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任務完了

あれから自室に戻り艦内服に着替えた俺は、オオタチ隊の面々とともに艦長室へ向かっていた。


格納庫ではしんみりしていた空気も若干マシになり、各々がリラックスした表情で長い廊下を進む。


…一名、顔を歪めて頭をさすってる奴も居るが。


「…タクマ少尉、結局整備班からは何言われたんです?」


と、俺たちが心の中で思っていたことをオオタチ2…〈レイ・アザマ〉が代弁してくれた。


「いや、緊急時だからこそ落ち着いて冷静に、安全を保って行動しろと言われたよ。殴られはしなかったが、運悪くHFの運搬クレーンに頭をぶつけてね。行きの時はぶつけるような場所にはなかったはずなのに」


(うん、絶対わざとやられてるなそれ)


俺は頭をさすりながら答えたタクマに呆れ、部下達も似たような雰囲気でタクマに視線を向ける。


「な、なるほど…まぁご愁傷様です…」


おまけに聞いた本人であるレイが口元を引き攣らせながら答えたため、タクマはやっぱりというべきか噛み付いてくる。


「なんだい!?皆して呆れたような目を向けてきて。確かに僕だって悪いと思ってるさ!でもミスは誰にだってあるのにこの仕打ちは酷いだろう!?」


「いやタクマ少尉の場合は何回も同じことするから怒られるんでしょう…」


レイももうやめとけって…どうせ後でまたこってり絞られるから。


「な!?レイ君だって「あーはいはいもう艦長室近いから静かにしろい」う…分かった…」


「…分かりました」


このままにしとくと言い合いに発展しそうだったため俺が介入し両者を黙らせる。



(もうちょい仲良くしろよお前ら…)


お互い反対方向を向いて歩くコイツらを見て、俺はそんなことを思うのだった。




*********************************



なんだかんだで艦長室前に着いた俺たちは部屋のドアをノック。中から「入りたまえ」という声が聞こえたため、ドアを開けて中に入る。


俺とタクマは初めて入るわけではないため物珍しさはそこまで無いが、部下達は壁に飾られた水墨画や、立て掛けられている屏風にチラチラ視線が向かってしまっており、俺が目配せすると慌てて姿勢を正し視線を前に向けた。


(いくら兵士って言ってもまだ10代だから仕方ないか…)


部下達に小さくため息を吐き、俺は目の前に佇む2名の上官に敬礼し言葉を紡ぐ。


「オオタチ隊イワモト以下8名、帰還報告に参りました」


「ご苦労、座りたまえ」


「はっ」


なおもソワソワしている部下達を椅子の後ろに立たせ、艦長室に設置されている椅子にタクマと腰掛けてヒビヤ司令の言葉を待つ。


やがて紅茶をかき混ぜつつヒビヤ司令と〈かこ〉艦長、〈ヨウタ・タカハシ〉大佐も向かえの椅子に腰を下ろし、言葉を発する。


「さて…どこから話そうか。まぁまずは労いからだろうな。改めて、オオタチ隊各員艦隊護衛の任、ご苦労だった。貴官らのおかげで我々は助かり、天雷の輸送に成功したと言っても過言では無い」


そこまでヒビヤ司令が話した後、タカハシ大佐がさらに続ける。


「イワモト少尉には後程報告書を提出してもらうが、他の隊員はまずは休みたまえ。これから話すこともそれなりに重いしな」


「「「はっ」」」


まぁ隊長である俺が報告書を書くのは良い、重い話とは一体なんだ?


「さて、では話そう。先程我々に関することで《《総司令部から連絡があった》》。かい摘んだ内容としては、『ヒビヤ艦隊は基地に帰還次第解散、それに伴いオオタチ隊も解散とし、元ツルギ隊メンバーは惑星科野(さらしな)にある飯山教導基地。元ハクバ隊メンバーはしし座第23星系駐留軍へ配属とする』だそうだ」


(……なるほど。っていや待て待て待て、何で総司令部から直接指示が来るんだよ!?いくら天雷守ったからって…)


「まさか総司令部直々に指示が来るとは我々も思いもしなかったが、指示は指示だ。それなりに長い期間共に戦った仲間と離れるのは少々辛いだろうが、よろしく頼む」


「はっ…」


正直、分からないことだらけだ。安全なはずの航路を通ったのに襲撃されたのも謎だし、その襲撃部隊にNamedが居たことも、即応機動艦隊に白虎が随伴していたことも、総司令部から俺達に直接指示が下ったことも…


もっとも、1兵士である俺が動いたところで分かることは高が知れている。なら今は目の前のことに集中した方が良い。




そして少しの会話を挟んで、今回の対話は終了した。



「我々からの話は以上だ。下がりたまえ」


「はっ」



だが部下達を先に退出させて俺が最後に敬礼をして部屋から出ようとした時、ヒビヤ司令が俺にだけ聞こえるような声で呟いた。



「気をつけたまえ、軍の中枢に君に目を付けている奴がいる。油断すると足元を掬われるぞ。パイロットが1番無防備なのは…《《機体から降りた時だからな》》」


「っ……了解しました」


一瞬返答しそうになるも、ヒビヤ司令の鋭い眼光に押され俺はそのまま部屋を出て自室へ戻る。


自分の極近くで歴史が動く…そんな予感を感じながら。




*********************************




大和連邦本星


大和連邦航宙軍総司令部




「〈カグヤ元帥〉、イサリビ中将より〈ロスブレアン会戦〉の報告書が届きました」


「うむ、ご苦労。彼らは?」


「はっ、元帥の指示通り教導隊への配属を指示しました。これでしばらくは保護出来るかと」


「そうか、なら良い。天雷の情報を流した輩を捕らえるまで彼らを実戦に出すな。今回は何事もなかったが、次はどうなるか分からん」


「了解。では私はこれで失礼します」


「うむ」


部下が退出した後、おもむろにカグヤは机の上に置かれた報告書を手に取る。


「今回も大勢が死んだ…か。このところ中規模以上の戦闘発生頻度が大幅に増えている。《《我々には時間がない》》と言うのに、なぜ人間同士で争うのか…」


「…頼んだぞ、英雄(エース)達よ」





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