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VALENZ TAXI  作者: 孤独
同業者編
26/100

平和の中でも、負けたという事で大切な物を知る


「…………」


ズーーーンッ


「ううっ……」

「んー……」



ガンモ助さんが会社に戻ってくると、とても暗い表情で頭を抱える日野っちと美癒ぴーがいた。


「悪い、美癒ぴー……俺のせいで……」

「ううん。私がサポート。下手だったし……私だけだから……気にしないで」


山口夫妻とのゲームは、日野っちの完全敗北で終わった。

山口兵多を途中で見失い、あーだこーだと捜している間に本人は自分の会社に辿り着いていた。魔法があるからという慢心が生んだ敗北であった。



「正確にあの人のデータを入力できなかった私が悪いの。大丈夫だから」

「いや、俺が悪いんだ……」


明るい二人がここまで落ち込んでいるのに


「残念だったな~、行ってみたかったな~。私達と似てるんですよね~、アッシ社長~」

「トーコ様。あなたが2人のやる気を削いでいる原因なんですよ?なんでこんな事になったんですか?」


ゲームの提案者であるトーコ様だけが勝った感じだ。罰ゲームに、美癒ぴーは山口家の家政婦としてしばらく過ごす事となる……。


「まー、ハッキリ言って相手が悪いですね。兵多くんはゲームの達人。世界大会にも出場している方ですし、あなた方一般人には無理でしょうね」

「つーか、あいつやっぱりタダ者じゃねぇのか!?アッシ社長!」

「いえ、日野っちと同じ普通の人間ですよ。確かに変な事はできますが、それを一切使わずに、持ち得る力で2人を捻じ伏せたことは事実です。彼の完全勝利です」


うぐぐぐぐ。あんなメチャクチャで決まった運転技術が、人間技で済んでたまるかと言いたい日野っちではあるが、


「魔法のタクシーを使えるのに、負けちゃいけませんよ」

「ぐっ……そう、なんだよな……」

「だから私のせいなの。私だけが行けば良いの」

「!い、いや!運転してたのは俺だから!」


せっかく運転免許を取って、ようやく魔法のタクシー運転手としてデビューするかと思いきや、今度は他人の家で家政婦をしろって。どー両親に説明すれば良いんだろうか。


「家政婦ですか。それはなかなか面白い条件ですね」

「美癒ぴーは~、家事ができるもんね~」

「お2人共、他人事にしちゃあいけないんじゃ?」


ストッパー的なガンモ助さんがここに来なければ、本当に行っていたかもしれない。


「そんな約束は反故にすればいいだろう。負けたショックに浸り過ぎるぞ」

「ガンモ助さん」


それは非常に最もな意見で、兵多からもその答えを望んでいたのかもと思う。


「お前達が無事に帰ってきてる時点で、そんな約束成立できないだろ?忘れちまえ忘れちまえ」

「むっ……」


確かに普通に帰ってきた3人である。たぶん、こちらから会いに行かなければ何も起きないだろう。そして、いくら勝負に勝てても、勝敗を成立させるための力はない。

2人の遊びに敗れたが、敗れたからといってそれを無理矢理やらせるような


「悪党でもあるまい。アッシ社長の知り合いならなおさらだ」

「……あ、……そっすね」

「で、ですよね。深く、考え過ぎてました」


あの畜生眼鏡。来たら来たで、美癒ぴーの心が折れるほど調教するだろうな。日野っちは夏目さんにやられそうだ……


「何か考えてました~、アッシ社長」

「いえ。特に何も。美癒ぴー、お茶を良いですか?」

「は、はい!ただいま淹れますね!」


果たされない約束を破るという結果で、なんとか災難を回避した美癒ぴーであった。正直言って、たまらないところだった。

一方で日野っちは……



◇    ◇



「俺は一体……」

「随分と落ち込んでいるようだな。お前は何も罰はなかったんだろ?」

「でも、運転をしてたの俺だぜ。そりゃ確かに相手が悪いと言えばそうかもしんないけど。人の動向が懸かっているのに、俺は慌てたり、動揺しかしていなかった」



美癒ぴーが初めてタクシー業務をしている間に、自分の無力さについて言い始めた日野っち。


「喧嘩に負けるってダサいよね~」

「トーコ様が喧嘩を吹っ掛けてますよ」


笑顔に反して辛辣な言葉を投げかけるトーコ様を、ちょっと叱るアッシ社長。

しかし、トーコ様の言葉は真実。敗者として、やるべき反省を今。日野っちはしている。


「日野っちは責任のある男だぞ。もしだ」


ここに来た時、見たとおりの男だとガンモ助さんは日野っちを評価していた。


「不真面目な男であったら、お前は護れる者も護れなかったろう。こうして反省するということは、それだけお前が失う者がどんな者かを知れた事だ」

「…………」


結果として、助かった事となれば良い事であった。

ガンモ助さんの言葉にはどこか確かな事実があってのもので、失敗や敗北から知った大切なものが日野っちの心にちゃんと届いた。

徐々に静かになりながらやがて反省の言葉は出なくなっていった。



「青春ですね~」


トーコ様のように、ノビノビとした口調で日野っちと美癒ぴーの関係を一言で伝えるアッシ社長。今の業務は、山口兵多達に頼んだ協力者への承諾書の返信を確認するなど、タクシーの本格的製造に入る段階であった。



「おっと、"お見舞い"の時間になるな。美癒ぴーも気になるが先に帰らせてもらうぞ」

「そうなんですか~、また明日です~」

「ああ、失礼するよ。日野っち!明日から元気にならないと、無理矢理元気にさせてやるぞ」

「!じゃあ、明日までに元気になるぜ」

「ふふっ、失礼するよ」



ガンモ助さんが帰宅。ここから自転車で山を降りて、家に帰るそうだ。



「"お見舞い"か……奥さんのか?いつも言っているような気が……」

「でも~、この前、お弁当は奥さんが作ってるって~、言ってた気がしますよ~」


あんまり、そこら辺の事情を知らない日野っちとトーコ様。よく考えると、美癒ぴーの家庭事情の方が詳しい気がする。姉がいて、父がいて、母がいて。料理上手、掃除も徹底的と……。


「珍しいですね。というか初めてですか?」

「?なにがだ?」

「日野っちがガンモ助さんの事を知りたそうにするなんて、日ごろ襲われてるのに」

「!いや、知りたくねぇよ!あんなムキムキマッチョで変人な家庭の事なんか!」

「そうですか」


美癒ぴーが来てからですか。やっぱり、人は人で変わるものですね。私もそうなんでしょうね。

日野っちは成長というか、思春期っていうか、若いですよね。

トーコ様も妹ができたみたいで楽しく素が出ているようですし。

ガンモ助さんも、美癒ぴーが必死に努力を積み重ねているところを見て、気持ちに変化も生じましたか。良い方向に行って欲しいですね。彼の場合は特に……。




◇      ◇




タクシー運転手はスーツ姿である。


「むうぅっ」


会社でキッチリと確認して、可愛さ重視の私がスーツを着て似合うかな。いや、私は美人。何を着たって大丈夫!ちょっと大きい胸の人を見た後でも大丈夫!



「うん!私って可愛いね!負けてないもん!」



接客業でもあるため、第一印象というのは非常に重要とされている。男にしろ、女にしろ。確かに顔の偏差値やら体型の偏差値というのがあろう。

美癒ぴーのように、可愛くて、胸もあって、家事万能で、大人の色気もあって、自意識と比例する美しさのあるようなキャラでは、あまり説得力はないが……。

働く人及び、働こうとする人へ。



1つ、ネクタイの締め方!

2つ、スーツやYシャツなどのシワがないこと!

3つ、ちゃんとした靴下であり、革靴とかちゃんとした靴を履き!

4つ、チャラチャラしたアクセサリーを付けていないこと!

5つ、洗顔、歯磨きはちゃんとしておく!

6つ、匂いのエチケットをちゃんとしていること!

7つ、髭や毛の処理をちゃんとする!

8つ、毎日、風呂やシャワーで身体を洗うこと!



確かに顔という、人間がもっとも意識する部位。それに差がある事は仕方のないこと。確かにそりゃ見るよ。顔で判断するよ。自分もそうです。女性を見るとき、顔を見た後で胸の大きさを見ます。男にはそもそも顔を向けません。下を向いてます。

ただ、服を正しく着ているかどうか。人を威圧したり、チャラけた印象がないかどうか、洗顔して髭とか剃って、口臭をブレスケアとかで潰して、身体をちゃんと洗って、歯をちゃんと磨いておけば。悪い印象というのは顔だけで済みます。これが大事です。

確かに面倒です。いくらブサイクが頑張ってもブサイクなんです。永遠、その面です。自分の子供もその面を半分引き継ぎます。ただ、そういったマイナスな面も受け入れて、自分の体や衣服を丁寧にケアするというその行いは、必ず見てもらえる部分です。努力と見なされるものです。


この人ってブサイクのくせに、ちゃんと自分のことをケアしているんだ。

顔はキモイけど、衣服や身体をちゃんとしているなら悪い人じゃないのかな。


そーいった印象というのは確かに与えます。

身体を綺麗にするといった行為は、社会に生きる人間として必要な。そう、呼吸と同じように大切なものなのです。ですから、強く諦めずに。それが当たり前と思って、身嗜みを常に整えましょう。



「うんうん。身嗜みはちゃんとしなきゃ」



追伸。

作者の個人的な話となりますが、ひとまず社会と反する事なので追伸という形にします。

身嗜み”だけ”ちゃんとしてる奴が、凄く腹が立ちます。

大事なのは分かるんですけど、ムカつくんですよね。外見の良い奴がムカつくし、中身が素寒貧なくせに外装だけちゃんとするプレゼントとか。努力だけして、結果の出てない奴にもムカつきます。それを褒める奴にもムカつきます。全部してない奴にはもっとキレたいです。


正直、現実に腹が立ちます。


やっぱり、身嗜みは一瞬や一時だけです。社会というのは仕事ができてナンボです。できないのなら、できるように頑張る。もし、それでもできないとかできなくなったとか。そうなれば、即座に身を引く。自分だけがいる社会じゃないんで、その人に合う生活をするのが普通と思います。

身嗜みは第一印象としても重要ですし、自分が自分のことをどれだけ尽くせるかという計りになるのが、身嗜みになります。それに合う仕事はして欲しい。あるいは、身嗜みを超える仕事をしたいものです。



「なんか全て台無しされたんですけど、この追伸のせいで」



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