第二章 もう一人の転入生(5)
「疲れた。ほんとーに疲れた。なんだあの国」
愚痴をこぼしながら小さな会議室に入ってきたのは、ロベルト・アードマン。貿易商に籍を置きながら、関税施策会議のオブザーバであり、戦略技術諮問委員会の構成員でもあるという三足の草鞋を履く男である。これだけの肩書を持ちながらもまだ三十代となれば、将来は間違いなく経営幹部の道が見えている。
それを迎え入れたのは、ソン・シエイ。ロベルトの同僚という関係ではあるが、多忙な彼に代わって報告書をまとめたり、山のような質疑応答に対応したり、時にちょっとした助言をしたりする懐刀だ。
「例の件は首尾よく?」
「全然。いや、厄介ごとの一つは片付きそうだとは直接聞けた。どうやら、王女の降嫁が決まりそうだ」
「それはそれは。一番の厄介ごとが片付くわけか」
「まあそうだな。あの国にも伝統ってやつがあるから面倒はまだまだありそうなんだが、ともかく今回だけは状況が状況だ。王女に黙ってもらうにはそれしか無かろう、と」
「それさ、王女様が納得なんてするまいに」
ソン・シエイは準備していたミネラルウォーターのボトルを勧めながら問い返す。
「諸々の事件が重なって王女にもいろいろと引け目があるだろうし、なにより、この件に関しては別の説明をしてあるのだそうだ」
「どういうことだ?」
「詳しいところまでは不敬に当たるとか何とかで教えてもらえなかったがな、件の少年を伯爵家の養子に入れる方向で話をまとめる、ということになっているらしい」
「不敬も何も、そんなもん、答え合わせじゃねえか」
ソン・シエイは言いながら、苦笑を浮かべた。
ロベルトもそれを受けてくつくつと小声で笑う。
「ま、方や王女様を地球市民にたぶらかされた伝統国、方や自由市民を人権皆無の貴族籍に引きずり込まれた自由の国、こりゃもう盛大な泥仕合が始まるだろうさ」
「まさか、王女様はその泥仕合を起こそうと?」
「そこで揉めてる間は時間が稼げると。で、無事結婚もして譲位の条件を満たしたら自分で国王弾劾して即位して、なんてことを考えてるだろうと、な。ちょっと王女様を見くびりすぎていた」
ロベルトは準備された冷えたミネラルウォーターを一息に喉に流し込んで息を整え、
「まあ王女もこっちの計画の核心はまだつかんでない。地球に来たのもそのあたりを探ろうって目論みもあるかもしれん」
「だが、実際にはそうはならないってことだな」
「そうそう、その話だ。騙し打ちで降嫁という形に持っていくらしい」
「それはまたどうやって」
「さあねえ、だが、若い男女がそれなりに時間を過ごして、人に言えないことの一つや二つは起こるだろうさ、結婚前に、な」
ソン・シエイは苦虫を噛みつぶしたような顔。
「そういうのは僕は好かんねえ」
「やむを得ぬ措置ってやつさ。泥仕合なんて起こさせず新連合に一方的に責任がある形を作る。そこで僕らが呼ばれる形となって、地球からの補償としては――、と」
「形式上は地球が大損を承知で、ってわけだ」
「さすがにここにまでロックウェルが差し出がましいことを言って来たら、ちょっと手が無い。そこが悩みどころでね、絵図が書きあがらない」
「なんだい、最後の詰め以外はまあおおむね順調じゃないか。二千年前のカビの生えた脳髄が詰まったエミリア諸侯どもの説得も済んでるわけだろう?」
「不遜だ不遜だ、問題だぞこれは」
ロベルトはそう言ってケラケラと笑った。
「それはそうと」
と、ソン・シエイは表情を引き締めて、続ける。
「ラウリ・ラウティオという男が、王女様と同じ学校に無理にねじ込まれたらしい。確かな情報ではないが、王女様のねじ込みが分かった直後からねじ込みの動きがあったことが分かってる」
「どこの手だ?」
「全く。動きが派手すぎる。なりふり構わない動き、我々の計画を完全に把握した筋からの動きだろう」
「であれば、王女自身の結婚計画の裏にある諸侯の立てた降嫁計画もある程度推測されていると見たほうがよさそうだ。目的はなんだと思う」
「少年の拉致か殺害が一番手っ取り早い。だが王女様の怒りの炎で焼かれるのはどの勢力でも避けたかろう。それを避けるなら、穏便に王女様と少年を遠ざけて――まあ、そんなところか」
「む、そうか。であれば、陰ながら少年を応援するしかできることはないか」
「王女様がそれなりに納得づくだろうということが救いかな」
二人はため息を漏らす。
「それはそうと、ファレン行くぞ」
「は? へ? 二百光年先の?」
ロベルトの宣言に、ソン・シエイは思わず間抜けな声を漏らした。
「誰か送り込みたいところだが、これだけの機密を扱えるのが正直俺とお前くらいしかいない」
「マジですか……」
「ああ、大マジ。開発計画の素案を持って行ってからの支援スキームの合意まで二週間で下ごしらえして来いってよ。で、とんぼ返り」
「地獄だ。リモートで良いでしょうに」
「エミリアの影響下にある。ということは、エミリアに潜んでいるロックウェルのスパイにも筒抜けだ。尻尾をつかまれたくない」
「僕らが行くだけで十分な尻尾だよ」
「ひとまずは関税施策会議メンバーとして行くつもりだよ。『エミリアの不当な関税措置の現地把握と対処の検討』でな」
「ぶふーっ、エミリアの、か、関税措置!」
聞いた途端にソン・シエイは笑い出して止まらない。
「いやまあ事実なんだから、しょうがないだろ。それをうまく使ってあれこれ画策してる立場なんだからそれも――まて、俺、『エミリアの』って言った? マジで? すまん、違う違う、『ファレン共和国の』だ、おいまて、笑いすぎ」
二人の笑い声を最後の議題として消化し、取り急ぎ報告書の担当割を決めて、二人きりの会議は終わった。
***
セレーナがラウリと出かけた翌日、結局、セレーナから何かが語られることも無く、僕がそれを問い詰めることもできず、セレーナとラウリの間にどんなことがあったのかを知ることはなかった。だからラウリの正体は分からずじまい。
ただ、さらに日が経つにつれて、結局は、ラウリは人付き合いがとても良いだけの好青年なのかもしれない、と思うようになった。
と言うのも、セレーナを誘った翌日には、毛利とマービンと、それから僕を誘って放課後に出かけることになったからだ。
いつもはどんなところで遊ぶのか? と言うラウリに、毛利は大喜びで僕らの放課後遊びのコースを案内した。つまり、近くのショッピングモールに行き、ファッションショップや小物店をうろうろと冷やかし、スナックを買い食いし、学生向けの安くて騒がしい喫茶店で馬鹿話をし、という、コースだ。
ラウリが言うには、セレーナがきっとクラスの中心的人物なのだろうと思ったらしい。目立つ美貌とそのご機嫌に一喜一憂するクラスメイトたちを見ていればそう感じてしまうのだろう。だから、彼女が転入二週間と知ってまず驚き、その上で、彼女の身分を知って二度驚いたと言う。彼女をプリンセスと呼ぶのはクラスの中の共通のジョークなんだと思ってた、と。
そして二日目に僕たちを誘った理由は、セレーナの推薦だったからのようだった。セレーナが僕を推薦し、休み時間に僕が親しく話していた毛利とマービンがその一味だと推察して、三人を誘ったというわけだ。
要するに、それが転校の多い彼流の処世術なのだ。
もちろん、あまりに怪しすぎる彼の転入のタイミングに対する疑いを晴らすつもりはないけれど、少なくとも表面的には彼は好人物だった。何しろ、セレーナの事情を知って、いきなり彼女を誘ってクラスに不安を撒いてしまったことについて、申し訳なかった、と僕ら三人に謝ったくらいなのだ。
それから数日をかけて、友達の友達を次々に紹介してもらっては放課後交流を続けていることを目撃することになった。その頃には、ちょっと心配しすぎだったかな、と僕の方が反省するくらいだった。
彼の放課後交流が一巡すると、その後は、いつの間にか、僕と毛利とマービン、なぜか浦野、そして、セレーナ、という面々を、彼はつるみあうメンバーとして選定したようだ。
と言うより、実のところは選ばれたのは僕を含む三人だが、僕とセレーナ、浦野がよく一緒に下校していることも彼は良く観察していたから、彼が間に立って、このメンバーを結び付けたということらしい。
だから、彼が転入してきて二週目の金曜日であるこの日、毛利が、明日は休みだし放課後にまたぶらぶらして帰ろうぜ、と僕を誘ってきたとき、最終的にこの六人がそろったことは当然の成り行きだった。
買い食いのメニューは、セレーナがストロベリークリームクレープ、ラウリがバナナクレープ、浦野がプリンクレープというけったいな代物、僕と毛利とマービンがハンディミートソースパスタだった。それを片手にいつもの喫茶店へ。
考えればよそで買ってきたものをほおばりながらの学生を受け入れるなんて随分なお店だとも思うのだけれど、結局はそんな緩いところが学生の間で人気で、いつも席が空くのを十数分間は待つことになる。それぞれが片手に抱えたスナックは結局その十数分間で消費され、席に着いたときは改めて何かを注文する羽目になるのだから、お店としては全く気にもしていないのだろう。
「さてじゃあ、セレーナさんとラウリの転入を歓迎して!」
なんてことを言いながら、毛利がジンジャーエール入りのグラスを掲げた。
とりあえずノリで僕もそれに応じてコーラ入りのグラスをそれにぶつけ、みんながならった。
「いくらなんでもセレーナさんの歓迎は遅すぎよう」
と浦野が笑いながら苦情を言った。
「そう言うなって、俺だって、相手が王女様じゃあ、さすがに気が引けてさ」
「そんなに気を使わなくていいのに。この馬鹿ジュンイチなんて私を呼び捨てにするのよ?」
セレーナはこのメンバーの前ではいつの間にか地を出すようになっている。
「さすがに呼び捨ては失礼ですね、王女殿下」
逆にマービンは仰々しく敬称を付けるが……、ま、それはそれで彼らしいんだけど。
「ね、失礼な話よね。初対面からよ、こいつは。その点、マービンさんは礼儀正しくて、紳士ね。それから、ラウリさんも」
セレーナは濃いエスプレッソをと注文したがこんな安喫茶店では出せるはずも無く、薄いコーヒーで我慢している。
「いえいえ、僕もセレーナさんがあのエミリア王国の王女殿下だと知っていたら、気軽に声なんてかけられませんでしたよ。失礼なことをして本当にすみません」
ラウリは、何度目かになるその謝罪を口にしたが、
「いいえ、むしろラウリさんのおかげで、こんな風にみなさんに溶け込めて、感謝してるのよ。転校が多いんですって? その社交術、見習いたいわ。エミリア貴族界でもこれほどの社交上手がいるかどうか」
セレーナのお世辞に、ラウリはいやいやと謙遜するが、そのしぐささえ彼の美しい容姿を引き立てていて、ごく普通の容姿しか持たない僕としては実にうらやましくねたましく。
「でもセレーナさんに浦野、いろいろ聞いたけどさ、結局この大崎のやつは何をやっちゃったわけ?」
毛利が尋ねると、マービンも興味深そうにうなずきながら乗り出す。
「大崎君はねえ、セレーナさんの騎士さんなんですよう。ピンチになったら駆けつけて颯爽と王女様を助けるんです」
浦野が言うと、
「冗談やめてよトモミ。こんな奴が騎士だなんて言ったら国辱ものよ」
「でもセレーナさんも大崎君のピンチに何百光年をたった二日で駆けつけてくれたじゃないですかあ。実は愛し合う二人って奴なんですよう」
「いくらトモミでも怒るわよ?」
ひええと言って頭を両手で覆うが、明らかに面白がっている。
「いや真面目に言うとね、本当にセレーナの家出に付き合わされただけでさ。そのせいで戦争に巻き込まれるわ誘拐されるわで、参ってるのはこっちだよ」
「誘拐された?」
しまった。
セレーナがそこまで説明していたのかと思ったけれど。
エミリアがかかわるごたごたに首を突っ込んでいたという程度の説明しかなかったのかもしれない。
というわけで、新連合市民の僕は新連合の偉い官僚様の言いつけに従って口をつぐむことにし、人差し指を一本、口の前に立てた。
「こいつね、こともあろうにロックウェル連合に喧嘩売ったくせに警戒感も無くぼけーっとトモミとデートなんてしてるのよ、そりゃ誘拐もされるわよ。あなたね、もし私が助けに行かなかったら、あなたはともかくトモミが殺されてたかもしれないのよ? 反省してる?」
セレーナが口を開いたので、簡単に事情を説明してくれるのかと思っていたら、予想に反して僕に対する手厳しい糾弾が始まってしまった。
「け、警戒はしてたさ、ちょっと気づくのが遅れただけで」
「そうですよう、さらわれる直前に大崎君はちゃんと気づいて、逃がしてくれようとしたのよう」
「気づいても結局行動を起こせないなんて本当に愚図ね」
ここまで言われるとさすがにカチンと来る。
「ロックウェルの行動一つ読めない王女様に言われたくないね」
そうとも、もともとセレーナ含むエミリア王家がロックウェルの状況を見誤っていたのが原因だ。まさかマジック爆弾を開発していたなんて。
「あなたが余計なもの考え付いたからでしょ! 自分の能力を知れってのはそういうことよ!」
「ま、まあまあ、とりあえず無事だったんだから、良かったじゃないですか」
マービンが横から仲裁に入って、他の面々もセレーナとなぜか僕をなだめることで、とりあえず僕への臨時裁判はうやむやになった。
そんなわけで、結局はセレーナが、面々にもう一度、ことの顛末をいろいろと端折りながら説明してやって、おおよそ僕がなぜ度重なる無断欠席をする羽目になったのかは理解してもらえたようだ。
「面白い学校なんだね、そんなことが起こっていたなんてね」
ラウリが言うが、
「こんな面白いことになったのはつい最近さ。その中心が俺じゃなくて大崎だってのが気にいらねえけどな」
と毛利が僕の左肩にこぶしをぶつけながら返した。
「ごく普通の学校なんですよ、ラウリさん。たくさんの真面目な生徒と何人かの不真面目な生徒――」
マービンが言いながら、チラッと毛利と見るもので、その不真面目な生徒の正体は否応無く全員が把握する。
「――あとは、季節ごとにいろんな行事があって、当たり前の高校生活を楽しめる学校ですよ、ラウリさんがいらっしゃったのでもっと面白い学校になるかもしれませんけどね」
こういう社交辞令をさらりと言えるのは、一体どういう訓練を受けたからなのだろうな。マービンの家がちょっとした名家って話は聞いたけれど。あれか、ここにも社交界の一員がいるのか。
「行事って言えば、もうすぐスプリングフェスティバルだろ。クラスの企画考えないとなあ」
「なんだい、まだ懲りてないのか?」
秋のときは直前になって飲食店をやりたいとか毛利が言い出してあれやこれやの準備をしていたが結局いろいろな手続きが間に合わないことが分かり、断念したという経緯があったりする。
「そりゃそうさ。だって考えてみろよ、俺らのクラス、模擬店経験ゼロだぞ? このままお祭りの醍醐味の模擬店をやらずに卒業するつもりか?」
「卒業は気が早いですが、やってみたいですね」
マービンの賛同の声に、
「だったらやりましょうよう。このメンバーがそろってて出来ないことなんて無いわよう?」
浦野に言われてメンバーを見回す。
クラス内では強引さと不思議な人望では遅れをとらない毛利と。
多分、親の絡みでいろんなつてを地元に持っていそうなマービンと。
まあ特に何も持って無い僕と浦野は置いといて。
新転入生で絶世の美男、女子人気ランキングトップのラウリに。
……宇宙一のお金持ちの王女様。
ああ、できるなこれ。むしろ何でもできる。なんだこのメンバー。
このメンバーで『やるぞ』と言って、反対できるクラスメイトはいそうにない。
「……やるか」
毛利がにやっと笑って言った。
「そうしたら、何をやるか、だよなあ。何がいいか……」
そういって、さっきまで食べていたハンドパスタの包み紙に目を落とす。
「そうだな、パスタとか、どうだ」
「いやいや、安直だろ。ほら、せっかくなんだから、ラウリとかセレーナの意見も聞いてみようよ」
勢いで決まりそうなのを僕は何とか軌道修正しようと試みる。
「セレーナさんは何がいいですか?」
「そうね、私はそういうファストフードにはあまりなじみがないんだけど……、それこそ、さっきのクレープくらい。でもあれなら作るのも簡単そうだし、良いんじゃない?」
「それだったら僕も、クレープがいいね。コペンハーゲンじゃあんなタイプのファストフードは無かったから、とても面白かったよ」
セレーナの提案にラウリがすぐに賛意を表した。
「えー、やっぱりこういう時はプリンよう」
なにがやっぱりなのか分からないが、浦野は唐突にプリンという案を出してきた。うん、浦野に関しては唐突でも何でもないかな、いつでもプリンだ。
「大崎とマービンは?」
「じゃパスタ」
僕とマービンは同時に答えていた。
いややっぱり、甘いものって安易だと思うし、しょっぱいもの同士なら他のクラスとかぶっても良いけど、甘いものを梯子するってのはきついし、なんて思って。
考えてみるとついさっきまで買い食いしていたものがそのままそれぞれの口から言葉になって出てきただけという結果には、この時になってようやく気付く。
「うーん、分かれちまったなあ、パスタとクレープ」
「と、プリン!」
浦野は言い足して、二本だけ立っていた毛利の指に、もう一本を強引に加える。
「手間がかからないものがいいけど原価も気になるし、と言って売れないのはつまらないよなあ」
と言いつつ考えるも、ぱっと思いつくだけでも明らかにこれは優位だと言えそうなものはなさそうだ。プリンなんて材料費は高そうだし蒸す手間まで入るし祭りで売るようなものでは無いだろなんて思わないでもないくらいだし。
「複数やっちゃいけないなんて決まりでもあるのかしら?」
セレーナがぼそりと言って、みんなはっと顔を上げた。
そうか。やっちゃえばいいか。
どうせ作り手にそんなに人数はいらないんだし。
同じ屋台で違うものを売って悪いっていう決まりは、それこそないんだし。
「そうかそうか、そうだよな、さすがセレーナさん。よっし、三ついっぺんに提案しよう、クラス会で。じゃ、担当を決めようか、今それぞれの提案をした人でいいかな?」
となると、パスタが毛利、マービン、僕、クレープがセレーナ、ラウリ、プリンが浦野、と言うことか。
「……あたし一人ですかあ?」
浦野がほっぺたを膨らます。
いっそプリンを外してやってもいいんだぞ、なんて思うけど。
「せっかく六人ですし、二人ずつにしましょうか、毛利君。私がプリン班に移動しますよ」
「大崎君がいい」
マービンの提案を無視して浦野は宣言した。
いつもプリンをおごってやってるのに、ひどくないか。
「この中でプリンの何たるかをもっとも知るのは、あたし、そしてその次に大崎君なのよう? 当然、大崎君はプリン班なのです」
知らないよ、プリンの何たるかなんて。
「そういうことなら、私は遠慮しましょう。大崎君、申し訳ないけど、浦野さんをサポートしてあげてくれませんか」
「……分かったよ」
まあ、浦野に餌付けしている責任ってものもあるだろう。
そういうわけで、僕はしぶしぶプリン班に移動し、こうして、スプリングフェスティバルのクラス企画は密室の談合で決まってしまったのだった。




