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VALENZ TAXI  作者: 孤独
患者編
56/100

個人的なことではあるが、働いていると畦総一郎の能力が欲しいと思う事が多々ある。まだ、全容が出ないけどね。

日野っちは巻き込まれるタイプだ。


「運命的な者が、彼にはありますよ」

「やっぱり」


暢気にお茶を飲みながら、マジメちゃんに従業員のことを話すアッシ社長。

今は、日野っち、美癒ぴー、トーコ様の3人が営業している真っ只中。


「特別な人間と、位置付けるのもどうかしますがね。彼の場合、経歴もあります」

「?」

「おっと、美癒ぴーの前にマジメちゃんに話すのは少々手順違いですね」


日野っちの、ある意味の正体を知るアッシ社長。

彼を拾ったのは偶然であるが、こうも続けて引き寄せる展開はある種の力を感じる。

家族と勘当し、1人暮らしを始める。そういう人はいることだ。別に特別ではない。


「お菓子できましたよ」


話を切る上手いタイミングに菓子を提供するN_MH。


「これは美味しい。ヤツハシなんて作れるんですか」

「わー、美味しい」

「えへへへ。自信作ですから」


よく見ると、N_MHに指輪が付いていない。美癒ぴーの家事能力を引き出す、あれを使わずにもうそこまでの領域に達するとは、なんという向上心と約束された成果。

恐ろしい。美癒ぴーも、ホントに凄い人間だ。人間として凄いのは羨ましい。


「ところで、さっきの続きを聞いてもいいです?」


こーいうところ美癒ぴーに似ている。むしろ、グイグイと成長していき、知識旺盛さ美癒ぴーを上回っているかもしれない。

危ないぞ、美癒ぴー。ここらでヒロイン交代すらありえる。


「ノーコメントです。本人に確認をとってください」

「そーですかー」


残念そうな顔がより一掃、らしく見える。


「…………」


マジメちゃんがあまり、美癒ぴーのことを聞かないのはN_MHのおかげであろう。彼女のすることが美癒ぴーとかなり重なるからだ。

故にアッシ社長への質問が、日野っちとガンモ助さんに寄るのは当然のこと。


「ところでガンモ助さんってどーいう人なんです?」

「!そうです。私も、あまりあの人の情報を知らないです」

「私に訊くより本人に訊いてくれませんか?」



そう教えるような人では思えません。女は秘密ばかりと思いますが、人間は誰しも秘密を持ち合わせて生きておられる。



◇      ◇



「なぜ、こうなる」


日野っちはタクシーの中でうな垂れる。

なぜ。


「ねぇねぇ、タクシーの助手席に初めて座るよ」

「家族連れくらいしか助手席を使わないからな」



畦総一郎を乗せる羽目になるのか。



「いくら、こーいうタクシーだからってよ。道路を走らせろよ」

「ワクワクだよ!地下だよ!こんな狭い地下を走れるなんて、凄いドライバーだね!車が壁にめり込んでも走れるんだね!」

「そりゃあ」


あんたの神様の仕業だからな。言わないであげるけど。


「……俺の気持ちも知れよ」


後部座席に問いかける。畦には見えないが座る道化師の如き、ピエロ姿。メテオ・ホールがいる。


『お前は我を送り届けることと、畦を護ることだ。少々興味がある』

「俺に興味はねぇ。巻き込むんじゃねぇ」


食傷気味になる。

調子が悪い時は運転するもんじゃない。どこにいるか知らない存在を捜す協力なんて、探偵にでも頼めと思う。

そう感じるのは日野っちが一般人であり、第三者という位置であるからだ。協力するメテオ・ホールも、第三者であるが、自尊心と事実は自らを神と誇る存在。危機に直面するときの対応は、人と神とで異なる者。とはいえ、



『付いて来る辺り、我じゃなく。アッシ社長であれば嫌もなかったろう』

「ま、そうだな」



『LOST』の発動によって、車のエンジンを掛ければすぐに乗っ取られて誤作動を引き起こし、破壊される。また一台、破壊したらアッシ社長に何を言われるか分かったもんじゃない。

しかし、今は魔法を使えて動いている。メテオ・ホールの"元素"によって、バッテリーを経由せずに車を駆動させることができ、『LOST』の影響も一切なく、アッシ社長が内臓している魔法も使用可能となっている。



『とはいえ、我の魔力を使うわけだが』



ここで車のバッテリーについて。

エンジンを入れたり、エアコン付けたり、テレビ付けたり、カーナビやライトに使う電力です。ここ最近の技術ならば、かなり安定していて、よほどの粗悪品でなければ2,3年は使えるそうです。

普段は何気なく掛かるものですから、あまり注意深く点検する部分でもない気がします。

エンストと呼ばれる現象が有名でしょう。エンジンを掛けたつもりが、掛からないというあれです。

主に冬場に起こりやすく、単純な話。バッテリーは寒さにとても弱く、放電し辛くなります。とはいえ、技術向上によって現在は早々なることもありません。


とはいえ、長期間使っている場合は交換を行ないましょう。バッテリーは長持ちする方ですが、心臓にも位置する物です。旅先の途中でバッテリー切れなんてしたら、死にます。


最後にややこしい事となりますが、バッテリーは充電する側面もあります。エンジンを付けるにはバッテリーがなければいけませんが、ガソリンによってエンジンを動かし発電。その電力がバッテリーに充電され、エアコン、テレビ、カーナビ、ライトなどに電力が供給されます。

(日本語が下手で申し訳ない)



「生活面にも応用が利くんだな。魔法も電力もあんまり大差ねぇのか?」



ついでに、アイドリングについて。

最近ではトラックやバスにその言葉が張られている車体があります。

アイドリングとは、エンジンを温めるという行為。電源付けっぱなしと考えてください。

そこにストップが付くと、エンジンを停止させるという意味になります。エンジンをかけていることは当然、バッテリーを消耗します。無駄遣いは良くないです。

また、アイドリングは騒音と排気ガスを吐き出すため(走行中とあまり変わりないってこと)、近所迷惑となります。長時間のアイドリングは避けましょう。



並の使い手では動かすだけで精一杯であるが、メテオ・ホールは自らを神と名乗るだけあって、余裕シャクシャク。寛ぎながら、



「わー。最近のタクシーにはドリンクバーもあるんだねぇ。メロンソーダを飲みたかったんだ」

「勝手に使うな。俺の分だけねぇだろ」

『我が身を削って変えた飲み物だ。畦と我だけに決まっておろう。ここのイチゴ牛乳は上手いな』


勝手ながら、"故郷味オリジン・ファスト"で飲み物を出していただく始末。メテオ・ホールが本当に神に思える、ふてぶてし過ぎる一面。

その余裕に苛立ちも覚えるが、ちょっとした安心もある。仲間でもないが、こいつはやっぱりヤバイ奴なのだ。直感と経験から、ダーリヤやラブ・スプリングに値する危険度を誇る生命体。


「大野鳥夜枝に協力したって事か?」

「え?別にどうでもいいな」

『畦、お前には聞いていないぞ。絡まれるという嫌そうな顔をしている……』


畦にはメテオ・ホールの姿を感知できないため、いると面倒だ。邪魔だ。


『当然であろう。我は畦総一郎の神だ。いくら無差別とはいえ、危機となるならば容赦はせん。テロリストに同情する奴がおるか?殺される可能性を引き出す奴を見過ごすか?』

「……なるほど」

「ねぇねぇ、僕もタクシーを運転してみたい」


コイツ、助手席からハンドルを奪おうとしている。畦の方が明らかな悪じゃないかと、日野っちはメテオ・ホールを睨みつけた。


『すまん』


それは畦の行動に対して、伝える言葉。二重の意味で


『我にも興味はある。事実である神にも、人間は面白い奴なのだ』



◇       ◇


「おい!どうなってるんだ!?」

「電車が動かねぇじゃなく、暴走しているぞ!」

「ネットもロクに機能しねぇ!」


発生して10分ほどのことだ。住民達の声はこの上階にも響いていた。

悪天候でもなく突如として襲い掛かり、人間の目には映らない恐怖だからこそ、混乱の規模は大きく。それを正せる存在はすぐにはいない。大野鳥が道路整備をしても、それは一部分の範囲。

全国規模で広がれば……



「終わりだな」



『LOST』の情報を知っている、鵜飼組の対応は早い。この兵器が凄まじい速度と不規則な範囲と動きを持つだけに、対応の遅れは致命的となる。


「終わった方が始末は楽だろう」

「それで生き残れる奴がどれだけおると思う、災害と捉えろ」

「言い方が悪くて、いかんなぁ。すまんなぁ」


しかし、朱里咲の言うとおり。『LOST』の性能はえげつない分、とっても脆い。多くの科学製品を誤作動させる力であるが、稀な確率でやる方もやる方で


「電気をぶった切れば片付く代物だ」

「楽でもないがな」


電源OFF、あるいは、停電状態に陥ったとき。『LOST』は一瞬で消滅する。とはいえ、繁殖力もハンパではないため、どちらにも言えることだが早々できるもんじゃない。やり方が分かっても、実行に困るのは少々面倒。


「儂と朱里咲はネットワークをぶっ潰す。天草と沙耶、出雲、大野鳥は電力会社を壊せ」


ほんのちょっとの時間でいい。

日本全国を停電状態にさせるのが、鵜飼組のやり方であり、可能な行動である。単純かつ大胆な作戦を行なうのは、単なる組織ではないこと。


「奴は電力が命であり足場、ネットワークが活動範囲じゃ」

「私と鵜飼でネットワーク会社を止め、活動範囲を狭めて」

「沙耶と出雲が追い込み、天草。お前がトドメをさせ」


電子ソフト故に思う事。すでに上着を脱ぎ、肉体がムキムキの武闘派である天草は


「ちょっと物足りねぇな」


対戦する相手が組織規模であり、向かい合って殴り合うという、男と男の戦いでないことにそこまで気乗りしなかった。


「そう言うな。たまにはいいじゃないか」


朱里咲も、鵜飼同様であったが反対側の窓から体を出した。デコピンの構えを左手で作り、右の掌に乗る麻雀牌が5つ。障害物はいくつもあるし、つーかここは東京。彼女が狙う先は通信会社の電力、すでに『LOST』は侵入しており、対応もなにもできないだろう。

念のため、言っておくが。朱里咲が狙っているのは電線である。


「地下にある電線はどうする?」

「まずは上をやっつけてからでええよ」


同じく、鵜飼もスナイパーライフルで電線を狙っていた。

双方に言える事であるが、……特に異常なのは朱里咲の方であろう。麻雀牌をデコピンで弾き飛ばし、弾丸に匹敵する回転と速度で電線を正確に貫く。それを5連打で、5つの電線を切り取る。鵜飼も正確に射抜くが、彼が2本の線を切る前にもう5本も切る朱里咲。

ちなみに2人共、物凄く遠い電線を切っている。


一時的な停電で、『LOST』の影響は大きく減る。


「予備の電力に切り替われば、まずいい」

「とはいえ、都市部は電線が少ない」


地域にも格差があるが、地中にライフラインを設計すると景観と防災に優れるが、何かがあると一度掘り起こす必要があるため、なにかと面倒なのである。

天草、朱里咲、鵜飼の3人は東京都に在留。一方、沙耶、出雲、大野鳥は中部地方に派遣されているまま。



ピルルルル


「あっ!鵜飼さんですか!?」


1人の大野鳥(司令塔を担う大野鳥)に鵜飼から連絡が入る。


『そうじゃ。今から遠い順の電力会社に電力供給停止を伝える。九州、北海道、中国、四国、東北の順じゃ。東京に追い込んで仕留める』

「『LOST』の影響下から解放されたんですか!?」

『一時的じゃ!また感染もあり得る!お主等は電力会社、そのものをぶっ壊すんじゃぞ!連絡の通達もできんからな!』


手っ取り早く、『LOST』の拡大範囲を縮めるならば、電力を止めるのが早い。拡大されるのが面倒であるため、遠い順から電力を落としていき、国内に閉じ込める。

誤作動を主軸に使われている力であるため、一度、原始的に消されると復活することはなく、飛び越える事も逃げ出す事もできない。


「常に暴走しているシステムだからこそ、最善も選べねぇし、できねぇ」


発動から極めて早い速度で散って、周囲を暴走させるが、鵜飼組が仕掛ける攻撃に対応していくような知能は当然ながらなく、電線や電力会社、電力施設を落とすという手段を止める手立てはない。また、それも浮かばない。



トンッ タァンッ



出雲安輝。電線上を突っ走りながら、切り落とす。電力を伝える箇所を破壊することで被害が小さく、『LOST』の行動範囲を狭められるからだ。


「全ての電線を殴り壊せばいいのか?」


この男。地下に電線が通っていることを知らない。まぁ、それも分からなくはないか。

しかし、まだこっちの方が良いと思える。



「ちょっとぉぉっ!なにチマチマやってるのよ!」

「ん?」


電線に向かって自転車を投げつけてくる者が1人。他人の物なんだから、大切に扱って欲しいものだ。


「そんなんじゃ、電気は止められないでしょ!非力!」

「まぁ、そうだね。沙耶」


だからといってだ。


「ど派手にかましたる」


送電線と繫がった鉄塔を引っこ抜く、"超人"の中でも異様過ぎる怪力で、



「電力会社に殴り込みだーーー!!」


鉄塔そのものを中部電力が管理する、発電施設に投げ込むのは止めた方が良い。被害がハンパではない。なんという暴力。粗暴すぎる女だ。

出雲と沙耶の活躍によって、『LOST』の影響下をもっとも受けた中部地方の電力を一気に遮断。『LOST』の感染は関東へと迫り来る。むしろ、追い出されたに近いだろう。


「関東の電力も落とせ」


関東の電力も、鵜飼の権力によって遮断。手詰まりとなった。霧散しかけたが、ある場所に雷でも落ちたかのような凄まじい電力を感じ取った。『LOST』は一気にそこへ移動した。生物のように生きようとし、電線に伝わっていく力強い電力を頼って進んだ先は



「よぉっ」



天草達がいる部屋。電源コードが付けられ、天草が人力で作り出した電力に縋ってきたが、PCの中に閉じ込められる『LOST』。天草は同時にその拳で惜しむこともなく、『LOST』に感染した唯一のPCを破壊するのであった。


「飛んで火に入る夏の虫、といったところじゃろうか」

「発電所を断ったところで、強力な電気を発しておびき寄せ、破壊か」

「俺にはちょっとメンド過ぎだぜ。なんで俺が発電の役割なんだ?人力発電じゃねぇか、自転車の」



ピルルルルル



「お。出雲か!『LOST』は退治したぞ!」

『そんなことより、沙耶ちゃんを止めてください。天草組長の言葉じゃないと止められません。中部電力、壊れちゃいますよ』

「やれやれ、こうも色んなことが起きちゃ、鮫川組長を捜す余裕なんてねぇな」



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