合わない勢いで、歩行者が飛び出して来ました。直進すると歩行者にぶつかります、反対車線に行けば対向車にぶつかります。この際、自動運転はどのような行動をとるべきでしょうか?』


このようなトロッコ問題や、道徳的なジレンマといった問題ですが。本当に責められる問題は人生にあり得ること、進路や生き方はそれに匹敵することでしょうか。


ちなみに自分自身の答えは、反対車線にハンドルを切ると思います。歩行者が子供でしたらまず、反対車線に行きます。高齢者なら遠慮なく直進したいです。ただ、対向車線を走る車に子供がいないというわけでもないんですよね。

とはいえ、車と車がぶつかった方が互いに死者が出にくいことや、まず、運転席や助手席に子供がいる可能性は低いので、やはり反対車線です。その時になったらホントにできるようにしたいです。

こんな可能性を0%にするのが良いんでしょうけど、答えは選びたいものです。

余談ですが、自分は自分の運転技量を把握しています。ですので、絶対に高速道路にはいきません!ビビリで下手だから!!というか、車の運転なんてしたくないです!



「う~うぅ」


泣き、項垂れ、呆然とする。トーコ様は加害者側だ。保険会社の人も来て賠償などのお話もきていた。人を轢き殺したわけでもなく、前方車両との接触。物損事故なため、良い言い方ではないが重たい事故ではない。

交通事故をやらかすと当然ながら加害者も被害者も、冷静でいられない。

事故当初は驚きのあまり、体に走る痛みに気付けないこともある。後遺症として後で報告されることもあります。それが事故から1週間以降だということも……


「前方車両との追突は意外と危険ですよ」

「は、はい!」

「後部座席には子供や高齢者が乗っていることが多いですから。タクシーはお客様を後ろに乗せますし(今回は引越しのトラックで助かりましたけど)」


物損はまだいいものですけど(高級車じゃなければ)、人を傷つけると大変な問題となります。運転手1人の責任や保障では払えないものです。



「はう~」

「トーコ様。今日はもうお休みになられてください」

「で、でも~」

「事故を起こしたばかりの人が何かするのは良くないですよ。しばらく、休みなさい。社長命令です」


今回はトーコ様の居眠り運転による事故。しばし、その顔はまた別の悩みを感じさせた。アッシ社長がそれに気付いているか、否かは分からない。


「お姉ちゃん」

「私、寝てみるね~」


妹である、マジメちゃんは気付いているようで、気付かないふりなのだろうか。

また続くのである。


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