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VALENZ TAXI  作者: 孤独
試験編
21/100

やっぱり新キャラの扱いが難しい

ジャジャーーン



そんな効果音を鳴らしてくださいと、言わんばかりの満面の笑みと共に取得したばかりの免許証を父に見せる美癒ぴーであった。


「取っちゃったよー。運転免許!」

「おおっ!美癒が、運転免許を取ってくれるとは……これでちゃんとお父さんの車を預けられるな。そして、顔写真も可愛い」


涙を流しそうな顔になるほど、嬉しさを感じる父。

短い期間ではあったけど、頑張ってきた甲斐というのがある。今の気持ちは、これからも大切な物となるだろう。



「それでどうする?」

「どうするって、父さん。私は車を運転するつもりだよ」

「ホ、ホントか!」



注意事項として、免許を取って2時間後に交通事故を起こす人は1%くらいいるそうです。喜びのあまり、運転が雑になったり、口煩い教官がいなくなったせいか、注意散漫になるのでしょうか。運転免許場に来る際は車やバイク以外の手段で来る事を勧めます。

せっかく取った免許で事故を起こすと、今までの苦労がかなりパーになります。運転時は特に平常心である事を、強く推奨されるのは教習場などで言われていることでしょう。


「そうかー。お前の運転を隣で見られるということになるな」


父はその姿を楽しみながら、車に乗り込んでいく。うっかりもせず、助手席に乗り込んでいく事ができるのは日ごろのイメージトレーニングのおかげであろう。

父からしたら娘にしろ、息子にしろ。そんな成長が身にありがたく感じる機会は、これから少ないのだ。もう大人だ。大人なら小さくとも親孝行らしいところを味わいたい。



「それじゃあ、今日もよろしくお願いします」

「あの、いいんですか?美癒ぴー」

「だって、父を『VALENZ TAXI』に連れて行くわけにもいかないじゃないですか」



そんな父の幸せに気付いていないのか、いつでもできると思っているのか。

美癒ぴーが乗り込んだ車は、彼女を迎えに来ていたアッシ社長の車の方であった。

間近でそんなことをされる父親。



「えええぇっ!?ちょっ!美癒!?なんで!?」

「お父さん、私。これから会社でお祝いしてくれるみたいだから、アッシ社長の車を運転して行っちゃうねー」

「いやいやいや!それはオカシイでしょ!!」


娘の乗り換えに焦り、驚く父親。しかし、その時見た娘の運転能力は想像以上に軽快で、警戒もまた成されていた運転。駐車場から道路に入るその運転の仕方は滑らかで、不安なく安心だけを伝えていた。



「美癒……」


お前、運転が上手いんだな。

上手いからといって、事故を起こさないというわけではないが、ちゃんと学んできたというのだけは良く分かるぞ、父さん。


「しかし!父さんはまだ、美癒の事が心配なんだ!いくら免許を取ったとはいえ、成り立て!父さんのドライブテクニックに勝てると思うてか!?」


父も、娘の後を追いかけようと発進するのであるが、それを止めたのが後部座席に。


「お父さん。いい加減にしなさい」

「!か、母さん!?いつの間に……」

「社長さんに乗せてもらったのよ。あなたが車から降りた隙にここに入ったわ」


母さんは言葉だけでなく、ファミレスのサービス券もチラつかせていた。もうすぐ、お昼の時間。


「少しは責任を持って放任しなさい。過保護じゃない。馬鹿」

「母さんがちょっと若く見えたよ」

「私達のお祝いは、家に戻ってきてからでも遅くないわよ」


車は娘と反対方向に進んでいくのであった。



◇    ◇



「よろしいんですか?」

「母さんは手料理を振舞いたいから、ちょっとだけ時間がほしいんですよ」


念には念を入れて、"変型交代"を使って車をチェンジして走行している状況。

アッシ社長が助手席に、美癒ぴーが運転席は変わらず。

家族のお誘いを断ってでもこちらに来て良かったのかと、アッシ社長からしたら不思議な事であるが、家族とは大事そうでそう大事でもないのか。感謝を込めるならば、


「やっぱり、トーコ様や日野っち、アッシ社長、ガンモ助さんの、皆様のおかげで免許を取得できましたから」

「まぁ、そうですか」


その感謝を受け取るには受け取るが、運転免許にしろ。何かを成し遂げるのは継続する気持ちと、学びたいという意志、生きなければいけない覚悟がなければできることじゃない。

美癒ぴーのは、1と2が揃っていた。そう3つ揃うことではないが、そもそも1つ持つ学生さんなどいるかどうか。

真面目である方だ。それも、社会的に意識のある人。



「あの」

「?珍しいですね、運転中に声を掛けるなんて」



訓練中は黙って運転に集中していたが、免許という自分自身が身につけた技術を自覚し、ゆとりを作った。


「みなさんの運転免許証を確認しているのは、アッシ社長だけなんですよね?」

「ええ。乗務中に携帯しているかどうか、確認しているので」


今まで、運転免許とは単なるカードで資格を証明するだけの物と安易に思っていたが、実は違うことを免許場で聞いた美癒ぴー。運転免許を見る、あるいは見せるという機会はそう多くはないだろう。

美癒ぴーだって、そこらへんの細かい説明はつい1時間前のこと。



「もしかして、アッシ社長って。みなさんの個人情報を握っているんですか?」



ちょっと遠回りで批難するような言い方だけれど、


「嫌ですか?」

「そうじゃないですけど、別に……ただ。みんなの名前とか、みんなの情報とか、分かっているんですねって」

「社長ですし。まぁ、私達は少人数体制ですから把握できるんですけどね」

「トーコ様の本名とか、……日野っちの本名とかも……」

「ええ、知ってますけど。例え、トーコ様から尋ねられても、答えることはありませんよ。まぁみんな分からないと思いますが」



私って、名前が美癒だから、美癒ぴーなんだよね……。バレバレじゃないんでしょうか?

たぶん、日野っちも名前ぐらいは分かっていると思うから、安易に付けたんだと思う。って、私の事は置いといて、


「日野っちは、"日野"じゃないんですか?」

「ああ、全然関係ないですよ」


その本当の名前が気になっての質問だと、察してくれたアッシ社長は。日野っちが、日野っちと呼ばれる理由を語ってくれた。

それはとても無理矢理な付け方。


「彼のあだ名は、日が昇っていない所で出会ったからです」

「それがどう日野っちに!?」

「日が"ない"=NO=野、"所"=地=ち。みたいな感じです」

「ゴリ押し!こじつけ!」


とはいえ、そんな理由で付けられた"あだ名"だと知れて、また少し、日野っちの事を知れた美癒ぴーであった。しかし、


「しかし、感心しませんよ」

「や、やっぱりですか」

「当然です。人の情報を得ようとすること、特に私を経由して得ようとするのだからなおさらです。普通に本人に尋ねたらどうですか?美癒ぴーはコミュ力が高いですし、日野っちの家にも行ったんでしょ?」


なぜその事まで知っている。なんて事はもう考えちゃダメかな。

たぶん、家の中を片付けている時。日野っちの名前を調べる事に失敗したところまで知ってそう。


「ううーん。でも、日野っちはそーいうの教えてくれないと思いますね。どーでも良さそうな感じで、逆に答えてくれない気が……」

「……まぁ、半分正解でしょう」


せめて、助けてくれた人の本当の名前ぐらいは知りたいなぁ。と、思っていたけれど。そう甘くはない。知ったところで何があるかな。


「彼。家族と勘当してる身です」

「そこまで知ってるんですか?」


というか、まだ10日程度すら経っていない美癒ぴーに、そこまで話している日野っちが意外ですよ。心を許せる存在と出会えて良かったですね。


「自分の名を嫌っているのは当然じゃないですか?HNハンドルネームみたいに、自分がようやく生きていく自覚を持って、自分を知れる時に欲しい物と同じくらいに」

「それで"日野っち"を選ぶんですか。……無難ですけど、無難ですけどね……」


でも、"っち"が余計。これじゃあ、それで呼ぶしかないじゃん。


車は信号で停まり、話は続く。


「気になるんですか?」

「え?そう見えます?」

「お互いにモロバレかと」


核心かつ、うざったいので、合理的に行くアッシ社長らしい質問であった。それにちょっと、やり辛そうな顔を出して、


「そんな展開まではないですよ。まだ、品定めっていうか。私は日野っちを知ろうとするだけです。好意まで行かないです。惹かれる部分はありますけど、それは本当かなって気になるだけです」


ツンデレのツンは一切なく。まずは、その興味を抱くという地点から始まっている。恋事情にはよく詳しくないアッシ社長は


「現実的ですね。少子化なんざ言うこの国ですが、ちゃんとした社会はただ人数が増えりゃ良いもんじゃないんです。適度かつ適切な割合が社会を循環させていく」

「アッシ社長ってそもそもモテないでしょ?」

「あなたの毒舌は容赦ないですね~。事実ですが」


信号は切り替わり、車は進んでいく。

運転免許証をちょっと覗いてみれば、みんなの情報が分かってしまう。名前、生年月日、年齢、住所。聞くよりもきっと早いし、この取り立てた時期だから聞ける質問。


「あの、みんなの運転免許証。見ても良いですか?」

「日野っちやトーコ様が許せばいいんですが。私は拒否しますよ?」


アッシ社長はそういうと思っていた美癒ぴー。

ガンモ助さんもたぶん、悩んでから拒否する気がする。トーコ様は見せてくれるかな?日野っちは……分からない。五分五分な感じ。

こうやって、人の事を知って良いかな?別に、そんな怖いことを知るわけじゃないし。いいよね。



◇     ◇



運転免許証が持つ情報について。

基本として、


名前、生年月日、住所、顔写真、所有する免許、有効期間、免許の条件等の記載があります。


身分証明としては、"マイナンバー制度"ができるまでは、おそらくこの資格がもっとも扱いやすい身分証明でしょう。

(注意点として、マイナンバーは絶対に他人に教えるなよ!)

保険証や住基カード、パスポートも身分証明としてありますが、顔写真の有無。発行までに必要な書類などを考慮すると、結局、別の証明書が必要となる物があります。ちなみに住基カードは"マイナンバー制度"に伴い、発行停止となりました。


今回は、運転免許証に記載されている。12桁の番号について。

分かりやすい例として、番号を"300815679017"という仮想の運転免許証番号で説明させてもらいます。


番号は、"300815679017"


まず最初の二桁は、各地の公安委員会のコードが記載されています。発行された県が分かります。

"10"=北海道、"20"=青森、"30"=東京、"62"=大阪となっています。

例では、"30"の記載があるため、これは東京で発行された物となります。



3,4桁目は免許を取得したし歴の暦です。例の場合では"08"。2008年に取得した免許であるという記載です。



そして、最後の下一桁は、免許を再発行した回数です。紛失や破損などによって再発行が行なわれた回数がここに記載される。例の場合では"7"ですので、7回の紛失があったとされます。し過ぎだろ!!



5~10桁目は、公安委員会が独自に管理している番号です。これに関しては公安委員会が秘密にしているため、実態は分かりません。


11桁目は、『チェックディジット』と呼ばれる、入力ミス確認用の番号です。クレジットカードでも使われているもので、1~10桁の数字を決める番号です。1文字だけ間違いなどを発見する番号だそうです。



「というわけで!私の免許証です!」



堂々と、自分の免許証をみんなに見せる美癒ぴー。

ちゃんとした免許である。


「おおーっ」

「良かったで~す!」

「やったな!」

「ここまで私が運転してきたんですよ!それもこれも、皆さんのおかげです!」


改めて感謝してから、自分の免許証を周りに渡してみる。なんというか、


「本物ですよね?」

「そだよ~本物本物~」


ここまで来ておいて、ちゃんと実感をした美癒ぴー。免許や資格というのは、自分だけでなく相手が認めてくれてようやくできるものだと知る。


「ちゃんと"美癒ぴー"って記載されてるね~」

「可愛いな。顔写真……」

「一生物ですから!日野っちはどんな感じに映ってます?」


さりげなく、人の運転免許証の提出ができる自分のコミュ力に驚きながら、同時に


「俺。気にするタイプじゃなかったからな」

「あっ」


アッサリと日野っちは免許証を美癒ぴーに渡す。これで、日野っちの本当の名前が分かる。


「私のだって可愛いよ~」


さらに、トーコ様まで。運転免許証を取り出して、美癒ぴーに見せてあげるのだった。

アッシ社長は頑なに拒んでいたが、2人はまったく興味なしといった感じで見せる。顔写真も気になるけど、本当は名前なんです。なんて言えない……けど、見る。

どんな名前かな?


「え?」

「やっぱり変か?」

「あっ、いえ……大丈夫ですよ」


ちょっと目の錯覚かなと思い、瞬きをしてから。日野っちとトーコ様の免許証を確認する。

名前の欄に記載されている名前は、


『日野っち』『トーコ様』


えええぇっ、アリなの!?そういえばさっき……。妙な事を聞いてしまった。


「あの。私の免許証の名前を……見せてくれません」


確かに私はここに来る前に確認した限りでは、ちゃんと苗字名前が印字されていた事を覚えている。父も、アッシ社長も確認している。

しかし、トーコ様が見せてくれた自分の免許証に書かれていた名前は


『美癒ぴー』


「なんで書き換わってるの~~!?」


その驚きに。完全にやっているのはアッシ社長だと断定する。しかし、こっちの方が人の事を探ろうとしていて、悪いのは事実。


「個人情報保護のためですよ」


そーゆう魔法がこの会社内では張られている。外で免許証を確認すればちゃんと、苗字と名前が記載された免許証になる。


ちなみにであるが、氏名変更や住所変更があった場合は免許証を変更しないとマズイです。無免許というわけではないですが、罰則もあります。住所や氏名が変わっている場合、本人確認に使えないため、結果身分証明としての機能がなくなります。

手続きはお早めにしましょう。面倒ですけれど……。



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