9話 欲しいのは教会のロロ様です
夢でもつらい世界からは逃げられないらしい。
あんな夢を見ないといけないのか。
覚悟は決めてるはずなのに。
セリーを助けるって。
馬が止まるのを感じて僕は目覚めた。
「セリー、起きて」
「うん」
どれだけ寝ていたのだろうか、日は既に傾いていた。
馬に乗ったときはまだ日がまだ出たばかりだったから、半日以上寝てたということだ。
セリーヌさんに担がれるように、僕は馬から降りた。
僕は消える。
でも可能性はある。
治らない可能性だってある。
それは思ってはいけないことだ。
でも、思ってしまうことは仕方ないこと。
まるで審判だ。
僕がこの異世界で生きていいかのかという、異世界の審判。
審判の時だ。
治るか治らないか。
裁判官はロロ様という人。
僕は目の前の建物を見る。
石造りの古めかしい建物。
ここにロロ様が住んでいるのだろうか。
僕を殺す薬。
ロロ様というのが悪魔に感じる。
いや、人知の及ばない薬を作る魔女か。
老婆がドアノッカー鳴らし、建物の中の人を待っていた。
でも、扉から出てきたのは意外な人物。
「お待たせいたしました」
そこには魔女とは真逆の人がいた。
教会の神父様。牧師様かもしれないけど、キリスト教の正装のような服を着た人たちだった。
この人がロロ様、だろうか?
「ロロ様にお願いしたいことがございまして」
老婆が言う。
この人がロロ様ではないのか?
神父様ににしか見えないしな。
「申し訳ありませんが、ロロ様はお休みになられています。町にある商店が代理で販売しているものもありますので、ご入り用の物を伺いましょうか」
いっそのこと明日来いと言ってくれたらよかったのだが、見た目通り聖職者ならそんなことは言わないだろう。
「記憶の病いに使う薬はないかのう?」
「記憶の病い、ですか?」
神父は少し驚いたように見える。
「ええ、あん子が思い出せんでいるんで」
僕を見て老婆が言う。
「わかりました。奥でお話させていただいてもよろしいですか?」
神父様らしき人に案内され、僕たちは教会らしき建物に入っていく。
僕という人格が消えるのだろう。
消えたくない。
でも仕方ないこと。
せめてセリーを助けよう。
―――でも、その前に僕はすべきことがある。
体に感じる違和感だ。
これを解決しなければいけない。
だって、今まで寝てたんだよ?
つまり今が僕にとっての朝なんだ。
朝起きたら、わかるだろ?
そりゃもう、朝だ―――、げふんげふん。
「あの、トイレに行っていいですか?」
そう、おしっこです。
そもそも子供だしね。
しないよ、さすがに。
うん。