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希望への足掻き

『………………残念だ。では、貴君らを殲滅させてもらう』





そう落胆したような声でバートランドが告げると、目の前の敵機が再び動き出した。


敵機は圧倒的な速さで俺達の囲いを抜け出し距離を取ると、小惑星の影を上手く使いながら再び向かってくる。


「総員備えろ!あと数分持ち堪え−−何!?」


刹那、俺の目の前から敵機が消える、否、消えたように見えた。センサーの追尾速度を超える垂直機動を行った敵機は下から急速接近し…俺を捉える。




この時反射で機体を捩らせていなければ、俺は死んでいただろう。


「っ!?!?」


敵機が俺の真横を通過した瞬間、コックピットディスプレイに機体の損傷を表す警告が表示され、同時に左半身の各システムにエラーが生じ機体を動かすことが困難になってしまった。


俺自身は慣性制御システムが働いた事により、ビームソードで切り付けられた衝撃はほとんどない。


だが、機体の損傷がかなり酷いことを察した俺は即座に損傷評価センサーに表示される情報から機体ダメージを確認する。


(クソ…!左脚部及び左腕外装に損傷、左ウイングスラスターは完全に脱落、推力低下20%…最悪だ!)


これでも死んでないだけまだマシだと言われるかもしれない、しかし、システムエラーで動けない今、次は確実に落とされる…


(……いや、まだだ!)


まだ俺は死んでいない、ならば、《《足掻かない理由》》などどこにある?


さらにそう思考する俺の耳を、ツルギ2とハクバ1の怒号が貫く。


『隊長機中破!ツルギ7は隊長を援護、ツルギ9、14、16は俺と共に奴を追うぞ!』


『ハクバ隊各員!ツルギ隊の死角を潰す!目標、周囲の小惑星群、一斉射ーーーーー撃てっ!』



そんな彼らの声は、今の俺にはとても力強い励みとなった。


彼らの声に応えるべく機体を立て直そうとする俺に、ツルギ7が通信を繋いでくる。



『隊長、落ち着いて機体を立て直してください、周りは俺が見ています』


「悪いな、ツルギ7」


『いえ』


短い会話でツルギ7は通信を切ってしまった、相変わらず寡黙な奴だ。


俺はツルギ7の援護の元、システムを再起動し損傷した左腕と左脚部の修復を開始する。


紫電改を始めとした新鋭機種に装備されている量子装甲は、損傷しても形状ガイドとなるフレームが破壊されていない限り、攻撃で飛び散った量子を再び誘引し完全に同じ性能を取り戻すことができる。そして物にもよるが修復速度は、《《ナノマシンを軽く超える》》。


《外装再構築開始、構築完了まで12秒》


「よし、修復完了まで約10秒だ。援護を頼むぞ」


『了解』


だが、強力な量子装甲にも修復を行うときは形状ガイドとなるフレームを動かすことができないという、明確な弱点が存在する。


案の定この弱点を敵機が見逃すはずもなく、ツルギ2達の追尾を振り切った敵機が再びこちらに向かってきた。


『ツルギ7!敵機がそちらに向かった!』


『了解……………絶対に止めて見せる…』


ぐんぐん距離を詰めてくる敵機に対して、ツルギ7は数発の牽制射撃の後、近づいてきた敵機に対して極至近距離からのシールドチャージを試みる。


だが敵機は、ツルギ7のシールドチャージが当たる寸前に機体を捻って易々躱すと、ビーム砲をツルギ7のシールド裏に向けて放った。


『かかった』


「…やれ、ツルギ7」


ビームに撃ち抜かれたかに見えたツルギ7だったが、爆発による眩い光は起こらず代わりにツルギ7の蒼いバイザーとビームソードの光が閃いた次の瞬間…………敵機のビームライフルが切断されていた。


さらにツルギ2達も追いついてきて敵機は俺への接近を断念、離脱を余儀なくされる。


『外したか』


「だがビームライフルを破壊したのは大きい、各機は他の遠距離武装に注意しつつ積極的に攻撃を仕掛けろ!」


『ツルギ2了解。ツルギ7…感謝する』


『…………感謝を述べるのは敵機を退けてからにしろ』


『ハハッ、言ってくれるじゃねぇか…隊長、いけますね?』


「あぁ、もちろんだ」


ツルギ7のおかげで修復は完了、システムの再起動も完了。万全とまではいかないが…十分やれるはずだ。


そこへ畳み掛けるように、ソウルキーパーから希望の知らせが届く。


『戦闘中の各機!味方艦隊到着まであtグッ!?くそ…味方艦隊到着まで後1分だ!それまで絶対にくたばるんじゃないぞ!』



彼のいるヒビヤ艦隊も、2機のNamedに攻撃されて撃沈された艦は一隻もいないようだ。彼らが奮戦している今、俺達が軽く蹴散らされる訳にはいかない。


「ツルギ隊各員、多くは言わない…行くぞ」


『『『『了解』』』』


『ハッ、俺たちも負けていられないね』


『そうですね』


(お?ハクバ隊も何やらやる気になったようだな)


Namedと相対してるはずなのに、いつの間にか俺たちの間にあった恐怖と絶望は薄れていた。


勝つことはできない、だが負けることもないと、不思議とそう思えた。





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