悪天候の時に運転するのは自殺行為なので、台風や大雪の日は働きたくない。などと会社に言ったら、減給されかけました。
ラブ・スプリングの助力もあって、ロシア軍基地から3台揃って逃げ出せた日野っち達。
しかし、
「逃げ切ったと決めるのは、まだ早いですからね」
「だな。そうだろうよ」
それほどの出来事を間近で見てしまったアッシ社長と日野っち。
そもそも全員が、ラブ・スプリングが放った攻撃から無事に逃れることができたのは、地球の神秘とも言える山脈の数々を一瞬で打ち砕いた光景を見てしまったからだ。
「悪い奴には見えなかったが」
「決して悪いとは思っていないだけ、そう思っていただきたいですよ。日野っち」
多くの誰だって悪いと思って行動するわけないですから。
◇ ◇
タァンッ
「意外だね」
ラブ・スプリングはフレッシュマン博士を倒し、地上に着地した。生成した山脈は消え失せた。これから対峙する男によって。
「やはり、貴様は人類の敵だ」
"人間最強"という称号は、あくまで人間という枠の中だけ。
しかし、ここに今立っている最強は、人間という枠を確実にぶち抜けた。紛れもない最強を掲げられる人間。
日野っちとアッシ社長を助けたのは、意外にもダーリヤだった。
「人間を護ることもできんとはな」
「君と君の部下を相手にそんな余裕がないだけだよ」
ここは1対1の空間。このロシア軍基地全体が、……?
「律儀だよね。僕と戦いたいならアメリカまで来れば良いのにさ」
「お前を殺すためだけなら人間を殺す気はない。ましてや、関係のない者ほどな」
その本心。
「だが、今。お前に教わった」
殺すと決めたら、殺す。誰が邪魔しようが、誰がどうなろうが。それが必要な犠牲であることを。
「ラブ・スプリング。お前は強い!が、それだけだ!」
賞賛するのは、比較になるからだ。
ダーリヤと釣り合えるだけで讃えられるべきこと。彼が戦うことになれば、決まって以下のような台詞を相手に告げるそうだ。能力や相手にはまったく影響がない。
「数、強さ、勝利…………貴様等にそれらがあったとしても」
今日は1対1だよって、冗談は通じないね。もしかしたら、本当にね。君に対しては、そうありえる事だから。
ラブ・スプリングの警戒心が高まるほどの凍え死にそうな殺意が伝わる。
「この俺を超える事はできんぞ」
宣言と同時に、ダーリヤは"空気"を殴った。そこに物体はなく、音なんて当然ないはずだろう。
「"魔天"のダーリヤ」
ただの目では見抜けない大きすぎる変化。さらに続けて、空に向かって再び、"空気"を蹴り上げるダーリヤ。こちらも音と風が生まれながら、奇妙な現象を引き起こしていた。まずは感じ取れないほどの変化であるからだ。
「こっちがしっくり来るね。君に最強なんてまだ早い」
ラブ・スプリングの言葉は、未だにダーリヤが成長中であるという意味だからだ。
ダーリヤの2つの動きは目で追えるのに、彼の周囲がその現象について来れていない。そーいう矛盾を起こせるほどの能力……ではなく、ダーリヤ自身の力。
「そもそも"魔天"は、何にもない能力だった。だが、君は身体能力の発展のみだけで自然現象を引き起こすまでになった」
万が一の話であるが、アッシ社長がダーリヤの"魔天"を実用化したとしても、使用しても効果は発揮されないであろう。
"空気"が叩かれ、衝撃が地球全体に走り出す。大気の各々がぶつかりあって、奇怪な電磁場がいくつも出現。上空にはどす黒く不吉をかもし出す雲が発生し始めた。呼び寄せたというものではなく、ラブ・スプリングと同じく造りあげた乱雲だ。
ここまで、
サーーーーーッ
「雨、風、強いね」
視界と足場を悪くするほどの猛烈な雨と、髪や窓を強く揺らす強風。傘を造って雨避けをしてみるも、強すぎる風のせいで折られてしまう。
ここまでに掛かる時間は35秒。土砂降りに見舞われるとしたら、それほど短い間隔で襲ってくるのは分かるが、雲の発生からの時間と考えれば科学や自然現象を超えるには当然の人間だと理解。
そして、空から降り注ぎ始めるのは雨や風だけでなく、稲妻までも落とし始める。
ドガアアァァッ
体が機械で造られているため、悪天候というのはラブ・スプリングにとってはあまり望めない場所だった。
自分を狙った稲妻を回避しながら、相手のペースに巻き込まれている。まぁ、ダーリヤの動きを止める手立ては瞬殺しかないし、それを成せるほどの差がない。
本気で戦うこととなれば、周囲どころか世界規模で影響を与える凄まじい戦い方を持つ。
拳や蹴りで、"空気"に衝撃を与え、大気までにも影響を及ぼして自然に抗う。その戦い方、まさに"魔天"の名に相応しい。
「どうした?」
さらに続けて"空気"を殴り続け、直接ラブ・スプリングを攻撃せずとも天候を操って攻撃を仕掛けるダーリヤ。地上にいる人間が上空を支配しているのは、大国を支配するよりも強烈に邪悪なものだ。
雷はさらに激しく大きくなり、強い雨はより冷たくなって氷となって降り始める。風はさらに、ロシア全土の雲を呼び込んで成長を遂げようとしていた。
氷の雨がラブ・スプリングにいくつも襲い、体に傷もでき始める。修復も追いつけないほどの量と速さが、天候の恐ろしさであった。
「うーん、こりゃ参るね」
周囲の気温も一気に低くなり始めていく。先ほど降り注いでいた雨が地面で凍り始めていく。人間が生息できそうにない気温に変わろうとする。雲ばかりではなく、周囲の気温までもその身体能力のみで自在に調整。調整という範囲すらも超えている。
「ふふ」
君は僕の一手を待ってくれているのかな?
お互いに圧倒的な実力を誇るも、ここまでに奇襲もなく、ベタ足のやり取りとなっているのはそれこそが強さだと捉えているからだろう。
間合いは互いの能力と身体能力を考えれば、30mは近いくらいであった。悪天候を操りながら、出方を伺っているダーリヤ。
「造形科学・虹七色橋」
天候による攻撃。上空からのシンプルな攻撃と捉えるならば、地上と上空の中間に障害物を創造すれば良いこと。地上を地下に変えるほどの創造をすればいい。発現し始める七色の橋は、あまりにも巨大で広く、霰や雷を受け止めて地面にはまったく落とそうとしなかった。ダーリヤの天候操作以上に早くいくつもの橋が作り上げられていくのは、驚くべきものであったが、その行動を引き出すのが狙いだった。
「!!」
ダーリヤとの間合いは多めに、40mはとっていたラブ・スプリングであったが、そこまでの距離すらダーリヤの拳闘の間合いであった。天候操作も、そーいった能力ではなく身体能力による行いであるため、備えている身体能力は生物と認識するより、惑星に近いエネルギーがある。
胸の付近で両腕をクロスさせ、ダーリヤの拳を防ごうと構えを作ったラブ・スプリング。しかし、
「…………」
「!」
ダーリヤの視線の動きは相手の防御に反応してからでも十分、フェイントを入れて叩き込める事を伝えていた。若干空いたボディに軌道修正して拳を叩きこんだ。
「ぐはあぁっ!?」
天気を変えるほどの拳の一撃は、ラブ・スプリングの硬い体を容易く貫いてみせた。
ダーリヤが一手後に攻撃を叩きこんだのには理由があり、それを証明するように拳を引き抜いてから再度、今度は頬を殴り壊した。
「やはりか」
ラブ・スプリングの驚異的な修復力には手を妬く。自動で修復できる性能もあるのだろうが、所詮は機械か。別の何かを創造している間に攻撃を受けると、自身を修復する速度は極端に落ちる。
こいつの頭は人間と同じような性質があるんだろう。だから、首から上を護った。
ダーリヤの推察は概ね当たっている。さすがに何度も出会い、嫌がりながらもライバルという関係だ。ラブ・スプリングの欠点をわずかな時間で察知し、それを実行して試した。
戦闘においては最前線を戦って生き延び、勝ち続けただけに、ラブ・スプリングよりも優秀であるのには違いないだろう。そう戦闘だけでは……。
「くっ」
防戦一方だな。ダーリヤは接近戦の方が明らかに強いのがキツイ。
素早いし、一撃も雷より重い。霰も鬱陶しい。よく悪天候の中で普通に戦っているよ。これは本気で戦えって事かな?
ラブ・スプリングがやや物事に対して天然でスロースターターなのは人間じゃない事に起因するだろう。何事も触れてから事態に取り組むのは、機械に動きと似ている。その動作は人間を超越する、特に精密さは人間を遥かに上回る。
バヂイイィィッ
「!」
「ようやく、君の攻撃を防げた」
5発も喰らったけど。
僕の両腕がようやく、ダーリヤに追いついた。慣れたし、データもとれた。
そこから面白いようにダーリヤの動きに対応していくラブ・スプリング。ギリギリまでひきつけて、こちらのガードの裏を突いた攻撃は同じように対処する。ダーリヤの身体能力が超越していても、こちらに防御の素振りがなければ突く箇所は人体の急所と計算から出た答え。狙い打ちする思考ができなくなると、彼の視線と姿勢、筋肉の動きは単純となり、逆に自分が先読みできる。
経験とは違い、計算して防御するのがラブ・スプリングだ。
身体能力ではダーリヤに敵わないが、それに対処できるだけの身体能力があるのも手強い。
「それでどうした?」
防御した事を喜ぶ、子供みたいな面。悔しがれという表情を変えてやろうには、ダーリヤに変化が見られない。
修正し始めたラブ・スプリングに変化で挑めば、人間の可能性のなさを見せ付けられる。シンプルに行く。対応したなどとほざくのなら、攻撃を10回くらい避けてからだ。ガードの上からお構いなしに、
シュゥゥッ
もっと強めの拳で
ガシャアアァァンッ
ガードする両腕を粉々に打ち砕く。
「それあり!?」
「進歩するのは、人間の方だ」
自然現象をも操る身体能力を超えた一撃を、軽々と。どんだけの事が起こる?
見てみたい、そして、生き延びておきたい。
拳が放たれる前、空気が擦れる音とは違うのに、マッチ棒に火を灯す際の音と捉えるとなぜだがしっくり来る。そんな擬音を確かにラブ・スプリングは確認した。スケールをさらに大きくしてみれば、マッチ棒の騒ぎじゃない。
空気中に火が生まれ、熱く、広く、弾ける。いずれの三拍子が規格外である。それはどんな悪天候よりも、尊く祈られる日光であった。"魔天"はさらに高みを昇った。
地上に残る物、上空に現れる雲も焼き尽くす。凶悪な火球は想像以上に眩く
「むっ」
ダーリヤにとってはこの高みを実践で使ったのは初めてであるため、加減ができずにラブ・スプリングの姿を見失うほどに火球が光ってしまった。ダーリヤもまた自然現象に晒されるのだが、その肉体に傷がつくことはないほどの肉体を宿している。
ロシア軍基地どころか、その範囲はさらに広まって、周辺の街や山などに火が回るほどの事態になったのだ。
◇ ◇
ラブ・スプリング VS ダーリヤが行なわれている間、日野っち達は道路を走っていた。"幽霊車"を起動させ、万が一の追跡を避けるため、遠くに離れてからワープを稼働させる考えであった。
それと同時に……
『美癒ぴーは悪天候時の運転をしたことないでしょ?』
「え?そうですけど」
『丁度良い機会ですね。台風でも、大雪でも、タクシー業界は働いてますから。今、練習しましょ』
もしかして、だけれど。そういう事ですかって、美癒ぴーは納得してしまう。なんか嫌だ。アッシ社長の無線を切ってやりたい気分。
ダーリヤの一撃一撃は、天候に大きく影響するほどであり、彼の戦闘範囲というのは極めて広い(ただし、悪気はない)。その上、広範囲になるほど彼の操作から離れるため、危険な状態となる。
ザーーーーーッ
上空の黒雲から猛烈な雨と風、雷が3台の車に襲いかかった。
「ちょ!やっぱり止めませんか!?雨も風も強すぎです!!」
悪天候時の車の運転について。
基本的に美癒ぴーが思っての通り、運転しない事を推奨されております。雨というのは運転手の視界を遮り、風はなんと車体を動かしてしまいます。重たい車ですら動かすので強風というのは恐ろしいです。強い横風は不意に反対車線に行ってしまう事もあるため、正面衝突なんかしたら死にます。
悪天候時の運転は教習場や試験場でもそう起こらない事であるため、本当に取得してから体験することが通例だと思います。自信がない場合は必ず止めましょう。
運転の際は自分だけでなく周囲も慎重な運転をしているため、決して飛ばさず、まずは自分が事故を起こさないよう心がけましょう。周囲も大抵、同じ事を考えてます。
電車や飛行機といった交通機関では悪天候の際で、運休や遅延が発生するのは致し方ないです。命を預かる仕事であるため、その点についてはプロフェッショナルの判断に委ねるべきです。お客様の安全が第一なのは、仕事をしてみれば分かる事でしょう。1人だけの事じゃないので。
しかしながら、タクシーやバスなどの車関係の旅客運送は悪天候でもやっております(運転手にもよりますが)。
むしろ、この時だからこそ、ご利用したいお客様がいると思います。遅延となろうが、安全だけを意識して欲しいです。
「雨の日は滑りやすいですからね」
「滑りやすいとかのレベルじゃないんですけど!氷が降ってきてますよ!」
路面が濡れていたり、氷結している場合の運転について。
路面が濡れていると滑りやすく、制動距離が伸びます。ブレーキをかけるタイミングが遅かったり、車間距離が短い場合は追突事故を引き起こす原因となります。悪天候時には対応及び、車間距離の確保にはいつも以上に気をつけましょう。
また悪天候時、急ブレーキを掛けてタイヤがロックされると、物凄く滑ります。マンホールの上でのブレーキはかなり危ないので注意しましょう。
そして、雪や氷結した道路での運転ですが、スタッドレスタイヤなどの冬用のタイヤがあったり、チェーンをタイヤに巻きつめて、滑り止めする対策があります。とはいえ、どちらにも言えることですが、運転手の力量が問われます。ただ、どちらかはしてないと運転技量関係なく、悲惨な目に遭います。(作者はチェーンでの運転経験のみ)
自分は雪の中で運転した経験が極めて浅いため、怖い思いしかしてませんが。運転(仕事)したくないと懇願したところ、徒歩で仕事することになりましたとさ。社会って恐ろしいね。天気関係なく出勤するのもまた、恐ろしいです。
「私達のタクシーはスタッドレスタイヤですから、積雪地帯の走行も考えられております」
スタッドレスタイヤでの走行の場合は必ず、タイヤを4輪セットを用意しましょう。前後でタイヤが違うと、ブレーキなどの利きにも影響します。タイヤの磨り減りや空気圧のチェックも当然、怠らないようにしましょう(悪天候時の運転ならなおさらです)。タイヤを製造している会社も運転手には安全運転を推奨しています。
「せっかくなんで、チェーンの方もご説明を」
タイヤにチェーンを巻きつけるといっても、それなりに種類があるそうです。『はしご型』と呼ばれるチェーンが一般的で、慣れない方でも付けやすいのが特徴です(それでも自分はできませんでした!)ただし、タイヤの露出面が多く、横滑りにはちょっと弱いそうです。他にも『亀甲型』のチェーンと呼ばれる物もあるそうです。こちらはお値段が高いですが、結構な滑り止めとなるそうです。
チェーンの方が安く、収納しやすいため、雪と縁のない方にはこちらの方が良いとされています。ただし、付ける作業なんてそうあるもんじゃないと思います。実際、買ったはいいけど、運転しないという選択をするのが普通かと思います。よほどの事がない限りで、車を運転する仕事である場合ならあり得るかなぐらいです。
チェーンを巻いたタイヤは滑り辛いですが、音が五月蝿いことと外れやすかったり、壊れたりもするので注意しましょう。特に道路上で外れたりするとかなり、面倒で周囲に迷惑が掛かります。
自分としては、高くても安定した安全性のためにスタッドレスタイヤ派です。とはいえ、両方使う方もいるでしょう。
「あ、早々。点灯するライトにも種類があるんですよ。今は明るいですが、暗いところでの運転時にはハイビーム、日中はロービームに切り替えましょう」
タクシーの場合、夜道での運転はほぼ必須と言えるでしょう。
暗いところでの運転の場合、ライトはハイビームにした方が前方が見えやすいです。ただし、対向車には眩しいので日中や明るいところでは付けないでください。悪天候+暗がりでは、ライトの光も重要です。視界の確保ほど、対応する早さと手段が変わってくるものです。
「ワイパーもただ拭いてくれる物じゃないんですよ」
雨や雪の場合では、ワイパーもまた重要な働きをします。ただ水を落とすため、横に振って動いている棒ではありません。ワイパーにはウォッシャー液と呼ばれる、撥水性のある液体をフロントガラスに掛けるものがあります。ボンネットの辺りに発射口があるそうです。これを使う事でフロントガラスにかかる雨を弾いて、視界確保の役割を手伝うそうです。
「あれ?それって液体が凄いだけで、ワイパーってただの棒じゃないですか!!」
「速度は遅め、普通、早めなどの調節もできますからね。撥水性があっても限度はありますから」
地震、土砂降り、突風、雷、多くの自然現象を体験してあとでやってきたのは、嵐を幻にするかのような晴れ晴れとした日の光が、美癒ぴー達を包み込んだ。
「わー、なんか急に嵐がなくなったー」
「夕立なんてそんなもんだよ。雨宿りが一番だ」
「晴れが一番ですね、しかし……」
徐々に車外の気温が上昇していく。正直、異常な気温。フロントガラスについた水滴が蒸発を始め、車内にも熱が入っていき、汗が流れ出てくる。
「な、な、なんですかこれ……」
「気温が、30℃を超えてるぞ!一気にだ!」
すぐにクーラーをつけるほどの、暑さを味わう3人。
夏場の車内はムワムワとしており、非常に苦しい。
車内に子供を置き去り(あるいは熟睡中)した事による熱中症、脱水症状の車内事故はあります。お子様と車に乗って出かける際は当然ながら、気をつけましょう。買い物などではちゃんと手を繋いで離さぬよう行動してください。
子供というのは大切な自分の半身でもありますので、粗末な扱いはしないようにしましょう。
「ダーリヤの仕業でしょう」
アッシ社長はバックミラーとサイドミラーで、ラブ・スプリングとダーリヤの戦闘を確認する。かなり戦闘地域から離れたというのにここまで、戦闘の余波が来るとは。一気にワープしない恩恵でもあったとはいえ、少々、どちらにも手を貸せないと思えた。
ギラアァッ
「うわぁっ!光が眩しいぃっ!」
「なんで周辺からいきなり火の手が上がるんだよ!?」
車を運転する際、日光が眩しい事もあります。そんな時はサンバイザーを使用しましょう。帽子のあれと同じで、車内の上らへんにあります。中には眩しくてサングラスを着用する方もいるでしょう。
「っていうか、さっきから!」
「おかしな自然現象ばっかに巻き込まれ過ぎなんだよ!!」
一般人2人にとっては、この異常な光景は絶叫、憤慨もの。
人間の多くは理不尽な社会と同じく、怒り染みた自然の脅威にも怯えるものだ。圧倒的な力は生物一個体の脆さを教える。
科学技術の発展もまだまだ進歩が必要だと知る事だろう。
◇ ◇
「やれやれ、今日は僕の負けかな?」
火球も直撃し、全身の8割を損壊させられたものの。なんとかダーリヤの視界から外れた状態での修復を始めているラブ・スプリング。瞬間移動というより、転送に近い能力を展開し、戦闘領域から遠ざかっていた。護るべき者がいたラブ・スプリングにとっては手段があまりにも限られていた。それは、フレッシュマン博士との戦闘で感じたデータでもあり、れっきとした枷となっていたのは事実であろう。反撃の兆しがあまりにも少ないことで、ダーリヤ自身も今回の戦いで過信する事はない。
負けと認めるも、勝ちとは思っていない。戦闘の勝敗はつかず。
「ダーリヤ。また強くなってるねぇ」
修復を終えるまで、ラブ・スプリングを警護するツインテールの女性が1人。しかし、漫画本を読んでいるのはいかがなものか。
体が治ると同時に気付き、声をかけてきた。
「あ、君。もう大丈夫?あんな強い人と戦うなんて危ないよ!」
「子供扱いかー。ま、女神様のご信託として受け取ろうかな」
アシズムから送られた人材。沖ミムラがそこにいた。直接な出番はあまりなかったが、遠くから軍人達を静かに倒していく所業と、
「ダーリヤが思う以上に天候操作ができなかったのは、君の能力のおかげかな?"天運"のミムラ」
「私の"天運"は何が起こるか分からないので、お守り程度ぐらいに思ってください。手を貸した覚えはないですから」
本人が言うとおり、何が起こるかは分からないが、ミムラの神懸りな強運。
「君のところだけ、雨も氷も、落ちてこないのは運以上のものがあるだろ?」
「そんなもんですかね?」
自分もまた、アッシ社長と同じく。様々なところから注目されている。ミムラ自身は平凡でありきたりな生活を望むため、戦いの場に行く事は嫌っている。しかし、
「私が助けたいと思ったら、助けるだけですよ。あなた"も"本気で暴れたら、日本にも余波が来ると思いますし。それは止めて欲しいです」
読んでいた雑誌を閉じて、ラブ・スプリングに一礼してから去る。
「それじゃ私は、アカリン先輩達とファミレスで楽しんできますね」




