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最強の揺らぎ

『オオタチ1と敵隊長機が衝突!』


『隊長!大丈夫ですか!』


「グッ…問題ない…」


敵3番機と鍔迫り合いしているところに、敵の隊長機が《《吹き飛んできた》》。


妨害などではなく、文字通りに。


(なんだってんだ……)


心の中で悪態を吐きつつ俺は衝撃によりスピンする機体を安定させ、敵隊長機が飛んできた方向を向く。


そこに佇んでいたのは、白虎の駆る〈電光〉。




『ごめんね、まさか僕がそいつを蹴った方向に味方が居たなんて思わなかったよ。でも、仕方なかった、密着されると不利なのは僕だったからね』



「…サカイ大尉が謝ることはありません、自分が視野狭窄に陥ってただけです。結果として敵3番機と距離を取ることも出来ましたし」


『…ハハッ、まさかそんな風に言われるなんてね』


「えっ?」


『いや、何でもないよ。それより、君に1つ《《頼み》》があるんだけど…』


それだけ言うと、白虎はこちらに接近し接触回線にてその《《頼み》》とやらを伝えてくるのだった───



***************************








『本気でやるんですか、隊長』



「本気も何も、白虎殿に頼まれて断われるわけないだろ」


『しかし、敵隊長機の腕は圧倒的です。幾らなんでも…』


「仕方ないさ、俺達の任務はまだ終わっちゃいない。それに俺なんかよりも実戦経験豊富な白虎殿がそう判断したんだ。なら文句を言うことは出来ない』



白虎殿が俺に頼んだこと、それは、「自分を援護し敵隊長機を落として欲しい」なるものだった。


連携では無く、あくまで援護ならば俺でも出来るだろう、さらに俺は圧倒されつつもなんとか抵抗することは出来ていたため、自衛力も最低限はある。そして白虎単独では敵隊長機を仕留めきることは難しい。これらの理由から俺に援護させようと思ったらしい。



『よし、イワモト少尉、準備は大丈夫?』


「問題ありません。ベストを尽くします」


『うん、君は一撃離脱と射撃に専念するだけで良い。後のことは僕に任せて』


「はっ………さて、オオタチ1より各機。俺が居ない間に、死ぬなよ」


『言われなくても』


『もちろんです』



俺は自身が離脱する間の指揮をオオタチ2に一任し、敵隊長機に向かう白虎に追従、移動を始める。


そんな様子を見ていた敵2、3番機はこちらへ妨害を行うかと思われたが、特に何もせず、ただ俺の部下達を睨み付けるだけだった。



彼らの行動を不可解に思いながらも、俺は前方を往く電光に目を向ける。


すると俺が視線を向けたのが分かったかのように、白虎は再び話し始めた。


『敵隊長機は、圧倒的な機動力とタフな機体特性を駆使した接近戦が主体のようだね。僕の電光も機動力は高いけど、機体パワーじゃ敵わない。だから援護頼んだよ』


「はっ」


話す間にも、敵機の姿はどんどん近付いてくる。恐らく損傷を修復しているのだろう。こちらにカメラアイを向けたまま動く気配がない。


『よし、僕が仕掛けるから、君は僕が離れる瞬間を狙って射撃もしくは高速度での一撃離脱をよろしくね。出来るだけ庇うけど、もし敵機が君に向かったら自衛も諦めずに』


「分かっています」


『ふっ、じゃあ行くよ!』


その言葉が俺の耳に入った時には、白虎は既に敵機へ肉薄、攻撃を行おうとしていた。


(早すぎんだろ…!これの援護しろってか!?)


しかし、心の中で喚いても状況は何ら変わらない。


半ば自棄になりながらも、俺は一定の速度を維持しつつプラズマ砲の砲口を敵機に向け、時が来るのを待つ。


白虎と敵機は∞の軌道を描きながらビームソードによる攻撃の応酬を続け、時たま粒子砲の光が瞬く。


白虎が下から斬り上げたビームソードを受け止めると、敵機は左手に持たせたもう1本のビームソードですかさず反撃、それに対し白虎は敵機の胴を蹴り距離を取ることで躱す。


だが開いた距離を即座に敵機が埋め、攻守が逆転。再び斬り合いが始まる。


辛うじて俺は認識出来ているが、これらの機動は音速などとうに超えた速度域で行われており下手にあの間に割って入ろうとすると次に切り刻まれるのは己だろう。


だがそんな攻撃の応酬も無限に続くわけではない、一旦仕切り直しということもあるだろう。


───俺の役目はそこを狙うことだ。


卑怯だと言われるかもしれない、だが戦場でそんなのこと言ってる奴はまず間違いなく死ぬ。ならば何も問題はない。



一際明るい閃光の後、白虎と敵機の距離が大幅に離れ、敵機の足が止まる。


「っ!!」


『今だ!』


白虎の声を待たず、俺は反射的に引き金を引いた。



砲口から放たれたプラズマは一直線に、敵を穿たんと宇宙空間を突き進む。


一時的に消耗していた敵機は攻撃を躱しきれず、右脚部に見て分かるほどの損傷を受けた。


「当たった…!」


『ありがとう!これで!』


敵機が損傷したのを見て、白虎は再び攻勢を仕掛けようと機体を動かす。


『…………おもしろい』


「…何?」


姿勢を崩した敵機、一見すると脅威は下がったかに思えた敵機に白虎は斬りかかり───


片腕を失った。


『く、そ…!?』


「コイツ…まだ余力が有りやがるのか…!」


『どうした、白虎。何故一度は躱した攻撃を食らった?』


通信機から響く低い男の声。


バートランドだ。


『まさか私の機体が損傷したことに油断したのではあるまいな、答えろ、白虎』


『あぁ、そのまさかだね…!』


『ふむ、嘘は吐かなくて良い、見えなかったのだろう?私の攻撃が』


『っ!?』


おいおい、どうなってやがんだ。あの白虎が…まさか!!


あることに思い至った俺は、慌てて艦隊の共同戦闘システムを確認する。


(やはり…!)


『……確かに攻撃は見えなかったさ、でも反応は出来た。ならやれる…!』


『ただ愚かなのか、自分に絶対の自信を持っているからなのか…後者なのだろうが、それでも過ぎた自信は命取りになるぞ』


この会話に割り込むのはかなり勇気がいる、だが、やるしかない…!


『はっ!さっきまで一方的に押されてたのはどっちだっけ!?』


『最後に生き残っていた方が全て正しいのだ。過程など結果の前では意味をなさん』


『それでも「サカイ大尉!ここはWDAの影響範囲外だ!さっきのはショートワープを用いた感知不能の攻撃!対応するには、またWDAの範囲内に引きずり込むしない!」……なるほどね…!』


この一言で俺の意図は伝わったはずだ。問題は相手がどうでるか…


『…ふむ、やはり貴官はあの草薙剣の隊長か。先程の一撃は見事だった。だが、実質一度殺された相手に大して期間を置かず挑むのは、少々甘いのではないか?』


今度は俺に話しかけてきた…いいぜ、のってやるよ!




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