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VALENZ TAXI  作者: 孤独
患者編
55/100

なぜ、古来より人は発展を求めたかを考えよう


パチンッ


パチンッ



「……………」



パチンッ



パチンッ



例え、最強の人間と言われる男であっても、人間としての特性はある。

ダーリヤもそうだ。

ぶっちぎった人間であろうと、枠は人間の領域。爪くらい切る。髭も伸びるから剃りもする。道具を頼って丁寧に身嗜みを整える。



バシャァッ



「……ったく」



ダーリヤだけでもなく、アシズムの切り札として存在している広嶋健吾も同様。顔を洗って髪を整えて、爪をやすりで綺麗にしていく。

鏡を見て、


「髪、伸びたな。散髪でもいくか」


自分自身の変化を知り、また戻そうと、正そうとする。

ラブ・スプリングはロボットであるため、例外となるものの。どんなに強い奴だろうが、凄い奴だろうが、人間とそう変わりない一面も持ち合わせる。

それはとても身近なこと。


「スポーツ刈りにしてあげようか、広嶋君!昔は高校球児だったんでしょ?」

「ミムラ。そのバリカンで、テメェのクソ長い髪を剥ぎ取ってもいいんだぞ」


彼等もまた、平然と。自分だけに頼らずに生活をする。

車にも乗るし、電車にも乗る、スマホも使うし、ネットも使う。生活を便利にする道具は溢れかえり、使うことになんの迷いがあるという?


故に『LOST』が、日常の中で出現を果たしたら…………




ドゴオオォッ




「な、なんだぁっ!?」

「どこ見て走ってやがる!?」

「違う!なんか勝手に」



道路に出現した『LOST』は次々と車の操作を運転手達から奪い去り、幼稚園児が乗り込んだかのように暴走。


「は、反対車線に出るなぁーー!」

「歩道に乗り上げるなー!」

「なんでアクセル離してるのに勝手に動くんだ!?」



一般道路、高速道路。問わずに大混乱を引き起こす。



ギイィィィッ



「きゅ、急ブレーキをかけるな。クソ運転手!!」


列車もまた大暴走。


急ブレーキをかけることならまだいい。怒れるというのは、ある種の余裕であるからだ。もっとも怒りなんて不必要と、思う事であるが。恐怖に晒されれば一つの感情となる。


「ちょ、もうすぐ駅だぞ」

「各駅停車だろ……」


60,70、80、90、100.


速度は落ちるどころか加速していく。直線状の駅であるならば多少マシであろうが、曲線上になっている駅や様々な列車が往来する駅もある。

数分の内に発生するのは、列車の脱線や正面衝突。タクシー以上に人を乗せるものがこうも瞬時に大事故となれば、一溜まりもない悪夢。



ブウゥゥンッ


「なんだ?信号がおかしいぞ」


電気が通っていれば、洗濯機を誤作動させて、洋服はグチャグチャ。乾燥機に入れても渇かず。コンロの火は安全装置が抜けた状態での大火力。

ネットワークに侵入したら、人々のメールアドレスや電話番号、住所にいたるまでの個人情報を各地に拡散。不要なものインストールしたり、その逆もする。人間に操作を許さず、暴風の如く、ネット上を誤作動させていく。

歩行者と自動車を安全に誘導させる信号も当然のように、機能を失っていた。


街中、いや。日本全国になろうとする猛威。




「これは……」


『LOST』を知る大野鳥と、知らない大野鳥がいる。

日野っちのところに乗車していた大野鳥の1人は、『LOST』の存在を知っていたからこそ。すぐに、叫んだ。


「停まって!」

「うおっ!?なんだよ!」

「すぐに脇に止めて!エンジン切って!」



『LOST』から逃れる手段は難しいようで簡単でもある。

電源を切ること。たったそれだけでとりついた『LOST』は消滅する。とはいえ、侵入さえすれば電源を切る行為でも切れないように抗いもする。

生命体の一つ、そのプログラムも施されている。



「これはおかしい」

「なにか起きる」

「いや、すでに同じ容姿の人間を2人も乗せていたら、異常だと分かるんだが」



日常に広まる誤作動は、全ての住民を脅かしたのは当然。



「さ、さっきから携帯がまったく機能しねぇ!?」

「セーブデータを上書きされた!」

「彼女宛のメールを母ちゃんに送信しちまったぁっ!」

「取引先の情報がーー!!」

「電車が停まってるーー!」


住民の大パニックはすぐにでも分かった。それは日野っちにも分かったこと。

まーた、変なことに巻き込まれてしまった。どうやら、美癒ぴーよりもトラブル体質なのかもしれん。ちょっと、お祓いでもしてこようかと思った。


「ヤバイ、ヤバイ。この異常事態は間違いなく、『LOST』。伊賀がやってきたのかな?」

「伊賀って大野鳥さんの元上司?」

「そうよ、私達。大野鳥の指揮を持っていた人」

「ややこしいからやめんか」


通信手段も不能となる。殺傷能力は不安定であるが、情報の切断と混乱には無類の性能を発揮する『LOST』。止める手立てはあるも、実質こちらも手詰まりに陥る。



「みんな、大野鳥も分かったと思うけど。住民の安全が優先ね」



周辺で鮫川を捜索していた大野鳥達は速やかに、混乱する住民達の誘導を始める。主に道路の統制、信号が使用不能故、すぐに手信号を勝手出る大野鳥。こーいう時のための、大野鳥は持ち歩いているカバンの中に誘導灯ゆうどうとうを入れている。

人海戦術の基本的にして、有効な手段。単調で作業効率をどうしてもあげられない場面を数で押し切れること。


そこら中にいた大野鳥達がすぐさま、誘導灯を片手に車や歩行者を安心して誘導させる。



「こんなにいたのかよ」

「私達は住民という役割を持つ、諜報員」

「彼女達は隠密、潜入の役割を持つ大野鳥」



ここで誘導灯及び、手信号について。


「『LOST』のせいで、車の制御はままならないけどね」

「それは言わないで」



工事現場を歩行する際に、誘導する人がいるだろう。

誘導の仕事は立ち仕事で単調、かなり長い、天候に左右されるなど。車で通り過ぎると一瞬しか働いていないと思えるが、


『兄ちゃん、朝から夜まで配達ご苦労様』

『誘導さんも朝からずっとですか』


よくあることだ。昼夜問わず、誘導、道路工事、ご苦労様です。確かに進行や歩行の妨げとなってしまう道路工事であるが、トラックやバスが何度も走行すると、路肩を中心に凹んでいく。アスファルトだって凹んでしまうのだ。


誘導の指示について。

旗やら誘導灯、手信号と色々な手段があり、基本的にどれも同じである。(図があると、とても分かりやすいので参照してください)



誘導する人が運転手や歩行者から見て、対面する場合は停まれ。

一方、誘導する人が運転手や歩行者から右や左を見て、平行に見える場合は進めとなる。この際、誘導する人は腕を降ろす、あるいは、進めと伝えるように腕を動かしているだろう。ただし、注意点として、両腕が上に真っ直ぐ動かした場合は、そろそろ誘導する人の向きが変わる合図となる。ようするに黄信号となる。これを見誤らないようにしましょう。


交差点のみならず、直進道路。あるいは高速道路においても、日夜。道路工事は安全な車の移動のために行なわれている。



「コラ!こんなところに駐車をするな」

「……………あー」


『LOST』の影響により、普段以上に駐車違反が目立つ。それは仕方ない事であり、それを取り締まる人達には気付かないこともまたしょうがないこと。


駐車違反とは、

『免停』にも影響する処罰。とはいえ、講習を受ければ大概は免除される違反である。

駐車違反には大まかに2つのルールがあります。


一つは駐車禁止区域に駐車し、車に誰も乗っていなくてすぐに車を動かせない場合、”放置駐車違反”になります。

もう一つは”非放置駐車違反”。駐車禁止場所に車を停めて、5分以上も駐車している時の違反であり、車に誰も乗っていなくても適用されるものです。


うん、ややこしい。どちらが適用されるかは取り締まる警察や駐車違反を見回る”緑の自転車の人”が決めることだというのが多い。

ともかく、駐車違反にならなければいいです。



「良い自転車ねぇ」

「沙耶ちゃん、先に行くの?」

「ここは任せるよ、大野鳥達にね」


駐車違反となる場所は以下のような事例、



1.駐停車禁止の標識や標示のある場所・トンネル内

2.交差点とその側端から5m以内の場所

3.道路の曲がり角から5m以内の場所

4.横断歩道と自転車横断帯とその側端から10m以内の場所

5.安全地帯の左側とその前後10m以内の場所

6.バスと路面電車の停留所の標識板から10m以内の場所

7.踏切とその側端から前後10m以内の場所

8.軌道敷内

9.坂道の頂上付近や勾配が急な坂道



バス停や救急車や消防車が出入りする場所には、斜めの白線が入った道路と思います。交差点近くでは当然ながら、駐車することを止めれば、まずならないでしょう。

万が一でありますが、駐車違反となった場合はひとまず落ち着きましょう。駐禁ステッカーを貼られていても、落ち着きましょう。

反則金と罰金を払う方法ですが、2つあるそうです。


1つ目は警察に出頭して、お金を払う方法です。即日で終わりますし、点数もちゃんとつけられます。


2つ目は『支払い催促通知書』と呼ばれる物が送付されます。これに従って、罰金を支払いましょう。これはコンビニでも支払いが可能だそうです。

ただし、注意点として。この『支払い催促通知書』は、車の持ち主に届きます。家族や友人の車で駐車違反をした時は気をつけましょう。しかし、こちらの方はどうやら点数がつけられることがないそうです。(警察と会わずに済むため)



バギイイィッ



「じゃあ、この自転車借りるよ」


注意点として、友人などの車は借りないようにしましょう。事故るとロクでもないです。

このヤバ目な少女がやっている窃盗もまた、ご法度です。

さらに最悪な話となりますが、車を誰かに貸して事故が発生した場合、貸した人にも責任がやってくるため、ロクでもないことになるので気をつけましょう。



「『LOST』の破壊を早急、迅速にやらないとね」


パパが、大事に持っている代物のはず。



「出雲も、天草組長もいずれ集まるでしょ」



少女と言えるほど、大野鳥より小柄な女性であるが、右頬に残るエグイ火傷。若くして大野鳥と並び、鵜飼組の幹部。見た目はワイルドで緑の短髪、終始控え目な体型。しかし、戦闘員としての技量を高く買われ、成長株でもある。




ドゴオオォォォッ



『LOST』は、電子媒体や自動車、列車などに潜むが。人体などの生物や自転車、椅子、机、道路などには潜行しない。

移動速度、適用範囲は人間がいくら進歩しようと、追いつけないところまでいく、『LOST』である。これを破壊するのも容易ではないが、弱点が分かっている相手を倒す比較的楽だ。

鵜飼組の総力を持ってして、



「いかんなぁ、時間勝負じゃないか」



いくつかの麻雀牌を手に取りながら、綺麗な片手のジャグリングをする木見潮朱里咲。



「困ったもんじゃい」

『困難とは、希望でもある』

『ワタクシもそのような解釈で』

『僕、正義のヒーローみたいだ』



おっと。


「やるのは、儂じゃぞ。赤沼達はお預けじゃ」


時折、人相と体型が切り替わり始める老人、鵜飼竹。老齢に見合わず、スナイパーライフルをすでに窓から構えている。



「”BEST企画”で弱点の把握はできてるんだろうな」

「若造に心配されるほど、甘くはねぇぞ」


天草試練も、部屋で構える。3人固まって、ここからとある場所へ、電光石火の襲撃をかますのである。それは『LOST』の被害を食い止めることに繫がる。



◇       ◇



ドガアアァァッ



「うおおぉっ、なんだ!?」

「さっきから車の制御が効かねぇ!」

「どうなってんだーー!?」


街中どころか、県内全体の影響力で『LOST』は襲い掛かり、生活基盤をグチャグチャにしていった。

『LOST』に侵入される前に、道路の端に車を止め、日野っちは車内で閉じ篭る。乗っていた大野鳥は一生懸命に道路整備へ。警察もまた道路整備以上の混乱に対処している状態。

通信手段を妨害されているのだから、遅くなるのも当然。



「まったく、なんてトンデモな兵器だ」



普段使っている魔法。それより下位互換になるだろう、現在の日本のライフラインですら暴走したらこれほどの被害になるのか。

事故の損害をネットで見たいが、ネットも『LOST』に誤作動させられ、なにがなんだか分からない状況らしい。物凄く生活のし辛さと、危機を感じる。


「車も使えなきゃ、なにもできねぇ」


日野っちも運転できる気がしないと思った。通り過ぎる車達の多くが大暴走し、反対車線や歩道、壁などに激突していくサマは完全にイカレていなきゃ、できないことだ。

人間が操作することは不可能。


「ああああああああああ」


おそらく、山口兵多ができるかできないかくらい。にもかかわらず、天然にして『LOST』の誤作動に対応している運転手が1人いた。そして、驚きながら彼の運転を見守る同乗者。


「うわあああぁぁっ」

『珍しいな。お前が正確に運転できるなんて』



それでも悲鳴は止まないのか。



「…………おいおい、おいおい」


誤作動させるプログラムと、常時誤作動というべきイカレたドライバーが組み合わさると、どうやら正常になる。マイナス同士をかけると、プラスになるような法則だろうか。

見たくはない奴に出会ってしまった。



「!あれれれ?あのタクシー」

『むっ』


誤作動で来たのではない。

この男、平然と自らの意思で反対車線に入り込んで、ここにやってきた。イカレ具合が『LOST』を超越しているんだろう。さすがの兵器でも、馬鹿を操れないというわけか。


「日野っち、だっけ?この間はどうも」

『お前のタクシーはやられたのか?』


1人は人間、1人は神様だとか。


「畦総一郎……それに、メテオ・ホール……」


厄介な奴等と出会ってしまった。なんなんだ、今日は。



「僕、取材でここに訪れていたんだ」

『暴走運転でな』

「は、あははは」



アッシ社長、美癒ぴー。助けてくれ。そんな通信も、『LOST』のせいで機能しないのだが。



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