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VALENZ TAXI  作者: 孤独
連休編
51/100

新人さんをアテにする人は大抵ダメな人


社会や国では優秀な人材をスカウトしてくることは良くある。



「うらあぁぁっ!」


ラブ・スプリングの部下、山寺光一はそーいう事例にある。元は日本のとある組のナンバー2の権威を持ち、個人の戦闘力もラブ・スプリングが一目置くほどの強者である。前々から彼の腕を買っており、現状に不満を抱いていた彼とはすぐに話ができていた。



「日本人だからって舐めんなよ。ピザばっかり食ってちゃダメだぜ」

「も、もうしねぇから!許してくれぇ!」



腕力のみで武装集団を無傷で一網打尽。暇潰しがてら、潰される悪の一味はなんか可哀想だ。



「まぁ、こんでいいだろ。アメ公の警察ちゃんはもっと頑張りな」



そんな言葉を放ちながら、捕えた連中は全員土の中に体を埋め込まれているという悲惨な放置プレイ。光一は暇潰しを終えて、ラブ・スプリングの元へ帰ろうとしていた。

アッシ社長も、今の山寺光一のような立場を持つべきであろう。




バヂイィィッ



騒動は収束を迎える。日野っちが、"炭酸化"を破壊した事で肉体が戻り始める。



「お、おおっ。戻りましたね」

「よ、良かったー」


廊下で復活するアッシ社長と夏目。


「……ぶはぁっ……うおぉっ!いてぇっ!空気中に散ってた方が楽だったー!」

「ふぁっ。こっちは直って良かったです」


N_MHと兵多も完全復活。なのに、兵多だけはマジメちゃんに撃たれた傷が再生せず。



「おおー、戻れたー!」

「やったーー!」


解放されて喜ぶ日野っちと美癒ぴー、その2人に纏めて抱きつく。


「助かったぞー!日野っちのおかげかー!」

「うわっ!?ガンモ助さん!」

「俺もビックリしたぞー!いやー、良かった良かった」

「く、苦しいですよぉ、違う意味で……」

「そうか」


ガンモ助さんも復活し、そして……



バヂイイィィッ



全員が復活した幸せを他所に、2度の打撃音が響いた。無言のまま、倉庫の壁に実の妹を押し付けるトーコ様がいた。


「………」

「……お姉ちゃん」


キレてる。妹はそれを理解している。だが、分からない事がある。

姉の激怒はホントに、自分自身の方に向いていることに。



バギイィィッ



顔を中心に殴りつけ、痛みというのをよく分からせる。髪を引っ張り、持ち上げて顎を蹴り飛ばす。あのユルフワ~なイメージはどこにもなく、完全武闘派なトーコ様。妹に容赦ねぇ。

しかし、それも理由がある。


「痛いでしょ?」


どSチックな発言。怒る理由を当てられるだろうか。


「ちょっ!トーコ様!止めなさい!」

「ガンモ助さん!まだ、足りません!」



これで最後にするという、胸部への蹴りがマジメちゃんに炸裂。

ボロボロに痛めつけてなおマジメちゃんは苦しみながら、生きている。ヤリ過ぎだろうと、思える光景ではあったが……


「無理心中をするなんて言わないでよ」

「…………」

「あなたが眠ってる理由が、分からなかった?」

「…………」


真面目な人を叱るのは中々、心を痛める。これだけ傷つけても人は生きる。自殺は簡単なようで難しい事を痛めつけて覚えさせるトーコ様だった。




◇      ◇



美癒ぴーが家事をすることになった。それはまぁ、致し方ない事である。


「新人さんと、出戻りの新人さんの挨拶を願います」


N_MHはとても幸せそうな顔をする反面、マジメちゃんは複雑な表情で立っていた。傷だらけになった体も、アッシ社長が専用の道具で治してくれた。

歓迎会になるとは思わず、そのままご一緒する兵多と夏目。


「初めまして!私は、N_MHと申します。主にここでは事務員として務める次第です。美癒ぴー、日野っちの2人にはよくしてもらいたいです」


一礼し、歓迎する拍手が響く。バトンタッチされるマジメちゃん。


「その、申し訳ございませんでした!」


深々と謝罪から、


「この度。私の、勝手な行動で皆様に危機を与えてしまい申し訳ありません。私、マジメはこれより、皆様と共に精一杯働き、罪を償います!どうか、これからもよろしくお願いします」



精一杯の言葉と気持ちを乗せたから、


パチパチパチ


「頑張ってくださいね、マジメちゃん」

「復帰おめでと~~」

「いいよ、いいよ」

「歓迎だよ!」

「これから一緒に頑張りましょう!」


ここにいる人達は温かく迎えてくれるのであった。

N_MHとマジメちゃんの加入によって、大きな成長を遂げた『VALENZ TAXI』


「マジメちゃんには車の整備を中心にお願いします」

「は、はい!アッシ社長と共に、……その」

「マジメ~~、アッシ社長とベタベタしちゃダメだよ~」


恋敵が妹という関係になるも、トーコ様も嬉しそうな顔。一方でアッシ社長は技術者の加入に関しては、とても嬉しく思っていた。仕事という関係であるには変わりない。


「妹がホントにいたんだ」


美癒ぴーにはそーいった扱いをトーコ様から受けていただけに、なんか分かった。


「でも、似てないよな」

「そうですね。私と美癒ぴーの方が似てます」


さりげなくだが、N_MHが日野っちの隣に座っているから警戒してしまう美癒ぴー。全員にお茶を配りながら、


「むっ」

「?」


N_MHを一睨み。こいつは手強いと、美癒ぴーも、ある意味の敵に警戒するのであった。


「まったく、散々だ」

「でも良いじゃない」


絶品な羊羹を頂ければ、兵多も散々な日を良い日だったと感じられた。

助かったもあるし、仲間が増えたという喜びもある。(兵多と夏目には関係ないが)全員が確かに喜んで、プチ飲み会をしたのは確かだった。


「ふぅ」


そんな時だった。喜びにしてはちょっと違う感情と行動をする人がいた。


「……………」


悲しい顔。より、寂しい顔をしているガンモ助さん。

まだこの時、その感情に気付けた人はそういなかった。周りの幸せを素直に喜べるのだから、誰もその人の心の内を見ることをしない。

初めてという出会いが、別れというサヨナラもある。



◇        ◇



ガララララララ



車には色々とある。タクシーのような自動車しかり、大人数を運ぶ列車や大型バスしかり。とはいえ、車輪があれば馬車にも、自転車にもなる。

それだけ車輪は革命的な発明であり、人々の希望となって生まれた技術。



シャアアァァッ



「はぇーっ……」

『関心しているのか、それとも言葉通りか分からないな』


丁度、次の新作のための取材に訪れていた畦総一郎と、守護霊としているメテオ・ホール。その2人が目にしているのは1人の大人の女性。

車椅子に乗って自在に操る。動きは溌剌としていて、歩けないというハンデをまったく気負わぬ立派な女性。現在は、バスケやテニス、ロードレースなどの車椅子部門で活躍する有名な女性選手である。


「僕なんかより何倍も凄い人だ」

『何倍で済むのか?』



障害者と人括りするのは良いのだろうか?

確かに人によっては色々な気持ちもある。障害者として扱って欲しい人、そうではなく、人として扱って欲しいこと。願わないことは状況に応じて、変化をつける信念温き者。


「障害者って弱い人を指すんじゃないんだー」

『お前は健常者だけど、精神的には障害者と認定されるべきだ(すればなるんだろうか)』


畦は関心しながら、メテオ・ホールはその関心が聴こえないから毒を吐く。

歩けない女性の生活を密着し、次の童話作りの参考になった。


「ありがとうございます、福道春香ふくみちはるかさん。今日の体験を元に凄い童話ができそうです」

「いえいえ、私としてはこれからもっと、障害者スポーツの発展に貢献できればと思っていますわ。童話でも取材は来て良いですから」


発展のため、より障害者を分かってもらうため、それは健常者だけでなく、障害者自身にも伝えるべきこと。誰だってそうはならないと思っているだろうが、老いれば歩けず、寝たきりもあること。不慮の事故で失うこともある。突然、命だけを失うことでもない。


人生、分からない事だらけさ。


「よーし!僕も頑張って、童話作家になるぞー!」

『いや、お前の仕事は童話作家だ!』


畦は先にホテルに帰っていく。取材を終えた福道も汗を流して、別のホテルに戻る準備を始めた。丁度2人は、名古屋の近くにいた。


「ぷはーっ、シャワーの後の牛乳はサイコー!」


どれだけ好きか。プルンプルン、胸が唸って豊満になるくらい。サッパリした後の牛乳が好き。着替えを終え、車椅子を動かす福道。運動が仕事でもあり、好きな事でもあるため、Tシャツにジーンズという動きやすい格好にして、男性と見間違うような格好。

胸デカイから女性だってのは一目で分かるが、その格好は逆にズルくないか?

歩く事はできないが、車椅子のおかげで十分な働きができる。



「どうだねぇ。福道」

「!会長」


シャワールームから出ると、福道を待っていた老人



「シャワールームの前で待っているのは変態のソレですよ。音聞いてました?」

「アホぉな事を言うとるな。お前は……」


年老いたと言うべき存在、杖を突いて立っているのがやっとであり、バランス良く立つ事ができない。しかし、着た服の内側が見えるぐらい、老人には思えぬ強靭な構造が成されている。

ヨボヨボなお爺さんを演出しているには、胡散臭い人。

隣同士で歩くと、どうしても福道の方が速く、老人は彼女に捕まりながら質問を続ける。


「で?どうなっとる?」

「続きですか?順調ですよ。運動も恋愛も!」

「んな報告はどうだってえぇ、お主は行政法人の”諜報員”じゃろうが。ワシに情報を渡す役割じゃぞ」

「会長は気になり過ぎですよ。せっかちに世界は動きませんよ」

「この歳じゃぞ。いつくたばるか読めん歳の人間が、せっかちにならんでどうする?強欲にならんでどうする?……ったく、高血圧になると光一から受けた傷が疼くわぃ」


老人最後の願いはいつまでも続く。


「壊れて欲しい世の中じゃい」


壊されん限り。

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