愛人日記
まあまあなタイトルですが、真面目な愛のお話です。
読んでいただけると嬉しいです!
どうも、うちの家系は『愛人』という名称を持つ人の割合が多い様な気がする。気がするんじゃなくて、多い。事実だ。
愛人って漢字にすると、愛の人、ってとても綺麗に見えるけど違うのね、もっと性的で金の匂いがするものなのね。
母親はおじいちゃんと愛人の子。おじいちゃんは写真を見る限りかなりのイケメンだったので、愛人は他にもいたらしい。
昔こたつの中でおじいちゃんとおばあちゃん(愛人)が足でイチャイチャしてるのを奥さんに見られたと、おじいちゃんから聞いた事がある。
と、いう事は知人だったという事か。奥さんは大変だった事だろう。
いとこのお姉ちゃん二人共、奥さんのいる人と付き合っていた。
何故知っていたかというと、小学生の私を一緒に遊びに連れ出していたからだ。十才児をバカにしてはいけない。会話や雰囲気で分かるのよ。
母親も父親と一緒になる時に、前の奥さんを追い出した形で奪い取ったって事自慢気に話してた。
そんな事私に話さなくていいのに、と思った事を覚えてる。
そんな奪った程の父親なのに、私は父親とは違う人の子供だった。十八才の高校卒業した時に、初めて聞かされた。驚きと共に納得もした。
母親には恋人がいたのだけれど、私はその人の子供だった。だからうちの父親は私を全く愛さなかったのか、と。
母親の恋人はハーフだった。クォーターだったんだ私。だからちょっとだけ外国の顔してたんだな、とその時思った。
父親と母親は二十才離れていた。父親は大人しく、母親にはとても優しかった。父親はとても母親を可愛がり、愛してた。私に対する態度と全然違った。
私にはいつも無視してろくに言葉もかけてくれなかった。
話す事があるとしたなら、母親が私に対して怒ってる時、大体が意味が分からないヒステリックな時なんだけど
「怒らせる、そうさせるお前が悪い」そう言われ続けて来た。凄い理不尽。一人っ子だったからいつもに二対一で負ける法則。
何故だろうと、子供の頃から寂しく不思議だった。
きっと、父親は私が憎かったんだろうな、見るのが辛かったんだろな、あっちの男に似てる私を、と後になって思った。けど酷い。
小学生のころから知っていた。時々連れ出されて三人で会ってた。
母親とあのおじさんは特別な関係なんだろうな、って事はちゃんと勘づいていた。
何故あのおじさんと結婚しないんだろうって思ってた。その事を一度だけ母親に話したことがあった。
あのおじさんにも家庭があったとその時聞いた。じゃあ、せめて父親と離婚してよ、と言った。
「それは出来ないわよ」と母親はサラっと「パパがいなかったら生活出来ないでしょ?」と言った。
ああ、これが大人の世界なんだと、ませた小学生の私は思った。
中学生になって、もうそんな子供でもなくなったし、割り切った。母親はもう勝手に好きにすればいいと思った。私とは関係ないから。
実の父がその人だと知らなかった中学時代は、そんなちょっと冷めた中学生だった。
お酒が飲める二十歳になってから、友達に誘われて夜のバイトを始めた。
新宿のスナック。学校が近かったから行きやすかったし、接待がなかったから、気楽だった。
そのお店は朝五時頃までやってたから、時々深夜も入ってた。
始発で帰れるし、終電で帰るより空いててこっちの方が良かった。
そこの常連さんだった九十九さんに気に入られてた。
「澪ちゃんはいつも可愛いなぁ〜、学校は後何年通うの?」
私は澪と名乗ってた。本名はエマなんだけど、気分的に変えてみたくて、そうしてた。
「本来なら後二年。でももう辞めちゃうけど」
「なんで?」
「もう学費払えないー」そんな事言って笑った。
九十九さんは急に真面目な顔をして「学校は行った方がいいぞ、これからの事に関わるから」
「大学じゃないよ、服飾関係の学校よ」
「そうか、それにしてもだ……。学費っていくらかかるの?」
「うーんとね、年間で百万くらいかな」
「百万かぁ……微妙なとこだなあ。後二年行くんだもんな、二百万か、ちょっとキツイな」
と、ぶつぶつ言ってた。
「大丈夫よ、出してなんて言わないから」と笑った。
小さい、私にしか聞こえない位の声で「じゃあさ、僕と付き合わない?」と言って来た。
「どんな法則よそれ?なんでそうなるのよー」と大声で笑った。
九十九さんは「シーっ」と言って指を口に当てた。
「九十九さんって結婚してなかったけ?」素朴な疑問を投げかける。
「まあ、してるけどさ……。」
「月幾らくれるの?」そんな事を言った。
「え?」驚いてる九十九さん。
「急にお金の話?」苦笑いしてる。
「こんな若い子愛人にするんだったら、ねえ」と首を横に傾けながら、にっこり微笑んだ。
「いやあ〜澪ちゃんて本当、面白い子だなあ〜、はは〜」と乾いた笑いの九十九さん。
「あ、こんな時間だ、終電なくなるから帰るわ」そう言って帰って行った。
何よ、意気地なしねえ。お金ないなら女遊びなんかしちゃダメよ。そう思った。本当にそうだもの。
私は当時好きな子がいた。友達のバンドのヴォーカルのルイ君。彼女がいたけど、私ともよく遊んでいた。
彼のやってた夜のバイト先が歌舞伎町の風林会館のビルに入ってたから、そんなに遠くなかった。
仕事終わってから待ち合わせて、深夜の公園で遊ぶ事も多かった。本当の遊び(笑)
その後始発でルイ君の家まで行って、朝からお疲れ様でしたのメイクラブ。楽しかったな。
そんなスナック生活を半年近くやっていたある日、ホステスのヘルプやらない?って話が来た。
時々深夜に来る西園寺さんって人がいきなり私に
「新しく店出すママがいてね、女の子探してるんだよ。可愛い子じゃなきゃダメってさ。澪ちゃんやってみない?ヘルプの仕事なんだけどさ」
「ヘルプって何?」
「お姉さん方のサポート役って感じ。お姉さんがさ、席外した時とか会話繋いだりとか、盛り上げたりするの」
「私、場盛り上げるなんて出来ないよ」
「大丈夫、その辺はその時々で違うから」
「えー、どうしようかなあ……」
「なるべく早く決めてー、ママに可愛い子可愛い子、って言われてるんだよ」
西園寺さんはそこのお店の黒服をやる人だった。
「お給料はいいよ、服はお店からレンタル出来るし」
「だったらやってみようかなあ……。ここのママと相談しなきゃ」
「あ、それだったらもう話つけてある。澪ちゃん抜けるんだったらこれ位払う、って事になってる」
「そうなの……?」と、言ってママを見た。
「澪がいなくなったら、うち大損害よ。でも行きたいなら試しにやってみたら?」そう言ってくれた。
そして私はホステスのヘルプとして歌舞伎町で働く事になった。
興味持っていただけたら嬉しいです!




