5話 欲しいのは虹の異世界です
僕は少女と手をつなぎ、ともに森を歩く。
月光に輝く雪のような白い髪を持つ少女、美少女の部類に入るだろう少女と手を握っているというのに心踊るものはない。
ホモじゃないよ。
うん。
それより心躍ることがあるだけ。
「お姉さんは、冒険者ですか?」
たぶん年上だから一応お姉さん。
マントといい、狼と戦う技といい、冒険者って言葉が合う気がする。
ゲーム基準だけど。
「あてはアスマン。冒険者」
アスマンというのが名前だろうけど、アクセントがおかしい気がする。
あてって「て」にアクセントじゃないのか? アスマンのイントネーションは「あ」にアクセントが来てる変わった方言だ。
そもそも異世界語だから方言とかが違う?
いや、そもそも普通に会話できてることがおかしい。
あれか、ご都合主義の自動翻訳か?
異世界語理解とか、なんだかんだ理由をつけた翻訳能力。
それとも、体はこの世界の人間だから言語脳が勝手に作用してるとか。
わからん。
けど、まあ便利だからいっか。
考えても仕方なし。
「さっきの光ってたのも、冒険者だからですか?」
きっと特技とか必殺技とか、スキルとか。
スラッシュって言ってたから、技名はスラッシュだと思うけど。
基本っぽい技名なのに、メチャ強かったな。
「光ってた?」
僕の聞いたことはたぶん当たり前のこと、そのせいで何を聞いてるのか理解できてないようだ。
「あの、剣から出てたり、傷口から出てた光です」
「エナのこと?」
エナ。
なんと不思議な響きだろうか。
異世界にいるからかもしれないけど。
でも、マナとかよく使われるから、それに似たものだと思う。
MPのようなもの、じゃないかな?
「たぶんそうです。エナってなんなんですか?」
「エナも忘れてるの?」
「はい」
忘れたわけじゃないと思うけど、知らないのは違いない。
アスマンは少しだけ考える。
「エナは全ての力の根源、スキルを覚えるのにも必要で、使うのにも必要。攻撃を防ぎ、傷を癒す力もある。あとは物を買うにもエナを使う」
最初はMPなどと思ってる時期もありました。はい。若さゆえの過ちです。
しかしながらエナとは、MPでもあり、HPでもあり、スキルポイントでもあるらしいです。しかもお金でもあると。
万能ポイントといったところか。
しかし、スキルときたか。
まあ、予想してたけど。心躍る。
「スキルってのはなんですか?」
「スキルは、スキル。さっきのスラッシュとかで、戦闘スキルや生産スキルのこと」
ゲームとかで言う特技や必殺技ってだけではないらしい。生産スキルというのは、調合や錬成のようなアイテム作成のことだと思う。
異世界だし、妙にゲームっぽいし。
「僕でも、使えますか?」
「エナさえあれば誰でも覚えられる。でも同時に使えるのは5つだから、無駄に覚えないほうがいい」
誰でもか。
スキルというのは一部の人間しか使えないものではないらしい。
しかし、どういう制限があるのかわからないけど、5つという制限があるらしい。
エナがあればどういう手順で習得できるのかということも聞きたいし、5つの制限についても聞きたいな。あと種類や数。
聞きたいことがいっぱいあって悩んでいると、ちょうど森の出口にたどり着いたらしい。
太陽がもうすぐ昇るのか、周囲はうっすらと明るくなっていた。
僕は周囲を見渡す。
どこまで続くのかわからないほどの、だだっ広い平原。
空は雲一つなく晴れているのに霞んでしまうほど遠くにある山々。
日本では見られないほどの雄大な風景。
だけど、僕が驚いたのは虹だった。
巨大な虹。
でも、それは地球の虹とは違う。自然現象としておかしい、
地平線の先、僕の目線と変わらぬ高さ。
この薄暗い明け方であっても、自ら光っているようにその姿を見せる虹。
でももっと決定的に違う。
「虹?」
自然と疑問が口に出てしまう。
「世界を魔物から守る、虹の結界」
アスマンが教えてくれる。
この世界を覆うような巨大な虹について。
たしかに、虹に見える。
ただ、僕の知ってる虹とは違う。
上下が反転した虹がそこにはあった。
エナとスキルについて(説明は後後でてきます)
エナ
主にHP・MP・スキルポイント・通貨などの役割です。金こそ全てと思ってください。
スキル
ユニークスキルは固定。
それ以外に5つの習得済みスキルを選び、セットします。それ以外のスキルは発動しません。組み合わせを考え、戦闘や生活を行います。