第〇章 ???
★三部作第一作、SFミステリージュブナイルです
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主人公たちがここまで成長する物語です
■???
大艦隊が現れた!!
……って、ゲームかよ。ないよ。普通はこんなところで大艦隊に遭ったりしない。
目の前にいるのは、正規戦艦何十隻からなる宇宙艦隊、星系の一つや二つは制圧できる大戦力。
それぞれが超光速必殺兵器『アタックカノン』を腹に抱えたジョーカーたちだ。
こっちは、白い小型宇宙船が一隻。
はは、笑える。
まあ、4、5ヶ月前の僕らなら顔を真っ青にして震えあがっていたんだろうけど。
「……うわ、この忙しい時に。誰よ、アレ」
心底うんざりした顔でそんなことを言うのは、我らが王女様、セレーナ・グリゼルダ・グッリェルミネッティ。
その顔を歪ませているのだけれど、恐怖とか絶望とかではなく――なんというか、レジの列に割り込まれたような不機嫌さだ。
「ジュンイチ様、ここは『看破の魔法』でいかがでしょう?」
そんなお茶目を言うのは、船に搭載の知能機械、”魔人”ジーニー・ルカ。
僕らが彼の隠された機能を魔法だなんだと言って遊んでいたら、すっかり毒されやがった。
もうちょっと無口でミステリアスなやつだったと思うんだけど。
ま、いいや、『知ること』が僕らの武器だから。
「分かった分かった、魔法ってことでいいよ。では、魔術師・大崎純一がオーダーする。『知れ』」
僕は何もかもをすっ飛ばしてそんな雑なオーダー。
「――直感推論の結果、艦隊運用者はアイゼンハーゲル騎士団」
ジーニー・ルカは、あっさりと正体を見破る。
「ふふ、アイゼンハーゲルですか、なんとまあ」
「知ってるのか、マービン!?」
「シュッツェ帝国の生き残り、言ってみれば三百年前の亡霊です」
「な、なんだってぇー!?」
妙な小芝居を打つのは、眼鏡の奥で瞳を光らすマービン洋二郎と、馬鹿っぽい日焼け顔の毛利玲遠。
緊張感ってどこで売ってるんだっけ。
多分、ここいらの国がみんな他所の星系に大集合して戦争しようとしてるもんだから、今がチャンスと兵を起こしたんだろうなあ。
うわあ、めんどい。
「こっそり通り過ぎる?」
僕は、僕らを宇宙中のどこからも隠して置けるジーニー・ルカの得意技――そうだね、『隠ぺいの魔法』ってことにしようか――を使って、そこを切り抜けようか、と提案するけれど、
「いいえ、セレーナ様、ジュンイチ様。戦うべきです」
セレーナの隣に進み出る、セレーナと似た背格好の、キアラ・レオナルディ。
「進んだ先は――私たちの故郷、惑星エミリアです。もしセレーナ様の御祖父様の勘気に触れたら」
あった、あったよ、緊張感。キアラ、ありがとう、君が僕ら勇者パーティの良心だ。
「……そうね、あの程度の艦隊じゃあ御祖父様の艦隊に吹き飛ばされて皆殺しね。ここで止めなくちゃ。――ジュンイチ、やれる?」
セレーナの問いに、さすがにちょっと顔が引きつる。
いくらなんでも、あの戦力に対して、『やれる?』の一言で。マジですか?
なんて思っていたら。
「大崎君に出来なかったことなんてないのよう? 惑星丸ごとだってふっ飛ばしちゃうんだから!」
僕が答える前に勝手に答えるのは、浦野智美。
彼女にそんなことを言われると、なんだか全然無茶をしているって気にならないのが、不思議だ。
さすがに惑星を吹っ飛ばしたことは――あ。
やべ。
いやいや大丈夫、アレは事故。ぎりぎりで止まった。セーフ。
「なに? 怖気づいてんの? 宇宙を支配する魔王になって、私の後見人になるんじゃなかった?」
ここで黒歴史を掘りに来るセレーナ。
いたたたた。
僕はたぶん耳まで真っ赤だ。
――――
――でも。
僕は、宇宙の魔王にだってなれる。
道を間違いそうになっても止めてくれる仲間がいる。
僕は、僕の力を存分に振るって、いい。
ため息をつく。
その吐息には、みんなの信頼が詰まってる。
「まあ、やってみるよ。ジーニー・ルカ、いつものやつ、頼む」
「かしこまりました、ジュンイチ様」
「では、エミリア王国第一位王位継承権者にして全宇宙を相手どって戦う騎士団の全ての忠誠を捧げるセレーナ・グリゼルダ・グッリェルミネッティ殿下、ご裁可を」
僕が仰々しく言い、セレーナが顔を真っ赤にして振り返る。さっさとしなさい! と怒鳴る。
それが、魔法を解き放つ、宇宙の鍵。
セレーナの視線が、僕の網膜を射抜き、そこに、鍵を差し込む。
カチリ、と何かがはまる。
それは僕がこの旅でやっと知った、絆、という鍵。
「ジーニー・ルカ、さあ『滅びの魔法』を」
そして、僕は、何もしない。
それは、静かに始まった。
モニターの向こうで起きる異変。
艦隊に閃光が走る。
流れるように。なめつくすように。
そして、艦隊のありとあらゆる武器が無効化され弾薬がさく裂し、ほどけ、消えていく。
操舵機能は言うことを聞かなくなり、艦の航路はぐにゃぐにゃに乱れていく。
ただの一人の犠牲も出さず、戦う力だけを奪い尽くす。
僕はたった一言の魔法の起動キーで、星系を制圧できる宇宙艦隊を、滅ぼした。
――――
「はい、おしまい。これでいい?」
「うむ、よろしい」
セレーナもすっかり機嫌を直したようだ。
「――しかし、魔法の名前はいただけませんね」
知能機械がそんなことを冗談めかして言うものだから、
「じゃあどんな?」
「そうですね、『救いの魔法』でいかがでしょう」
そうだね、その通りだ。この後、無茶な戦争をして皆殺しにされる彼らを助けたんだから。
あとで礼状の一つでも送ってほしいものだ。
「採用。――セレーナ、なんか捨て台詞でも残してく?」
「んー、関わりたくないんだけど、そ、ね、匿名で『ゴメンネ』って送っといて」
……きっと敵指令室は阿鼻叫喚。逆に凶悪すぎだよ、それ。
そんな彼女に出会ったのは、わずか五ヶ月前。
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