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#11「禁断の果実」

#11「禁断の果実」

王子は落ちた果実の菓子を拾い上げ、砂のついたところを一口かじりました。

「私もこの菓子は好きなんです。」

王子は、果実の菓子を白雪姫に差し出します。

「さて、白雪姫。この禁断の果実の最後の一欠片、飲み込む準備は出来ましたか?」


白雪姫の中で、「しー」の記憶と厳しいレッスンが一つの線で結ばれました。

「おこなのお母様」は消えていなかった。ずっと側にいた。

なら、「ふつうのお母様」は何処へ行ってしまったのでしょう。


問いかけたら、知れば、幸せが消えてしまう。それは幻想でしかなかった。


白雪姫が鏡越しに見た女王は「おこなのお母様」だった。

厳しいレッスンと対になるこのお菓子。今なら分かる。それは愛情の形のひとつ。

白雪姫は意を決して王子の手から禁断の果実をとり、口にし、飲み込んだ。

これは、お継母様の気持ち。お継母様の味。


「女王は半年前にご逝去されました。」


真っ直ぐに王子の目をみる白雪姫の頬に一筋の光が流れました。


白雪姫にその顔を見られた「鏡の女王」は、ずっと、白雪姫の生母である「本物の女王」と2人で一人の「眠らない女王」を演じ続けてきました。

一人になった後も「鏡の女王」は、国の象徴として市中を歩き、人々を労い、走り続けました。

鉄の靴を履き炎の上で、踊るように。


それを淡々と語る王子。

「お願い、お城に返して。」

白雪姫は王子に嘆願しました。


「それは出来ません。私は真実を知る代わりにあなたを護ると「鏡の女王」と約束しました。これは私を見続けてくれた女王への恩返しなのです。」


いま、白雪姫の国は、体制派と革命派との血なまぐさい対立が始まっているのです。

王子は騎士団長の娘を母を持つ次兄に事態の収拾を要請する伝令を既に出していました。


「大丈夫です。あなたの両親を死なせたりしません。」


他国の支援を受けての事態収拾が、国の独立性を奪う事を白雪姫は学んでいました。

ですが、今の白雪姫にできることは何もないのです。



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