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第三勢力の介入

『…ふむ、やはり貴官はあの草薙剣の隊長か。先程の一撃は見事だった。だが、実質一度殺された相手に大して期間を置かず挑むのは、少々甘いのではないか?』


低い声で告げられるバートランドからの言葉。普通の兵士なら怖気付いてしまうだろうが、俺は生憎この声を聞くのは初めてじゃない。



「甘かろうが何だろうが、負けたら全部同じだ。なら俺は自分に出来ることをする」



『賢いとは言えないな。貴官が白虎の足手纏いになるとは考えなかったのか?』


「もちろんそれは考えたさ、だが俺なんかよりも圧倒的に経験を積んでいる上官がした判断に、俺が異を唱えることは無い」


『…なるほど。貴官の考えには同意しかねるが、それでも再び挑んできたこと、そして白虎と協力して私に損傷を与えたこと。それは評価に値する』


相変わらず上からだな本当…!その癖油断も隙もない、自分の強さに胡座をかく奴はNamedになれないってことか。だが、ここでお喋りしてるだけでも…


「Namedのあんたに評価されるなんてこれほど嬉しいことはないね!」


『……全く、時間稼ぎをするにも雑過ぎる。白虎から私の意識を逸らしたいのであれば、貴官が直接攻撃するしかなかったというのに』


「っ!?」


しまった…露骨すぎたか…!?電光の修復までコイツを留めないといけなかったのに…!


だが、ここで動揺を出したのが良くなかった。


一瞬意識を電光に向けた瞬間、敵機は俺の身の前から消え、《《俺の真上に再出現する》》。


「このっ!」


幸い俺の勘が当たり、頭上に掲げたビームソードが敵機の攻撃を受け止める。しかし、攻勢はまだ続く。


『む、防いだか。だが《《これ》》はどうだ?』


そう言って敵機が脇腹から展開するは、パイルバンカー…!


(ヤバい!)


咄嗟に機体を捻り回避を試みるが、ここまで至近距離なら外す方が難しい。俺が回避する間もなく眩い閃光を伴い放たれたそれは、しかし、俺の目の前を掠め不発に終わる。



(何だ…一瞬軌道が曲がった…?)


『…やはり部分的な連続使用は不可能か、改善案として提出せねば』


なるほど、恐らく敵機はパイルバンカーをワープさせ対応不可にさせるつもりだったらしい。だが連続使用は不可能だったため俺に当たらなかったってことか。なら俺はあの兵装を警戒する必要は少ない。機体ごとワープしてくるなら、まだ対応はできる…!


「サカイ大尉!機体の修復までどれほど掛かりますか!?」


『…長くて2分だ、それまで持ち堪えて…!』


片腕を失っただけに見えた電光だが、実際はその影響が動力炉にまで及び基幹機能の修復をも必要としていた。むしろそれらの自己修復込みで2分は異常な速度と言えるだろう。



「了解しました…!」


俺はそこで通信を切り、再び敵機の攻撃に対応する。


背後に出現した敵機のビームソードを受け流し、パワー勝負に持ち込ませないためにも再び距離を取る。



『ふ…これも防ぐか。著しい成長だ。もっと楽しませてくれたまえ』


「誰が…!」


相変わらず上からの通信に苛立ちながら俺は返答をする。


だが、ワープして攻撃、離脱。ワープして攻撃、離脱。延々と続く攻撃に段々と反応が追いつかなくなり始めた。


焦りが募り、自分でも分かるほど動きが鈍くなっていく。


「クッ…ワンパターンなんだよ!(まずい…!)」


『ワンパターンという割には、徐々に動きが悪くなっているぞ』


『今行く!耐えるんだ!』



そして俺の正面に出現する敵機、閃くビームソードを刹那の判断で受け止める。


(堪えろ、相棒…!)


次の攻撃には反応が間に合わないと確信した俺は、敵機と鍔迫り合いをすることを選択、機体のパワーに全てを託した。


たとえ量産機でも、数秒程度なら持ち堪えられる。


俺は徐々に押し込まれていくのを感じながら、目の前の敵機を睨む。


「アンタに1人で勝とうなんざ思っちゃいない。Named相手に足掻ければそれで上等なんだよ!」


『ふむ、足掻いた結果無駄死にになるとしてもか?』


「はっ!無駄死にはごめんだが…0.1%でも勝利に貢献できたのなら、それで十分だ…!」


そう俺が言い放った瞬間、白い剣閃が俺と敵機を分断する。


『お前の相手は…僕だっ!!』


『むっ…』


俺と敵機の間に飛び込んだ白虎の腕は完全に修復されており、全力戦闘に耐えうるまで回復していた。


(これでまた振り出しに戻った、後は何とかしてWDA範囲に敵機を…!)


そこまで俺が思考した時、サカイ大尉から通信が入る。


『イワモト少尉、僕がコイツをWDA範囲に押し込む。その間に機体はボロボロにされ、おそらくその後の戦闘には参加できない。だからWDA範囲に到達した後トドメを君に任せたいんだけど、大丈夫かい?』


「はっ?了解しました…しかしどうやって…?」


『こうするのさ…!』


イワモト大尉の言葉を聞いた俺が弾かれたように顔を上げると、電光が敵機に抱きつき、スラスターを全開にして猛スピードでWDA影響範囲へと移動し始めていた。


「はっ!?」


思わず驚きの声を上げてしまう俺に、サカイ大尉は続ける。


『紫電改のcruise形態なら付いて来れるはずだ!移動の間は手出しは要らない、タイミングを間違えないで!』


「り、了解!」


慌てて俺は愛機をcruise形態に変形させ、2機に追従する。


『……まさかこのような手段に出るとは…何を焦っている?』


『何も焦ってなんか無いよ、お前を倒すにはこれが最善だと判断しただけさ』


『貴官ほどの者が、力で劣る相手の懐に飛び込むことがどれだけ愚かなことか分からないはずはないだろう』


『ふふっ、《《力で劣るからこそだよ》》』


『何?……まさか!?』


バートランドの言葉はそこで途切れる。



左腕で抱きついた電光が右腕を敵機の損傷した部位に差し込み、超高圧電流を流し込んだからだ。


『ガッアァァ、グッ、何の…!』


『どうです?まさか改修された電光にこんな能力が持たされているなんて思わなかったですよね?《《通常状態の機体相手に意味のない》》武装なんか予想出来るわけがない。僕だって引っ掛かるでしょう。でも今食らっているのは…あなただ』



『小癪な…この程度で…!』


苦悶の声をあげながら敵機はビームソードで電光を斬りつけようとするが、電流のせいでマニュピレーターにエラーが発生したのか上手くいかず、さらに懐に飛び込まれているため腕の振りだけで攻撃することが不可能に見えた。


しかし、敵機にはまだあの武装がある。


「パイルバンカーです!」


『っ!』


2機と並行して移動していた俺は《《それ》》が淡い光を放っているのに気付き、サカイ大尉に叫ぶ。


『無駄だ!』


だが密着した状態で放たれたパイルバンカーを躱せるはずもなく、電光の胴体を巨大な杭が貫いた。


「サカイ大尉っ!!」


『大丈夫だ…!僕の心配より、敵機にトドメを刺すことを優先しろ…!』


その叫びと共に電光と敵機はもつれ合いながら付近にあった小惑星に衝突、同時に電光は自身の胴体に刺さっていた杭を抜き、それで敵機を小惑星に縫い止める。


だが流し込む電流は徐々に弱くなっており、敵機が動かないようにするには、杭だけでは足りない。



『グッ…仕方ない…イワモト少尉!《《僕ごと斬れ》》!』


「な!?しかし貴方は…!『時間がないんだ!早く!』っ…!!」


一瞬の躊躇い、しかし俺はサカイ大尉の指示に従いhumanoid形態に変形、ビームソードを抜刀し、構える。


「覚悟しやがれ…Nemesis(部下の仇)!」


『クッ…私にはまだやるべき事が…!』


スラスター全開、尚も抵抗を続ける敵機に俺はビームソードを振りかぶった………








だが、その攻撃が敵機に届くことは無く、後に残ったのは宇宙の静寂と、《《巨大な威圧》》


俺の喉を冷や汗が伝い、パイロットスーツの下に来た冷却服に染み込んでいく。



恐る恐る俺が向けた視線の先には、えちごなど比べ物にならない程の巨艦。



『あれは…ルーシ連邦航宙軍総旗艦…|Советский Союз《ソビエツキーソユーズ》…?』


サカイ大尉の呟きが聞こえ、通信機から別の声が響く。



『……ザッ…聞こえるか…こちらルーシ連邦中央艦隊だ。大和連邦及びロイヤル王国艦隊は直ちに戦闘を停止せよ』





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