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VALENZ TAXI  作者: 孤独
飲酒編
38/100

旅行から帰ってくるとホッとする。タクシーを使うと早くて助かる

グテーーーッ



「し、死ぬ思いした……」

「飛び切り疲れました……」


海外旅行してきた気分より、別の世界に行ってきましたという気分が強い。

翌日になってもその疲れはまったく抜けず、あろうことか。


「なんなんだあいつ等!?ホントに人間かよ!!」

「アッシ社長!これからとんでもない人達に狙われるじゃないですか!」


日野っちと美癒ぴーが怒ってアッシ社長に指摘する。ロシアでの接待及び事件は、2人にとても大きな衝撃を与えた。巻き込まれた日野っちが悪いわけだが、こんな連中がいるとは思ってもみなかったのだ。世界は広いと言えば、そうだなって思う。


「警告が遅れたのはすみません」

「ま、僕の管轄って事で済んでると思うから。気にせず、続ければいいんじゃない?」


そのアッシ社長と並んで話すのは、あの化け物達と平然と戦っていた少年。っていうか、ロボットのラブ・スプリングであった。


「あなたも生きているとはしぶといですね」

「ははは、生きてなきゃ護れない物もあるでしょ?」


今は丁度、戦争後の雑務整理といったところである。逃走という敗北に思える結果となったが、そもそも戦うという手段なし、全ての勝敗は倒すで決まるわけでもない。ダーリヤの本当の興味がラブ・スプリング自身にあったため、勝ちと言えば勝ちにもなる。


「トーコ様が負傷してしまい、少々困ります。前々から考えていたのですが、ここらでまた新しい補強をしようと思ってるんです」



怪我や病気の際に、車の運転は危険です。体が思うように動かないことは当然ながら、運転にも支障が出ます。自分だけが、というわけではありません。病気を理由に事故を起こして良いわけになりません。病院時にはタクシーを使うといった事もありますので、気軽に頼みましょう。



「お礼も兼ねて、少々どうですか?先ほどの件」

「良いねぇ。僕は異論ないけど、"あっち"と"そっち"はどうなの?」


そういって、ラブ・スプリングがなぜだか美癒ぴーの方に顔を向ける。美癒ぴーも、可愛い少年と向き合うとなんだか



「ショタ好きか?」

「!そーいう、……まぁ、ちょっと好きかな、ぐらい」


日野っちに指摘され、ちょっとソッポを向く美癒ぴー。ラブ・スプリングより背が大きいので少しは安心している日野っち。

おそらく、"そっち"という俺達の事なんだろうってのは思う。何がしたいのか分からないが、


「"あっち"についてはオススメしないよ。僕、直接な繫がりがあるわけじゃないし。裏じゃ、ロシアのダーリヤとか中国の伊賀とかに繫がりがあると聞くし」

「私共が使うカーナビの造ったとこですが、ラブ・スプリングにも繫がりがないんですか。アテが外れますね」



『VALENZ TAXI』がそうであるように、自分の会社などには後ろ盾がある。これが強いほど活動できる範囲も、資金も、協力も行なえる。裏切り切り捨てがあれど、必要な存在だ。


「危険は承知としますか。あなたという心強い協力者がいる限り、私も動けますから」


自称平和主義で、地球上においては特別に動くことのないアシズム達との連携も深めつつ、国家に関わるラブ・スプリングとも上手くやり取りするアッシ社長は世渡り上手である。

ラブ・スプリングへの警戒は怠ってはいないが、自分の能力と現状を考えれば彼の後ろ盾を常に抱えるのは良きことだった。


「では、"そっち"の方の事を頼んでいいですか?」

「うん」


アッシ社長も、"そっち"を言いながら。美癒ぴーと日野っちの方に視線を送っていた。なんか嫌な予感……。


「な、何をする気だ」

「日野っちじゃないですよ。美癒ぴーに私達からのお願い事です」


その言葉を聞いてちょっとホッとする日野っちだった。


「わ、私ですか!?」

「大丈夫!変なことしないから」


そう言いながら、ラブ・スプリングはテクテクと歩いて美癒ぴーの前まで来た。実際こう近くで見ると、やっぱり俺の方がちょっと背が高いと日野っちは感じた。また、美癒ぴーも。ラブ・スプリングの健気で天然っぽい雰囲気にはちょっと良い意識を感じた。こんな子がいたら良いな。

しかしながら、すぐに2人はこいつも別の意味で只者じゃないと知る。


「女性って」



ムニュッ



「胸を揉んであげると喜ぶんだったね」



そういって、警戒心を0にしていたため。ゆっくりだったとはいえ、なんの抵抗もなく許してしまった美癒ぴー。自分の胸をいきなり、それも鷲づかみされて揉まれるという。どストレートなセクハラを仕掛ける少年に対し、許す気持ちなどまったくなくなり、爆発したような赤面で叫びながら



「どこ触ってるんですか!?」



美癒ぴーはラブ・スプリングの頬を引っ叩く!


「なにしてんだテメェ!!」


続いて日野っちも、自分がやられたかの如く、叫びながらラブ・スプリングの腹を蹴ったのだった。



会社内でセクハラという事例もあります。女性の立場というのは会社によって異なるため、どのような解決になるかは分かりません。セクハラにも色々種類があり、加害者側に悪意がなくやっている場合や被害者自身が敏感になっている事もあります。判断基準はとても曖昧で一人一人違います(ラブ・スプリングのは完全にOUTです)。

しかし、相談などはするべき事なので会社内。それでも無理ならば専門業者に相談するのも一つの手でしょう。

最後にセクハラされる女性というのは当然ですが、可愛い人という条件がつくので勘違いは止めましょう。



「いっ」

「ぐっ」



ラブ・スプリングを瞬間的に攻撃した二人であったが、すぐに痛みが返ってきた。



「な、なんですか!あなたは~~……」

「鋼鉄を殴ったみたいな。どんな構造をしてやがる!?」

「僕、見た目は人間でもロボットだから表面はかなり硬いよ。大丈夫だった?」



殴った側が痛い目に会うこともある。蹴った日野っちは無様に床に転がって足を押さえ、美癒ぴーは右手を左手でさすっていた。


「胸じゃ喜ばないなら、お尻の方が喜ぶ方?」

「きゃあぁっ!」


なんだその発想は!?どっちもダメじゃボケ!!

嫌らしい動きがないにしろ、直接触ってきたラブ・スプリングにビックリして避ける美癒ぴー。



「さっきから何してんだ、このガキ!!」


床に転がった状態とはいえ、また怒り、日野っちがラブ・スプリングを蹴るも



「ひゃあぁっ!?」



美癒ぴーに当たって転倒させる始末。おまけに日野っちの上に美癒ぴーが圧し掛かってしまうという結末。その2人のやり取りにラブ・スプリングは


「この2人は何してるの?」

「あなたが何をしてるんですか、まったく。セクハラばかりしないでください」

「セクハラって酷いなぁ。僕は女性が喜ぶ箇所を選んだつもりなんだよ!」

「それをセクハラって言うんです」


天然を超える無邪気な発言。

美癒ぴーの体の質感、構造、形状。二度触って、観察も合わせればかなりのデータを収集できた。そんなわけでラブ・スプリングが美癒ぴーへの用事を済ませて、次はアッシ社長から美癒ぴーへの用事に切り替わる。


「あ、あの」

「はわわわわ。ご、ごめん」



アッシ社長の位置からでは見えず、ラブ・スプリングは興味がなく。2人だけしか分からなかった事であるが、偶然ながら。


日野っちの顔に美癒ぴーの胸が圧し掛かるという、ラブ・スプリング以上のスケベな出来事が2人に降りかかった。ちょっとだけ、1秒ぐらい。いや、日野っちは3秒ぐらいに感じるほど。やっぱり、美癒ぴーって大きいわー、香りも女性そのもの。なんて感想が心の中で言えるぐらいの時。



「ごめん」



美癒ぴーが見えないぐらいの、熱くてちょっと暗めな表情で立ち上がる。続いて、日野っちも起き上がろうとする。美癒ぴーが圧し掛かったせいなのか、日野っちは鼻血がたらりと流れ出ている。本人は気付かず、


「大丈夫か」


紳士的な言葉を言っているつもりであったが、



「大丈夫じゃないでしょ!!」

「ぐはぁ」



起き上がろうとする日野っちを上から踏みまくる美癒ぴーであった。

ラブ・スプリングに八つ当たりができない分、力も数も、日野っちにぶつけるのであった。意気消沈し、再び床に倒れる日野っちであった。



「もぅ、スケベ」

「あの美癒ぴー。次は私なんですが、良いですか?」

「セクハラは断ります!どいつもこいつも!!いい加減にしてください!」

「いや、そこの馬鹿2人と一緒にしないでください」



ズズズズッ



そう言いながら、業務机の椅子に座るアッシ社長の後ろになにやら黒ずんだオーラが現れ始めた。

それが見えるというのは美癒ぴーも、日野っちも、こちら側の世界に入って来た証拠であろう。


「あなた方に見せるのは初めてですね(ラブ・スプリングにもですが)」

「な、何か出てきません?アッシ社長の後ろから……」


マスコットにしては人間に近くて、美しい者であった。

白のシルクハットとYシャツ、七色のジャケット、黒のズボンと革靴。顔は中性的でどちらにも寄る者。肩幅は女性のように丸みを作りながら、そこから下は男性のような肉体の構造。

人間が突然と現れればビックリするが、雰囲気は人間でもないし、ラブ・スプリングのようなロボットでもない。魔法の生物。



「彼は、"実用化"する上での立会人たちあいにんです。名を、アプリちゃんと言います」



そんなアプリちゃん。ペコりと頭を下げて、美癒ぴー達に挨拶をした模様。


「彼には喋る機能がありません。気を悪くなさらず」

「は、はぁっ。しかし、なんですか一体」


どうやら何を"実用化"するかは察しが付いてしまう自分が嫌になる。


「これから美癒ぴーの家事能力を、"実用化"します。ですから、私と協力してください」



アッシ社長の能力、"実用化"は人の特技にも適応できる。アッシ社長は美癒ぴーの家事スキルをしかと確認しており、美癒ぴーも能力の説明を受けている。条件の1つは難なくクリア。

まぁ、一番の難関は2番目以降からである。



「あなたと取引を成立させる必要があります。お互い決めた条件でも、アプリちゃんの了承がなければいけません」

「な、なるほど。というか、訊いて良いですか?いちおですけど……なんで、さっきから私がこんな目に遭っているんです?」


当然ながらの疑問。思惑を尋ねる。


「この前言ったじゃないですか。新しい人を雇うと」

「ありましたね」


アッシ社長は何事もなく、美癒ぴーの事は後回しに会社の事を考えた。

できる人間がいる事は会社にとってはありがたく、利用しやすくもある。社会は残酷にも、できる人間に苦労をさせる事が多々ある。信頼と安心をもらう代わりに、多大な負担と責任を与えていく。

それが良い事か悪い事か。各々の価値観が決める事だろう。


「美癒ぴーを納得させる美意識、なるべくこちら側の人間、私の事務仕事の手伝い、トーコ様を手助けする家事雑用……色々な面を考慮しますとね」


アッシ社長は眼鏡を上げて、結論を言う。


「美癒ぴーがもう1人いたら全て解決でした!!」

「何言ってるんですか!?アッシ社長もセクハラで訴えますよ!あ、パワハラですよ!」


パワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職場内での優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為。

と大まかに定義されています。

セクハラと同じく、個人個人の差があると思います。虐めの定義となんら変わりませんが、あえて違いを表すのなら、学校じゃなく会社だという事でしょう。あなたも無理矢理ながら社会人だということです。親や先生が助けるところではなく、同僚や上司、お客様がいる場であります。

パワハラという理不尽はセクハラ以上に付き物です。慣れろと言いませんが、会社の事情的にはお前がそりゃできれば良いと、メチャクチャですが、ある意味の正論に辿り着きます。誰しもできなくなる理由として、そもそも無理だから、新人だから、怪我したから、衰えたから、などのこともあるでしょう。しかし、そんな事情なんて会社は知らず、要求するものです。美癒ぴーも例外じゃありませんし、作者もそうです。みんなそうです。この仕事を与えられたからにはプロである必要性を求められます。経歴なんて関係ないと言ってきます。

それに値する責任、現実、罪、色々要求されます。それがキツイと思うのなら降りるべきこと。ミスで折れて、そのままなのはマズイです。


もっとも無能や馬鹿の悪い癖として、それを修正する事もなく、または反省し辞任する事もなく、ただ留まってしまう事や利用するものだと個人的に解釈します。できない立場のままの方に、パワハラしてもなんら問題はないと思います。法的にアウトでありますし、加減もありますが。周囲ができる事なのにただ1人ができないというのはオカシイ事でしょう。ある意味、逆のパワハラが社会に存在しています。



「弱い人は別に構いませんが、弱いままでいる人はお嫌いです。美しくない人間だ」


どこかの七三分けの髪型にスーツ姿の男性、見かけ通りのサラリーマンみたいな方が今日も缶コーヒーを飲みながら、業務に行ないながらぼやいていた。



「落ち着いてください。1日中働けなんて言いませんよ。ブラック企業でもないんで」

「そ、そうですよね……」

「正確に言えば、あなたと似ている人を造り出すと考えてください。ラブ・スプリングさんが今、作っているでしょう」

「え?」


そうやってアッシ社長がラブ・スプリングの方を指さす。そこにはもう作業中の彼。と、ちょっとマジマジと見ている日野っちに、……なにやら肌色の、人間の下半身が何もないところから造り上げられていく。



「美癒ぴーの肌触りと重さ、身長などの体型が数値化できて、今作っているんだよ」

「こ、こ、こ、れが美癒ぴーのはだ……」


一体いつの間にという、いや、どっからというか、根本的過ぎるほどの地点から始まっていて、人の体を勝手に造り上げられていて。美癒ぴーは再び。激怒と羞恥を抱いた表情で日野っちに制裁を加える。


「なに作ってるんですか!?」


ついでにラブ・スプリングも巻き込むように日野っちを蹴り飛ばした。


「日野っちもなにマジマジと見てるんですか!?超セクハラです!!淫乱です!!気持ち悪いです!こいつ等!死んで爆ぜろ!!」

「い、いてぇ……ラブ・スプリングに頭をぶつけた……」

「でも、君の股の部分ってこんな感じでしょ?毛の方もよくできてるはずだよ」

「わーーーわーー!そ、そ、そんなとこ平然な顔で語り始めるなー!何作ってるんですか!?ホント、マジで、ぶっ飛ばしますよ!!」


ラブ・スプリングに攻撃すればあまりの硬さに手足を痛めるため、全ての制裁は日野っちに降りかかる。蜂の巣が如く、殴りまくる。

少々、やり過ぎていると感じたアッシ社長であったが。凹られる日野っちを見捨てて、説明を続ける。


「ラブ・スプリングが美癒ぴーの肉体を忠実に再現し、私の”実用化”で美癒ぴーの能力を与えます」

「なんとなく分かりましたけど!納得できないんですけど!?なんで私がこんな目に……!」

「そ、そ、それは……俺が、……言いたい……」

「仕事に関係のない部分は変えるから安心して、顔とか胸とか、お尻とかね」

「ピンポイントで変に意味深なところを言うな!このロボットめ!」


こんなのは人間でも困るぐらいだ。

同意しながら、話を進める。


「次は私です。美癒ぴー、取引を始めましょう」

「え!?」

「セクハラやパワハラじゃないですから。そう警戒しないでください」


アッシ社長はアプリちゃんと共に美癒ぴーに近づく。ちょっと後ろに下がった美癒ぴーを掴んで、取引を無理矢理に取り決める。


「心配しないでくださいよ」

「心配しますよ!ある意味、一番。今日、仕事を辞めたくなりました!!」

「はぁー。ま、月一で憂鬱な事がありますよ。誰にだってね」

「○○期間みたく言わないでください!……はっ」


美癒ぴー、この場のノリに合わせてしまったかのような、とんでもなツッコミをしてしまい、しゅんとして落ち込む。もう今日、何をやってもダメな気がする。朝の占いで運気が悪いと出ていたことを思い出した。

そんなことお構いなしにアッシ社長とアプリちゃんの魔力が美癒ぴーに付与されていく。

その奇妙な感覚を間近で触れる。それを意識できる。


「!な、なんです。この、しっとりとした感じ」

「”実用化”のレベルを制定しています。アプリちゃんの指を観てください」


アプリちゃんの左手が動き始める。”1”、”2”……


「レベルは”2”ですか。なら軽い取引で成立しそうだ」

「このレベルが高いと、”実用化”するための条件が厳しくなるんですか?」

「ええ。最大は”10”レベルです。指の数だけ。それ以上の能力は私でも”実用化”できません」


そう口にするが、レベル”6”以降はかなりの制約を強いられるため、成功した事は1度しかない。ぶっちゃければ、レベル”5”がアッシ社長の限界といったところだ。


「さて、どんな取引をしましょうか」

「具体例ってあります?このレベル”2”で」


取引については、アッシ社長と対象者の互いの承認が必要であり、その条件にアプリちゃんの首が頷けば”実用化”するための取引が開始される。

まずはできそうな取引を決めるため、具体例を求めた美癒ぴー。あのタクシーを造り上げているだけに、様々な事例を答えるアッシ社長。


「レベル”2”でしたら……。6時間、私と対象者が手を繋ぐ。24時間、お互いに睡眠をとらない。5分に一度は飲み物を補給する。それを10時間継続するとか。基本的に、制限時間が長いですが、可能なレベルの制約ですね」

「聞いた感じ、レベル”2”でもキツイじゃないですか」

「能力に合わせて、制約も決まりますから。いずれもアプリちゃんが承認するとは限りませんよ。取引の案はいくらでも出せるのが、幸いですし」



”実用化”するという力は強大であるため、制約の大半が時間を失うことにある。また、連帯責任という事もあるため、かなりハードである。一度でもミスれば取引の破綻、最初からという鬼畜さ。無論、取引の破綻はお互いの仲を傷つけることにもなる。



「何が簡単ですかね」

「そーいう考えはアプリちゃんの承認もあるため、あまり成功しませんね。自分達に出来ることを考えましょう」


時間を失う代わりに、やることは酷く単純で良い。

アッシ社長が挙げた例の多くの大半は、可能といえば可能であり、面倒くせぇというだけが占める。


「うーん」

「なかなか決まりませんか」

「私、初めてですから。何かできそうなこと」


そう思いながら、なんか無性に。日野っちを一発殴る、美癒ぴー。


「な、何するんだよ!」

「考えができないから。セクハラ発言もあるし。こんな目に遭ってる私のやつあたり」

「ひでぇ!」


できることはないかと、考えながら、ついつい自分も。自分の肉体が造り上げられる光景をまた目にする。足ができ、腰ができ、もうすぐお臍ができそうだった。それがふと、縛り条件を決めるアイデアとなった。


「立っているのってどうです?」

「と、言いますと?」


例を聞く限り、時間を多く消耗する事で成り立つのなら、誰でも。変な話、子供でもできる事にしたかった。


「何時間か、私は分からないですけど。私とアッシ社長は、取引が成立するまでずーっと立っている。そーいうのどうですか?……条件的には座らない方が良いかな?動けないと困るし」

「なるほど、良いですね。アプリちゃん。その条件の場合、何時間が適正です?そもそも可能ですか?」


アプリちゃんの手がまた動き出す。左手の指が5本、右手の指が3本。


『8時間、お互いが立っている事(座らない事)で”実用化”は成功します』




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